2023/09/27

Hangzhou Asian Games Day3 Tournament Report

アジア大会3日目は1日3試合のハードなスケジュールでした。私は香港のKaoに勝ち、インドネシアのSetyakiにドローで、前日に連敗したショックを振り払い、少し調子を戻してきました。しかし、そんな中で7Rは同じ日本から参加している弘平くんに当たってしまいます。同じ2.5/6でレイティングも適度に離れていました。嫌な予感は当たるものです。

Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Yamada, K (FM, JPN, 2157)
Hangzhou Asian Games Men's Individual (7)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 dxc4 5. e3 a6 6. Bxc4 b5 7. Bb3 Bb7 8. O-O c5 9. e4 cxd4 10. Nxd4 Nbd7 11. Be3 Qb8?!

ブダペストでのLevineとの試合では11... b4?! 12. Na4 Nxe4 13. Qh5!と進んで白良しになりました。ここは11... Nc5ないしは11... Ne5が手堅い進めた方だと思います。本譜ではSemi-Slavで見られるようにBf8-Bd6からクイーンとビショップのバッテリーを作る狙いですが、dファイルが開いていてd6のビショップがターゲットになりやすいのが違いです。

12. Rc1! b4 13. Na4 Bd6 14. f4!


ここはe4-e5を見せることでe4を取らせて勝負です。ただしこの時点では問題の無かったa7-g1ダイアゴナルが後で問題になります。

14... Nxe4?!

14... Bxe4 15. Nc6 Bxc6 16. Rxc6 Be7 17. Nb6 Nxb6 18. Rxb6 Qd8 19. Ba4+ Kf8 20. Qe2+/- でも白が有利です。b5-b4の弱点として、a4-e8ダイアゴナルを弱めてしまうことが挙げられます。

15. Nc6! Bxc6 16. Rxc6 O-O 17. Qd4?


ここまで1ポーンを捨てても白マスビショップを貰う作戦で上手く進めてきただけに、この1手の悪手で優勢を全て捨ててしまったのは勿体なかったです。e4のナイトをターゲットにするアイディア自体は間違いではないのですが、攻撃するピースの順と位置が違いました。17. Bc2! Ndf6 18. Qf3+- これでe4のナイトは助からず、白の勝勢です。モデルにしていたゲームの中でQd1-Qd4が上手く働き、それに引きずられてしまったこと、Na4-Nb6の跳びこみが働かないことをきちんと読まなかったのを反省しなければいけません。

17... Ndf6 18. Bc2? e5!

このカウンターパンチを見ておらず、自分の評価が間違ったいたことに気づきました。せめて18. Nb6 Ra7 19. Nc4 Rd7 20. Rb6 Qc7 21. Nxd6 Nxd6 22. Qxb4 Nf5=/+ と進めるべきでした。

19. Qb6 exf4 20. Bd4


20. Qxb8 Bxb8 21. Bxf4 Ba7+!-+ ここでa7-g1ダイアゴナルを使われると、ターゲットにしようと考えていたe4のナイトが突如白キングを襲い、黒勝ちとなります。

20... Be5! 21. Bxe5 Qxe5 22. Qxb4 a5! 23. Qe1 Rfe8

なんとかポーンは1つ取り返しましたが、キングが不安定で白はかなり厳しい状況です。ここはすぐに23... Qd4+ 24. Kh1 Rfe8-+ でも良かったでしょう。

24. Rc4 Qd5 25. Nb6 Qb5 26. Bxe4 Qxb6+ 27. Kh1 Qe6


ルークとビショップをフォークされ、万事休すです。

28. Bxh7+ Nxh7 29. Qxe6 Rxe6 30. Rcxf4 Nf6 31. Ra4 Rb8 32. b3 Rb5 33. h3 Re2 34. Kg1 Rc5 35. Rf2 Rc1+ 36. Rf1 Rcc2 0-1

序盤の簡単なチャンスをつかめなかったことが悔やまれるゲームでした。今日の午後行われる最後の2試合も頑張ります。私は再び韓国のマスターとの対戦です。

9/20 Arrival (Narita-Shanghai)
9/21
9/22
9/23 20:00 Opening Ceremony
9/24 15:00 Individual Rapid R1 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Sindarov, J (GM, UZB, 2607) 0-1
9/24 17:00 Individual Rapid R2 Kwong, W K (HKG, 1850) - Kojima, S (IM, JPN, 2318) 0-1
9/25 15:00 Individual Rapid R3 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Jumabayev, R (GM, KAZ, 2517) 0-1
9/25 17:00 Individual Rapid R4 Ahn, H (IM, KOR, 2125) - Kojima, S (IM, JPN, 2318) 1-0
9/26 15:00 Individual Rapid R5 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Kao, J E (HKG, 1651) 1-0
9/26 17:00 Individual Rapid R6 Setyaki, A (IM, INA, 2334)- Kojima, S (IM, JPN, 2318) 1/2-1/2
9/26 19:00 Individual Rapid R7 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Yamada, K (FM, JPN, 2157) 0-1
9/27 15:00 Individual Rapid R8 Kwon, S (FM, KOR, 2192) - Kojima, S (IM, JPN, 2318)
9/27 17:00 Individual Rapid R9
9/27 20:30 Prize Ceremony
9/28 Departure (Shanghai-Narita )

試合会場の杭州棋院2階には様々なボードゲームが展示されており、博物館さながらです。

2023/09/25

Hangzhou Asian Games Day2 Tournament Report

会場1階にはサイン入りボードが展示されています。Ding Liren(丁立人) とNana Dzagnidze以外読めません。

アジア大会のチェス個人戦は2日目を迎えました。10年ぶりの対戦となるJumabayev戦は序盤で悪くしてしまい、挽回するチャンス無く負け。調べたところ、悩みながら指した10手目はJumabayev本人が白番で指したことのあるものでした。後半の4Rは韓国のIM Ahn Hongjinとの対戦で、こちらも苦しい展開を盛り返したところで時間切迫から間違え、やはり敗れてしまいました。勿体なかったこちらのゲームをご紹介します。

Ahn, H (IM, KOR, 2125) - Kojima, S (IM, JPN, 2318)
Hangzhou Asian Games Men's Individual (4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. h4 h5 5. Bg5!?

3... Bg5の変化に戻すことにして色々と調べていましたが、Bf1-Bd3を省いてBc1-Bg5と出る変化は忘れていました。e7-e6を妨害し、黒が早めにクイーンを動かすことを強制します。

5... Qb6 6. Bd3 Bxd3


6... Qxd4 7. Nf3 Qg4 8. Bxf5 Qxf5 9. O-Oと進む変化は1ポーンの代償が十分ありそうで、黒で指すには勇気が必要です。

7. Qxd3 e6 8. Nd2 Nh6 9. c4 Nf5 10. Ne2 dxc4?!

少しc2-c4の仕掛けが早いと思い、ナイトをc4に呼び寄せて勝負だと思いましたが、やはりc4,e4のマスを明け渡すのは少しリスクが高かったようです。10... Be7からゆっくり構える流れはありだったと思います。

11. Nxc4 Bb4+ 12. Kf1! Qa6 13. a3 Be7 14. Rh3!


h2-h4を指していてことで、ルークはhファイルから出動できることを失念していました。これだと白のキャスリングを妨害した効果があまりないうえ、Ne2-Ng3から要のディフェンスのナイトも捌かれてしまいます。

14... Nd7 15. Bxe7 Kxe7 16. Ng3 Nxg3+ 17. Rxg3 g6

g7-g6を突く手はf6,g5のマスを弱めるので極力指したくなかったのですが、他に手が分かりませんでした。17... Nb6 18. b3 Nxc4 19. bxc4 Kf8! としてキングでg7を守るアイディアはあったようです。考えてみれば白もキャスリングをあきらめてルークをhファイルから出しているので、黒がそれをできない道理はありません。試合中に思いつかなかったのが残念です。

18. Kg1 Nb6 19. b3 Nxc4 20. bxc4 Rad8 21. Rb1 Rd7 22. Qf3 Rf8


ここは一時的にf8のルークが閉じ込められても仕方ありません。22... Rhd8 23. Qf6+ Ke8 24. d5! cxd5 25. cxd5 Rxd5 26. Rf3! R5d7 27. Qg7+- だとすぐにf7を突破されてしまいます。

23. Qf6+ Ke8 24. Rgb3 b6 25. d5! Qxc4 26. d6!

試合中、ファイルを開ける26. dxc6 Qxc6とどちらを選んでくるのか分かりませんでしたが、本譜のようにパスポーンを刺し、e7のメイトスレットを作って2つのルークの動きを縛るほうが明らかに良いでしょう。上手くクイーンをぶつけて駒を捌き、1ポーンアップを主張したかったのですが、b6でのルークサクリファイスからの突破にも対応しなければいけないため、黒はクイーンも不自由です。

26... Qd4 27. Rb4 Qc5 28. a4 Rg8 29. R4b3 Rf8 30. R3b2 Rg8 31. Rb4 Rf8


Ahn Hongjinは時間切迫でどう決定的なブレイクを仕掛けるのかプランを見つけられていないようなので、私もひとまずルークの往復で待つことにします。

32. R1b2 Rg8 33. Kh1 g5 34. hxg5?

c1でのチェックが見えたので、クイーン交換のチャンスかと思い、私からg6-g5と仕掛けてみることにしました。実はこれは34. Kh2!+-くらいで無視されて苦しいのですが、これを相手が間違えて取ってきたことでチャンスが生まれます。

34... Qc1+ 35. Kh2 Qxg5 36. Qxg5 Rxg5 37. f4 Rf5 38. a5 f6!


当然、白の強力なパスポーンを崩すためにfポーンをぶつけます。このポーンをばらせれば少なくとも黒に負けはないと思っていました。

39. axb6 axb6 40. Re4?

40. Rxb6 Rxf4 41. Rxc6 fxe5 42. Rb8+ Rd8 43. Rb7 Rf7 44. Rb5 Rfd7 45. Rxe5 Rxd6 46. Rxe6+ Rxe6 47. Rxe6+ Kf7 48. Rh6 Rd5= と進んだエンドゲームはドローです。本譜は白がリスクを取ってe5を受けにきましたが、私もその後の対応を誤りました。

40... b5?


40... Rb7! 41. Ra2 c5 42. Ra8+ Kd7 43. Rh8 fxe5 44. fxe5 Kc6 45. Re1=/+ これはコンピュータ評価はまだ黒やや優勢なものの、d6のパスポーンはしぶとく実際に指してみると難しいと思います。

41. Rc2 fxe5 42. fxe5 Rg7?!

42... c5! 43. Rxc5 Rxd6! 44. Rxb5 Rd2= は一番単純な進め方で全く見えていませんでした。

43. Rxc6 Rg4


私もb6-b5の時点でc6が落ちることは気づいていましたが、すぐにg2に反撃できると思っていたのが大きな勘違いでした。43... Rf2?? 44. Rc8+ Kf7 45. Rc7+ Kf8 46. Rxg7 Kxg7 47. Rd4+- cファイルから侵入してきたルークに強制交換を仕掛けられ、g2への反撃は失敗します。

44. Rc8+ Kd7 45. Rc7+ Kd8 46. Re2 Rc4?

ここがまた大きなミスでした。解説で南條くんも指摘していましたが、46... Rf1! 47. g3 (47. Ra2 Rh4+ 48. Kg3 Rg4+ 49. Kh2 Rh4+ 50. Kg3 Rg4+= こちらはパペチュアルチェックですぐドロー) 47... h4 48. gxh4 Rff4 49. Ra2 Rxh4+ 50. Kg1 Rhg4+ 51. Rg2 Rxg2+ 52. Kxg2 Re4 53. Rc5 b4 54. Rb5 b3 55. Kf3 Rh4= としてもドローだったでしょう。パペチュアルチェックを入れるために先に1段目を抑えるアイディアに気づかなかったのがとても悔やまれます。

47. Re7 Rc5?


ここも47... Rf1! 48. g3 Rcc1 49. Rxe6 Rce1 50. Rxe1 Rxe1= とするチャンスがありましたが、ここで気づけるならば1手前でも気づきそうなものです。

48. Ra2 Rfxe5 49. Ra8+ Rc8 50. Raa7 Rc2 51. Rg7 1-0

最後はダブルルークで7段目を抑えられてメイト受け無しです。クイーン交換から挽回しただけに、最後まで上手く指せずに残念です。明日は香港のプレーヤーとの対戦ですので、上手く浮上のきっかけを掴みたいですね。

9/20 Arrival (Narita-Shanghai)
9/21
9/22
9/23 20:00 Opening Ceremony
9/24 15:00 Individual Rapid R1 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Sindarov, J (GM, UZB, 2607) 0-1
9/24 17:00 Individual Rapid R2 Kwong, W K (HKG, 1850) - Kojima, S (IM, JPN, 2318) 0-1
9/25 15:00 Individual Rapid R3 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Jumabayev, R (GM, KAZ, 2517) 0-1
9/25 17:00 Individual Rapid R4 Ahn, H (IM, KOR, 2125) - Kojima, S (IM, JPN, 2318) 1-0
9/26 15:00 Individual Rapid R5 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Kao, J E (HKG, 1651)
9/26 17:00 Individual Rapid R6
9/26 19:00 Individual Rapid R7
9/27 15:00 Individual Rapid R8
9/27 17:00 Individual Rapid R9
9/27 20:30 Prize Ceremony
9/28 Departure (Shanghai-Narita )

Hangzhou Asian Games Day1 Tournament Report

昨日から杭州アジア大会のチェス個人戦がスタートしました。私は初戦、ウズベキスタン代表のGM Sindarovに負け、2戦目で香港代表のKwongに勝ちで1勝1敗で2日目を迎えています。弘平くんも星は同じですが、初戦でモンゴル代表のGM Sumiyaに勝ち! 2戦目はリスト1の中国代表Wei Yiとの対戦しています。今日もお互いGM戦からのスタートなので、ここも頑張ってポイントを取りたいですね。

Kwong, W K (HKG, 1850) - Kojima, S (IM, JPN, 2318)
Hangzhou Asian Games Men's Individual (2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 dxc4 5. a4 Bf5 6. e3 e6 7. Bxc4 Bb4 8. O-O O-O 9. Qe2 Bg6 10. Rd1 Nbd7 11. Ne5?!

このタイミングでのナイトの侵入は不正確で、もう1手早く入っておき、Ne5-Nxg6とナイトビショップ交換をするのが正解です。e5でのナイト交換は白のポーンストラクチャーが乱れるだけです。

11... Nxe5 12. dxe5 Nd7 13. e4 Qe7 14. Bf4 a5 15. Qe3 h6 16. Na2 Nc5?


満足な序盤でしたが、私も気づかずに緊張していたのでしょうか。ここでとんでもないことが起きました。16... Bc5! 17. Qg3 (17. Rxd7 Bxe3 18. Rxe7 Bxf4 19. Rxb7 Bxe5-/+) 17... Kh8 くらいで黒が有利なのは分かっていましたが、もっと良くなる変化はないかと考えました。そこでNd7-Nb6からc4のビショップを当てておき、Bb4-Bc5と退く作戦を思いつき、いざ指そうとナイトに触れたのですが、なんとb6に置いたナイトはクイーンにただで取られてしまいます! ナイトに触ってしまったのは仕方が無いので、仕方なく本譜の手を指すことにします。

17. Nxb4 axb4 18. a5 Nxe4?

黒は黒マスビショップを失い、d6のマスのコントロールが気がかりですが、それでも1ポーンアップだと自分に言い聞かせました。しかし、そのポーンを取るピースを間違えます。18... Bxe4 19. Rd6 b6!= でも互角なポジションでしたが、d6にルークが入られた時点で上手くピースを守れないと勘違いしました。そこで本譜はナイトでポーンを取りにいきましたが、そのナイトがあまり良くない位置にいってしまいます。

19. f3 Ng5 20. h4?!


試合後に彼が悔やんでいた手がこれで、ナイトはg5-h7-f8と位置を改善したいので、h2-h4からナイトの追い返しは黒を助けることになってしまいます。単に20. Rd6 と跳びこんでおけば白はポーンがなくともdファイルの支配で有利に試合を進められるでしょう。

20... Nh7 21. Bg3 Rfc8 22. Qb6 Nf8 23. Rd6 c5 24. Qb5 Qc7 25. b3 h5!

ナイトをf8に組み替えられたことで、d7へのルークの侵入は防げました。そのうえで将来的にBg6-Bf5, Nf8-Ng6のチャンスがあると良いかと思い、hポーンを伸ばします。

26. Kh2 Bf5 27. Rb6 Ra7 28. Rd1 Rca8 29. a6?


ピースの改善をはかりながらも、膠着状態になったと思ったところで相手から決定的なミスが出ました。aポーンを2つのルークで当てられた彼は焦ってポーンを進めますが、a5のポーンは取られた直後にb7を取る切り返しがあります。a5は気にせず、29. Bf4くらいで良かったでしょう。

29... bxa6 30. Qc6 a5 31. Ra1 Nd7 32. Qxc7 Rxc7 33. Rd6 Kf8

2ポーンアップのエンドゲームとなり、ここからどうクイーンサイドのマジョリティーを活かすか作戦を考えます。本譜では安全にキングをセンターに寄せましたが。33... a4! 34. bxa4 Bc2!-+ が最も早い決め手でした。

34. Rad1 Ke7 35. Bb5 Nf8 36. Ba4 Rb8!? 37. Ra6 c4!


a4は止められましたが、逆のcポーンを突き捨てる作戦を思いつき、決定的なブレイクを仕掛けます。パスポーンとなったbポーンを止めるには白はビショップを捨てなくてはいけません。

38. bxc4 b3 39. Bxb3 Rxb3 40. Rxa5 Rc3 41. Bf2 R3xc4 42. Bb6 Rd7 43. Rda1 Ng6 44. Bc5+ Ke8

黒キングは少し危なく見えますが、e7,f8のマスをナイトがカバーしているうえ、f7-f6からf7のマスも確保できるので問題ありません。

45. Bd6 f6 46. Ra8+ Kf7 47. R1a7 Rxa7 48. Rxa7+ Kg8 49. exf6 gxf6 50. Ra8+ Kf7 51. Ra7+ Ke8 52. g4 hxg4 53. h5 Ne5 54. h6 gxf3 55. h7 Rh4+


相手はこのチェックを見落としたのでしょう。頼みの綱のhポーンも消してしまえば黒の勝ちは揺るぎません。

56. Kg3 Rxh7 57. Ra8+ Kd7 58. Bxe5 fxe5 59. Kxf3 Rh3+ 60. Kf2 Ke7 0-1

楽な勝利など1つも無いとあらためて実感するようなゲームでした。これで星をタイに戻し、2日目の今日を迎えます。3Rは私がカザフスタンのGM Jumabayev、弘平くんがインドネシアのGM Priasmoroとの対戦です。お互いに白が引けているので、しっかりポイントを取ってきたいですね。

9/20 Arrival (Narita-Shanghai)
9/21
9/22
9/23 20:00 Opening Ceremony
9/24 15:00 Individual Rapid R1 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Sindarov, J (GM, UZB, 2607) 0-1
9/24 17:00 Individual Rapid R2 Kwong, W K (HKG, 1850) - Kojima, S (IM, JPN, 2318) 0-1
9/25 15:00 Individual Rapid R3 Kojima, S (IM, JPN, 2318) - Jumabayev, R (GM, KAZ, 2517)
9/25 17:00 Individual Rapid R4
9/26 15:00 Individual Rapid R5
9/26 17:00 Individual Rapid R6
9/26 19:00 Individual Rapid R7
9/27 15:00 Individual Rapid R8
9/27 17:00 Individual Rapid R9
9/27 20:30 Prize Ceremony
9/28 Departure (Shanghai-Narita )

今回の会場である杭州棋院(智力大厦)棋类馆では、チェス、囲碁、ブリッジ、シャンチーの試合が行われています。

2023/09/22

Hangzhou Asian Games The Team Welcome Ceremony

今日は開会式の前日で、アジア大会の選手村では入村式が行われました。直前まで入村式のイメージがよく分かっていませんでしたが、各国の代表たちを選手村に歓迎するイベントでした。日本チームは小規模に数十人での出席でしたが、一緒に入村式に参加した香港、ネパール、モルディブ、インド、パキスタンもこれくらいの人数でした。小雨の中、支給されたレインコートを着用しながら、獅子舞の披露、運営からの挨拶、国旗掲揚、記念品の交換などのイベントを見学し、最後に国ごとに集合写真を撮りました。
入村式の途中で、インドチームの中にインドチェス界のエース、Viditの姿を弘平くんが発見し、記念写真を撮らせてもらいました。事前の情報では、インドからViditともう1人の個人戦出場者は、Erigaisiだと聞いています。2700クラスを複数代表として送り込めるのは、アジアではインドと中国のみでしょう。選手村内では他に、弘平くんがインドネシア代表のSetyaki(ブダペストで私とTuさんが対戦)、私がベトナム代表のDao Thien Haiと顔を合わせています。ベトナムはもっと若手を代表にしてくると思ったので、17年前もアジア大会代表だったDao Thien Haiがくるとは意外です。
また今日はピンバッジの交換をしてきました。こうしたオリンピック、アジア大会等の競技会では、各国の選手、スタッフとの交流を目的としたピンバッジの交換が恒例行事となっています。JOCから支給されたTeam Japanのピンバッジは、他国の素敵なピンバッジたちと交換できました。Hangzhou Asian GamesのX(旧Twitter)公式アカウントでは、日本の卓球女子選手、平野さんと張本さんがたくさんピンバッジを持っている選手として、インタビューを受けたようです。

2023/09/20

Hangzhou Asian Games Tournament Preview

中国の杭州で23日から開幕する、第19回アジア競技大会に参加するため、私と弘平くんは今日から中国に来ています。杭州へは、まず成田空港から2時間半かけて上海に飛び、そこからバスで3時間の移動でした。アジア版のオリンピックであるアジア競技大会は40競技481種目が予定されており、私たちは武術太極拳やテコンドーと同じ便で中国にやってきました。(競技スケジュールによって出発日や帰国日が異なります) 杭州の選手村には着いたばかりで全体をまだ見回れていないですが、おおむね快適に過ごせています。

チェスは個人戦ラピッドとチーム戦クラシカルのプログラムに分かれていますが、今回、私と弘平くんが参加するのは4日間行われる個人戦ラピッドのみです。確認できているスケジュールは以下の通りです。

9/20 Arrival (Narita-Shanghai)
9/21
9/22
9/23 20:00 Opening Ceremony
9/24 15:00 Individual Rapid R1
9/24 17:00 Individual Rapid R2
9/25 15:00 Individual Rapid R3
9/25 17:00 Individual Rapid R4
9/26 15:00 Individual Rapid R5
9/26 17:00 Individual Rapid R6
9/26 19:00 Individual Rapid R7
9/27 15:00 Individual Rapid R8
9/27 17:00 Individual Rapid R9
9/27 20:30 Prize Ceremony
9/28 Departure (Shanghai-Narita )

試合開始まで4日間ありますので、それまで疲れを取りつつ、トレーニングをして試合に備えようと思います。まだ各国代表の情報も少しずつしか入っていないので、それもチェックしたいですね。13年ぶりに参加するアジア競技大会の開始が待ち遠しいです!

2023/09/19

Japan Team Chess Championship 2023 Day2

過去最大級の規模、48チームが参加して開催されたチーム選手権は、無事に2日間の日程を終えて昨日閉幕しました。私たち大阪クラブAは最後まで中継ボードのあるテーブル1を最終戦まで守り切り、5勝1ドローでの優勝を決めました。私にとって久々のチーム選手権優勝です。チームメイトの皆さん、ありがとうございます!

1st Place Osaka Club A 11/12
2nd Place Todai Chess Circle A 10/12
3rd Place Setouchi Chess Club A 10/12
4th Place Keio OB 9/12
5th Place Tohoku Univ OB 9/12

Japan Team Chess Championship 2023 Final Standings

今大会、下馬評では私たち大阪クラブAが優勝の大本命でしたが、実際には最後までぎりぎり優勝の行方は分かりませんでした。2日目は大東文化大学OBを午前のラウンドで下したものの、5Rでは8x8 Blunders に2-2の引き分け。慶應OBチームとの最終戦は2.5-1.5の接戦で制しました。私の母校でもある慶應とのマッチは、私が試合を終えた時点で1.5-1.5のタイで、最後に残った2Bの中原くんの試合の白星が優勝の決め手となりました。私自身はかなり苦しいゲームをなんとかドローに持ち込んだのですが、ここで負けていれば東京大学Aに逆転され、僅差で優勝を逃がしたと聞いています。

今夜は少し迷いましたが、5Rの8x8 Blunders戦、小林くんとの試合を紹介します。このゲームも後で振り返れば、優勝を決めるために大きい一番でした。

Kojima, S - Kobayashi, A
Japan Team Chess Championship 2023 (5)

1. Nf3 g6 2. c4 Bg7 3. d4 d6 4. g3 e5 5. Bg2 exd4 6. Nxd4 Ne7 7. e4?!

以前勝田くんやGM Sadikhovと指した形と同じだと思っていたのですが、それはNb8-Nd7、Ng8-Ne7-Nc6というセットアップでした。 本譜はそれよりも黒のナイトの組み方が早いため、e2-e4をのんびり突くよりもナイトを単にかわすべきです。7. Nc3 Nbc6 8. Nc2! O-O 9. O-O Be6 10. Nd5+/= と進めば好みの形です。

7... Nbc6 8. Be3 O-O 9. Nc3 Be6?!


このマス、このタイミングでナイトビショップ交換を受け入れるのは黒にとってやや不自然だと思いましたが、続くアイディアにあまり自信が持てませんでした。 代わりに9... Ne5! 10. b3 c5! 11. Nde2 Bg4! が良いアイディアで、黒はf3のマスをコントロールすることができます。

10. b3

私はビショップを取るならば、Bg2-Bh3とするか、h2-h4-h5を仕掛けるべきだと思っていましたが、キャスリングも含めてもっとゆっくりでも良かったようです。10. Nxe6! fxe6 11. Rc1 Ne5 12. b3+/-

10... Qd7 11. Rc1 Bg4


私もこの1手が働くのかあまりよく分かっていませんでしたが、小林くんは試合後にこの手を悔やんでいました。11... Bh3 12. O-O Bxg2 13. Kxg2 f5 14. Nxc6 bxc6 15. Re1= 本譜と違い、Qd1-Qd2 が入っていないのであれば、白は別の進め方を模索する必要があります。

12. Qd2 Bh3 13. O-O Bxg2 14. Kxg2 f5 15. exf5?!

こうしたブレイクには取って応えるものだと思っていましたが、相手に簡単なドローチャンスを与えてしまうことになります。15. f3! としてe3-g1ダイアゴナルを開き、ビショップの退路を確保しながら様子を見るべきです。

15... Bxd4! 16. Bxd4 Nxf5 17. Be3 Nxe3+?


このマッチでは4Bで最大のレイティング差があり、多少無理をしても勝負しなければいけないと小林くんは考えているのだと、この局面で感じました。しかし、チームの状況に関係なくここではドローをしっかり選ぶべきで、本譜の進め方は黒のリスクが高すぎます。17... Nh4+! 18. gxh4 (18. Kh1? Nf3! 19. Qd5+ Kh8 20. Kg2 Rae8-+ 小林くんはナイトのチェックに私が避けると読んでいたようですが、f3に刺さったナイトは強力で、黒の勝勢となります。) 18... Qg4+ 19. Kh1 Qf3+ 20. Kg1 Qg4+= このパペチュアルチェックが双方にとって最善です。

18. Qxe3 Rae8 19. Qd2 Re5 20. f4 Rh5 21. Rce1!+-

試合後にYoutubeでの解説を見ても、黒がhファイルに戦力を集めて攻勢とコメントされていましたが、実際にはh2への攻撃はさほど有効ではなく、hファイルに戦力を振りすぎた黒よりも、センターを抑えたうえでナイトとルーク、クイーンの全てのピースが連携しやすい白が圧倒的に有利です。

20... Qh3+ 22. Kg1 Nd4


f2-f4から2段目を開いてh2を受けたうえ、e5のマスにナイトが跳ばれないようにしているので白のディフェンスは十分です。 d4の位置はナイトにとって良さそうですが、f3への跳びこみにさえ気を付けていれば、他に大きな狙いがありません。このような一見良さそうに見えるが実はそうでもないナイトについては、先日のハンガリー遠征の最終戦、Dudin Gleb とのゲームで学んだことです。それよりもc7,e7,f6の3か所にチャンスがある、白のd5のナイトのほうが対称の位置でも存在感があります。

23. Nd5! c5 24. Qg2!

少し悩みましたが、クイーン交換を持ちかけて白キングへのプレーシャーを軽減してしまえば、黒はいよいよhファイルに回ったルークに働きが無くなり、センターから離れたことが痛手になると判断しました。黒はクイーン交換を避けたいところですが、クイーンの良い避け場所がありません。

24... Qg4


24... Qxg2+ 25. Kxg2 b5 26. g4! Rxd5 (26... Rh6 27. cxb5 Nxb5 28. Re6+- 黒ルークは動けず、困っています。) 27. cxd5+- やはりこうした変化を見ても、h5にいったルークはその先がなく、負担になることが分かります。

25. Re8!


この手はNd5-Nf6+をスレットにするシンプルな狙いですが、黒には驚くほど良い対処法がありません。

25... Kg7


25... Rhf5 26. h3 Qh5 27. g4+- ルークを繋げてf6をカバーしても、別のタクティクスで駒損は避けられません。

26. Rxf8 Kxf8 27. Nf6+-

ルークを消し、キングを遠ざければf6をカバーするピースがいなくなってこのフォークが決まります。こうして見るとやはり、hファイルに振ったルークも残そうとしたクイーンも、どちらもターゲットになっていることが分かります。

27... Qe6 28. Nxh5 gxh5 29. f5 Qe3+ 30. Kh1 Qd3 31. f6 Nf5 32. Qf3 1-0


最後はクイーン交換を仕掛ければ白の勝ちは揺るぎません。これでチームも勝ちになったかと思いましたが、隣では中原くんが東野さんとドロー、さらに奥では松尾さんが汐口くんに痛い負けを喫し、勝負の行方は最後まで残った4Bに託されました。8x8はずっと4Bのメンバーを欠き、3人で勝ち上がってきましたが、このラウンドでは三澤さんが参戦して大阪クラブAのキャプテン、平尾くんと見事渡り合いました。難しいゲームでしたが最後はドローになり、優勝の行方は最終ラウンドまでもつれることになったのです。あのときこうしていれば、は意味のない話ではありますが、もし17手目のチョイスで小林くんにドローに持ち込まれていたら、大阪クラブAの優勝は幻となっていた可能性もありますね。個人でもチームの大会でも、楽な優勝はないものだとあらためて感じさせられる大会でした。参加者、運営の皆さん、あらためてありがとうございました。

また表彰式後には、これからアジア大会のチェス競技に出場する私と弘平くんが紹介され、簡単にスピーチさせていただきました。多くの応援メッセージ、ありがとうございました! 2006年ドーハ、2010年広州以来3度目のチェス競技採用となった杭州アジア大会は、今月23日に開幕します。私と弘平くんは今夜成田近辺のホテルに前泊し、明日朝の便で杭州に向かいます。こちらの情報も可能な限りお届けしたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
優勝のお祝いは大阪クラブらしくお好み焼きのお店で。いつもと違うメンバーで楽しく過ごさせていただきました。

2023/09/17

Japan Team Chess Championship 2023 Day1

今日明日の2日間は、大井町で開催されているチーム選手権に参加しています。今年のチーム選手権は過去最多の48チーム、200人を超えるプレーヤーが集まっています。私は大阪クラブAのプレーヤー1として参加し、初日の今日は個人、チームも慶応B、川崎、東北OB相手に3連勝でした。プレーの内容は素直に喜べない部分もあったので、2試合目のエンドゲームを今夜は振り返ります。
Tamura, H - Kojima, S
Japan Team Chess Championship 2023 (2)

47. d5 exd5 48. Rxd5 Rc3+ 49. Kf4 Ra3


dポーンは捌かれましたが、aポーンがターゲットとして残っています。このポーンが落ちて黒に2コネクテッドパスポーンができると勝負にならないため、白は消極的でもルークを退いてaポーンを守るしかありません。

50. Rd2 Rh3 51. Rd5 Ra3 52. Rd2 Kf6?

しかし、ここからプランが分かりませんでした。a,bポーンを進めてそれだけで勝てれば楽ですが、そんなことはないだろうと思ったのがひどい勘違い。ここはaファイルにパスポーンを作れば黒は勝てます。52... a4! 53. Rd4 Rxa2 54. Rxb4 a3 55. Ra4 Ra1 56. Kg3 a2 57. Kg2 f5!-+ 黒は2つ目のパスポーンがfファイルにできるため、これを進めていけば勝ちです。f5-f4-f3+となった際、白キングはf2に逃げるしかなく、黒のルークはa1からh1に脱出できます。こんなルークエンディングは生徒たちにも教えているはずなのに、この試合では自分がfファイルにパスポーンを作れることを完全に失念していました。

53. Rd6+ Ke7 54. Rd2 Kf6 55. Rd6+ Ke7 56. Rd2 Rh3?


56... f6! は7段目を開いてキングが不安定になりますが、白ルークは2段目から離れられないため、さほど気にしなくても良いでしょう。それよりもg5のマスをカバーし、白キングの侵入を止めるほうが重要です。

57. Rd5 Rxh4 58. Rxa5?

慌ててポーンを取り返したくなる気持ちは分かりますが、g4まで落としては厳しくなります。本譜のf7-f5を食らわないためには、キングを上げる手を挟む必要があります。58. Kg5! Ke6 59. Rxa5 Rh2 60. Rb5=

58... f5! 59. Ke5 Rxg4 60. Ra7+ Kd8


これは2コネクテッドができて黒に勝つチャンスがでてきましたが、黒キングが8段目に閉じ込められていることが気がかりです。メイトスレットやポーン取りのチェックをかわしつつ、上手くポーンを進めていきたいところです。

61. Rg7 f4 62. Kd6 Ke8 63. Ke6 Kf8 64. Rb7 g5?

b4を捨てて勝てると思いましたが、これは誤りでした。意外なことに黒が勝つためには、一番武器になりそうに見えるfポーンを捨てるしかないというのがコンピュータの判断です! 64... f3! 65. Rf7+ Kg8 66. Rxf3 Kg7!-+ やはりキングを使わないといけないということですね。fポーンを取らせる間にキングを8段目から脱出させて黒は勝てそうです。

65. Rxb4 Rg2 66. Kf6?

ここが最後のミスで白はドローチャンスを逃しました。66. Rb7! Kg8 67. Kf5! f3 68. Kg6! Kf8 69. Rf7+= こうして8段目に閉じ込めた黒キングにメイトスレットをかけつつ、チェックからポーン取りに踏み切ればドローでした。

66... Ke8 67. Kf5 f3 68. Rb1 f2 69. Rf1 g4 70. Kf4 g3 71. Kf3 Rg1 72. Ke2 Rxf1 73. Kxf1 Kd7 0-1

最後はルークを捌いてポーンエンディングにしてしまえば黒勝ちです。自分ではうまく指したつもりでしたが、白のドローチャンスは一部試合中に見えていないものもあり、とても勉強になりました。

チームで3連勝したのは私たち大阪A、東大A、そして大東文化大学OBです。東大Aと当たるとばかり思っていたので、2R、3Rアップセットで上がってきた大東文化との対戦は意外でした。明日の2日目も星を伸ばし、優勝できるように頑張ります。

Japan Team Chess Championship 2023 R4 Team Pairing

2023/09/08

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第23回予告

9月のYouTubeでの講座告知です。今月の講座は今週末の日曜日、9/10 20時からスタートです。

9月のYouTubeの講座テーマは『どっちのルーク、どこに置く?』です。チェス盤の隅からスタートするルークは、上手く使えれば強力ですが、どのように使えば良いか扱いの難しいピースです。2つのルークが連携し、どちらも同じマスに行ける場合、どちらのルークを動かすかを迷うことも多いでしょう。今月はそんな扱いに悩みやすいルークにスポットを当て、ルークの使うマスや連携について見ていきたいと思います。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第23回『どっちのルーク、どこに置く?』|2023.09.10
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