2018/12/09

First Saturday GM December 2018 R7


この日はハンガリーのベテランGM Farago Ivan との対戦です。初日にドイツのGungl に勝って以来、白星の無い私は、そろそろ貴重な白で勝ちが欲しいところです。

Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
First Saturday GM December 2018 (7)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 c5



近年とても流行しているこのQueen's Gambit Semi-Tarrasch が、Farago のレパートリーの1つであることを把握しておきながら、ここしばらくは指していなかったため、試合直前のチェックを怠っていました。メインラインで挑むか、4. e3 を指すか悩みましたが、メインラインが思い出せそうなのでこの日は正面からやってみることにします。

5. cxd5 Nxd5 6. e4 Nxc3 7. bxc3 cxd4 8. cxd4 Bb4+ 9. Bd2 Bxd2+ 10. Qxd2 O-O 11. Rc1 b6 12. Bd3 Ba6!?


しかし、この手は完全にノーチェックでした。12... Bb7 に比べればまだ指された数こそ少ないものの、トップのGM にも採用されています。考えてみれば、黒のアイディアは序盤で早々に2マイナーピースを交換し、白が築いたセンターポーンとそれが生み出すスペースのアドバンテージを活かしにくいようにする、というものです。その流れからすれば、e4 にプレッシャーをかける12... Bb7 よりも、3ピース目の交換を確定させる本譜のほうが、むしろ理にかなっているようにも思えます。

13. O-O



検討ではFarago から、13. Bxa6 Nxa6 14. O-O Qe7 (狙いはQe7-Qb7) と進めば、黒は特に問題ないと伝えられました。

13... Bxd3 14. Qxd3 Nd7 15. e5!


この手は少し考えた末に指してみて良かったと思います。白の狙いはいくつかあり、f6 を抑えることでNd7-Nf6 を防ぐ、b1-h7 のクイーンの利きを開くことで、Nf3-Ng5 との組み合わせからh7 のメイトを狙う、e4 のマスを空ける、d6 を抑えてNf3-Ng5-Ne4-Nd5 などのルートでナイトの侵入を狙う、などが挙げられます。もちろん15. e5 にも、d4 のポーンをバックワードポーンにし、d5 をアウトポストにするというデメリットがあります。しかし、d5 のアウトポストにナイトを運ぶルートは当面無く、ポーンを進めるメリットのほうが大きいと判断しました。

15... Re8!



一見すると少し意味が薄そうなルークの手ですが、f8 のマスを空けることで、Nd7-Nf8-Ng6-Ne7-Nd5 というナイトのマヌーバリングルートを作り出しています。時間こそかかるものの、d5 までナイトを運べるようであれば、黒はかなり指しやすくなるでしょう。これを実現させずにどう戦うかが、私にとってここからのポイントです。

16. Qe4


a6 への侵入も捨てがたかったのですが、ナイト退きの後のQd8-Qd5 からのアウトポストコントロールを防ぎ、c6 への利きを作っておきます。そうしたメリットの半面、e4 のマスを埋めてしまうので、ナイトがe4 にいけないというデメリットもあります。

16... Nf8 17. Rc6 Rc8 18. Rfc1 Qd7 19. Qc2



e4 と同じくc6 に利きを持つとしても、cファイルのヘビーピースを重ねることで、ルーク交換を催促します。ただのテンポロスだと思うかもしれませんが、黒からはNf8-Ng6-Ne7 と回してc6 のルークをアタックする手があり、こうされると明らかにアドバンテージがありません。本譜の手でcファイルを抑えたまま黒陣に入るチャンスを作れたので、多少有利になったと思いました。

19... Rxc6 20. Qxc6 Qxc6 21. Rxc6 Rd8


しかし、こうして落ち着いてd8 にルークを回されてみると、Rd8-Rd7 がシンプルに7段目のディフェンスになりますし、Rd8-Rd5-Ra5 というマヌーバリングで、a7 を守りながらa2 への反撃を作られることに気付きました。予想していたよりも白のアドバンテージが少ないことに気付き、またここから作戦を立て直します。

22. Kf1 h6



Ne4-Ng5 からf7 へのアタックを防ぎ、黒ルークが7段目を離れても大丈夫なようにしつつ、h7 にマスを作ってキングが上がるマスを作ることで、バックランクへの侵入にも対処します。

23. Rc7 Rd7 24. Rc8!?


ここはかなり悩みましたが、当初の作戦であったルーク交換を諦めました。最初は24. Rxd7 Nxd7 25. Ke2 と上がれば、白キングがセンターに近く寄っているため、多少良いエンドゲームかと思いました。しかし、25... b5! からNd7-Nb6-Nd5 の反撃が生まれ、黒もクイーンサイドポーンマジョリティを武器に戦うことができます。この変化はさっぱり自信がなかったため、本譜の多少怪しい変化に跳びこむことを決意します。

24... Rd5 25. Ke2 Ra5 26. Nd2!?



a2 を捨てると黒に2コネクテッドパスポーンが生まれるため、リスクが高いようにも見えます。しかし、バックランクを抑えてf8 のナイトをピンにし、一時的にout of play にすることで多少の代償があると考えました。26. Rc2 と退く手はパッシブで、黒にNf8-Ng6-Ne7-Nd5 のチャンスを与えてしまいますし、何よりc8 に侵入したことが単なるテンポロスにしかなっていません。やるなら8段目に侵入したままポーンを捨てて勝負です。

26... Rxa2 27. Ke3 Ra3+ 28. Ke2 Ra2


しかし、Farago はこれを勝負に来ないんですね。黒にはgポーンを突いてキングのマスを作る、fポーンを突いてキングのマスを作る、キングのマスは置いてa、もしくはbポーンを進めるというプランがあります。そのいずれも、白にNd2-Ne4 を許すことになり、評価の難しい形勢になるでしょう。本譜のナイトをピンにしたままにする作戦は、ドローを取る安全策です。

29. Ke3 Ra3+ 30. Ke2 Ra2 1/2-1/2



こうなってしまっては仕方がないですね。このSemi-Tarrasch の変化にどう勝負しにいくかは、もう少しゲームをチェックしながら検討してみようと思います。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533) 1/2-1/2
12/06 14:00 Balint, V (HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360) 1/2-1/2
12/09 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/10 Rest Day
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+2 Ilincic,
+1 Anisimov, Kantor
+-0 Kojima, Akshat, Farago, Gungl, Bilmos
-1 Pacher
-3 Shahaliyev

これで私は1勝1敗5ドローとなり、2試合を残してこの遠征で最多ドローのトーナメントであることが確定しました。GM 3人とに勝ちも負けもなく、3ドローだったのも今回が初です。2敗目を喫しない代わりに、なかなか2勝目が遠いですね。気負いすぎずに、あと2戦しっかりプレーできればと思います。

2018/12/08

First Saturday GM December 2018 R6


Vilmos に悔しい負けを喫し、イーブンに戻った翌日は、GM Ilincic との対戦です。2012年の遠征以来、ブダペストとケチケメートで数えきれないほど試合をしました。私が過去最も多く試合をし、そして最も多くの白星を挙げているGM です。この日も相性の良さを活かせればと思い、試合に臨みました。

Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
First Saturday GM December 2018 (6)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 Bf5 5. Bd3 Bg6 6. O-O e6 7. b3 Nbd7 8. Bb2 Ne4!?



7. Qe2 のラインばかりをチェックしていて、b2-b3 セットアップを見直すのを忘れていました。ナイトが入る手は面白いですが、8... Bd6 9. Ne5 (9. Nc3 Ne4 10. Qc2) 9... Qc7 10. f4 Bxd3 11. Qxd3 Ne4 という変化を調査していたのでした。

9. Bxe4!?


いきなり白マスビショップを諦めるこの判断には驚かされました。白はダブルビショップを放棄する代わりに早いピースの展開を得ますが、黒もどこまで遅いわけではなく、手堅いポジションです。

9... Bxe4 10. Nc3 Bg6 11. Qe2 Be7



白がe2-e4 からセンターを開こうとしているのは明白なので、それを止めるため、11... Bb4 12. a3 Ba5 13. b4 Bc7 14. e4 dxc4 15. Qxc4 O-O と指すのもありだったでしょう。これであれば、センターの厚みvs. ダブルビショップという本譜とは少し違う戦いの構図になります。

12. e4 dxe4 13. Nxe4 O-O 14. Rfd1 Re8 15. Ne5 Bxe4


私はここで白マスビショップを返す判断をし、ダブルビショップとは違った主張を求めます。白マスビショップをキープすることにこだわり、15... Nxe5?! 16. dxe5 Qc7 17. Nd6! とされては厄介です。

16. Qxe4 Nxe5 17. dxe5 Qc7



これが私の目指したポジションで、3マイナーピースを交換済みで、残ったのは互いにヘビーピースと黒マスビショップです。ルークは盤上から早々に消えるとして、e5 のポーンにビショップの利きを遮られ、この伸びすぎポーンが多少の負担になりえる白のほうが、注意しなくてはいけない局面でしょう。

18. Rd3 Red8 19. Rad1


19. Rh3 g6 20. Qe3 Qd7! まだバックランクが弱いうえ、3マイナーピースを交換済みですので、キングサイドへのダイレクトアタックは怖くありません。

19... Rxd3 20. Rxd3 Rd8 21. Kf1 g6 22. Ke2 Rxd3 23. Qxd3 b5!



これはクイーンサイドでの良い仕掛けだったと思っています。白キングは早々にセンターに繰り出してきましたが、c2 でのクイーンのチェックがダブルアタックになってしまうため、cファイルを開くことは黒にとってありがたい状況です。さらにはb5 のポーンはa4 のマスも抑え、Qc7-Qa5 を狙いにしています。

24. a3 a5


aポーンを守るためにはa3 に動かすしかありませんが、これがまたビショップと同じ黒マスなので、ターゲットになりえます。基本的にはポーンが黒マスに移動してくれるのは黒にとってありがたいですが、a3-b4-c5 まで押し込まれると、黒の黒マスビショップの行き場がなくなるため、それだけ気を付けて手を進めていきます。

25. g3 h5 26. h4 Kg7?!



ここは迷ったのですが、8段目にクイーンに入られた際にチェックのテンポを与えないよう上がっておく本譜のアイディアは決して悪くないと思います。しかし、1つ前のh7 にマスを作った狙いを考えるのであれば、ポーン交換から局面を難しくするほうが勝ちにいきやすかったでしょう。26... Bc5! f2 へのプレッシャーは当然重要な狙いです。27. cxb5 cxb5 28. Qxb5 Qa7! (試合中に考えていたのは28... Ba7!? 29. Qd3 で、これでもポーンの代償はありそうですが、黒が良いとまでは言えないでしょう。) 29. Qe8+ Kh7=/+ これでb5 を捨ててもf2 を落とし、g3, e5 をさらなるターゲットとすれば、黒が有利だったというのがコンピュータの評価です。f2 を狙うことは当然考えてはいましたが、b5 を捨てて白にパスポーンを与えるリスクを恐れてしまいました。

27. Qd4 a4


c4-c5 を狙われたのであれば、こうするほかありません。

28. cxb5 cxb5 29. b4 Bd8


ポーンストラクチャーが変わり、白のポーンは全て黒マス、黒のポーンは全て白マスになりました。これは黒にとってありがたいことではありますが、ビショップをなんとか使えるようにしなければ勝機は見えてきません。本譜ではb6 への切り替えから、上記のようにf2 をアタックしにいきます。

30. Bc3 Qb8 31. Qd7 Bc7 32. Qd4 Bb6 33. Qd7 Bc7 34. Qd4 Qb7 35. Qc5 Bd8?!



ここも勝ちを狙うのであれば、35... Bb6! 36. Qxb5 Qe4+ 37. Kf1 Bxf2! 38. Kxf2 Qc2+ 39. Qe2 Qxc3 40. Qe3 Qb3 と指すべきだったと思います。上記と同じf2 とb5 の交換をして白のポーンストラクチャーをバラバラにするアイディアです。ただビショップまで捌いた状態で、e5, a3 をどうしたら落とせるのかは簡単にはイメージできません。

36. Bd4 Be7 37. Qc3 g5


時間が増える40手間際、このアイディアを仕掛けます。g1-a7 のダイアゴナルを結局取れなかったため、ビショップの使い道はこれしか残されていません。

38. hxg5 Bxg5 39. Be3 Bxe3



39... Qe4 40. f3 Qg6 41. Qd3 Bxe3 42. Qxg6+ fxg6 43. Kxe3 g5= このポーンエンディングはドローです。

40. Kxe3 Qd5 41. f3 Qa2 42. f4


唯一の狙いであった、Qa2-Qh2 からのg3 ポーンアタックもこれで防がれ、黒には勝ちにいくアイディアが完全になくなりました。白のポーンはまだ多少危なく見えますが、3段目のクイーンでa3, g3 のどちらも守れるのであれば、大きな問題はありません。

42... Qg2 43. Kd4 Qd5+ 44. Ke3 Qa2 45. Kd4 Qd5+ 1/2-1/2



全体を通して上手く指せており、危ないところは一切無いチェスでしたが、勝つためにはもう1歩リスクを取り、踏み込まなければいけないということでしょうね。まだ自分に少し足りないところだと自覚もしているので、良い勉強になった試合でした。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533) 1/2-1/2
12/06 14:00 Balint, V (HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/10 Rest Day
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+2 Ilincic, Kantor
+-0 Anisimov, Kojima, Akshat, Farago, Gungl, Bilmos
-1 Pacher
-3 Shahaliyev

今大会、Shahaliyev が不調なくらいで、他の大きな浮き沈みはありません。GMノームのチャンスが唯一残っているKantor も、条件は残り4試合で3.5P となかなかシビアです。私は今日は初対戦となるハンガリーのベテランGM Farago とのゲームですので、これも楽しんでこられればと思います。

First Saturday GM December 2018 R5


Balint, V (FM, HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
First Saturday GM December 2018 (5)
Position after 41... Rd4

42. f3?!


この試合は序盤、お見せできないほど恥ずかしい指し回しだったので、エンドゲーム中心で解説を書きます。ピースダウンの黒はなんとかキングを押し込み、反撃を作ろうとして40手を迎えました。g3 のビショップがプレーに戻ってくるのに時間がかかることも、わずかな希望だと思っていました。本譜の手はビショップを使い直す狙いで、私も候補に挙げていました。しかし、ここはなんということはありません。42. a5! Kxa2 43. a6 b3 44. Ra5++- とすれば、簡単に白勝ちです。黒の武器であったアクティブなキングはパスポーンの邪魔になる位置に追いやられ、白のルークは逆にパスポーンをサポートするベストの位置でプロモーションが確定します。

42... Kxa2 43. Bf2 Rc4 44. h4?!


指されてなるほど、そういうアイディアもあるのかと思っていましたが、不正確です。44. Kd3! Rc3+ 45. Kd2 Rxf3 (45... Rc4 46. a5! b3 47. a6 Ra4 48. a7 b2 49. Rb8 b1=Q 50. a8=Q+-) 46. Bc5 b3 47. a5+- キングが寄れば、まだ分かりやすく白勝ちでした。

44... b3 45. hxg5?



この連続の疑問手と悪手で、ようやく黒は息を吹き返しました。45. Kd3 Rxa4 46. hxg5 fxg5 47. Be1! Rf4 (47... b2 48. Kc2 Rc4+ 49. Bc3! b1=Q+ 50. Rxb1 Rxc3+ 51. Kxc3 Kxb1 52. Kd3+-) 48. Kd2 Ra4 49. Kc3+- ならば、まだ多少難しいかもしれませんが、白はリスクなしで勝つチャンスがあります。本譜では白は完全にルークを見捨て、ビショップ+ポーンで戦おうとします。

45... fxg5 46. Rxe5 b2 47. Rb5 Rxa4!?


このポーンを早めに取っておくほうが考えやすいかと思いましたが、シンプルな手順は違います。47... Rc2+! 48. Ke1 (48. Ke3?? Rc3+ 49. Kd2 Rb3-+ これは黒の大逆転です。) 48... b1=Q+ 49. Rxb1 Kxb1 50. Be3 Kb2 51. Bxg5 Kc3= aポーンを残しておいても、2段目でカットオフしてしまい、白キングをパスポーンのサポートに使わせなければドローはより分かりやすかったでしょう。なるべく低くカットオフすることは頭にありましたが、aポーンがどうしても気になってしまいました。

48. Be3 Ra3!



これは時間を使って読み抜けがないことを確認し、指すことができました。単調な48... b1=Q? 49. Rxb1 Kxb1 50. Bxg5-+ では、黒のキングが遠すぎます。

49. Rxb2+!


49. Bxg5 Rb3 50. Ra5+ Ra3 51. Rb5 Rb3= ならば即ドローですが、Balint は勝ちを求めてこの変化を選びます。ポーンが落ちてもルークvs. ビショップでドローの白は、当然リスクもないのでやるでしょう。

49... Kxb2 50. Bxg5 Kc3 51. Ke3 Kc4+?!



こういったマテリアルのエンドゲームは完全に勉強不足でした。最も簡単なドローは、相手ポーンの正面にキングを急いで回り込ませるのではなく、相手ポーンを後ろからキングで攻撃することでした。51... Kc2+! エンドゲーム特有の上がったキングが直後に下がる。時々出てきますが、難しいです。52. Ke4 Ra4+ 53. Kf5 Kd3 54. f4 Ke3 55. Kg6 Kf3 56. Kh5 Rb4= これでg4 をアタックし続けていれば、白は進展を作ることができずにドローでした。

52. Ke4 Kb5 53. Be3 Kc6 54. f4 Kd7 55. g5 Ke8 56. f5 Ra1?


完全に時間に追われ、負けの手を指してしまいました。ここはまだ黒にドローチャンスがあります。異色ビショップでも、この5段目の2コネクテッドパスポーンは難しいので、ルークならばなおさらです。56... Kf7! 57. g6+ Kf6 58. Bd4+ Kg5!= こうして5段目に上がっても大丈夫だという発想は全くありませんでした。ただ8段目で待っていてもジリ貧なので、こうするしかないと判断できないとダメですね。g5-g6 を保留してきた場合、ルークを6段目に退いてg6 に利かせ、ルークを捨てるつもりでポーン突きに備えれば、これもドローになりそうです。このアイディアは異色ビショップのエンドゲームで見られるものです。

57. g6!+- Rf1 58. Bc5 Re1+ 59. Kd5 Rf1 60. Ke6 Re1+ 61. Kf6 Re2 62. g7 Rg2 63. Be3 Rg4 64. Bg5 1-0



ひどい序盤からよく盛り返したと自分を褒めてやりたい気持ちもありますが、肝心なエンドゲームがこれではまだまだです。Balint には5年前に勝っているものの、今年は先月に続き白黒で連敗。この遠征中、同じ相手に連続で負けたのは今回が初めてで、ゲーム内容とは別に悔しいですね。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533) 1/2-1/2
12/06 14:00 Balint, V (HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1-0
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/10 Rest Day
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+2 Ilincic, Kantor
+-0 Anisimov, Kojima, Akshat, Farago, Gungl, Bilmos
-1 Pacher
-3 Shahaliyev

再びスケジュールに変更があり、アゼルバイジャンのShahaliyev とは月曜ではなく日曜に試合をすることになりました。ノームチャンスは消えていましましたが、レイティングで考えると振り出しに戻っただけですので、残り4試合なるべくポイントを取れるよう頑張ります。

2018/12/06

First Saturday GM December 2018 R4


休み明けの4試合目は、今大会のレイティングトップ、ロシアのIM Anisimov との対戦です。名前は聞いたことのあるプレーヤーで、レイティングが示す通り高い実力があるのですが、この10年ほどはさほどアクティブにプレーしているわけではないようです。今回も本気でノーム狙いということではなく、招待を受けてきたのでしょう。

Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533)
First Saturday GM December 2018 (4)

1. Nf3 Nf6 2. c4 b6 3. g3 Bb7 4. Bg2 g6!?



かつてハンガリーでGM Medvegy に負け、今年の夏もジャパンリーグで中村くんに負けた嫌なラインです。ちょくちょく調べ直してはいるのですが、これだという対策にまだ出会えていません。この日は手堅く指すことにします。

5. b3 Bg7 6. Bb2 O-O 7. O-O c5 8. Nc3 Na6


白黒両ビショップを低く組み、クアトロフィアンケットになりましたが、ここでAnisimov はナイトの位置を変えて対称形を外してきました。後で調べるとこの手が最も指されているようで驚きです。d2-d4 とどこかでしかけたいものの、c5 にナイトのマスを与えてしまうのは癪にも思えます。

9. Rc1!? d5 10. cxd5



この手自体はさほど変ではないのですが、もう1つの変化の評価が上手くできませんでした。10. Nxd5 Nxd5 11. Bxg7 Kxg7 (11... Ne3!? 12. fxe3! Kxg7 13. d4 ならばセンターの厚みで白はOK とのことですが、これが試合中によく分かりませんでした。) 12. cxd5 Qxd5 13. d4 Rfd8 14. dxc5 Nxc5 15. Qc2= これはよくありそうなピースの捌き&ポーンが対称となり、ドローになりそうな手順です。本譜ではもう少し駒を捌かずに様子を見ます。

10... Nxd5 11. d4 Nab4 12. Nxd5?!


b4 にナイトが入ってくる変化は考えていたのですが、それの応手がイマイチでした。当然ナイトをc3 で交換した後、a2 取りがスレットになっているので、白はそれを防がなくてはいけません。しかし、自分からd5 のナイトを取りにいってしまうと、b2 のビショップが浮いたまま残ってしまいます。試合中、どうして12. Qd2! というシンプルな手が見えなかったか不思議です。

12... Bxd5 13. a3 Nc6 14. e3 Rc8 15. Qe2



c6 にナイトを退かれ、d4 へのプレッシャーが思ったよりも面倒であることをようやく認識しました。これをなんとかすべくアイディアをひねり出そうとします。e2 に上がったクイーンは、b2 のビショップを守ることで黒からのポーン交換を催促し、d4 を取られた際にe7 に反撃を作ります。さらには、Qe2-Qa6 からa7 のポーンを狙うアイディアも含んでいます。

15... cxd4 16. Nxd4 Nxd4 17. Bxd4 Rxc1


将来的にb7 ないしはa6 にクイーンが入った際、c8 のルークはターゲットになります。それを嫌ってAnisimov は先にルークを交換しましたが、それならばそれで、白はcファイルのコントロールでポーンの代償が取りやすくなります。

18. Rxc1 Bxg2 19. Kxg2 Qd5+ 20. Kg1?!



ここは難しい判断でしたが、クイーンを挟むほうが簡単だったかもしれません。20. Qf3 Qxb3 21. Rc3! Qe6 22. Bxg7 Kxg7 23. Rc7 として反撃をし、ポーンの代償を図ります。

20... e5 21. Bb2 Qxb3


ここではっきりと白が1ポーンダウンになりましたが、e5 の伸ばしたポーンや、a,b ポーンがターゲットになりうるため、さほど簡単ではないでしょう。ルークのアクティビティーを最大限に発揮して反撃を作ります。

22. Rc7 a5 23. Qd2 Qe6?!



ここでのクイーンの往復から、Anisimov がプランを見失っている様子が窺えます。23... Bf6!? 24. Qd6 Qxb2 25. Qxf6 とビショップを取り合う展開はありそうです。

24. Rd7 Qa2 25. Qc3 b5 26. h4 Qb1+ 27. Kh2 Qf1 28. Qd2 h5 29. Rc7!


f1 に潜り込んだクイーンは少し厄介かと思いましたが、Rc5-Rc1 がクイーントラップのスレットになっており、黒はこの対処のためにルークの動きがさらに遅れます。ようやくなんとかなりそうな気配がしてきました。

29... Qb1 30. Rc5 b4 31. axb4 axb4 32. Qxb4 e4 33. Bc3 Qf1 34. Qb2 Bxc3 1/2-1/2



上手くbポーンを攻撃でき、ポーンを取りかえしたところで相手からドローオファーです。ここまできたらドローは間違いないので、これを受けて試合を終わらせました。ちょっと序盤、消極的に指したために劣勢になってしまったので、この点はきちんと反省してまた次の試合に活かしたいと思います。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533) 1/2-1/2
12/06 14:00 Balint, V (FM, HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 Rest Day
12/10 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+2 Ilincic
+1 Kantor, Pacher, Kojima,
+-0 Anisimov, Akshat, Farago
-1 Gungl, Bilmos
-3 Shahaliyev

10月のFirst Saturday で負けを重ねて2300台に落ちたIlincic でしたが、11月はIM セクションで8.5/9 と大暴れ。その勢いは今月も続いているようで、ここまで2勝を挙げてトップに立っています。私は今日、先月敗れたBalint とのゲームですので、ここを勝ってIlincic を追いかけたいところです。


この日はホテルのロビーで水球の試合が中継されていました。日本ではさほどメジャーなスポーツではないかもしれませんが(チェスに言われたくないかもしれませんね)、ハンガリーでは水球やハンドボールのプロリーグがあり、国内でも人気の競技となっています。

2018/12/04

First Saturday GM December 2018 R3


検討をする私とGM Pacher

スロバキアのGM Pacher Milan は、最近ブダペストのFirst Saturday にも積極的に協力しているGM として、ここ数年名前をよく見かけていました。今回調べるまでは、結構なベテランなのかと思っていましたが、1990年生まれで私よりも若いんですね。このトーナメントが顔を合わせるのも、そして当然ながら試合をするのも初めてです。

Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446)
First Saturday GM December 2018 (3)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 e6 5. e3 Nbd7 6. Qc2 b6



幅広いレパートリーを持つPacher 相手に準備は大変でしたが、Semi-Slav はありえると思って見直していました。しかし、このソリッドなDreev Line は最近チェックしていません。以前研究した形を目指して手を進めます。

7. b3 Bb7 8. Bb2 Be7 9. Bd3 O-O 10. O-O


この形は昔指していた、e3 Slav から派生します。1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 e6 5. b3!? Nbd7 6. Bb2 Be7 7. Bd3 0-0 8. 0-0 b6 9. Nc3 Bb7 10. Qc2 くらいの手順でしょうかね。2007年のKramnik - Van Wely で有名になりましたが、大筋しか覚えていませんでした。

10... Rc8



Krasenkow 曰く、この手は少しパッシブでつまらないとのこと。ハワイでShankland と指した際は10... h6 でした。その後、黒のセットアップとしては、白のルークの位置を見た後で、ルークをcファイルにするかdファイルにするか決めるのが柔軟で良さそうです。

11. Rad1 Qc7 12. Ne5!


b2 に控えているビショップの力を借りてナイトが跳び込みます。このナイトをf2-f4 から支えれば、白はセンターを抑え込んで戦うことができます。

12... h6


かつて南條くんとの試合では、12... dxc4 13. bxc4 Nxe5?! 14. dxe5 Ng4 (14... Qxe5 15. Nd5!) 15. Bxh7+ Kh8 16. Qe2 f5 17. h3+/- と進んで白が良くなりました。h7-h6 はh7 のポーン取りの狙いを外しますが、このタイミングだとキング前の白マスを弱め、白にf2-f4-f5 のチャンスを与えてしまいます。

13. f4 c5 14. cxd5?!



かつてe3 Slav を指していた経験から、この形ではc6-c5 に対して、d5 をすぐに交換するのが良いと思い込んでしまいました。もちろん、ここで早めにポーン交換をする場合も多いのですが、このタイミングでは正確ではありません。このたった1つの疑問手で、白はアドバンテージを放棄してしまいました。代わりに14. Qe2 cxd4 15. exd4 dxc4 16. bxc4 と進め、Queen's Indian から派生するような形にすれば、白にはクラシカルなアドバンテージがありました。

14... cxd4! 15. exd4


検討戦で、15. dxe6 Nxe5 16. fxe5 Qxe5 17. exf7+ Kh8 18. exd4 Qxd4+ 19. Kh1 Qh4 も考えましたが、白がさほど良いようには見えません。

15... Nxe5! 16. fxe5 Nxd5 17. Nxd5 Bxd5 18. Qe2



15手目のナイト交換を全く考えておらず、このように進んでしまいました。2つのナイトを満足な形で捌けた黒には、大きな弱点はありません。これで白マスビショップまで捌けていれば、黒はd4 をただ攻撃すれば良いだけの楽なポジションになります。それを避けたい白は、わずかに残ったキングサイドへの攻撃チャンスに頼り、作戦を立てます。

18... f5


Pacher は遅かれ早かれ、この手は必要になると私に検討で言いました。確かにBd3-Bb1, Qe2-Qd3 からh7 への侵入を狙うようなプランに黒は対策が必要です。キング前を多少崩すリスクを背負っても、f7 のマスを空け、d4 への反撃を作るのは合理的です。

19. exf6 Rxf6 20. Rxf6 Bxf6 21. Rf1



Qc7-Qf4 を防ぎつつ、f6 でエクスチェンジを捨ててgファイルを開く可能性を作るアイディアです。黒はこれを止めるために本譜のように指すと、ピース交換が進んで結末が見えてきます。

21... Rf8 22. Qg4 Bg5! 23. Rxf8+


23. Bh7+? Kxh7 24. Rxf8 Qc2! と欲張ってエクスチェンジを取ると、強力なカウンターを食らいます。b2 のビショップがパッシブである以上、アクティブな白マスビショップを消すのはリスクが高すぎます。

23... Kxf8 24. Ba3+ Kg8 25. Qh5!



これでe8 のマスを見据えつつ、b1-h7 の白マスダイアゴナルに、ビショップとクイーンを重ねる作戦が実現します。しかし、他のピースを捌きすぎているために、白のアタックは勝ちに結びつきません。

25... Be3+ 26. Kh1 Qc6!


クイーンを8段目に退いてくれるようであれば、d4 を捨ててもじっくり攻める作戦が取れましたが、g2 でのメイトスレットを作られては白に選択肢はありません。

27. Qg6 Bxd4 28. Qh7+ Kf7 29. Qg6+ Kg8 30. Qh7+ 1/2-1/2



こうなっては、パペチュアルチェックでドローにするしかありません。1つの緩手でアドバンテージを放棄してしまう恐ろしさを肝に銘じつつ、また次の試合に備えようと思います。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446) 1/2-1/2
12/04 Rest Day
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533)
12/06 14:00 Balint, V (FM, HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 Rest Day
12/10 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+1 Kojima, Ilincic
+-0 Anisimov, Kantor, Pacher, Akshat, Farago, Bilmos
-1 Shahaliyev, Gungl

昨日はKantor - Anisimov、Akshat - Farago がドロー。Gungl - Balint が白勝ち、Shahaliyev - Ilincic が黒勝ちという結果でした。あまり人のことを気にしている余裕はないのですが、10月のFirst Saturday を無敗で乗り切ったShahaliyev は、大きな駒得からの逆転負けで、今大会すでに2敗目です。誰がどう崩されるか分かりませんので、油断せずにトーナメント中盤、終盤に向かっていこうと思います。


本来であれば今日予定されていたBalint との試合は、彼の都合により休憩日の木曜日へと延期されることになりました。Pacher との試合も早く終わったので、ホテルを出てブダペスト中心地へと向かいます。ブダペストでは11月末からクリスマスマーケットが始まっていましたが、今回の滞在で訪れるのは昨日が初めてです。ヴァーチ通りの中心、デアーク広場は大変な賑わいでした。

2018/12/03

First Saturday GM December 2018 R2


Hotel Berlin に移り、試合会場までの移動時間が無くなったのは良いのですが、代わりに問題となるのが食事場所です。ホテルの周辺は本当に食べるところが無く、初日の夜は困り果てました。ようやく2日目の昼から探索範囲を広げ、バスで1つ先のショッピングモールに、Burger King、Subway、中華料理、ケバブ屋などを発見しました。日曜日も含めて7日間、深夜まで営業しているのも助かります。

2日目の相手はモンテネグロでも試合をした、インドのAkshat です。先月は白で勝つことができ、その際は要所での判断が甘いと感じましたが、結局トーナメントを通してしっかりと勝ち越していました。黒で当たるこの大会では、ポイントを取るのは一苦労です。

Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
First Saturday GM December 2018 (2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. cxd5 cxd5 4. Bf4 Nf6 5. e3 Nc6 6. Bd3



先月のAczel戦に続き、再びSlav Exchange のナイトを遅らせる変化です。ばっちり調べられていると思ったので、少し手を変えようと思いましたが、相手から先に外してきました。

6... Bg4 7. Qb3 Na5


Bf1-Bd3 ではなく、Nb1-Nc3 ならばこのナイト跳びが一般的ですが、ここは7... Qd7 8. Nd2 e6 9. Ngf3 と進む変化がメインのようです。e3 のポーンがc3 にあれば、完全にCaro-Kann Exchange で出てくるピースの配置です。

8. Qa4+ Bd7 9. Qd1!?



3手かけてクイーンがd1 に戻ったのは驚きでしたが、e2 にいくのであれば、d1-e2 もc2-e2 も手数は変わりません。9. Qc2 e6 10. Rc8 であれば用意していた変化に手順前後しますが、d1 にクイーンを退くことで様々なタイミングのNf6-Nh5 もストップしているのが、彼のアイディアだと思います。

9... e6 10. Nf3 Be7


本来であれば、Bf8-Bb4 からc3 のナイトを崩したいところですが、白がクイーンサイドのナイトを展開を遅らせているために、このアイディアは使えません。ビショップはe7 で我慢します。

11. O-O O-O 12. Ne5 Be8



このバッドビショップをわざわざキープするために、1手かけてe8 に退き、ルークの連携を断つ手が果たして良いのかどうか、好みが分かれるところだと思います。もちろん黒は、ナイトビショップ交換を受け入れてもさほど悪くないですが、Be8-Bb5 から白マスビショップ同士の交換がベストな安全策、さらにはfポーン突きからe8-h5 のダイアゴナルで使うアイディアもありえます。Bd7-Be8 が良いかどうかは、こうした組み直しができるかどうか、つまりはこの後の展開次第といったところでしょう。

13. Nd2


指されてみてなるほどと思いました。Slav Exchange ではc3 にナイトが出るのが常識ですが、ここまでくればd2 でもおかしくありません。f3 に出てセンターのナイトをサポートするのは分かりやすいですが、もう1つ典型的なNd2-Nb3-Nc5 も有効なアイディアです。

13... Rc8 14. Qe2


試合後にAkshat に、Qd1-Qf3 を恐れていたと伝えましたが、これには14. Qf3 Qb6! 15. Rab1 Bb5!= このビショップ交換がありました。こうして白マスビショップを消せれば白のアタックチャンスは激減し、黒は満足に指せるでしょう。

14... Nd7 15. Rfc1 Nxe5 16. Rxc8 Qxc8 17. Bxe5 f6!



ここはどちらを指すか迷いました。ナイトを1組交換した後、a5 のナイトをc6 に退き、再びe5 のコントロール争いをするのは自然ですが、f7-f6 を先に突いておいたほうが良いかどうかが難しところです。f7-f6 を突けば、白マスビショップがe8-h5 のダイアゴナルで使えるチャンスが生まれますが、代わりにe6 を弱め、1テンポ使うことになります。私がfポーンを突こうと決断したのは、実は間違った読みに基づくものなのですが、結果的には白マスビショップの利きが開いてオッケーでした。17... Nc6 18. Bxh7+? 私はこのビショップサクリファイスからの強制ドローを気にしていました。 18... Kxh7 19. Qh5+ Kg8 20. Bxg7 Lasker のダブルビショップサクリファイスを最も有名なモデルとするアイディアですが、黒はパペチュアルチェックを避けることができます。20... Kxg7 21. Qg4+ Kh6! (21... Kh8 22. Qh5+ Kg8 23. Qg4+=) 22. Qh3+ Kg6 23. Qg4+ Bg5! 24. f4 Kh7 25. fxg5 Nb4-/+ 本譜でも黒がイコアライズを目指す段階ですが、上記の強制ドローはさすがに面白くないと思い、本譜を選びました。実際には黒はビショップを1つ返してでもパペチュアルチェックを避け、有利だったんですね。

18. Bg3 Nc6 19. Rc1 Bg6!


少し考えて、いつまでもe8 にビショップがいるのではおかしいと結論付け、形を崩してでも白マスビショップの交換を迫ります。

20. Nb3



20. Bxg6 Nxd4!? (20... hxg6 21. Qg4 g5= 私の読みはこちらでしたが、これでも黒は大きな問題はありません。) 21. Bxh7+ Kh8 22. exd4 Qxc1+ 23. Nf1 Kxh7 24. Qxe6 Re8 25. Qf5+ Kg8 26. Qxd5+ Kf8 27. Qxb7 かなり形勢判断の難しいポジションですが、こうしてポーンをいくらか捨てても黒はエクスチェンジを取りにいく変化があり、Akshat が実際に選んだほうが白にとっては安全策です。

20... Bxd3 21. Qxd3 Qd7


ここまでくると、cファイルでヘビーピースがぶつかり合って消え、マイナーピースのみを残すドロー模様のエンドゲームが見えてきます。白のナイトはc5 に跳び込んでビショップと交換しても、十分なアドバンテージがありません。

22. a3


22. Nc5 Bxc5 23. Rxc5 Rc8 24. Qc2 Ne7= これも典型的なピースの捌き方で、ドローになりそうです。

22... Rc8 23. h3 Nd8 24. Rc3 Rxc3 25. Qxc3 Qc6 26. Qa5 a6 27. Bc7 Nf7 28. Qb6 Qxb6 29. Bxb6 Bd8 30. Bxd8 Nxd8 1/2-1/2



本譜ではナイト同士が残り、完全にイコールです。d8 のナイトがe6 とb7 をぴったり守っているため、何も起こりません。31. Nc5 a5! 32. Kf1 Kf7 33. Ke2 Ke7 34. Kd3 Kd6 35. Kc3 b6 くらいに進めると、やはり何もないことがわかりやすいです。実際にはドローオファーができる30手目で私からドローを提案し、ゲームを終わらせました。こうしたcファイルのみが空き、ピースがほとんど消えてドローという形は、いわゆるSlav Exchange の典型的ドローですが、私は黒で勝ちにいくアイディアをたくさん試してきており、Slav Exchange での勝率はかなり高めです。そのため、こうしたドロー型になるのはほとんど初めてで、良い勉強になりました。

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 1/2-1/2
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446)
12/04 14:00 Balint, V (FM, HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533)
12/06 Rest Day
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 Rest Day
12/10 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+1 Kojima, Bilmos
+-0 Anisimov, Kantor, Pacher, Ilincic, Akshat, Farago
-1 Shahaliyev, Gungl

この日はIM セクションがほぼ延期で、GM セクションも私とAkshat 以外に、Anishimov - Shahaliyev のペアリングしか行われていませんでした。他の参加者たちはHungarian Team Championship から3日目の今日、ようやく合流するようです。10月はオリンピアードのために初戦を延期させた私が言うのもなんですが、今大会は延期の試合が多すぎでは? First Saturday では毎回2日間の休憩日が予定されていますが、今大会は休憩日というよりも延期したラウンドの調整日となりそうですね。

2018/12/02

First Saturday GM December 2018 R1


前日の記事でも書いた通り、今朝、アンダンテを出て試合会場のHotel Berlin へと移りました。途中、Urania というバス停の近くのカフェに寄って朝ご飯を済ませます。このカフェは11月中頃に見つけ、11月の最終日になってようやく足を運ぶことができました。電源とwifi完備で、土曜の朝からほぼ満員状態の人気カフェです。(写真は前日の閉店後に撮ったものなので、人が写っていませんが)

さて、再びブダペストのFirst Saturday が始まるわけですが、初戦は他のラウンドと違う点が1つあります。それは前夜にリスト決めをするThird Saturday と違い、First Saturday は試合の当日、しかも試合直前にリスト決めをするため、初戦だけは十分な準備ができないのです。事前に送られた参加者リストを見て、誰にどちらの色で当たっても大丈夫なようにざっとは準備をしていますが、それでもじっくり時間をかけて対戦相手の研究はしたいものです。私はこの日、黒の多いリスト6を引き、10月のモンテネグロ以来の対戦となる、ドイツのGungl と初戦でぶつかることになりました。

Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
First Saturday GM December 2018 (1)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bf4 Qa5+ 12. Bd2 Bb4 13. c3 Be7 14. c4 Qc7 15. O-O-O Ngf6 16. Qc2!?



以前、スロバキアの少年と対戦した際は、16. Kb1 0-0 17. Qc2 b5!? 18. cxb5 c5 というラインを指して勝ちました。基本的にQd3-Qc2 とcファイルに退く手は、黒のb7-b5 を止める目的がありますが、ポーンを一時的に捨てるつもりであれば、黒はポーンを突くことができます。本譜ではKc1-Kb1 を白が保留してきたため、黒はポーンサクリファイスに頼らずに作戦を考えます。

16... O-O 17. Ne2 Ng4!


少し時間を使ってこのアイディアを思い出しました。白は次にポーンを取らせても、g2-g4 からキングサイドで仕掛けることが1つのアイディアですので、黒は先にg4 にナイトを跳んでそれをストップしてしまいます。浮いているようにも見えるこのg4 のナイトは、意外と白から攻撃しづらく、f2 も守らなければいけないため、厄介な存在となります。

18. Rhf1 Rad8 19. Kb1 Rfe8 20. Bf4 Bd6



これまであまり試したことはありませんでしたが、c6-c5 を急がずに、まずは2つのルークを両方センターに回して準備しておきます。場合によって、e6-e5 もありえるでしょう。本譜でも白のやることが難しく、ビショップを交換しにきましたが、ピースが捌け、キングサイドのダイレクトアタックのチャンスが減るのは、黒にとっていつでもありがたいです。

21. g3 c5 22. Bxd6 Qxd6 23. Nc3 Ndf6!


ポーン交換を急がず、e4 のマスにナイトを利かせてルークの前も開けておきます。すでに黒はピースの働きに不満が無く、h5, f2, c4 のポーンの守りに気を遣わなければいけない白のほうが指しづらい状況です。

24. Ne4 Qc6! 25. Nxf6+ Nxf6 26. Ne5 Qc7!



26... Qe4!? と跳びこみ、クイーン交換からわずかに有利なエンドゲームを戦う手も考えましたが、ここは素直に下がってd4 を崩しにいきます。

27. f4 cxd4 28. g4


Gungl が白の唯一のチャンスと検討戦で話したのは、キングサイドでのアタックです。以前、馬場さんとのゲームでもこうした展開になったことがありましたが、ピースがある程度捌けており、d4 が落ちている状況では白はf-hファイルで十分な攻撃を作るのは難しいでしょう。

28... Nd7! 29. Nd3 e5!



ポーン交換になればそれで良し。g4-g5 から仕掛けてきても、センターの2コネクテッドパスポーンの対処に手間がかかるため、キングサイドは問題ないと考えました。

30. g5 hxg5 31. fxg5 e4 32. Nf4 d3 33. Qf2 Nb6 34. g6 f6


これでf,gファイルからの攻撃は消えたので、残りはhファイルからの攻撃を警戒するのみです。

35. Qh4 Nxc4! 36. h6 Qe5! 37. Rf2 d2! 0-1



最後は時間ぎりぎりになりましたが、きっちり読み切って勝負を終えました。前回の彼との対戦では、勝勢の局面からひどい勘違いでドローにしてしまったので、最後まで気を抜かずに指すことを心がけました。そのおかげで先月のモンテネグロに続き、初戦白星で好スタートを切れました!

12/01 14:30 Gungl, T (FM, GER, 2358) - Kojima, S (IM, JPN, 2409) 0-1
12/02 14:00 Akshat, K (IM, IND, 2403) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/03 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Pacher, M (GM, SVK, 2446)
12/04 14:00 Balint, V (FM, HUN, 2333) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/05 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Anisimov, P (IM, RUS, 2533)
12/06 Rest Day
12/07 14:00 Ilincic, Z (GM, SRB, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/08 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Farago, I (GM, HUN, 2360)
12/09 Rest Day
12/10 14:00 Shahaliyev, I (AZE, 2396) - Kojima, S (IM, JPN, 2409)
12/11 14:00 Kojima, S (IM, JPN, 2409) - Kontor, G (IM, HUN, 2512)

First Saturday GM December 2018

+1 Kojima, Bilmos
+-0 Anisimov, Kantor, Pacher, Ilincic, Akshat, Farago
-1 Shahaliyev, Gungl


10月にブダペストでIMノームを獲得したShahaliyev は、Balint 相手に白で手痛い逆転負け。他のペアリングは別大会があるためにスタートが遅れ、初日は2つのボードのみ消化しています。今日は連続で黒を持ち、Akshat との対戦です。今大会はこれまでに当たったメンバーが多いですが、色がかなり変わっているのが良いですね。2日目も頑張ります。

2018/12/01

First Saturday GM December 2018


もう今年も最後の月、12月になりましたね。今月は第一土曜日がこの12/1ですので、ブダペストのFirst Saturday は、今日からスタートします。10月、11月とブダペストでは負け越しが続いていますので、今月こそはノームに迫る良い戦績を残したいところです。オーガナイザーからは、3日前に以下のようなリストが届いています。

Anisimov, P (IM, RUS, 2533)
Kontor, G (IM, HUN, 2512)
Pacher, M (GM, SVK, 2446)
Kojima, S (IM, JPN, 2409)
Ilincic, Z (GM, SRB, 2405)
Akshat, K (IM, IND, 2403)
Shahaliyev, I (AZE, 2396)
Farago, I (GM, HUN, 2360)
Gungl, T (FM, GER, 2358)
Balint, V (HUN, 2333)


私は11月の結果を考えれば仕方ないのですが、2409までレイティングが落ちてしまいました。また今月のトーナメントで、挽回したいところです。今月はGM のレベルがさほど高くない代わりに、なぜまだGM タイトルを取っていないのか疑問なIM が2人います。特にAnishmov がまだIM だったとは驚きです。先月のように2200台がおらず、平均も高くなっていますので、このメンバーの中でどういったプレーができ、結果が残せるか楽しみです。

そして今回初めて、滞在するホテルをアンダンテから会場のHotel Berlin に移しました。宿泊費はかさみますが、往復にかけていた時間を休息と試合の準備に費やそうと思います。それでは12月の試合も、頑張ってきます!

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