2015/12/25

Habu Ready to Play in Switzerland


19th IVL より Photo by Hasegawa

今年も年末年始、海外大会に臨む羽生さんは、今日、日本を発ちました。昨年はスウェーデンのRilton Cup に参加し、大きくレイティングを落としてしまった羽生さんは、今年は目的地を変更です。今回、羽生さんが参加するのは、スイスのチューリッヒで開催されるZurich Christmas と、バーゼルで開催されるBasel Chess Festival の2つで、それぞれ7試合ずつ、計14試合を戦うことになります。

12/26 Zurich Christmas R1
12/27 Zurich Christmas R2, R3
12/28 Zurich Christmas R4, Blitz Tournament
12/29 Zurich Christmas R5, R6
12/30 Zurich Christmas R7

後半のバーゼルのトーナメントは、1/1-5 の5日間というスケジュールですが、何日に何試合プレーするのかは、確認がまだできていません。おそらく、チューリッヒ、バーゼル共にライブ中継はされると思いますので、羽生さんが上位ボードから落ちずに、常にゲームがチェックできることを期待しましょう。スイスとの時差を考えると、1R の開始は日本時間の明日夜10時半です。

しかし、今回の大会はそれぞれ7試合ずつです。つまり、最低9試合が必要なIM ノームの獲得は、今回のスイス遠征では不可能です。南條くんと私に次いで、日本から3人目のIM が誕生することを期待しているチェスファンも多いかと思いますが、羽生さんがIM タイトルを獲得するのは、もうしばらくお預けですね。それでも現在の調子を考えれば、羽生さんが2400台に復帰し、日本ランキング1位に返り咲く可能性は十分に高いでしょう。年末年始、日本のチェスファン、将棋ファンは、スイスに熱いエールを送ることになりそうですね! 羽生さん、良いゲームと結果を期待しています。

2015/12/23

国内新レイティング S104


今年のジャパンオープン入賞者たち Photo by Hasegawa

今日、12月締め切りの新しい国内レイティング、S104 が公開されました。ハイレベルだったジャパンオープンの結果が反映され、試合をしたプレーヤーのトップリストは、以下のようになっています。

小島慎也 2463 +6
南條遼介 2441+14
Tran Thanh Tu 2440 -55
羽生善治 2418 +3
青嶋未来 2366 -12


私は5勝1敗2ドローで+6 でした。ベストレイティングには一歩届きませんでしたが、正直上がるとは思っていなかったので、十分な結果です。ジャパンオープンで優勝した南條くんは、名古屋で落としたレイティングをそっくり取り戻し、+14 でした。もう少し上がるかとも思いましたが、2400台で20以上上げるのは、相当大変なようです。ジャパンオープンで初めて黒星を喫したTu さんはかなり落とし、適正なレイティングに落ち着きそうですね。

そして2人のプロ棋士はどうかと言えば、羽生さんが+3、青嶋くんが-12 です。ジャパンオープンで、4勝1ドロー2bye だった羽生さんは、200下の小林くんとのドローが響いたでしょうか。思ったよりも数字が上がりませんでした。去年の東京オープンで落とした分を取り戻すのには、もう少し白星が必要です。青嶋くんは快速の優勝で2400 になって以降、少しずつですがレイティングを落としています。それでも、IVL でも優勝するなど、調子が悪いわけではないと思いますので、また来年、数字を伸ばしてくるでしょう。

これで今年のレイティング変動はすべて終わりですが、年内の公式戦は明日のクリスマスオープンと、27日、28日の学生選手権、その他例会が残っています。まだ公式戦を行う人たちは、今年最後のゲーム、満足のいく内容ができるように頑張って下さい!

日本チェス協会

2015/12/19

Weekly Chess Puzzle Vol.17


Kojima, S (FM, JPN, 2312) - Ashwin, J (IM, IND, 2446)
Thailand Open Chess Championship 2010 (6)
White to move


Kojima, S (FM, JPN, 2312) - Ashwin, J (IM, IND, 2446)
Thailand Open Chess Championship 2010 (6)
White to move

5年前のタイのトーナメントでは、私は各上のプレーヤーにも負けることなく、4.5/6 という好スタートで、初めてIM ノームを意識しました。ところが、7,8R でIM に連敗し、IM ノームは夢に終わったのです。その際、ノームについてインドのIM Lahiri からアドバイスを貰ったことは、今でもよく覚えています。

さて、今日はそんなタイのトーナメントでの6R、インドのAshwin Jajaram とのゲームからです。中盤、相手のミスでチャンスがあったのですが、それを逃がしてしまった瞬間が上のポジションです。その後、全てのピースを捌いて、下のようなポーンエンディングになりました。白はポーンアップですが、そのままキングをスライドしていくと、d4 のポーンはタダで取られて負けてしまいそうです。負けたないためにはどう指せば良いか、考えてみてください。

2015/12/18

盤上のポラリス3巻発売


3巻の表紙は姫ちゃんです!

月刊少年マガジンで連載中の盤上のポラリス最新刊、第3巻が昨日発売となりました。表紙を飾ったのはヒロインの姫ちゃんで、ロンドンチェスセンターを彷彿させる、チェスショップにいるところですね。今日、結果が発表された、第2回次にくるマンガ大賞にノミネートされた情報も、ばっちり帯に入っています。(結果はどうなりましたかね?)

3巻からは、一兵が成長の舞台を、島の小学校から本土の中学校へと移します。レンくんの登場回数は、1巻2巻に比べれば少なくなりますが、その代り、同じ中学校の先輩、同輩、そして他校のライバルと、新しいキャラクターが多く登場します。そんな彼らとの対戦シーンも多く描かれていますので、そちらをお楽しみに!

そして1巻、2巻発売の際も思いましたが、内容は事前にチェックしていても、こうして自分が関わっている漫画が単行本になると、喜びも一入です。皆さん、2016年にかけても、盤上のポラリスをよろしくお願い致します!

2015/12/15

Information about Invitation to Cappelle la Grande 2016


2013年のカペル

今年も、恒例のカペル招待選手を決める時期が近づいてきました。フランス北部の村、カペルで開催されるチェストーナメントには、毎年、GM、IM を含め、数百名ものチェスプレーヤーが集まります。私も過去数回参加しており、ヨーロッパでもお勧めと大会です。日本には今年も4名の招待枠が届いていますので、是非、参加を検討してみてください。以下、担当の中村くんからの連絡です。


恒例のCappelle la Grandeの招待状が来ましたのでご案内致します。

The 32 International Open of Cappelle-la-Grande
大会ホームページ

【大会期間】2016/2/13(土)~20(土)
【開催地】Cappelle la Grande(フランス)
【大まかなスケジュール】
2/12 18時 パリCDG集合
2/13~20 試合
2/21 5時 ホテル出発
【招待枠】4名
※招待されたプレーヤーは、宿泊(ツインルーム)、会場での食事、パリCDGまたはブリュッセル空港からのバスが用意され、大会参加費が無料にな ります。

招待枠での参加を希望する方は、以下の通りご連絡ください。
(質問等でも結構です)

【期限】12/22(火) 22時まで
【連絡先】中村 (rye_nao(at)hotmail.com) ※at→@に変更してください。
【備考】
・基本的にはFIDEレーティングの順に優先とします。
・4名を超えた場合、レーティング2000未満のプレーヤーについては、参加費の折半等の方法で枠を調整します。

よろしくお願いします。

2015/12/13

Saturday Lecture on December 26th 2015


【日時】 2015年12月26日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Play with A Fianchetto
【テーマ詳細】

bポーンかgポーンを伸ばし、空いたマスにビショップを進めるフィアンケットの形は、よくやる人、時々やる人、全くやらない人とタイプが分かれると思います。フィアンケットには利点と欠点があり、自分で指した場合も指された場合も、それらの特徴をよく掴んでおくことが大切です。今回は様々なフィアンケットに焦点を当て、どのようなゲーム展開がありえるかを探っていこうと思います。

【参加費】 レクチャー代1200円+飲み物代200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

今回が2015年、最後のサタデーレクチャーとなります。年末の忙しい時期だと思いますが、皆さんのご参加をお待ちしております。

2015/12/11

完全なるチェックメイト 公開告知


Photo from GAGA

クリスマスまで2週間となり、チェス界で話題の映画の公開が近づいてきました。元世界チャンピオン、ボビーフィッシャーの生涯を描いたアメリカ映画、Pawn Sacrifice が、日本では「完全なるチェックメイト」という邦題で、今年の12月25日(金) から、TOHOシネマズ シャンテ他、全国ロードショーとなります。すでに各地のチェスサークルには映画のポスターが配られていますし、ジャパンオープンでも話題に上りました。多くのチェスファンは、この映画の公開を心待ちにしていると思います。

これまであまりお伝えしていませんでしたが、私はGAGA からの依頼で、この映画の字幕チェックや、コメント寄稿、雑誌への取材などに応じてきました。先日、Yahoo! Japan ニュースには、プロ棋士の羽生さんや森内さんらと並び、感想コメントが掲載されています。池袋のミュージカルでお世話になった安蘭けいさんと中川さん、盤上のポラリスの作画担当、若松さんもコメントを寄せています。

チェス映画「完全なるチェックメイト」に羽生善治、森内俊之らがコメント

フィッシャーがチャンピオンになった当時のことを知るチェスファンも、私のような歴史としてしか知らなかったファンも、彼の生き様を描いたこの映画で、フィッシャー、及びチェスの魅力を再発見できると思います。もちろん、チェスをまだ知らないかたにも、映画を楽しんでもらえるでしょう。是非、公開されている映画館に足を運んでみてください。年末から来年にかけて、完全なるチェックメイトをよろしくお願い致します。

2015/12/07

19th IVL Tournament Report


Photo by Hasegawa

昨日は今年最後となる19回目のIVL が開催されました。今年はここまで、私と羽生さんが3回ずつ優勝しており、今回でどちらが最多優勝になるかという争いだと思っていました。しかし、実際に優勝をさらったのは、20歳の青嶋くんです! 青嶋くんは羽生さんに敗れたものの、馬場さんと私を含め、残りの4戦をすべて勝ち、0.5P のリードで優勝を決めました。最終戦の棋譜を公開しておきます。


Aoshima, M (JPN, 2378) - Kojima, S (IM, JPN, 2457)
19th IVL (5)
Position After 17. fxe3

17... Rhd8?


ルークの展開が遅れている黒は、こうしてルークをぶつけるのが当然だと思っていましたが、この後の展開を楽観視していました。代わりに17... Ngxe5 18. Nxe5 Nxe5 19. Bxe6+ Bc6= と進めていれば、全く問題なかったでしょう。ビショップがどくディスカバードチェックは、痛手になりません。

18. Nd6! Be8 19. Bd3!


これでcファイルを開き、e5 のポーンを守ります。これで黒には有効な打開策が無く、苦しいエンドゲームへと突入することとなります。

19... Nge7 20. Be4 Nc8 21. Nxe8+ Rxe8 22. Bxc6 bxc6 23. Nd4 Ne7 24. Nxc6!



白はピースの展開の早さを、駒得へと繋げました。このルークエンディングは絶望的で、ここでリザインしても良いぐらいではありますが、優勝のかかったラウンドですので、勝負を投げずに続けます。

24... Nxc6 25. Rd6 Reb8 26. Rcxc6+ Kb7 27. b4 a5 28. b5 Rd8


bポーンをプロテクテッドパスポーンにするのは気が進みませんが、取られてしまってはそれこそだめです。一時的に2ポーンダウンになっても、1つルークを交換して反撃を狙います。

29. Rb6+ Ka7 30. Ra6+ Kb7 31. Rxa8?!



f7 を取れれば白が勝勢にも見えますが、黒に反撃のチャンスを与えてしまうことになります。ここは落ち着いて31. a4! と指せばゲームオーバーだったでしょう。31... Rxd6 32. exd6 でも、黒は自分の首を絞めているだけです。

31... Rxa8 32. Rd7+ Kb6 33. a4 Rc8


黒はようやく、ルークがアクティブに働けるようになります。ルークエンディングでは、ルークを消極的に守りに使うより、積極的に反撃に使うほうが有効です。

34. Rxf7 Rc4 35. Rf4 Rc5 36. Re4 Rc2 37. Rd4 Ra2 38. Rc4 Kb7 39. h4 Re2 40. e4 Ra2 41. Kh2 Rb2!



最初はa4 のポーンを後ろからアタックするのが当然だと思っていましたが、キングがhファイルに行ったタイミングで、b4 のマスでぶつけるアイディアが見えました。これでポーン交換を進め、パスポーンを作れれば、黒にも小さなチャンスが出てきます。

42. Rc6 Rb4 43. Rxe6 Rxa4 44. Kg3 Rxe4 45. h5 a4


黒のaポーンは意外なほど早く、後ろにルークが回るような流れも見えています。これは大逆転もあったかと思いましたが、青嶋くんの手は正確でした。

46. Kf3 Rb4 47. Re7+ Kb6 48. Rxg7 a3 49. Rg6+!



白が負けを避けるためには、この手しかありません。b5 を取らせるのは損に見えるかもしれませんが、プロモーションの際にチェックがかかるようにする、非常に大切なアイディアです。

49... Kxb5 50. e6 Ra4 51. e7 Ra8 52. Re6


互いにパスポーンを進め、そしてルークでサポートとディフェンスに奔走します。冷静に考えれば、このポジションはドローなのですが、互いに時間がない中でミスを出してしまったのは私でした。

52... a2 53. Re1 Kc6?



キングが寄るべきは、相手のポーンではなく、自分のポーンです! 53... Kb4! 54. Re4+ Kb3 55. Re3+ Kc2 56. Re2+ Kb3= もう少しポーンを進めさせても大丈夫ですが、いずれにせよ白は、こうして連続チェックでドローにするほかありません。

54. Rd1!


54. Ra1? Kd7-/+ ならば、黒にチャンスが出ますが、dファイルでカットオフすれば、白勝ちとなります。

54... Re8 55. Ra1 Ra8?



最後は焦ってダメな手を指してしまいましたが、55... Rxe7 56. Rxa2 Re6 57. Kf4+- (検討戦で塩見さんが指摘した、57. Ra6+ Kd5 58. Rxe6? Kxe6 59. Ke4 Kf6 60. Kf4 Ke6= このポーンエンディングがドローであるというのは、非常に面白いと思います。) で白勝ちとなります。h6 のポーンが落ちるのは時間の問題でしょう。

56. Rxa2 1-0


あの絶望的な状況から、よくここまで粘ったと自分を褒めたい気持ちも、だからこそ最後のミスで負けたことが悔しいという気持ちもあります。あらためて、ルークエンディングの難しさを感じるゲームでもありました。そしてこの白星で、青嶋くんが私と羽生さんを引き離し、4/5 でIVL 初優勝を決めました。青嶋くん、おめでとう! 来年も強力なライバルとして、私たちの前に立ちはだかりそうですね。


IVL 終了後は、参加者のほかに南條くんも合流し、1年を締める忘年会が行われました。まだ年内に会う人もいると思いますが、ひとまず皆さん、2015年もお疲れ様でした! 来年も、IVL をよろしくお願い致します。


チェス盤(本来、将棋盤と書くべきところかもしれませんが、私にとってはチェス盤です)を離れ、話をする二人のこうした姿は、意外とこれまで見たことなかったかもしれません。2人とも、年末から年始にかけて参加する予定の海外大会でも、頑張ってもらいたいですね。

2015/12/03

2015 公式戦戦績


今年も12月に入り、終わりが見えてきました。私はIVL が残っているものの、今月は公式戦をしないことが確定したため、JCA、FIDE ともに公式戦の結果集計を出したいと思います。去年同様、写真を交えながら大会を振り返ろうと思います。


昨年は初めて、海外での年越しトーナメントに臨み、元旦から公式戦をこなすというスケジュールでした。年末年始のGM トーナメントは、IM タイトルを確定させたということで、リラックスして臨めたと思います。12月のChess in kecskemet よりも戦績は落ちましたが、それでも2400のレイティングをキープして日本への帰国を決めたのでした。この大会はずいぶん昔であったように思えるので、まだ今年なのは少し信じられません。


ロンドンでのラピッド大会を経て帰国し、最初に参加したのは、3年ぶりの地方予選でした。メインイベントの福岡予選前に、久留米に招かれ、同時対局をしたのも懐かしいですね。地方のチェスクラブとの交流は、また来年以降も続けていきたいと思います。


Chess News より

3月に参加したハワイの大会は、特別枠のGM Challenge に参加することなったため、公式戦はbye を入れ、5試合のみでした。GM Challenge では、女子世界チャンピオンのHou Yifan と初対戦。さらには、アメリカ代表のGM Shankland に奇跡の勝ち越しをしたのは、思い出深い出来事です。

そしていまさらネタですが、アメリカのGM Alejandro Ramirez によって、福谷さんと付き合ってることを、Chess News 上で世界中に発信されたのでした。普通、公開前に書いて良いか、確認すると思うんですけどねぇ(笑)福谷さんは今年の女子選手権の戦績により、来年のアゼルバイジャンオリンピアードに、私と共に日本代表メンバーとして参加することが決まっています。


国内で最も重要な大会である全日本選手権では、馬場さんに惜しくも競り負け、3年連続での単独2位に終わりました。レイティングを落としたことはショックでしたが、それでも全日本選手権は楽しい場所ですね。生徒の成長が大舞台で見られたことも嬉しかったです。


全日本後、IVL やトレーニングを経て、復活をかけたジャパンリーグでは、5連勝後にGM Zhao Xue、青嶋くんとドローで、この年の公式大会初優勝を飾りました。GM が参加した国内公式大会で、GM を抑えて優勝したのは私が初めてでしょうか? 勝負のラウンドで、南條くんを下したゲームは今年のベストゲーム候補です。


ジャパンリーグに続く名古屋オープンも、勢いそのままに5勝1ドローでの優勝でした。昨年ポイントを落とし、優勝を逃す要因となったPhanさん、北神さんに勝てたのは嬉しかったですね。どちらも非常に面白いゲームでした。


9月のクラブ選手権では、噂のTuさんの強さを目の当たりにしました。馬場さん、Alex らに勝っての全勝優勝は、会場にいる人に大きなインパクトを与えたでしょう。私自身は2勝2敗1ドローと、今年唯一のイーブン戦績... 国内ワーストトーナメントでした。


東京オープンでも、Tu旋風は止まらず、私と南條くんが敗れて、Tuさんの全勝優勝を許してしまいました。これにより、Tuさんのレイティングは2495 となり、完全に今年後半の話題の目玉となりました。青嶋くんといい、今年は大物のデビューが続きます。


再び名古屋に戦いの場を戻し、中部快速では5勝1ドローでの優勝です。2大会振るわなかっただけに、なんとかここで自信回復... 11月には三重でのイベントもあり、今年はすっかり名古屋チェスクラブの皆さんにお世話になった1年でした。


先月のジャパンオープンは、最終戦までは南條くんに食らいついていたものの、最後で再びTuさんに負け。2年連続でのジャパンオープン優勝とはなりませんでした。それでも、6/8 という数字は悪くないはずですので、また来年の公式戦でも、しっかりポイントを重ねられるように頑張ります。

さて、長くなりましたが、ようやく戦績の集計です。

JCA公式戦戦績

37勝6敗10ドロー、勝率79%

FIDE公式戦戦績

15勝6敗5ドロー、勝率67%


今年は久々に国内での勝率が8割を切りましたが、JCA、FIDE ともにレイティングはほぼ変動なしです。2500という数字はあまり気にせず、内容の良いチェスを心がけ、来年も白星を積み重ねていければと思います。今週末のIVL も、連続優勝を目指して頑張ってきます。

2015/11/27

Weekly Chess Puzzle Vol.16


Tran Thanh Tu - Kojima, S
Japan Open 2015(8)
White to move


Kojima, S - Misaka, S
Asaka 2013 (4)
Black to move

最新の試合から出題するのは初めてですね。ジャパンオープンでTuさんに敗れた試合、白は何を指したでしょうか。もう1つは三阪さんとのポーンエンディングです。黒はドローに持ち込むためには、ここでどう指すべきでしょうか。いつも通り、答えが分かった方はお気軽にコメント欄へどうぞ。

2015/11/24

Japan Open 2015 Day3 Tournament Report


今年のジャパンオープン入賞者たち, Photo by Hasegawa

今年も年内最後の大きな公式戦、ジャパンオープンが終了しました。優勝は最終日も連勝の南條くんで、2位に1P 差をつけ、7/8 というスコアでした。南條くんは最後で、今年の国内トーナメント初優勝を果たしました。南條くん、優勝おめでとう!

1st Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2427) 7/8
2nd Place Tran Thanh Tu (CM, VIE, 2495) 6/8
3rd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2457) 6/8
4th Place Yamada Kohei (CM, JPN, 2217) 6/8
5th Place Habu Yoshiharu (FM, JPN, 2415) 6/8


最終的には大きな波乱もなく、上位を占めたのはレイティングの高いタイトルホルダーでしたね。A,B クラスで入賞したみなさんも、おめでとうございます。私は7R でAlex 相手に難しいゲームを勝ち切ったものの、最終戦で東京オープン同様、Tuさんに黒を持って敗れ、3位に後退してしまいました。また次の対戦でこそ、リベンジを果たしたいと思います。


Kojima, S (IM, JPN, 2457) - Averbukh, A (FM, JPN, 2284)
Japan Open 2015 (7)

31. Bxc6!?


ここは残り12分ほどまで考え、勝負を仕掛けることにしました。本譜のルークエンディングになった場合、勝てるのかは定かではありませんでしたが、白が優勢なのは確実ですので、思い切って試してみることにします。31. Bf3 Kg8 32. Ra1+/= として、ゆっくり指すのもありだったでしょう。

31... Rxc6 32. Qh7 Ke8


ここはAlex の決断は早かったです。32... Bd8 33. Rxc6 Bxc6 34. d5 Rxd5 35. Bxg7+ Ke7! (35... Ke8? 36. Qg8+ Kd7 37. Qxf7+ Be7 38. Bf6 Qf8 39. Qxe7+ Qxe7 40. Bxe7+/-) 36. e4 Rd3 37. Bxh6 Qd7 38. Bg5+ Kd6 39. Bxd8 Qxd8 40. Qxf7= こうなった場合、形勢評価は非常に難しいでしょう。本譜はピースを返して1ポーンダウンになっても、キングは確実に生きる安全策です。

33. Qg8+ Bf8 34. Rxc6 Bxc6 35. d5 Rxd5 36. Bxg7 Ke7 37. Bxf8+ Qxf8 38. Qxf8+ Kxf8 39. Rxc6



こうしてピースを取り返した白ですが、クイーンサイドの2ポーンはお互いに取り合いになるため、キングサイドの4対3 のポーンで、勝てるかどうかがこのエンドゲームの焦点となります。

39... Rd3 40. Rc7 Rxb3 41. Rxa7 Ra3 42. g4 b3 43. Kg2 b2 44. Rb7 Rxa6 45. Rxb2 h5?!


このポーン突きは不用意だったのではないかと、検討で話をしています。黒は45... Ra5 ぐらいで5段目をカットオフし、白キングの動きを制限するほうがタフなディフェンスができたでしょう。

46. g5!?



ポーンを交換した場合、白に残るのはhファイルのパスポーンですので、これを武器に勝ち切るのは心もとないと考えました。そこで、gポーンは交換せずに盤上に残します。46. gxh5 Ra5 47. h6 Rg5+ (47... Rh5?! 48. Rb8+! Ke7 49. Rh8+/-) 48. Kh1 Kg8 49. f4 Rh5 これは黒は本譜よりディフェンスしやすいかもしれません。

46... Ra5 47. h4 Ra4 48. Kh3 Kg7 49. f3 Ra3 50. Re2 Kg6?!


キングを上げるのは自然な手にも見えますが、すぐにポーンを交換するほうが安全です。50... f6 51. gxf6+ (51. Kg3 fxg5 52. hxg5 Kg6 53. f4 e5! 54. Kh4 Ra4= これはどう考えてもドローです。) 51... Kxf6 52. Kg3 Ke5 これであれば、黒は本譜よりも1手得しています。

51. Kg3 f6 52. gxf6 Kxf6 53. e4



私はここまできて、ようやく具体的に勝てる形が見えてきたように感じました。白のf3、h4 はさほど負担にならず、逆に黒の2つの孤立ポーンを両方守るのは大変そうです。しかし、うまく指せばここからでも、まだ黒はタフなディフェンスを見せることができます。

53... Rb3 54. Ra2 Rb5 55. Ra8 Rc5 56. Kf4 e5+ 57. Kg3


一度キングの侵入を見せ、e6-e5 を指させておけば、f5 とg5 のマスにルークが侵入するチャンスができます。そうなれば、黒は5段目にある2つのポーンを守り切ることが難しくなると考えました。

57... Rb5?



これはうかつな一手でした。57... Kg7! が正しいディフェンスで、f8-h8 の3マスを抑えることで、白のルークにポーンを狙う隙を与えません。e5 だけであれば、ルークの横利きで守っておけばOKです。ここから局面は一気に動きます。

58. Rf8+ Kg6 59. Rf5 Ra5 60. Kf2


ルークをf5 に入れた後は、いよいよキングの出番です。白キングが上がってきてe5 をアタックすることは防げないため、黒はe5 とh4 を交換するしかありません。

60... Ra2+ 61. Ke3 Ra3+ 62. Ke2 Ra2+ 63. Kd3 Rh2 64. Rg5+ Kh6 65. Rxe5 Rxh4



これで狙い通りに2コネクテッドパスポーン vs ポーンのルークエンディングになりました。これは勝てるはずだと信じながらも、今年の全日本の塩見さんとの試合で意外なほどに苦戦したため、気を引き締めてゲームを続けます。

66. Re8 Rh1 67. Ke3


ここは見返してみれば、67. Rg8 とカットオフするほうが良いに決まっています。

67... Kg5 68. Rg8+ Kf6 69. Kf4 Rh4+ 70. Kg3 Rh1 71. Kf4 Rh4+ 72. Ke3 Rh2 73. Rg1 Ke5??



時間を増やしながら、ゆっくりとポジションを改善していこうと思っていた矢先、Alex にひどいミスが出ました。これは白がメイトスレットを作れるため、hポーンを取ることができます。

74. Rg6! Rh3


f3-f4 がメイトスレットになっているため、3段目でルークを使うしかありません。

75. Ra6! h4 76. Rh6!



これでツークツワンクとなり、黒はhポーンを見捨てなければいけません。ここまで来れば、後は時間の問題です。

76... Rg3 77. Rxh4 Rg1 78. Rh5+ Ke6 79. Kf4 Rg8 80. Rh6+ Ke7 81. Ke5 Rg5+ 82. Kd4 Ra5 83. e5 Rb5 84. Ke4 Rb3 85. f4 Rb4+ 86. Kf5 Kf7 87. Rh7+ Kg8 88. Ra7 Rb8 89. e6 Rf8+ 90. Ke5


90. Kg6 と指してf4 を捨てても、ルークを交換したポーンエンディングは白勝ちです。

90... Rb8 91. f5 Rb1 92. Ra8+ Kg7 93. f6+ Kg6 94. Rg8+ 1-0



この長いエンドゲームを勝ち切れただけに、最終戦の負けは悔しかったです。次の試合は12月最初のIVL になるので、そちらまた頑張ります。ジャパンオープン参加者の皆さん、お疲れ様でした!


2日目を休んだ羽生さんは、7R で小林くんとドロー、8R でSimutanyi さんに勝って、6P グループに入りました。次回のトーナメントはフルで出場し、上位勢との対戦を多くこなして欲しいですね。


2日目に0.5/3 と崩れた青嶋くんも、最終日は立て直して連勝し、5.5P でのフィニッシュです。来年の全日本選手権の出場権利も獲得しましたので、今後ますます頑張ってもらいたいですね。そろそろ南條くんとの対戦も見たいところです。

2015/11/22

Japan Open 2015 Day2 Tournament Report


6R の入江戦, Photo by Hasegawa

ジャパンオープン2日目の今日は、3試合とも見落としたが多く、内容はイマイチでした。それでも、青嶋くんと南條くんにドロー、入江さんに勝ちで、トップグループの5/6 につけています。5R の南條くんとの試合は、非常に複雑で見ごたえがあると思いますが、解説を書く時間がないので、6R の入江さんとの試合をご紹介します。

Irie, Y (JPN, 2156) - Kojima, S (IM, JPN, 2457)
Japan Open 2015 (6)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Nc5 e5 6. Nxb7 Qb6 7. Nc5 exd4 8. Nb3 Bb4+ 9. Bd2 Nf6 10. Qe2+!?



ハンガリーでGM との対戦経験もあるラインです。ここでチェックされたらどうしようかと考えていたところ、本当にしてきました。白マスビショップの利きをふさぐのは不自然ではありますが、黒もどちらかのビショップを退くしかありません。

10... Be7!?


10... Be6 11. Bxb4 Qxb4+ 12. Qd2 Qb6 13. Qxd4 Bxb3 14. Qxb6 axb6 15. cxb3 O-O このように進んでも、ピースの展開の早さで、黒は捨てた1ポーンの代償があるでしょう。

11. Nf3 c5 12. Ba5?!



直観的にこれはおかしいと切り捨てていたので、指されて驚きました。黒はc6 にナイトを出した際にビショップをアタックすることができ、テンポを稼ぐことができます。

12... Qd6 13. c3


入江さんは、d4 のポーンを弱くする作戦を選びましたが、ここまで展開が早ければ、ポーンを取る余裕はないと信じ、自然に駒を進めます。

13... Nc6 14. cxd4 cxd4 15. Qb5 Qe6+?



しかし、ここで間違えてしまいます。クイーンチェックは強力に見えますが、d4 の守りが減ってしまううえ、c6 のナイトのピンを外していません。代わりに、15... Bd7! 16. Bd3 Rb8 17. Qa6 Bc8! (この手は検討で見落としていました。クイーンをビショップの守りから遠ざけてしまえば、黒はピースを取ることができます。) 18. Qc4 Nxa5 19. Nxa5 Qb4+-+

16. Be2 Rb8 17. Qa4?


この手を見て、自分が危機を脱したこと、そして勝勢になったことを確信しました。17. Nfxd4! Rxb5 18. Nxe6 Rxb3 19. Nxg7+ (このナイトフォークでビショップを取れるのが、この長い駒の取り合いのミソです。) 19... Kf8 20. Nxf5 Rxb2 21. Bd2+- これで白はダブルビショップをキープしたうえ、ポーンアップで勝勢です。

17... Bb4+!+-



入江さんはこの手を見落としていたのでしょう。b5 ではなく、a4 でクイーンを取れれば、上記のラインと違って黒のルークはアタックされておらず、d4 取りは手遅れになってしまいます。

18. Bxb4 Rxb4 19. Nbxd4 Rxa4 20. Nxe6 Bxe6 21. Rc1


21. Bb5 Re4+ は、チェックでルークが逃げられるため、ピース取りになっていません。

21... Nd4 22. Nxd4 Rxd4 23. Rc7 O-O 24. Rxa7 Bd5 25. f3 Re8 0-1



ここを勝てたことで、1歩リードしていた南條くんとAlex に追いつき、5/6 が4人並んだ状態となっています。


来日以来、27連勝というとんでもない記録を作ってきたTuさんですが、今日は南條くんに負け、小林くんにドローで一歩後退となりました。それでも2番手グループですので、明日の結果次第では、十分に入賞はありえます。


オーストラリアのSimutanyiさんは、私に負けて以降、坂井さん、青嶋くんらに勝ちを含めて4連勝し、トップボードに戻ってきました。久々のチェスだそうですが、ようやく本領発揮と言ったところでしょうか。

明日は3bye の羽生さんも戻ってきて、いよいよ最後の2試合が行われます。ペアリングは、小島-Alex、南條-Simutanyi、羽生-小林、Tu-Andrew となっています。最後の白でしっかり勝ち、混戦のトップグループを抜けたいですね。


先週、27歳の誕生日を迎え、今日はゆみさんから、誕生日プレゼントを貰いました。ハート型のチョコレートです!

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.