2013/03/04

Cappelle la Grande 2013 9th round - Final Results -


優勝はロシアのGM Sjugirov!

今年もようやく、カペル大会が終了しました。最終戦の結果は私と小林くんが勝ち、石塚さんと橋本さんが負け、三村くんがドローでのフィニッシュです。招待選手4人は全員がレイティングプラスとなり、レイティングを持たない橋本さんも、悪くないパフォーマンスを残しました。去年に比べれば多少落ちはしましたが、私が前回参加した2年間よりも、全体的に好成績だったと言えるでしょう。それでは、最後の棋譜とレポートです。

Kojima,S (FM, JPN, 2368) - Faure, S (FRA, 2069)
Cappelle la Grande 2013 (9)

1. Nf3 Nf6 2. c4 d6 3. d4 g6 4. g3 Bg7 5. Bg2 O-O 6. O-O Na6 7. Nc3 c5 8. h3 Bf5 9. Nh4 cxd4?!



この駒交換は人間的な視点からは、やはり不自然に見えます。

10. Nxf5 gxf5 11. Nb5 Ne4 12. Nxd4 e6 13. Be3 Rc8 14. Rc1 Nac5 15. b4 Nd7 16. Nb5!


これで白はダブルビショップに引き続き、マテリアルアドバンテージを得て、明らかに優位に試合を進めることになります。

16... d5 17. cxd5 Rxc1 18. Bxc1 Nxg3 19. fxg3 Qb6+ 20. Kh2 Qxb5 21. dxe6!



シンプルですが、強い一手。黒はこのポーンを取り返そうとすると、a2-a4! からd7 のナイトが落ちてしまいます。

21... Nf6 22. exf7+ Kxf7 23. Qb3+ Kg6 24. Qc2?! Re8 25. Rf2?


しかし、ここでの連続悪手によって黒のカウンタープレーを許し、まさかの長い長いエンドゲームに突入します。

25... Ne4! 26. Bxe4 Rxe4 27. Qd2 h6 28. a3 Rd4



こうなると、黒はアクティブなピースで1ポーン分の代償を多少伴い、プレーすることが可能です。それでも、じっくり待っていれば再びチャンスは訪れることを信じ、ミスをしないようにここから丁寧に指し続けます。

29. Qc2 Qd5 30. Be3 Rc4 31. Qb3 Be5 32. Bf4 b5 33. Qd3 Rd4 34. Qe3 Re4 35. Qf3 Rd4


ここで相手からクイーンの交換+ドローのオファー。1ポーンアップしている白が受けるはずもなく、長くなることを覚悟のうえでルークエンディングで勝負です!

36. Bxe5 Qxe5 37. Qa8 Re4 38. Qg8+ Qg7 39. Qxg7+ Kxg7 40. Kg2 Kg6 41. Kf1+/=



白は1ポーンを保ったまま、キングの位置を改善します。この時点では、2100を切るプレーヤーであればエンドゲームのテクニックも大したことがないと思っていましたが、なかなかここからの彼の指し回しはあっぱれです。

41... h5 42. Rf4 Re3 43. Rf3 Re4 44. h4 a5!


なるほど、と感心した一手。クイーンサイドのポーンを多少捌いておいたほうが、ディフェンス側の黒としては、負担が少なく済みます。

45. bxa5 Ra4 46. Kf2 Rxa5 47. Rc3 Ra4 48. Rb3!?



ここはクイーンサイドのポーンを捌かないほうが勝ちのチャンスがあると思い、b5-b4 を防いでおくことにしましたが、これに対しては黒はキングサイドのポーンを解消し、ドローのチャンスを拡大します。

48... f4! 49. Rxb5 fxg3+ 50. Kxg3 Rg4+ 51. Kf3


51. Kh3 Re4 52. Rg5+ Kh6 53. Ra5 Rxe2 ならば、ドローは堅いでしょう。

51... Rxh4 52. Ra5 Rc4 53. Ra8 h4 54. a4 Kf5 55. a5 Rf4+ 56. Kg2 Re4 57. a6 Rxe2+ 58. Kh3 Re7!



指されてみれば当然の一手ですが、2000台のプレーヤーにしてはエンドゲームの指し回しが正確で、その勉強量に驚かされます。すでにキングはg7 に戻れないため、後ろからではなく、7段目からパスポーンにアタックをかけるのが、黒の正しいディフェンスです。

59. Kxh4 Ke5?!


ここは黒は簡単なドロー手順を逃がしています。59... Kf4! 60. Kh5 Kf5 61. Kh6 Rf7 ならば、白は早々にa7 を突くしかなく、あとは黒キングを白キングに見合わせ続ければ、白には勝つ方法がありません。

60. Kg5 Rg7+ 61. Kh6 Re7 62. Kg6 Ke6 63. Kg5 Ke5 64. Kg4 Ke4 65. Kg3 Ke3 66. Kg2 Ke2 67. a7


このa6-a7 はいつでも突けるので、ここまでキープしたうえで実行に移りました。ここからキングをキングサイドに上げれば勝ちだと思いましたが、私の考えていないディフェンスが黒には隠されていました。

67... Ke3 68. Kg3 Ke4 69. Kf2 Rf7+ 70. Ke2 Re7?



これがドローを逃がすブランダー。確かに黒のルークは7段目をキープしつつ、白の8段目のチェックを防ぐ(キングとルークが同じファイルにいる)しかありませんが、ルークのベスト位置はeファイルではなく、fファイルでした。70... Kf5!(黒キングがfファイルに戻る手が正解で、これならば黒は将来的にパスポーンのサポートに上がった白キングに対して、パペチュアルチェックをかけることができます。) 71. Kd3 Rd7+ 72. Kc4 Rc7+ 73. Kb5 Rf7 74. Kb6 Rf6+ 75. Kc5 Rf7 76. Kb5 Kf4! 77. Kc6 Kf5 78. Kd6 Kf6!(次にKd6-Ke7Kd6-Ke6 も防いでおかなければいけないので、これが唯一のディフェンスのアイディアです。) 79. Kd5 Kf5= ルークがパスポーンの後ろに回れない場合、ルークの横利きでパペチュアルチェックをかけてドローにするのは、Vancura Position の応用アイディアです。試合後にはこれを、Dvoretsky のEndgame Manual で確認しています。このルークエンディングは勉強していない方には難しいので、どこかのレクチャーでまた詳しく解説をしようと思います。

71. Kd2!+- Rd7+ 72. Kc3 Kd5 73. Kb4 Kd6 74. Kb5 1-0


黒はルークとキングがfファイルからキングサイドに寄ってしまったため、6段目を利用したパペチュアルチェックをかけることができず、白のKb6 到達と、ルークのa8 脱出からプロモーションを許してしまいます。そのため、黒にはドローチャンスはなく、ここでリザイン。ミドルゲームでひどいミスが出ましたが、結果としてこのルークエンディングを実際に指して学べたことは、大きな収穫でした。

Kojima, S (FM, 2368) 5.5/9 RP 2366 102位
Kobayashi, A (1997) 5/9 Rp 2103 197位
Mimura, K (1770) 4/9 RP 1936 342位
Ishizuka, M (1790) 4/9 Rp 1823 359位
Hashimoto, A (UR) 4/9 Rp 1692 382位


最終戦績により、小林くんと橋本さんがカテゴリープライズの賞金をゲット。次回参加する際は、さらに上のクラスに組みこまれますが、それでも入賞できるよう、頑張ってほしいですね!来年は30周年記念大会ということで、日本からの招待枠は6つに拡大すると、オーガナイザーから報告を受けています。私も次は2499-2400のセクションで参加できるようレイティングと実力を上げ、再びこのフランスの地に戻ってくるつもりです!


とある朝の一コマ。


夜のダンケルク。


三村くんは、優勝したSjugirov 親子と、卓球大会にて交流を深めたそうです。


ポルトガルの女子マスターと石塚さん。今回彼女は、日本の女子プレーヤーとして2回、日報に取り上げられました。


小林くんと対戦したGajek Radslaw は、GM に3勝1敗の好成績で、初のIM ノームを獲得です!


閉会式後のパーティーでは、ポーランドのMaria、Anna と記念撮影。秋以降、妙にポーランドジュニアと縁があります。

石塚さん、三村くん、多くの写真提供をありがとうございます。それでは皆さん、次は日本でお会いしましょう。私も明日の昼には、半年ぶりに日本の地に降り立ちます。

4 件のコメント:

Yumi さんのコメント...

本当に本当にお疲れ様でした‼ いろいろな思いを持ちつつ帰国となると思います。帰ってきたら数日はゆっくりしてください。
東京は木曜日から一気に暖かくなるようです(^-^)/
楽しい報告、ありがとうございました!

Yamagishi さんのコメント...

 最後の局面図が私にはとても興味深いです。私の持っているKeres著「Practical Chess Endings」の110ページに似た局面がありました。A.Chéron1923年作で、白ルークa8、白ポーンa7、黒ルークe7は同じで、黒キングがe6、白キングがe4 です。白先ならば1.Kd4で簡単な勝ち、黒先ならば1...Kf6+ 2.Kd4 Rf7! で引き分けと解説されています。

 昔買ったConvekta社のチェストレーニングソフトの「Chess Endgame Training」にもこのような局面がいくつかあります。受け側のキングとルークが縦に並んでいてキングがエレベータみたいに上下に移動して(手待ちして)引き分けに持ち込んだりしていますが、日にちをおいて何回やっても、いつもどこかで間違えてしまいます。

 何か役に立つ原則的な考え方があったら教えてください。

Shinya_Kojima さんのコメント...

> Yumiさん

Yumiさんには今遠征中、たくさんの応援メッセージをいただき、本当にありがとうございました。私も昨日帰国し、また明日辺りから再始動しようと思います。

息子さんが百傑に参加されるのであれば、来週末に蒲田でお会いしましょう!

Shinya_Kojima さんのコメント...

>Yamagishiさん

久々のコメントありがとうございます。私もVancura Position は基礎だけを勉強しており、このような縦の利きで止めつつ、最終的に横の利きに切り替えるディフェンスは初めて見ました。

そしてトレーニングの方法ですが、やはり実戦の中で考えることが、エンドゲームを学ぶがベストの方法だと思います。そしてそれを試合後に、きちんと復習することです。

もちろん本で理論を学ぶことは大切ですが、それがきちんと理解できているかを試す場は、実戦に他なりません。しかし、日本では公式の試合が少なく、さらには持ち時間がどこでも短いため、きちんとしたエンドゲームになりづらいのが問題です。このことが本で勉強する機会が少ないこと以上に、日本人がエンドゲームを苦手とする要因なのではないかと思います。

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