2014/06/11

The Highest Level Training in Japan in June 2014


6/9 の昨日、久々に羽生さんとのトレーニングを行ってきました。私は4月にタイでのトーナメント、5月に全日本選手権、そして羽生さんには名人戦があったため、このトレーニングも実に3か月ぶりです。毎回、羽生さんには私がすぐに思い付かないような発想を出してもらい、良い刺激を受けています。さっそく、午前のゲームからご紹介しましょう。

Habu, Y (FM, JPN, 2415) - Kojima, S (FM, JPN, 2377)
Training (1)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Ne5 Nbd7 7. Nxc4 Nb6 8. Ne5 a5 9. g3!?



前回の羽生さんとのトレーニングでは、9. f3!? となりましたが、今回は手を変えてきます。2月の試合後に、最も堅い変化として話し合ったのが、9. g3 です。

9... e6 10. Bg2 Bb4 11. O-O O-O 12. e3 h6 13. Qe2 Nfd7 14. Nxd7 Nxd7 15. Rd1 Qe7 16. e4 Bh7 17. Be3 Rfd8 18. f4!?


このようにポーンのを伸ばすアイディアは、ロシアのGM Konstantin Sakaev のThe Complete Slav に書いてあったことを記憶していますが、羽生さんもその本を読んでいました。(いつ、そんな勉強をする時間があるのかw) 白はe5 のマスを抑えて黒からの反撃を封じ、f2 にビショップを下げるマスを作ります。

18... Rac8 19. Bf2 Kh8 20. Bf3 f5!?



これは私が狙っていたアイディアで、「白マスビショップへの抑え込み」に対抗する作戦です。先週の桑田くんとの試合でも見られた通り、黒はh7 のビショップをいつまで放っていては、苦しい展開になるでしょう。

21. e5


この手はスペースを拡大し、黒の白マスビショップを閉じ込めたままにしますが、代わりにd5 にアウトポストを作ってしまうという弱点があります。21. exf5 Bxf5 (21... exf5!? 22. Qxe7 Bxe7 23. d5 Bg8 これが試合中の私の読みでした。) 22. Re1 Qd6 23. Rad1= こうした場合、互いに弱点を持ちますが、黒としては白マスビショップの利きが復活したの、その点は満足に試合を進められそうです。

21... Nb6 22. h4 Nd5 23. Rdc1 Qd7 24. h5 Bg8 25. Kg2 Bf7 26. Rc2 Bf8 27. Rac1 Nb4 28. Rd2 Nd5



d5 をがっちりと抑えた黒は、多少スペースが狭く、白マスビショップが使いづらくとも、そこまで大きな問題はなさそうに見えます。このまま大人しい展開を続けていけても良かったのですが、私はIvan Sokolov の試合で見た、Ra8-Ra6-Rb6 というマヌーバリングができないか、頭をひねってみます。

29. Rdd1 Ra8 30. Be1 Kg8 31. Bf2 Ra6 32. Nb1 Rb6 33. Qc2 Qe8 34. Rh1 Rb4


結果から言えば、このルークの動きはさほど効果的ではありませんでした。白はピースを組みかえ、侵入してきたルークをターゲットにできるようにします。

35. Nd2 Qd7 36. Nc4 Ra8 37. b3 Qd8 38. Qd3 Nb6 39. Be1?



これは羽生さんが試合後に失敗だったと悔いた手で、私もこれを見て少し安心しました。黒はエクスチェンジを捨てても、十分に戦うことができます。代わりに、39. Nxb6! Qxb6 40. d5 Rxb3 41. Qc2 c5 42. Rb1 Rb4 43. d6!+/-


Analysis Diagram

このように指していれば、白は1ポーンダウンとは言え、黒の2ビショップを完全に抑え込み、強力なパスポーンも相まって、優位に試合を進められそうです。とは言え、時間切迫では、b3 を取らせて問題ないと正確に判断するのは難しいでしょう。

39... Nxc4 40. Bxb4 Nxe5! 41. fxe5 Bxb4



この1ポーンエクスチェンジのポジションは、なんとかなると考えました。黒はルークの代わりに、黒マスを支配するビショップと1ポーンを持っています。それに対して、白のルークは力を満足に発揮するオープンファイルがありません。d4 のポーンへのプレッシャーも、白のピースの動きを制限する重要な要素になります。

42. Rhd1 Qe8 43. Qe2 Rd8 44. Rd3 Rd7 45. Rc4 Qd8 46. Qd1 Qg5 47. Qc1 Qd8


この辺りの繰り返しで、すでに白には満足にポジションを改善するアイディアがないことに気づきました。d4, h5 への反撃と黒マスの支配は、黒にとって十分にエクスチェンジの代償を補うものになっています。

48. Qd1 Qg5 49. Qc1 Qd8 50. Qf4 Be7 51. Qe3 Bg5 52. Qe1 Be7 1/2-1/2



以下、数手続きましたが、最終的には3回手が繰り返され、ドローで合意しました。検討戦では、21. exf5 の変化に時間を割き、エクスチェンジを切った後のポジションは、ほぼスルーです。なかなかタフで面白いゲームを終え、昼休憩に入ります。


お昼ご飯は生パスタ! 羽生さんはピザでした。

昼食を食べながらの話題は、いつも通り、仕事や大会のことでした。その中でも、昨日の記事に書いた通り、今月28日のIVL への参加を承諾してくださったことは、私にとって、とても幸運なことでした。羽生さん、ありがとうございます! 午後のゲームは、解説を簡単にしておきます。

Kojima, S (FM, JPN, 2377) - Habu, Y (FM, JPN, 2415)
Training (2)

1. Nf3 g6 2. e4 Bg7 3. d4 d6 4. Bc4 e6 5. Bb3 Ne7 6. O-O O-O 7. c3 b6 8. Nbd2 c5 9. Re1 Nbc6 10. Nf1 cxd4 11. cxd4 Bb7



羽生さんにしては珍しい、低く構えるオープニングでしたが、ここは後の展開を考えれば、11... Ba6 がベターだったと話し合っています。

12. Ng3 Na5 13. Bc2 Rc8 14. h4!? Qc7 15. Bd3 Nac6?!


15... Nec6! 16. Be3 Nb4 17. Rc1 Qd7 18. Rxc8! c1 のマスを空けるためのこの手は、私はすぐには思いつかず、羽生さんが検討で指摘した手です。18...Rxc8 19. Bb1 Nc4 20. Bc1= これは本譜の形に似ていますが、ナイトが両方クイーンサイドでアクティブな分、本譜よりも良かったでしょう。

16. Be3 Nb4 17. Rc1 Qd7 18. Bb1 Rxc1 19. Bxc1 Rc8 20. a3 Nbc6 21. h5 Na5 22. hxg6 hxg6 23. Ba2 d5 24. e5 Qc7 25. Bb1 Qc4 26. Ng5!?



黒はオーソドックスにクイーンサイドからの侵入を試みますが、白はそれをうまく防ぎながら、黒キングへの攻撃を準備します。黒キングの周辺、f7, h7 は守りが薄く、ナイトとクイーンで狙うとディフェンスは難しそうです。

26... Qb3 27. Qg4! Rxc1


ここはエクスチェンジを捨てても、有効なディフェンスになりません。27... Rc7 28. Qh4!+/- でも、白のアタックは強力です。

28. Rxc1 Qxb2 29. Qf4 Nf5 30. Bxf5! gxf5 31. Rc7 1-0



こうなってしまっては、黒キングの守りは完全に崩壊です。この2試合目の後は、桑田くんとのエンドゲームの検討、そしてお互いが調べてきた、Caro-Kann Advanced の変化のアイディア出しなどをして過ごしていました。今月も非常に実のある内容で、大満足でした! 羽生さん、今月末のIVL でも、よろしくお願い致します。

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