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今年最後のトーナメントも、いよいよ終わりが見えてきました。8R は黒で勝ったGupta 少年との再戦で、ここでさらに勝てば、2つ目のIM ノームがぐっと近づきます。前回同様にNimzo-Indian になると予想し、入念な準備の上で試合の時間を迎えました。
Kojima, S (FM, JPN, 2340) - Gupta, B (USA, 2227)
Caissa GM December (8)
1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. d4 c5 5. g3 cxd4 6. Nxd4 Ne4 7. Qc2!?
前回指した
7. Qd3 ではなく、昨年、Poland のWojtaszek が成功したことで、一気に注目度の上がったラインを、この大一番で使用します!
7... Qa5 8. Bg2 Nxc3 9. O-O O-O!?N
白は一時的にピースを捨てますが、このナイトはすぐに取り返すことができます。9... Na4?! 10. a3 Be7 11. Nb5! など。
10. bxc3 Be7!?
私にとって早々に予想外のポジションになりましたが、このビショップを退く手ならば、白は展開で良さでアドバンテージを得られると確信していました。
10... Bxc3!? 11. Nb3 Qe5 12. Bf4 Qf6 13. Rad1 Be5 14. Bxe5 Qxe5 15. c5 ならば、白はポーンの代償ありだと、検討戦で確認しています。
11. Rb1 Nc6 12. Rd1
白はダブルポーンを作った代わりに、b、d 2つのオープンファイルにルークを回し、黒のポーンに圧力をかけることで戦います。これにより、黒はc8 のビショップをどのように展開すれば良いか、頭を悩ませることになります。
12... a6 13. Bf4 e5?
早々に白が駒得になる痛いミス。ここは苦しくとも、
13... h6 などで様子を窺うのがベターだったでしょう。
14. Nf5! exf4 15. Bxc6 dxc6
15... Bf6 16. Bxb7 Rb8 17. Rd5 Qxc3?? 18. Ne7+! Kh8 19. Qxh7+! Kxh7 20. Rh5# といった変化で、早々に勝ちにならないか、少しだけ期待していました。
16. Nxe7+ Kh8 17. Nxc8 Raxc8 18. Rxb7+/-
これで白は何事もなく1ポーンアップですが、cファイルがダブルポーンでパスポーンがないため、そう簡単には試合は終わりません。それでもルークの位置が良いことを考えれば、じっくり指して問題なく勝てるはずでした...
18... fxg3 19. hxg3 Qc5 20. Qd3 h6 21. Qd4 Qa3 22. Rd2 c5 23. Qd3 Kg8 24. Kg2 Qa5 25. Qf3?!
やや不正確な手。
25. Rd7! Rc7 26. Rd8 Rc8 27. Rd5 ならば、白は最も重要なdファイルをがっちり握り、大きなアドバンテージをキープしています。
25... Rc7 26. Rbb2 Qa4 27. Qf4 Qc6+ 28. Rd5 Re8 29. Rbd2?!
再び疑わしい一手。
29. f3! Rce7 30. e4! と早めに
a8-h1 のピンを外し、d5 のアウトポストを強めれば、もっと楽な展開だったはずです。
29... Rce7 30. Qf3 Re6
黒はルークをeファイルに重ね、反撃を試みます。こうなると白がポジションを改善するのはそう簡単ではなく、メジャーピースを交換して勝ちのエンドゲームを模索することになります。
31. Rf5 Qc7 32. Rfd5 Qc6 33. e3 Rf6 34. Rf5!?
仕方がないのでクイーンを交換します。このダブルルークエンディング(もしくはルークエンディング)が必ず勝てるという見込みはありませんでしたが、何ごとも実際にやってみるものです。
34... Qxf3+ 35. Rxf3 Rc6!?
ダブルルークエンディングは全てドロー!という格言がありますが、ここはルークを一組み換えるのもアリです。
35... Re4!? 36. Rxf6 gxf6 37. Rd6 Rxc4 38. Rxf6 Rxc3 と進んだルークエンディングが、黒にドローチャンスがあるのかは、お互いに確信が持てませんでした。(これは多分難しいので、また時間のある時に考えます。)
36. Rd7 f6 37. Rf5!?
コンピュータは
37. Rf4 から、c4 のポーンを守ってやや白良し評価ですが、私はこれで勝てるのかどうか、よく分かりませんでした。それよりも、直前に黒が7段目を弱めたことに着目し、ポーンを返してでもルークを7段目に2つ突入させることで、わずかな勝ちチャンスを作りだそうと考えました。
37... Re4 38. Rfd5 Rxc4 39. Ra7 f5 40. Rxf5 Rxc3 41. Rff7
白は狙い通り、ポーンを返す間に2つのルークを7段目に並べました。あとはここからさらに、ポジションを改善するアイディアを考えます。
41... Rg6 42. Kh3!?
一見すると意味の分からない一手ですが、私は勝負をこのアイディアに託すことにしました。最初に思いついた
42. Rfc7 は安全ですが、ドローにしかならない一手です。
42... Ra3?!
より安全なのは、
42... Rc2! 43. f4 Rf2! 44. f5 Rg5 45. f6 gxf6 46. Rfc7 Rh5+ 47. Kg4 Rg5+ 48. Kh3 Rh5+ とaポーンを取りにいかずに、確実にパペチュアルチェックを狙う変化です。お互いにルークは好位置ですが、勝ちには結びつけられません。
43. Rfe7!
私のアイディアは、aポーンを捨てて、
f2-f4-f5 とポーンを伸ばすことです。それによってg6 のルークをアタックし、g7 を取るチャンスを得られれば、勝てる可能性が出てくると考えました。(重要なのは、g7 を崩せば少なくともパペチュアルチェックにはなるため、白は負けないであろうということです。)そして、42手目でキングが3段目に上がったのは、このfポーン突きの際に、横からルークで攻撃されないようにするためです。
43... Rxa2 44. f4 Rf2?
もっとレイティングが高いプレーヤーでも、間違えてなんら不思議はない、難解なクリティカルポジションです。私自身も、黒が後ろからfポーンを止め、
f4-f5 を突かせないようにするのが自然な一手だと、試合が終わるまで思いこんでいました。
代わりに
44... Kh7! 45. f5 Rg5 46. f6 Rf2!(このタイミングでルークをfファイルに回すのが正しいディフェンス!狙いは、次に
Rf2-Rf3 からパペチュアルチェックのスレットを作ると同時に、
fxg7,g8=Q+,Re8+ に対して、ルークをf8 に退いてメイトを防ぐことです。)
47. Rxg7+ Rxg7 48. Rxg7+ Kh8 49. Rc7 Rxf6 50. Rxc5= こうなれば、間違いなくドローです。Ra2-Rf2 がキームーブでありながら、そのタイミングがポイントでした。それでは本譜はなにがまずいでしょうか。
45. Re8+! Kh7 46. Raa8!+/-
Houdini も一瞬理解していませんが、ルークを7段目から8段目に切り替え、黒キングにメイトの網をかけていぶり出すことが、白が勝ちになる唯一のアイディアです。
46... Rb6 47. e4!
これで次に
f4-f5 が蘇り、次にh8 でのメイト受けなしとなります。黒はこれに対し、何らかのディフェンスを考えなければなりませんが、時すでに遅しです。
47... Kg6
47... h5 48. f5 g6 Kh6 49. Re6+!+- というのは、検討でGupta が示したラインです。Bravo!
48. Re7!
黒キングが6段目に上がってきたところで、再びルークを8段目から7段目に戻し、もう一度g7 を狙います。ここで重要な働きをするのが、e4とf4 に並んだ2つのポーンで、これらが5段目に黒キングが逃げることを許しません。
48... Kf6 49. Raa7 g6 50. Rf7+! Ke6 51. Rg7!
今度はルークを7段目で振りながら、6段目と7段目でのメイト(おまけでb6 にいるルーク)を狙います。いよいよフィニッシュが近づいてきました。
51... Kf6 52. Rae7!
続いて、eファイルとgファイルにルークを置いて、完全に黒キングの逃げ場を断ちます。3R でGroszpeter に作られた以上に、完璧な「牢獄」が出来上がりました。
52... g5 53. Rgf7+ Kg6 54. f5+ Kh5 55. g4# 1-0
最後は珍しい、ポーンでのチェックメイト!白キングもこっそり手助けをしています。黒のミスにも助けられましたが、これで貴重な3勝目を挙げ、2つ目のIM ノームが目前に迫りました。最後の2試合で、Ilincic とCsonka 相手に連続ドローで、IM ノーム獲得となります。最後まで気を緩めずに、試合を続けたいと思います!
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試合後は連勝祝いにピザを食べに来ました!久々の贅沢です。