2013/07/23

Memories of Hungary Vol.6 - A Reliable Organizer -


9月にハンガリーに戻ることを発表したので、このシリーズもそろそろ終わりにしようと思います。本当はあと1号で締めくくるつもりでしたが、この人のことを書かないわけにはいかないと思い至り、2号書く予定にします。今回は、ハンガリーで伝統的なGM, IM トーナメント、First Saturday のオーガナイザー、Laszlo Nagy 氏をご紹介します。

First Saturday については、このブログで何度も書いていますが、ここで改めて説明をしておきましょう。この大会はハンガリーの首都、ブダペストにて、1月を除いて毎月開催されるラウンドロビン(もしくはダブルラウンドロビン)の大会で、GM セクションではGM ノームを、IM セクションでは、IM ノームを獲得するチャンスがあります。そのため、私のようにノームを欲するチェスプレーヤーたちが、アジアだけでなくヨーロッパ各国からも集まります。Laszlo さんの仕事は非常にざっくり言えば、この大会を年に11回、開催することです。

そのために必要なことはいくつもあると思いますが、もっとも大切なことは、きちんと毎月人を集めることでしょう。ノームの条件が成立するためのマスターの確保と、ノームを欲するプレーヤーの確保を両立しなければ、GM, IM トーナメントは成立しません。プレーヤーが参加の意思を決めて、航空券とホテルを予約し、いざ出発の直前に、「人が集まらなかったから今月のFS は中止です」では、とてもお話になりません。

そして、そんな大会開催を継続するのにも、大変な労力が必要です。例えば、私が本気で動こうと決断すれば、3~4ヵ月後に海外からマスターを呼んで協力してもらい、日本のトッププレーヤーを交えて、日本でIM トーナメントを開催することは、なんとか可能だと思います。しかし、それを毎月、年に11回開催するのは、とてもではないですが不可能でしょう(笑) Laszlo さんは先日、7月のFS を終えたばかりですが、すでに8月どころではなく、9月10月の開催のための、プレーヤー確保に動いています。それを1年中、そして毎年繰り返すわけです。


イスタンブールオリンピアードにて

なぜ、ハンガリーでこうしたトーナメントがコンスタントに成立するかと言えば、地元のマスターや隣国のマスターが集まりやすいこともあるでしょうが、なにより、オーガナイザーのLaszlo さんが細かな気配りができ、そして信頼できる人間だからだと確信しています。ちょっとしたことですが、彼はどんな参加者とも、会場でよく話をします。内容は戦績のことや、生活のことなど様々ですが、参加者がブダペスト滞在中、問題なくチェスをプレーできるか、何か不満はないかを常にチェックしています。さらに面白いのは、各国の挨拶を覚えようとすることです。私には「コンニチハ! オゲンキデスカ?」 と聞いてきますし、インド人には「ナマステ!」と挨拶しています。こんなことは誰でもでき、大したことではないと思うかもしれませんが、ちょっとした労力をかけて顧客の満足度を上げるということは、どんな世界でも必要なことではないかと思います。

他にも、プレーヤー以外の会場見学を積極的に受け入れ、アンダンテでできた私の友達とも交流を積極的に持ちますし、私がハンガリーを離れた後も、最近どうしてるか? と細かく連絡をくれます。連絡をくれるのはビジネスのためかもしれませんが、数ヶ月たっても自分のことを気にしてくれるというのは嬉しいことですし、彼がそういった人物でなければ、次回はハンガリーではなく、別のトーナメントに参加しようと考えるプレーヤーも、間違いなくいるでしょう。まとめるならば、Laszlo さんは、なかなかに愉快な人物で、その彼の人徳が、FS を支える柱になっているということです。「ガールフレンドはできたか?」と、しつこく聞いてこなくなれば、まさにパーフェクトでしょう!(笑)

そんな彼でも、First Saturday の企画設立当初は、かなりの苦労があったと予想します。現在では、ヨーロッパのGM, IM トーナメントと言えば、ハンガリーのFirst Saturday だというのが、世界のチェス界でも常識になっていますが、最初からそうだったはずがありません。どうやって国内のマスターに協力してもらうか、どうやって海外からプレーヤーを集めるか、どうやって大会を告知するか、そういったことを試行錯誤してきた結果、現在のFS があるのでしょう。過去に彼が行ってきた努力を予想し、現在の彼と大会の様子を見るたび、月並みな表現ですが、すごい人だなと思うのです。

私は1ヵ月半後にはハンガリーに戻り、彼と半年ぶりの再会を果たします。チェスの世界で生きる先輩としての、彼の活動は今後もチェックしていきたいと思いますし、次のハンガリー滞在中は、これまでしてこなかった話を、彼としてみたいと思っています。私もこれから、盤上のチェスの技術だけではなく、もっともっと多くのことを学んでいかなければいけませんね。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

なんだか気になる記事。意味はよくわかりません・・汗 ノルマが厳しくなる前にFSで勝ちましょう

http://www.chessbase.com/Home/TabId/211/PostId/4010268/a-gm-is-a-gm--fide-title-devaluation-270613.aspx

Shinya_Kojima さんのコメント...

FM というタイトルは後から追加されたものですからね。
やはりIM を取ってこそ、本当のマスターと名乗れるでしょう。頑張ります!

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