2023/09/19

Japan Team Chess Championship 2023 Day2

過去最大級の規模、48チームが参加して開催されたチーム選手権は、無事に2日間の日程を終えて昨日閉幕しました。私たち大阪クラブAは最後まで中継ボードのあるテーブル1を最終戦まで守り切り、5勝1ドローでの優勝を決めました。私にとって久々のチーム選手権優勝です。チームメイトの皆さん、ありがとうございます!

1st Place Osaka Club A 11/12
2nd Place Todai Chess Circle A 10/12
3rd Place Setouchi Chess Club A 10/12
4th Place Keio OB 9/12
5th Place Tohoku Univ OB 9/12

Japan Team Chess Championship 2023 Final Standings

今大会、下馬評では私たち大阪クラブAが優勝の大本命でしたが、実際には最後までぎりぎり優勝の行方は分かりませんでした。2日目は大東文化大学OBを午前のラウンドで下したものの、5Rでは8x8 Blunders に2-2の引き分け。慶應OBチームとの最終戦は2.5-1.5の接戦で制しました。私の母校でもある慶應とのマッチは、私が試合を終えた時点で1.5-1.5のタイで、最後に残った2Bの中原くんの試合の白星が優勝の決め手となりました。私自身はかなり苦しいゲームをなんとかドローに持ち込んだのですが、ここで負けていれば東京大学Aに逆転され、僅差で優勝を逃がしたと聞いています。

今夜は少し迷いましたが、5Rの8x8 Blunders戦、小林くんとの試合を紹介します。このゲームも後で振り返れば、優勝を決めるために大きい一番でした。

Kojima, S - Kobayashi, A
Japan Team Chess Championship 2023 (5)

1. Nf3 g6 2. c4 Bg7 3. d4 d6 4. g3 e5 5. Bg2 exd4 6. Nxd4 Ne7 7. e4?!

以前勝田くんやGM Sadikhovと指した形と同じだと思っていたのですが、それはNb8-Nd7、Ng8-Ne7-Nc6というセットアップでした。 本譜はそれよりも黒のナイトの組み方が早いため、e2-e4をのんびり突くよりもナイトを単にかわすべきです。7. Nc3 Nbc6 8. Nc2! O-O 9. O-O Be6 10. Nd5+/= と進めば好みの形です。

7... Nbc6 8. Be3 O-O 9. Nc3 Be6?!


このマス、このタイミングでナイトビショップ交換を受け入れるのは黒にとってやや不自然だと思いましたが、続くアイディアにあまり自信が持てませんでした。 代わりに9... Ne5! 10. b3 c5! 11. Nde2 Bg4! が良いアイディアで、黒はf3のマスをコントロールすることができます。

10. b3

私はビショップを取るならば、Bg2-Bh3とするか、h2-h4-h5を仕掛けるべきだと思っていましたが、キャスリングも含めてもっとゆっくりでも良かったようです。10. Nxe6! fxe6 11. Rc1 Ne5 12. b3+/-

10... Qd7 11. Rc1 Bg4


私もこの1手が働くのかあまりよく分かっていませんでしたが、小林くんは試合後にこの手を悔やんでいました。11... Bh3 12. O-O Bxg2 13. Kxg2 f5 14. Nxc6 bxc6 15. Re1= 本譜と違い、Qd1-Qd2 が入っていないのであれば、白は別の進め方を模索する必要があります。

12. Qd2 Bh3 13. O-O Bxg2 14. Kxg2 f5 15. exf5?!

こうしたブレイクには取って応えるものだと思っていましたが、相手に簡単なドローチャンスを与えてしまうことになります。15. f3! としてe3-g1ダイアゴナルを開き、ビショップの退路を確保しながら様子を見るべきです。

15... Bxd4! 16. Bxd4 Nxf5 17. Be3 Nxe3+?


このマッチでは4Bで最大のレイティング差があり、多少無理をしても勝負しなければいけないと小林くんは考えているのだと、この局面で感じました。しかし、チームの状況に関係なくここではドローをしっかり選ぶべきで、本譜の進め方は黒のリスクが高すぎます。17... Nh4+! 18. gxh4 (18. Kh1? Nf3! 19. Qd5+ Kh8 20. Kg2 Rae8-+ 小林くんはナイトのチェックに私が避けると読んでいたようですが、f3に刺さったナイトは強力で、黒の勝勢となります。) 18... Qg4+ 19. Kh1 Qf3+ 20. Kg1 Qg4+= このパペチュアルチェックが双方にとって最善です。

18. Qxe3 Rae8 19. Qd2 Re5 20. f4 Rh5 21. Rce1!+-

試合後にYoutubeでの解説を見ても、黒がhファイルに戦力を集めて攻勢とコメントされていましたが、実際にはh2への攻撃はさほど有効ではなく、hファイルに戦力を振りすぎた黒よりも、センターを抑えたうえでナイトとルーク、クイーンの全てのピースが連携しやすい白が圧倒的に有利です。

20... Qh3+ 22. Kg1 Nd4


f2-f4から2段目を開いてh2を受けたうえ、e5のマスにナイトが跳ばれないようにしているので白のディフェンスは十分です。 d4の位置はナイトにとって良さそうですが、f3への跳びこみにさえ気を付けていれば、他に大きな狙いがありません。このような一見良さそうに見えるが実はそうでもないナイトについては、先日のハンガリー遠征の最終戦、Dudin Gleb とのゲームで学んだことです。それよりもc7,e7,f6の3か所にチャンスがある、白のd5のナイトのほうが対称の位置でも存在感があります。

23. Nd5! c5 24. Qg2!

少し悩みましたが、クイーン交換を持ちかけて白キングへのプレーシャーを軽減してしまえば、黒はいよいよhファイルに回ったルークに働きが無くなり、センターから離れたことが痛手になると判断しました。黒はクイーン交換を避けたいところですが、クイーンの良い避け場所がありません。

24... Qg4


24... Qxg2+ 25. Kxg2 b5 26. g4! Rxd5 (26... Rh6 27. cxb5 Nxb5 28. Re6+- 黒ルークは動けず、困っています。) 27. cxd5+- やはりこうした変化を見ても、h5にいったルークはその先がなく、負担になることが分かります。

25. Re8!


この手はNd5-Nf6+をスレットにするシンプルな狙いですが、黒には驚くほど良い対処法がありません。

25... Kg7


25... Rhf5 26. h3 Qh5 27. g4+- ルークを繋げてf6をカバーしても、別のタクティクスで駒損は避けられません。

26. Rxf8 Kxf8 27. Nf6+-

ルークを消し、キングを遠ざければf6をカバーするピースがいなくなってこのフォークが決まります。こうして見るとやはり、hファイルに振ったルークも残そうとしたクイーンも、どちらもターゲットになっていることが分かります。

27... Qe6 28. Nxh5 gxh5 29. f5 Qe3+ 30. Kh1 Qd3 31. f6 Nf5 32. Qf3 1-0


最後はクイーン交換を仕掛ければ白の勝ちは揺るぎません。これでチームも勝ちになったかと思いましたが、隣では中原くんが東野さんとドロー、さらに奥では松尾さんが汐口くんに痛い負けを喫し、勝負の行方は最後まで残った4Bに託されました。8x8はずっと4Bのメンバーを欠き、3人で勝ち上がってきましたが、このラウンドでは三澤さんが参戦して大阪クラブAのキャプテン、平尾くんと見事渡り合いました。難しいゲームでしたが最後はドローになり、優勝の行方は最終ラウンドまでもつれることになったのです。あのときこうしていれば、は意味のない話ではありますが、もし17手目のチョイスで小林くんにドローに持ち込まれていたら、大阪クラブAの優勝は幻となっていた可能性もありますね。個人でもチームの大会でも、楽な優勝はないものだとあらためて感じさせられる大会でした。参加者、運営の皆さん、あらためてありがとうございました。

また表彰式後には、これからアジア大会のチェス競技に出場する私と弘平くんが紹介され、簡単にスピーチさせていただきました。多くの応援メッセージ、ありがとうございました! 2006年ドーハ、2010年広州以来3度目のチェス競技採用となった杭州アジア大会は、今月23日に開幕します。私と弘平くんは今夜成田近辺のホテルに前泊し、明日朝の便で杭州に向かいます。こちらの情報も可能な限りお届けしたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
優勝のお祝いは大阪クラブらしくお好み焼きのお店で。いつもと違うメンバーで楽しく過ごさせていただきました。

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