2014/02/03

Magnus's Domination in Zurich


Resign したCaruana と握手をするCarlsen, Chess News より

6人ラウンドロビンのZurich は今夜、クラシカルの最終戦を迎えますが、世界チャンピオンであるCarlsen の独走が止まりません。世界トップクラスの4人を相手に、ここまで3勝1ドロー。Live Rating は、2882 というもはや訳のわからない数字になっています(笑) 初戦のGelfand 戦も驚きでしたが、昨夜のCaruana とのゲームも、これを勝つならもう何でも勝てるんじゃないかと思える内容でした。

Carlsen, M (GM, NOR, 2872) - Caruana, F (GM, ITA, 2782)
Zurich Chess Challenge 2014 (4)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 Nf6


Ruy Lopez Berlin Variation は、2000年のKramnik 成功以来、多くのトップGM を虜にしてきましたが、それは現在でも変わりません。羽生さんとも以前話をしましたが、ここまで黒がイコアライズに成功しやすいのであれば、今後、トップクラスで1.e4 がさらに指されなくなるのではという恐れまであります。(ちょっと大げさかもしれませんが) しかしこの試合、白を持つのは世界最強のCarlsen! 並の壁では、その破壊力の前にただ崩れ去るのみです。

4. d3 Bc5 5. Bxc6 dxc6 6. h3 Nd7 7. Be3 Bd6 8. Nc3 c5 9. O-O Nf8 10. Nd2 Ng6 11. Nc4 Be6 12. Ne2 Qd7 13. Nxd6+ cxd6 14. f4 exf4 15. Nxf4 Nxf4 16. Rxf4



4. d3 から大人しい展開で進み、黒はダブルポーンを解消したうえで、異色ビショップとヘビーピースのみを残しました。黒は十分にイコアライズに成功しており、正直に言えば、このポジションですでにドローの合意をするGM たちがいても、なんらおかしくないと私は思います。しかし、Anand とのマッチでも見せた通り、どんなポジションからでも不思議と勝ちのチャンスを作るのが、Carlsen のチェスです。

16... b6 17. Qh5 d5 18. d4!


ここはライブを見ていて、なるほどと思ったところです。白はキングサイドにもプレッシャーをかけつつ、クイーンサイドも開くチャンスを作ることで、黒キングの未来に小さな影をもたらします。

18... c4 19. b3 Qc6 20. Raf1 O-O-O 21. bxc4 Qxc4 22. Rxf7!!



Caruana も当然ながら、多少このエクスチェンジサクリファイスは警戒したうえで、ロングキャスリングをしたでしょう。それでもこの手を実行し、正当化するのがCarlsen です! 7段目のルークは黒キングにプレッシャーをかけ、それを捌く段階で、黒は嫌なポスポーンを作られてしまうことになります。

22... Bxf7 23. Rxf7 Rd7 24. Rxd7 Kxd7 25. exd5


マテリアルは2ポーンエクスチェンジですが、黒はパスポーンを止めるためにルークを自由に使うことはできず、若干の指しづらさを抱えることになります。

25... g6 26. Qg4+ Kc7 27. Qe6 Kb7 28. Qe7+ Qc7 29. Qe4 Qd7 30. d6+ Ka6 31. Bf4 Rc8 32. Kh2!



ダイナミックな手に隠れたこうした細かなアイディアこそ、日本のプレーヤーが上達のためにしっかりと学ぶべきポイントだと思います。(もちろん、私も含めてです。) 白は黒キングを危険にさらしてパスポーンもサポートしつつ、キングを早い段階で安全なh2 のマスに逃がします。(8段目に残ったままだと、どこかでチェックを食らう可能性があります)

32... Rc4 33. Bg3 Rc8 34. Qd3+ Kb7 35. c4


cポーンが進んでくると、いよいよ黒は苦しく見えます。あとはc4-c5 を突くタイミングをうかがい、パスポーンを利用しつつ、黒キングを追い詰めます。

35... Qc6 36. Qb3 Ka8 37. a4 Re8 38. a5 Kb7 39. c5!



私はaポーンまで使うのは予想外でしたが、(使う必要があるのか疑問) Carlsen は時間が増える40手目付近でも丁寧に指すことで、確実に勝ちを手繰り寄せていきます。

39... Kc8 40. axb6 axb6 41. d5!


私は昨夜、この手の直前ぐらいで観戦をギブアップして床に就きました(笑) フィニッシュの方法は色々あると思いますが、Carlsen がチョイスしたのは、ポーンを1つ捨ててクイーンの確実な侵入ルートを作り出すプランです。

41... Qxc5 42. Qa4 Re3 43. Qa8+ Kd7 44. Qb7+ Ke8 45. d7+ Kd8 46. Bh4+ Re7 47. Qc8+ 1-0



結局、黒のルークは、白のビショップ+パスポーンの前に成すすべがありませんでした。最近、私の周りではこのマテリアルを考える機会が多くなっていますが、毎回とても難しいと思います。私もきちんと勉強する場を設けないといけませんね。

昨夜は他の2局、Aronian-Nakamura, Gelfand-Anand も決着がつき、(Anand は前半の負けを晴らす、好ゲームでした!) なかなか観戦している側としては、楽しめた夜だったと思います。今夜の最終戦、Carlsen が再びAnand を捌いて独走のまま終えるか、それとも一歩後ろを食らいつくAronian が意地を見せるのか。2人が黒を持ってどのようなプレーをするか、これから私も観戦モードに入ります!

Zurich Chess Challenge 2014 Live

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