2012/05/30

Middlegame and Endgame Studies In The Practical Games

ハンガリーに来て1カ月近くたち、2つのIM トーナメントが終わりました。色々と勉強になることは多いですが、チェスは結局のところ、序盤の準備の問題ではなく、地力の強いほうが勝つ、という当たり前のことを、改めて認識しています。もちろん、対戦相手と色が事前にわかる総当たり形式でのトーナメントでは、普段のスイス式のトーナメントよりも、相手の研究はやりやすいと言えます。しかし、いくら優勢のポジションを築いても、中盤の構想力や、終盤の知識がなければポイントを失ってしまいます。そこで今日は、CAISSA のゲームの中から、興味深かった中盤、終盤をご紹介しようと思います。

Galyas, M (IM, HUN, 2403) - Wang, D (CHN, 2130)

黒はd4 のアウトポストを中心にうまく駒を組んでいるように見えますが、白もしっかりとd5 のアウトポストでナイトを安定させています。加えて、黒はd6,f5 に弱点となるポーンがあるのに対し、白には特に弱点はありません。ここからのGalyas の手の作り方には、是非注目していただきたいと思います。

19. Kh1!?


キングを白マスに避けることで、次の手の準備となります。

19... a6 20. Bxd4!?


ダブルビショップを消してしまいますが、その代わりにeファイルを活用できるようになります。

20... Bxd4 21. Qf3 Qh4 22. Nc7!



クイーンが入ってきた一瞬の隙を突いて、ナイトの位置を切り替えます。アウトポストはナイトにとってもちろん良い位置ですが、ずっとそこがベストとは限りません。

22... Rac8 23. Ne6 Rf7 24. Ng5 Rf6 25. g3 Qh6 26. Re6!?


白はとうとう、eファイルから切り込むチャンスを得ました。f7 でのナイトフォークがあるので、黒はこのルークを取ることができません。

26... Qf8 27. Qh5 h6 28. Rde1 Rxe6 29. Rxe6 Bg7 30. Nf7+ Kg8 31. Nxh6+ Bxh6 32. Rxh6 1-0



黒の細かいミスもありますが、それよりも白のダイナミックなピースプレーが印象的でした。誰も思いつかないような絶妙手を連発したわけではないですが、指すべき良い手をきちんと指し続けられることが、Galyas の強さなのではないかと思います。

Vamos, V (HUN, 2232) - Lyell, M (FM, ENG, 2184)

次はこちら。黒は1ポーンアップしており、キングもカットオフしているので、うまく指せば勝てそうに見えますが・・・

66. Rb3 f4?!


試合後にMark はこのポジションを私に見せ、66... Re1-+ で簡単に黒勝ちだったと説明しました。本譜の手順でも勝てますが、確かに白ルークを1段目に下げさせないほうが、黒としては楽にパスポーンを進めることができます。

67. gxf4 Kxf4 68. Rb4+ Kg5 69. Rb1 f5 70. Rg1+ Kf6 71. Rf1



白は1段目でポーンをアタックし、黒がパスポーンを進めるのを妨害します。この形はどんなプレーヤーも勉強が必須なルークエンディングですが、皆さんは正解手順が分かりますか?私は高校生の頃、渡辺暁さんのHP で、これを勉強しました。

71... Rd8+! 72. Kc4 Rd2?!


Mark 程のベテランFM が、このエンドゲームを知らないのは意外でした。試合後、私はMark に以下のラインを指摘しました。
72... Kg5! 73. Rg1+ Kh4 74. Rf1 Kg4 75. Rg1+ Kh3 76. Rf1 Rf8!


白キングが2ファイル離れているので、ルークをパスポーンの後ろに回す余裕があります! 77. Kd3 Kg2 78. Rf4 Kg3 -+

73. Kc3 Re2?


ルークを下げ、上記と同じアイディアでキングが上がれば、黒はまだ勝つことができます。

74. Kd3 Re4 75. Kd2 f4 76. Re1!



ルーク同士をぶつけ(当然ポーンエンディングドローだと判断したうえで)、キングでパスポーンを止めにいくのが、白としては正しいディフェンスです。

76... Rd4+


76... Rxe1 77. Kxe1 Ke5 78. Kf2 Ke4 79. Ke2= ならば、ドローのポーンエンディングです。

77. Ke2 Kf5 78. Rb1 Kg4 79.Rg1+ Kf5 80. Rb1 Re4+ 81. Kf1 Re3 82. Kf2 Rh3 83. Rb8 Rh2+ 84. Kf3 1/2-1/2


今回は幸いにも私にとって苦手の、エンドゲームでのヘマは出ませんでしたが、次のトーナメントでも大丈夫かは、もちろん分かりません。0.5ポイントが運命を分ける可能性のあるIM トーナメントでは、こういったゲームを勝ち切れるか、そしてドローに持ち込めるかが重要ですので、しっかり復習をしたうえで、また次のトーナメントに臨もうと思います。もちろん、Kantor 戦、Farkas 戦で現れた、中盤での構想力の弱さも、大きな課題として取り組むつもりです。

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