2012/12/28

China vs. India

私たちが所属しているアジアで、どの国が一番強いかという話はしばしば持ち上がります。So Wesley、Li Quang Liem のような若いNo.1 が伸びてきたフィリピン、ベトナムなどは、現在アジアでもトップクラスの実力を持ちます。しかし、私の経験や大会での実績を考慮すれば、まだアジアは中国、インドの二強対決の構図が、なかなか崩れていないと言えるでしょう。

中国はのチェスプレーヤーの数は、人口から考えればさほど多くないものの、才能のある若い芽を早期に発掘し、英才教育を施すことで、プレーヤーを育て上げています。おそらくそうした活動は、この10年~20年の間に積極的に進められたのでしょう。その結果中国は、2700台を複数抱える、アジアでもトップの実力を持つ国にのし上がりました。女子の層が厚いのでも有名で、現在の女子世界チャンピオンであるHou Yifan を始め、何人かの女子チャンピオンを輩出しています。

一方でインドには、チェスの起源となった国としてのプライドがあります。(厳密には、古代インドのチャトランガが、チェスの起源であるという説があります。)現世界チャンピオンのViswanathan Anand がトップに立ち、2400台のIM、GM 層が非常に厚いのが特徴となっています。しかし、そこから2500台、2600台へと順調に実力を伸ばし、インド代表勢を脅かすような才能が、近年そこまで多くないのが、多少の悩みかもしれません。(強いて挙げればNegi ぐらい?)

私が初めて中国とインドのことを意識したのは、2006年に参加したドーハアジア大会の時です。チーム戦では、Sasikiran、Harikrishna 率いるインドが優勝し、中国は準優勝でした。(個人戦ではやる気のなかったSasikiran が、チーム戦で奮闘した結果です。)以来、私が見てきたアジアの大会では、中国とインドが表彰台から落ちることはほとんどなく、どちらが一位を取るかという争いが焦点になっています。他の2600~2700のスターを抱える国でも、チーム戦となるとプレーヤー層の厚さで、中国、インドに割って入るのは困難なのです。今年のオリンピアードでのフィリピンの奮闘は、相当珍しいことだと言えるでしょう。


Liu Guanchu とHou Qiang、Chessbase News より

舞台をアジアからヨーロッパに移しても、この二国の存在は無視できるものではありません。私が現在プレーしているいるハンガリーのトーナメントにも、ほぼ毎月、中国とインドのプレーヤーが顔を出しており、レイティングを稼いでいます。上の写真のLiu Guanchu は2つ、Hou Qiang は3つのIM ノームを獲得して、ハンガリーを去っていきました。

そして中国の嫌なところは(中国の皆さん、ごめんなさい)、実力はあるのに、さほど高いレイティングがついていないプレーヤーを、何人も海外に送り出して荒稼ぎをさせていることです。7月にIM ノームを2つ獲得したXu Yi は、レイティングが2100後半でしたが、本当に2100台のプレーヤーは、どう頑張ってもノームを獲得することなどできません。彼らのノーム獲得の陰には、レイティングを食われて涙を流すハンガリーのプレーヤー達の姿があるのです(笑)

インドのプレーヤーは、私の目の前ではノームまで到達していませんが、レイティングはそこそこ稼いでいます。なにしろ彼らはとくかく若い!私がハンガリーで対戦してきたインド人たちは、11歳~13歳です。彼らは今後の努力次第では、私をやすやすと越えてIM、GM に到達する可能性もあるでしょう。若いからといって、対戦する際に油断は一切できないのです。

今後、アジアのチェス情勢がどうなっていくかは、私には分かりません。Anand がチーム戦に加わることでインドが中国を圧倒するかもしれませんし、中国が他の代表をごぼう抜きにするような、とんでもない才能を発掘するかもしれません。はたまた、フィリピンがオリンピアードでの躍進を、決してまぐれではないとアピールするような大活躍をするかもしれません。日本のチェスファンの皆さんにも、世界のトップが集まるような大会ばかりではなく、時々で良いので、自分たちが所属するアジアのチェス状況もチェックしていただきたいと思います。

また、そんなアジアの中で私にできることは、なるべく早くIM を取得し、日本が彼らに置いていかれないよう、一歩ずつでも日本を前に進めることでしょう。結局はここに話が戻ってくるのですが(笑)、こちらでプレーしていて改めて思ったことを、簡単にですが記事にさせてもらいました。

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