4日間のJapan League は、今日最終日を迎え、無事に閉会となりました。GM同士のドロー以外、6戦全てを勝った中国のGM Lu Shanglei が、6.5/7 で堂々の優勝です。2年前に新潟で試合をした時も思いましたが、とても手が早く、そして強い! World Blitz では、Carlsen を破るなど、世界のトップクラスとも張り合うGM の実力は伊達ではありません。Lu Shanglei を含め、入賞した皆さん、おめでとうございます!
1st Place Lu Shanglei (GM, CHN, 2607) 6.5/7
2nd Place Zhou Jianchao (GM, CHN, 2616) 6/7
3rd Place Aoshima Mirai (JPN, 2207) 5.5/7
4th Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2394) 5.5/7
5th Place Shinoda Taro (JPN, 1955) 5.5/7
2nd Place Zhou Jianchao (GM, CHN, 2616) 6/7
3rd Place Aoshima Mirai (JPN, 2207) 5.5/7
4th Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2394) 5.5/7
5th Place Shinoda Taro (JPN, 1955) 5.5/7
最終順位を決める大事な最終戦、青嶋くんは馬場さんに、私は松尾さんに、篠田くんはWang Jue に勝って5.5P を決めました。唯一よろけたのはGM Zhou Jinahcao で、入江さんが2B で苦しい中盤から粘りに粘り、最後はルークエンディングでドローをもぎ取りました。2600台のGM から公式戦でポイントを取った日本人は、これまで数えるほどだと思います。入賞こそ逃しましたが、入江さんもおめでとうございます。
今年の参加メンバーを考えれば、去年に続いての連覇は難しかったですね。それでも、5勝1敗1ドローで、他の入賞者にしかポイントを落としていないというのは、十分な戦績だと思います。レイティングは+4 で、試合の内容もまずまずでしょう。最後の松尾さんとの試合では、非常に面白いタクティクスが決まったので、そちらをご紹介します。
Kojima, S (IM, JPN, 2394) - Matsuo, T (JPN, 2245)
Japan League 2016 (7)
1. Nf3 Nf6 2. c4 c5 3. Nc3 g6 4. d4 cxd4 5. Nxd4 Bg7 6. e4 Nc6 7. Be3 Ng4!?
Japan League 2016 (7)
この変化は10年ぶりくらいに指されました。当時は何も知らずに指していましたが、今回は松尾さんが指すような予感がして、前夜にある程度調べてきました。
8. Qxg4 Nxd4 9. Qd1 Ne6 10. Qd2 O-O
私が調べた変化では、10... Qa5 11. Rc1 b6 12. Be2 Bb7 13. f3 g5!? と指すのが面白いようです。黒はキャスリングをあきらめ、f4 のマスを抑えつつ、キングサイドから攻撃を仕掛けます。
11. Be2 b6 12. O-O Bb7 13. f3 d6 14. Rfd1 Rc8 15. Rac1 Kh8
このような展開は7... 0-0 の一般的なMaroczy Bind の変化で指しなれています。ここからは、黒のf7-f5 を警戒しつつ、プレッシャーをかけられるポイントを探します。
16. Bf1 Qe8 17. Nb5!?
黒のb7-b6 の弱点は、a7-a6 をついていないために、b5 のマスへの白ピースの侵入を許してしまうことです。それを防ごうとa7-a6 を突けば、今度はb6 のポーンが弱くなります。白はa7 のポーンを一時的にでも攻撃しておくことで、黒のピースを守りに縛らせます。
17... Ra8 18. b3 Rg8 19. g3!
ここは迷いましたが、Bf1-Bh3 とビショップを組み直し、e6 のナイトを狙うことにします。それを防ぐためには、黒はf7-f5 をここで指すしかありませんが、そうなればe6 のナイトが浮くことになるため、白にとってのチャンスとなります。
19... f5 20. Bh3! Qf7 21. Rf1! fxe4?
私はe4 のポーンを取られないよう、あらかじめfファイルにルークを回しておきました。それに対して松尾さんは、fファイルを開く危険を過小評価し、白の狙いに乗ってしまいます。21... Rgf8 と指していれば、黒はやや劣勢ながらも試合を続けられたでしょう。
22. fxe4 Bf6 23. Rxf6!!
他にも候補手はありますが、少し考えてエクスチェンジを捨てることにしました。最初に考えたのは、e4-e5 を押し込んでからクイーンを突入させるアイディアで、そちらも白が有利になります。23. e5!? dxe5 24. Qd7 Nd8 (24... Bc8 25. Qd5 Ng5 26. Qxf7 Nxf7 27. Bg2 Rb8 28. Nxa7+/-) 25. Nd6 exd6 26. Qxf7 Nxf7 27. Rxf6+/-
23... Qxf6
23... exf6 24. Nxd6 Qd7 25. Nxb7+- ならば、白はすぐに駒得で分かりやすく勝勢です。
24. Rf1 Qe5 25. Bxe6 Qxe6 26. Bd4+ Rg7 27. Qh6 Qg8
エクスチェンジを取りかえせることを確定させた白は、間髪入れずに黒キングを追い詰めにいきます。27... Rag8 28. Rf8!+- (28. Rf4! もOK) ならば、黒はメイトを防ぐためにクイーンを捨てるしかありません。
28. e5!
この手まで読んで勝ちを確信しました。もう一つ、g7 のルークを攻撃できれば白の勝ちですが、28. Nc7? e5! は失敗です。黒のe7-e5 を防ぎ、g7 のルークへの攻撃を続いけるためには、先にe4-e5 と白からポーンを押し込む必要があります。
28... Rf8
28... dxe5 29. Bxe5+- と進めば、黒はここから何もできず、Nb5-Nc7-Ne6 を待つだけとなります。黒ルークが8段目から離れれば、クイーンでg7 のルークを取り、Rf1-Rf8 でメイトです。 本譜ではルーク交換には成功しますが、白勝ちのエンドゲームへと一直線に進みます。
29. Rxf8 Qxf8 30. exd6 exd6 31. Nxd6 Bc6 32. Nc8! Kg8 33. Qxg7+ Qxg7 34. Bxg7 Kxg7 35. Nxa7 Bd7 36. b4 1-0
ナイトで2つのポーンをかすめ取り、最後はcポーンを進めていけば勝負ありです。今年のゲームの中では、全日本の馬場さんとの試合に次いで、お気に入りとなりました。
今年は過去最高の59名の参加者が集まり、Japan League も他と同じような、様々なレベルのプレーヤーが参加するオープントーナメントになりつつあることを感じます。来年以降も、中国のマスターたちとの交流を続けることを願っています。それでは参加者の皆さん、4日間お疲れ様でした!
表彰式後は、Zhou Jianchao とLu Shanglei の2人による同時対局が行われました。私は最後まで残らなかったため、詳しい結果は後日伺おうと思います。
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