2013/06/04

Memories of Hungary Vol. 4 - Hungarian IMs -

ハンガリーでの長いIM ノームチャレンジを振り返るうえでは、そこでプレーするIM たちについて語らなければいけないでしょう。IM ノームを獲得するためには、一定数以上のIM との対戦が不可欠となります。そのために、ハンガリーでのIM トーナメントには、地元のIM が協力して参加し、IM トーナメントを成り立たせています。そこで今回は、彼ら一人一人との戦績やゲームを振り返ろうと思います。なお、紹介するIM のレイティングは、最後に対戦した際の数値を表記しており、対戦成績は、去年から今年にかけての滞在中の試合のみです。


IM Galyas, M (2412)
5敗2ドロー

私にとってハンガリーで最大の難敵だったのが、IM Galyas です。IM の基準である2400をキープし続ける実力を持ち、他国からのIM ノームチャレンジャーを阻む大きな壁となっています。1.d4 のオーソドックスなスタイルですが、非常にパワフルなプレーが持ち味で、私は7回の対戦で、とうとう一度も勝つことが出来ませんでした。秋以降の滞在で実力をつけた現在ならば、そう簡単に負けることはないと信じていますので、またハンガリーに渡った際の対戦をとても楽しみにしています。


IM Hajnal, Z (2364)
1敗2ドロー

ブダペストではなく、ケチケメートを拠点とするIM で、最も強いプレーヤーと言えば、Hajnal をおいて他にいません。現在は2300台にレイティングを落としているものの、Galyas に並ぶ高い実力を誇っています。1.e4 の非常に正統派のチェスで、私も苦戦を強いられました。(黒でやや弱気なのが、レイティング低迷の要因か)ハンガリーを去る直前の2月に、彼としっかり指せたのは私にとって良い思い出です。


IM Szeberenyi, A (2328)
2勝1敗5ドロー

ハンガリーでも最も多くの対戦をこなし、私がライバル視していたのが、Adam Szeberenyi です。なんと7回参加したFirst Saturday で、合計8回も対戦しています(笑) 7月のFS では、Galyas を差し置いて優勝した実力者で、彼のプレーからもたくさんのことを学ばせてもらいました。


IM To, N M (2287)
3勝1敗

ハンガリーにはベトナム系のプレーヤーが数人いますが、その中でもトップクラスの実力を持ち、10代でIM タイトルを獲得した天才肌のプレーヤーが、To Nhat Minh です。6月の初対戦では、彼には逆立ちしても勝てないと思えるような実力差を見せ付けられましたが、その後はなんとか3連勝。今回紹介した中では、唯一私よりも若いIM ですので、今後レイティングを2300、2400台に戻し、今後の活躍に期待したいIM の一人です。


IM Farago, S (2264)
1勝1ドロー

ここからの3人は、ブダペストのFS を守護する超ベテランIM たちです。彼らからまったくポイントが取れないようであれば、FS でIM ノームを獲得することは出来ません! Sandor Farago はトリッキーなプレーで相手を翻弄しますが、ベテランとして多くの試合経験があり、それに裏付けされた実力も兼ね備えています。3年前にハンガリーで彼と指したゲームは、私にとって、ベストゲームの一つになっています。


IM Lengyel, B (2252)
3勝2ドロー

ハンガリーではレジェンドとまで言われ、現在のトップGM であるLeko やAlmasi とも試合経験を持つのが、Bela Lengyel です。1.e4 の中でもソリッドなラインを好む彼を、黒で破るのはそう簡単ではありません。10月のFS で、Szeberenyi 相手に白黒両方で勝利を収めたのには、舌を巻きました。(ハンガリーのIM 同士が当たると、短手数でドローにすることもしばしばです。)


IM Szalanczy, E (2234)
2勝

Emil Szalanczy は黒で独特のオープニングにこだわりを持ち(Sicilian Dragon とOld Benoni)、時にはFarago 以上にトリッキーなゲームを披露してくれます。馬場さんとともに初めてチャレンジしたFS では、彼がベトナムの少年相手に目を疑うようなタクティクスを決めたのをよく覚えています。

この記事で紹介した以外にも、ハンガリーで対戦したIM はたくさんおり、彼らは隣国のセルビアやオーストリアから毎回来るか、ハンガリーに長期滞在しています。その目的はレイティングや試合経験よりも、参加することでオーガナイザーから得られる謝礼でしょう。(彼らは払ってプレーするのではなく、貰ってプレーする立場になります。)滞在費や移動費の支給がどうなっているか、興味はありますが、オーガナイザーに尋ねたことはありません。それは自身がIM タイトルを獲得してからのお楽しみにしておきましょう。

結局、ハンガリーに滞在した9ヶ月で(Istanbul Olympiad、London Chess Classic を除いて)、IM とは68試合をこなし、20勝17敗31ドローという戦績でした。レイティングを2400に乗せ、3つ目のIM ノームを獲得するためには、今後、彼らを相手にさらに好成績を残さなければいけないでしょう。現在は2200台にレイティングを落としているIM も、かつては2400に到達した実力者ですので、今後も油断せずに試合に臨み、彼らのプレーから学べるものを探していきたいと思います。

Vol.5 に続く

3 件のコメント:

Yumi さんのコメント...

良い記事ですね。思い出のアルバムになりそうですね。まだまだこれからもっと分厚い思い出ブックを作っていくのでしょうね‼ これからの活躍もとても楽しみです!

Shinya_Kojima さんのコメント...

Yumiさん、ありがとうございます。
こうしてIMについての記事を書くたび、私も早く、タイトルを獲得しなければと強く身にしみますね。

Yumi さんのコメント...

もう、時間との勝負ですよ! 日本にいるとなんだか遠くに見えますが、また旅立った時には、きっとすぐにとれると思います! 夢を叶えに旅立つのは羨ましい‼ 素敵なことですよね!

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