ソチでの冬季オリンピックは無事に閉幕を迎えましたが、私たちのオリンピックはまだまだこれからです。先日、ようやく確認が取れて、8月のノルウェー、トロムソオリンピアードの日本代表メンバーが、男子女子ともに確定しました。本日公開された最新の国内レイティング、S93順にメンバーを発表します。
男子代表
南條遼介 2417 (FIDE 2307)
小島慎也 2416 (FIDE 2361)
渡辺暁 2321 (FIDE 2258)
Alexander Averbukh 2286 (FIDE 2179)
三ツ矢直人 2081 (FIDE 2040)
女子代表
橋本あづみ 1601 (FIDE 1718)
星野華怜 1537 (FIDE 1709)
長谷川愛美 1518 (FIDE 1729)
雨宮杏奈 1411 (FIDE UR)
若林ヒサ子 1121 (FIDE 1501)
オリンピアードでのボード順は未定ですが、例年そんなに揉めることもありません。このメンバーであと5か月と少し、準備を整えて試合に臨んでこようと思います。皆さんには今後、あらためて応援をよろしくお願い致します。
そして昨日23日は、都内で行われたトレーニングに参加してきました。集まったのはオリンピアードメンバー4人を含む12人で、少し厳しいスケジュールでしたが、私の提案により25/10 のラピッドを3試合行いました。ペアリングは完全ランダムで決めたため、私は原下さん、上原くん、杉田くんの3人と当たって3連勝。2000台同士の対戦はなかったため、尚広くんと三ツ矢さんも3連勝でした。2000未満だけと試合をさせることに若干の不安もありましたが、彼らも少し課題が見えるような内容のチェスだったため、ペアリングを完全ランダムにしたことは、そんなに問題ではなかったと思っています。私も最近なにかと指す機会の多い、Classical Slav Sokolov's Variation を白黒で2試合指すことができましたし、ポーランドに遠征する杉田くんと初対戦できましたので、満足なペアリングとゲームでした。
Uehara, S (JPN, 1967) - Kojima, S (FM, JPN, 2416)
Training (2)
1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Ne5 Nbd7 7. Nxc4 Nb6 8. Ne5 a5 9. f3!?
Training (2)
久々の対戦となる上原くんが選んだのは、今月のトレーニングで羽生さんもチョイスした9. f3 です。私は直前のラウンドで、原下さんを相手に白で同じポジションを持ち、9. Bg5 を指して勝利を収めています。これでSokolov's Variatin (黒が7... Nb6 と指す変化) での代表的な4種類のライン、9. e3, 9. f3, 9. g3, 9. Bg5 は全て実戦で経験したことになります。
9... Nfd7 10. Nd3?! Bxd3 11. Qxd3 e5 12. dxe5 Bb4!
1月に弘平くんとブリッツを指していて、12... Nxe5 13. Qe4 Qe7 と進み、これは少し違和感があるなと感じていました。それならばe5 のポーンを取り返すのを遅らせて、ビショップの展開を優先するのが面白いだろうと、盤上でひらめきます。f3-f4 のような手で白がポーンを守ろうとすれば、黒の展開のリードが広がりますし、Nd7-Nc5 からb3 のマスへの侵入を見せることで、1ポーン分の代償は十分にあるだろうと判断しました。
13. e4 Nxe5 14. Qc2 Qd4!
私が最も時間を使ったのがこの手です。白はBc1-Be3 と黒マスビショップを展開できれば、fポーンを突いたことで弱めた黒マスをカバーできるでしょう。そこでクイーンを素早くセンターに上げて白の手を妨害し、次にクイーンサイドキャスリングをしてdファイルの支配を試みます。Qd8-Qh4+ の狙いもどこかで有効に働くかと思い、Qd8-Qd4 を指した直後は確信が持てませんでしたが、この先の展開を考えれば、本譜の手が白にとって最も嫌な手だったと言えそうです。
15. Bf4 O-O-O 16. Rc1 Ng6!?
私の読み落としていた16... Nd5! で黒勝勢とコンピュータは指摘しますが、本譜でも問題ないでしょう。
17. Bg3 Qe3+ 18. Be2 Nf4!-+
私の最近のチェスのテーマは「小さなアドバンテージでも勝ちのチャンスは作れる」ということです。最初はこのナイトを取られたら展開のリードが縮まり、少し黒にとって面白くないかと思いましたが、dファイルの支配と黒マスの弱さは、黒に満足なアドバンテージをもたらすでしょう。
19. Bf2?
19. Bxf4 Qxf4 20. Rb1 Qe3-+ でも黒勝勢ですが、本譜は頓死コースです。
19... Nd3+ 0-1
Classical Slav に関して言えば、昨年6. e3 に疑問を持って(もちろん悪いはずのない、もう1つのメインラインです。)、6. Ne5 に切り替えてから5勝3ドロー(ドローはIM Hajnal が2戦と、羽生さんとのトレーニング)、黒でも4連勝中で良い流れがきています。11月にイタリアでGM Rausis に5... e6 の変化で敗れ、失われつつあったSlav への信頼は、すでに十分すぎるほどに取り戻しています。
この日のトレーニング、良い感触を掴めたプレーヤーも、課題の多かったプレーヤーいたかと思います。年度末最大の公式戦である百傑戦まであと1ヶ月を切りましたので、各自そこまでうまく調整をして、満足のいくチェスが指せるようになることを願っています。
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