2014/10/27

Game Analysis Move by Move - Kojima - Shiomi Vol.1 -


Photo by Hasegawa

先週土曜日の10th IVL は、私にとって久々の実戦でした。「小島くん、最近試合してないし、自分の棋譜解説がブログにないよね。」と友人から言われ、危機感を覚えていたところです(笑) そこで今日は、先日の羽生さんとの試合に引き続き、IVL から棋譜を紹介します。今までと少し違い、私が試合中にどういったことを考えながら指していたか、何回かに分けてゆっくりと解説を進めていこうと思います。

Kojima, S (FM, JPN, 2356) - Shiomi, R (JPN, 2138)
10th IVL (5)

1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 c5 4. e3!?



黒番で、Queen's Gambit Tarrasch Variation にこだわる塩見さんに、白番で苦しめられている1. d4 プレーヤーは、国内でも少なくないかと思います。私もこれまで、塩見さんだけでなく様々なプレーヤーにTarrasch Variation を指されてきましたが、今回初めて、4. cxd5 exd5 5. g3 のメインラインではなく、黒マスビショップをあえてポーンストラクチャーの内側に閉じ込める、Semi-Tarrasch という変化を指してみることにします。白としては、ビショップを展開できるチャンスを自ら潰してしまうのは少し損にも思えますが、IQP ポジションへの理解がきちんとあれば、十分に指しこなせると信じています。

4... Nf6 5. Nc3 a6!?


お互いにc,d ポーンをぶつけあっている両者は、どちらからポーン交換を仕掛けて、IQP を持つ側と持たせる側を決めるか、まずは腹の探り合いです。黒の5手目は、5... Nc6 6. cxd5 exd5 7. Bb5 といった変化を避けると同時に、dxc4-Bxc4-b5 とテンポ良くクイーンサイドのポーンを伸ばすことを狙っています。この場合はオープニングは、Queen's Gambit Accepted に分類されますが、私はc3 にナイトを早めに出す形は、Accepted では好きではありません。(黒がb5-b4 とポーンを伸ばし、ナイトをアタックすチャンスがあるため。) そこで、白からこのタイミングでポーン交換を仕掛け、IQP を持たせる側に回ることを決めます。

ちなみに私が黒を持っていれば、5... cxd4 6. exd4 Bb4 と指して、Caro-Kann Panov Botvinnik Variation (1. e4 c6 2. d4 d5 3. exd5 cxd5 4. c4 Nf6 5. Nc3 e6 6. Nf3 Bb4) と指すかもしれません。そうなれば、逆に白がIQP を持つ側になります。このようにIQP を持つ側になるか、持たせる側になるかが作戦の分かれ目になるところは、Semi-Tarrasch の面白いところだと考えています。また、IQP を持っても持たせても、自分が満足に指せるという自信があるのは、Sicilian Alapin Variation, Caro-Kann Panov Botvinnik, Nimzo-Indiain などのオープニングを、白黒両方で指してきた経験があるからです。

6. cxd5 exd5


6... Nxd5 7. Bd3 という形で、白にIQP を持たせる作戦もありえそうですが、この場合、早い段階でのa7-a6 という手が働くのか、少し疑問となります。

7. Be2



白は将来的に、cxd4 とポーンを取られても、dxc5 とポーンを取っても、黒にd5 の孤立ポーンを持たせることとなります。これがIQP (Isolated Queen's Pawn) です。IQP は様々なオープニングから発生するものですので、どんなオープニングを指すとしても、持つ側、持たせる側の戦略を理解しておくと良いでしょう。

このポジションでは、白は消極的に見えても、ビショップをd3 ではなく、e2 に配置します。これは黒からのBc8-Bg4 というやっかいなピンに備えつつ、クイーンのdファイルの利きを邪魔しないようにするためです。後ほど説明しますが、IQP を持たせる側の白は、d4 のマスのコントロールが非常に重要になります。

また、c5-c4 とポーンを突き越せば、黒はIQP ポジションを避けることができます。しかし、後手でピースの展開が遅い黒が、さらにポーンを動かすでしょうか? もし、黒が7... c4 とポーンを動かすようであれば、8. 0-0 Nc6 9. Ne5! と白は仕掛けることができ、満足な流れになるでしょう。それが分かれば、白は7手目で慌ててc5 を取り、急いでIQP を確定させる必要はないことも理解できます。7. Be2 を指す前に、ここまで考えて7手目を決定します。

7... Be7 8. dxc5


黒がビショップを動かして、c5 のポーンを取り返すのに1テンポロスすることが決まってから、白はc5 のポーンを取り、IQP ポジションになることを確定させます。

8... Bxc5 9. O-O O-O



このようにIQP が確定し、ゲームが進んでくると、こうした形に見覚えが出てくる人も増えてくるかもしれません。白はc1 のビショップを4手目のポーン突きによって閉じ込めてしまいましたが、その代わりにd5 にターゲットとなる孤立ポーンを残すことに成功しています。一方で黒は、センターに弱点を抱えつつも、2つのビショップの利きがきれいに開いているというメリットで勝負します。

ここから、IQP ポジションで何より大切なのは、d5 のポーンへのプレッシャーと、d4 のアウトポストのコントロールにあります。それは次回の解説に回すとして、まずはIQP ポジションが確定するまでの導入部分を紹介しました。

Vol.2 に続く

4 件のコメント:

たっゃ さんのコメント...

とてもわかりわすくていい記事ですね!

ピカチュウ さんのコメント...

block, attack, destroy とか言うとバレーボールみたいです・・▼o・~・o▼ 汗

Shinya_Kojima さんのコメント...

ありがとう! 続きも早めにアップするよ。
そちらもブロク更新しない三銃士を卒業してくれ(笑)

Shinya_Kojima さんのコメント...

テストロイは書いてないですよ ( ̄▽ ̄)

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