2011/06/16

全日本選手権ベストゲーム

遅くなりましたが、チェス通信も発行されたことなので、全日本の10Rを解説付きで公開します。文字制限がないため、解説はチェス通信のものよりも細かくなっています。

Amgalanbaatar,R(FIDE2142)-Kojima,S(FIDE2329)
Japan Chess Championship 2011 (10)

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 c5!?

私はAdvanced Variationに対しては、3...Bf5よりもこちらを好みます。メインに比べれば指される割合は低いですが、白が甘く指せば、あっという間に黒がイニシアチブを掴みます。

4.dxc5 Nc6 5.Nf3 Bg4 6.Bb5 Qa5+ 7.Nc3 e6 8.Be3 Nge7 9.a3!
ベストの手です。他の手もいくつかチェックしていますが、黒が満足な展開になるでしょう。

a) 9. Qd2 Bxf3 10. gxf3 O-O-O 11. Bd4 Nxd4 12. Qxd4 Nf5 13. Qa4 Qxa4 14. Bxa4 Bxc5=/+ / Sato,K-Kojima,S / 2010
b) 9. h3 Bxf3 10. Qxf3 a6 11. Ba4 O-O-O 12. Qxf7 d4 13. Qxe6+ Kb8 14. O-O-O dxe3-/+ / Carlsson,P-Fridman,D/ 2010

9...0–0–0 10.b4 Bxf3 11.gxf3 Qc7 12.Bxc6 Nxc6 13.Bf4!?

ここでセオリーを外れます。13.Bd4 a6 14.f4 ならば、14…g5!?と指して白のポーンチェーンを崩そうと考えていました。

13...a6 14.Bg3 g5!

このようなポーンストラクチャーではよく見られる手です。f4のマスを抑えると同時に、g7へビショップを出す準備となります。

15.Qe2 h5 16.h4 Bg7 17.0–0–0

白はgポーンを取れそうに見えますが、17.hxg5 h4 18.Bf4 Bxe5 19.Bxe5 Nxe5 と進めば黒は強力なhファイルのパスポーンと、Ng6-Nf4としてf4のマスを抑えることで、優位に試合を進めることができます。

17...Bxe5 18.b5!?
白はどう捌いてもやや劣勢になるため、ナイトを攻撃に参加させ、局面の複雑化を図ります。
18.Bxe5 Qxe5 19.Qd2=/+

18...Bxg3 19.fxg3 axb5 20.Nxb5 Qxg3 21.Nd6+ Kb8

私はどこかでルークを切ってこのナイトを消すつもりでした。c8のマスをルークに明け渡すためにエクスチェンジサクリファイスを遅らせましたが、そのタイミングはここでも問題ありませんでした。
21...Rxd6!? 22.cxd6 Qxd6 23.Kb2=/+

22.Rd3 Ne5 23.Rb3 Rxd6!?
ナイトをc4に置けるようにした上で、エクスチェンジを切ります。白のポーンはバラバラで、キングのポジションも危ないため、十分な代償があると判断しました。

24.cxd6 Nc4 25.Qh2 gxh4 26.f4?

ここで白に痛いミスです。26.d7! Rg8 27.Kd1! (27.Kb1?! Kc7=/+) 27...b6!? ならば形勢不明でした。

26...Qg7!?

ここで私はクイーンを残して戦う道を選択しましたが、クイーンを交換しても良かったでしょう。
26...Qxh2 27.Rxh2 Nxd6 28.Rxh4 Nf5-/+ とすれば、
2ポーンエクスチェンジという駒割ですが、白のポーンの形が悪いため、黒が優勢です。

27.Kb1 Qd4 28.Ka2 Nxd6 29.Rhb1 Rc8 30.R1b2 Ne4!?
お互い残り時間が少ない中、勝負を決めに行きます。b7を取らせてもナイトが攻撃に参加できれば、チャンスはあると考えました。

31.Rxb7+ Ka8 32.Qh1□

バックランクを守るにはこの一手しかありません。いよいよ緊迫した局面になってきました。

32...Nc3+ 33.Ka1 Qf2!?

32.Qh1を指された直後は、...Rg8-Rg1で簡単に勝ちだと思っていましたが、そうは問屋が卸しません。33...Rg8? 34.Qf1! Rg1?? 35.Rb8+ Ka7 36.R1b7#で白の勝ちとなります。

33...Qf2は白クイーンにf1のマスを使わせないようにする狙いの手です。これで黒は...Rg8-Rg1でも、...h3-h2-Qg1でも勝ちだと思いましたが、まだまだ白も粘ります!

34.R7b6! Rc7 35.Qc1?

この手はダメな手として読んでいましたが、代わりとなる手もないだろうと、試合終了後も考えていました。しかし、帰宅後に解析をしてみると、コンピュータは驚くべき変化を示してきました。

35.R2b3! Ka7 (35...h3? は焦りすぎで、36.Ra6+ Ra7 37.Rxa7+ Kxa7 38.Rxc3 h2 39.Rb1 で白はプロモーションを防ぐことができます。)36.R6b4 h3 37.Qb1!!
(Analysis Diagram)

ナイトが利いているマスにクイーンを置くというクレイジーなアイディアです。黒はRa4#を防いでいなければならないため、このクイーンを取ることができません。さらには38.Rxc3 がメイトスレットになるので、黒はクイーンを退いてディフェンスせざるをえません。

37...Qc5 (37...h2?? 38.Rxc3+-) 38.Qh1 Qf2 39.Qb1= これでドローです。bファイルの支配を利用した、恐るべきディフェンスのアイディアでした。

35...h3 36.Rb8+?

これで白はラストチャンスを失いました。あとは黒にとって楽な展開です。白のベストの変化は以下に示しておきますが、こちらもコンピュータでなければ発見できないような、難解なアイディアが入っています。

36.R2b3! Ka7! (36...h2? 37.Ra6+ Ra7 38.Rc6! Rc7 39.Ra6+ Ra7 40.Rc6 Rc7= 41.Rxc7?? Qg1–+) 37.R6b4! h2 38.Rxc3! Rxc3 39.Qb2!! 黒にクイーンをただで作らせる、またもやクレイジーなアイディアです!
39...h1Q+ 40.Ka2 Qhf1 41.Qxc3 Qb6 42.Rxb6 Kxb6-/+

36...Ka7 37.Rh8 h2 38.Rxh5 Qg1 39.Rb1 Nxb1 40.Qxb1 Rb7
0–1


この試合は馬場さんから「全日本全体を通してのベストゲーム」との評価をいただきました。自分としては満足できなかった点もありますが、その言葉をありがたく受け取り、また次回のトーナメントへの励みにしようと思います。

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