Japan Open 2019 入賞者たち Photo by Yamada, A
ジャパンオープンは昨日、最終日の4日目を迎え、無事に全試合が終了しました。最終結果は以下の通りです。
1st Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2330) 6/7
2nd Place Kobayashi Atsuhiko (JPN, 2083) 6/7
3rd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2400) 5.5/7
4th Place Nakamura Naohiro (JPN, 2098) 5.5/7
5th Place Sabirov Ramil (GER, 2105) 5.5/7
優勝はジャパンチェスクラシックに続き、南條くんでした。6R で私を破り、最後はSabirovさんとドローで優勝を決めています。タイブレークで惜しくも2位になった小林くんも、私に敗れた以外は6勝で、自身のレイティングも初めて2100に乗せました。この上位2名が来年ロシアで開催されるハンティマンシスクオリンピアードのオープンチーム代表権を獲得しています。また女子の部では、高安さんと石塚さんが残っていたオリンピアード女子代表の残り2席を獲得しています。
3位以下は5勝1敗1ドローで3人が並び、タイブレークで私、中村くん、Sabirovさんの順になっています。Sabirovさんはロシア生まれ、ドイツ籍のプレーヤーで、現在は慶応義塾大学に留学中とのことです。中村くんの指摘で初めて気づきましたが、他の入賞者も全員慶應OBですね。珍しい入賞のメンツです。その他、U1600、女性賞などを獲得された入賞者の皆さん、おめでとうございます!
私は南條くんに敗れた6Rに続き、7Rで松尾さんに黒を引きました。白でSabirovさんという予想が外れ、どのような勝負にするか悩みながら最終戦に突入します。
Matsuo, T (CM, JPN, 2179) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
Japan Open 2019 (7)
1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nd2 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7
直前の6R、南條くんとの試合ではFIDE 公式戦初となる
7... e6 を指しましたが、セオリーを間違えて敗れてしまいました。黒連続でCaro-Kann メインラインとなったこの試合では、より慣れている
7... Nd7 で勝ちを狙います。
8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bd2 Ngf6 12. O-O-O Bd6!?
昨年のモンテネグロでの試合から、
12... Be7 に代わってこちらを使っています。早めの
Ng3-Ne4 を催促し、ピース交換を進めます。
13. Ne4 Nxe4 14. Qxe4 Nf6 15. Qe2 Bc7 16. Kb1!?
以前松尾さんと試合をした際も、
12... Be7 のラインでこのキングが寄る手を使ってきました。a2 をキングで守っておくことで、
Qd8-Qd5 に備えます。しかし、黒はそれでもクイーン交換と満足なエンドゲームを目指し、この手を指すでしょう。
16... Qd5 17. Rh4!?
黒の黒マスビショップが
d8-h4 のダイアゴナルにいないことを利用してルークを前進させ、e4 のマスをカバーすることで
Nf6-Ne4 や
Qd5-Qe4 を防ぎます。特にクイーンのe4 への跳び込みを防いでおくと、
c2-c4 に対してどうするか黒は悩むところです。
17... b5 18. g4 Ne4
g2-g4 は4段目に上がったルークと相性が悪く、e4 のマスが利用できるのは黒にとってラッキーだと思いましたが、将来的に
g4-g5 と進めるプランはシンプルながら強力で、黒は対策を考えなければいけません。ひとまずナイトをe4 に進めて
g4-g5 の際に当たらないようにし、g5 のマスもカバーしておきます。
19. Be3 O-O 20. Nd2 Nxd2+ 21. Qxd2 Bd8 22. Rh3 Be7
h4 に上がったルークを当てることでテンポを得つつ、黒マスビショップはg5 をカバーできるe7 のマスに戻ってきました。これが
g2-g4 を見た際に思い描いていたディフェンスで、d8 にルークを回すことを遅らせた理由でもあります。
23. f4 f6
このfポーンを進めるディフェンスは見たことはあったものの、実際に使うのは初めてです。直前でナイトを交換したのは黒のディフェンス面で大きく、d5 のクイーンは脅かされるほぼ心配がなく、e6、c6 などの白マスのポーンも危険はありません。
24. Rg3 Rad8 25. Qd3 e5!
検討では
25... f5!? のアイディアも出しましたが、このeポーンを進める手もfファイルをこじ開け、f8 に残していたルークを活用するアイディアとして頭にありました。
26. fxe5
fファイルを開くのを許してくれるのは意外でしたが、
26. f5?! exd4 27. Bxd4 c5 28. Bf2 Qe4! この手を試合中は見落としていました。
29. Qf1 Rxd1+ 30. Qxd1 Rd8 31. Rd3 (31. Qc1? Qe2-+) 31... Rxd3 32. cxd3 Qg2=/+ このように進めば黒は満足な展開です。
26... fxe5 27. g5 e4
ここは難しい判断ですが、単にg5 交換からd4 を取っても、
Rd1-Rg1 でポーンは取りかえされてしまいます。ならばeポーンを進めてテンポを取りつつ、パスポーンを早めに決めてしまいます。
28. Qd2
g5 にあてる手が自然にも見えますがですが、
28. Qb3!? Qxb3 29. axb3 hxg5 30. Bxg5 Bxg5 31. Rxg5 Rd5 という進め方もありで、クイーン交換からバックランクメイト防ぐことで、d4 取りを防ぎます。
28... Bxg5 29. Bxg5
検討では、ピース交換を遅らせ、バックランクを守るために進めるポーンも変えてはどうかと話が出ました。
29. Rdg1 Rf5 30. b3 Kh7! 31. Bxg5 hxg5 32. Rxg5 Rxg5 33. Rxg5 Qxd4=/+ しかしこれならこれで、白はd4 を守っていないためにポーンが落ちてしまいます。
29... hxg5 30. c3 Rf5 31. Rdg1 Rdf8 32. Rxg5 Rf1+ 33. Rxf1??
両者とも検討ですら、このルーク交換が白の負けを決定づけるブランダーであると気付きませんでした。
Rf1-Rf2 と退く手がクイーン取りになるため、ルークを交換せずにキングが逃げる手はないと思い込んでいましたが、よくよく考えれば白のルークが先に黒クイーンに当たっています。gファイルに重なった白ルークの目標は、g7 しか頭にありませんでした。
33. Kc2! Rxg1 (33... R1f2? 34. Rxd5 cxd5 35. Qxf2 Rxf2+ 36. Kb3+/=) 34. Rxg1 Qxh5=/+ しかし、正しく進めれば黒はポーンを取り、まだわずかなアドバンテージをキープできます。
33... Rxf1+ 34. Kc2 Qxa2 35. Rxg7+ Kf8!-+
松尾さんが読み落としていたのはこの手で、差し出されたルークを無視してかわすことで、白キングを窮地に追い込みます。
35... Kxg7? 36. Qg2+ は当然ルークを取りかえされてしまい、黒は全てのアドバンテージを失います。
36. Qe2 Qb1+
どう決めるべきか少し悩みましたが、大人しくルークを守っておいて、1テンポ遅れて差し出されたルークをありがたくいただくことにします。ただし、相手クイーンのパペチュアルチェックを振り切れるかどうか読むのは私が苦手とするところで、かなり慎重に確認しました。
37. Kb3 Kxg7 38. Qg4+ Kf6 39. Qg6+ Ke7 40. Qg7+ Rf7 41. Qg5+ Kd7 42. Qg4+ Kc7 0-1
白はルークを取られたうえ、これ以上クイーン単発でのチェックが続かないため、ここでリザインしました。私の試合終了前に後ろの席では小林くんが最終戦の白星を決めていたため、追いつくことができないことは途中で分かっていましたが、それでも最終戦を勝てて大会を締めくくれて一安心です。
前オリンピアードのチームメイトでもある松尾さんとは、この数年、白ばかりを持って試合をしており、黒を持つのは実に5年ぶりのことです。今年の全日本では、白を引いた大事なラウンドでポイントを落としてしまったため、その分この日の勝利は嬉しかったです。オリンピアードの代表権は残念ながら逃してしまいましたが、来年の全日本選手権で獲得を目指そうと思います。
参加者、そして運営の皆さん、4日間のジャパンオープンお疲れ様でした。私は今月行われる名古屋オープンが、今年参加する最後の大会になると思います。今年残り2か月弱、最後までよろしくお願い致します。