中部快速オープンレポートの後半です。まずはR4のゲーム内容から。
R4/ W/ 塩見亮 (2161)/ Draw/ Sicilian Alapin
塩見さんとは例年よりも多く試合をしています。今年5試合目の今回は、白番で久々にSicilian Alapin を使ってみました。途中怪しく1ポーン、続いてビショップをサクリファイスしてみました。黒のピースが使いづらいことを考えれば、長期的な代償があったと思います。
しかし時間切迫により、ありえないブランダーが私から飛び出て、一気に敗勢に。最後はお互い時間がなく、ドローで手を打ちましたが、丁寧に続けてれば塩見さんが勝ったと思います。どうも今年の塩見さんとのドローの試合は、内容がイマイチです。ともあれ、負けの試合を拾ったことで、互いに3.5/4 で優勝への望みをつなげます。
R5/ B/ 馬場雅裕 (2240)/ Win/ French McCutcheon
そして例年よりさらに多いのが、馬場さんとの試合です。公式戦では今年6回目の対戦で、夏以降は黒が多くなっています。
名古屋オープン同様、優勝するためには最大のライバルを黒で降すしかありません。
Baba, M (2240) - Kojima, S (2387)
Chubu Rapid (5)
1. d4 e6 2. e4 d5 3. Nc3 Nf6 4. Bg5 Bb4!?
French Defence McCutheon Variarion です。ブリッツやネット上での対戦を含め、初めて指しました。
黒で勝ちにいくには、良いチョイスだと考えます。
5. e5 h6 6. Bd2 Bxc3 7. bxc3 Ne4 8. Qg4 Kf8 9. Bd3 Nxd2 10. Kxd2 c5 11. h4 c4 12. Bf1!?
このようなポーンストラクチャーでは白マスビショップが使いづらいため、(Be2-Bh5 という使い方もあります。)
一旦戦場から退け、e2をナイトが跳ぶマスとして活用します。
12... b5 13. Rh3 Nc6 14. Ne2 a5 15. a3 Bd7 16. Rf3 16... Ne7 17. Ng3 b4!
私はここが仕掛け時だと判断しました。McCutheon に限らず、このようなポーンストラクチャーでは典型的なブレイクです。
18. Nh5
ポーンを捌く
18. axb4 axb4 19. Rxa8 bxc3+ 20. Rxc3 Qxa8 =/+ ならば、
黒がクイーンサイドの突破によるアドバンテージを持ちます。
18... bxc3+ 19. Kc1?!
馬場さんはこの位置もあると試合後に言っていましたが、この後の展開を考えれば、
19.Ke1 が正解でした。
19... Rg8 20. Qf4 Nf5 21. g4?
典型的な攻めですが、ここではうまくいきません。c1のキングが負担となります。
21. Rb1 Rb8 22. Rxb8 Qxb8 23. Rxc3 Qb6 -/+
21... g5! 22. hxg5 hxg5 23. Qh2 Nh4?!
ベストの手を逃がしてしましました。
23... Qb6! 24. Rxc3 Qxd4 25. Qh3 (ナイトがまだf5にいるため、本譜と違い、g3のマスにクイーンがいけないことがポイント)
25... Rh8!! -+
24. Rxc3 Qb6 25. Nf6 Qxd4 26. Qg3 Ba4 27. Rb1!?
27. Nxg8 Kxg8 =/+ とエクスチェンジを取るのも、白としては一つの選択肢です。
それでも黒はセンターポーンと、相手の白マスビショップを抑え込んでいることにより、やや優勢のまま試合を進められるでしょう。
27... Rg6
私はf6のナイトがうっとうしかったため、エクスチェンジを自分から切るつもりでしたが、ここではルークをhファイルで活用するアイディアが強力です。
27... Rh8! 28. Rb7 Bc6 29. Rb1 Ng6 -+
28. Rb7 Rxf6 29. exf6 Qxf6 30. Re3 Kg7 31. Be2?
黒のポーンが厚いため、やりたくない気持ちも理解できますが、ここはクイーンを交換する一手でした。
31. Qe5 Qxe5 32. Rxe5 Kf6 =/+
31... d4! 32. Re4 d3!
32... Bc6 33. Rxf7+ Qxf7 34. Qe5+ Kh7 でも黒の勝ちです。
33. Bxd3 Bc6
33... cxd3 34. Rxa4 Rd8! -+ 試合中、この手が見えずもう一つの変化に入ります。
34. Rb6 Bxe4?
シンプルな勝ちを読み切れず、1ポーンアップのエンドゲームへと突入します。
34... Qa1+! 35. Kd2 Bxe4 36. Bxe4 Qd4+ -+
35. Bxe4 Rd8 36. Qe3 Ng6 37. Bxg6 Kxg6 38. Rb5 Qa1+ 39. Rb1 Qd4 40. Rb5 Qd1+ 41. Kb2 Qxg4 42. Rxa5 Qd4+ 43. Qxd4 Rxd4
よくやく局面がはっきりしてきました。このルークエンディングは、順当にいけば黒勝ちです。
44. Rc5 f5 45. a4 Rf4 46. a5
46. Re5 Rxf2 47. Rxe6+ Kh5 48. a5 g4 49. Re5 Kg5 -+ でも黒が勝てそうです。
46... Rxf2 47. a6 Rd2 48. a7 Rd8 49. Ra5 Ra8 50. Kc3 g4 -+
あとはキングでサポートをしつつ、コネクテッドパスポーンを進めていきます。
51. Kd4 Kg5 52. Ke3 e5 53. Ra6 e4 54. Ra5 g3 55. c3 Kg4 56. Ra6 f4+!
eポーンを取らせてしまうのが、シンプルな勝ちのアイディアです。
57. Kxe4 Re8+!
キングをパスポーンから遠ざければ、ルークを捨ててもポーンとキングだけで勝つことができます。
58. Kd5 f3 59. a8=Q Rxa8 60. Rxa8 f2 61. Rf8 Kh3 62. Ke4 Kg2 0-1
これで馬場さんには黒でCaro-Kann,Sicilian,French を使って3連勝。次の対戦では何を指すか悩みます。このラウンドで塩見-Averbukh がドローになったため、0.5Pリードで最終戦を迎えます。
R6/ W/ 藤沢寛 (1835)/ Win/ Slav Defence
最終戦の相手は昨年の中部快速に引き続き、藤沢さんです。Slav Defence Geller Gambit で、序盤白にややおかしな手が出るものの、面白い構想でした。
中盤では白にダブルビショップを与えるものの、f2へのプレッシャーで押し続け、1ポーンアップのエンドゲームに。頑張ればドローチャンスもあったと思いましたが、不必要なエクスチェンジ捨てがきたため、無事に黒勝ちとなりました。
こうして全6試合が終了し、最終戦で汐口くんをあっという間に倒した塩見さんが2位、私と塩見さんの試合以外を危なげなく勝ったAverbukh さんが3位入賞となりました。
1st 小島 5.5/6
2nd 塩見 5/6
3rd Averbukh 4.5/6
長かったようで実際は短い1日のトーナメントが、これで終了しました。名古屋まで遠征された皆さん、お疲れさまでした。中部や関西のプレーヤーの皆さんとも久々にお会いすることができ、楽しかったです。
次の私の遠征は、来月頭の函館チェス大会の予定です。冬の北海道と、函館チェスクラブの子供たちとの交流を心待ちにしています。