4Rはヨーロッパでも指折りの強豪、GM Ragger 擁するオーストリアとの対戦です。4年前は暁さんが3BでIMに勝っていますが、今回は4人全員がGMということで、相手のレベルも上がっており、厳しい戦いが予想されました。
Ragger, M (GM, AUT, 2686) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Batumi Olympiad (4)
1. e4 c6 2. Nc3 d5 3. Nf3 Bg4 4. h3 Bxf3 5. Qxf3 e6 6. Be2
Caro-Kann Two Knights の変化の中でも、この手だけは準備が不十分で自信がありませんでした。白はシンプルにキングサイドにキャスリングをして、ダブルビショップのアドバンテージで戦っても良いですし、本譜のようにキングサイドから攻めても良いでしょう。
6... g6 7. d4 Bg7 8. Be3 Nf6 9. e5 Nfd7 10. h4 h5
このポーンストラクチャーにした以上、どこかで
c6-c5 と仕掛けたいものですが、このタイミングは早いと思いました。
10... c5 11. Nb5 O-O 12. c3 a6 13. Nd6 cxd4 14. cxd4 Bxe5!? (実際にはこの手を見落としていました。これで局面は難しくなります)
15. Nxb7 Qb6 16. dxe5 Qxb7 17. h5 これで白は駒損ながら、キングサイドでのアタックチャンスを持ちます。こうした相手に駒を捨てさせ、イニシアチヴのある局面を持てせても良いかは悩むところでしょう。
11. g4 hxg4 12. Qxg4 c5!
ここは
c6-c5 を仕掛けるチャンスだと感じました。白クイーンがf7を離れたことで、
Nc3-Nb5-Nd6+ がメイトスレットではなくなります。
13. f4 cxd4 14. Bxd4 Nc6 15. Bf2 Qa5!?
私としては互いにクイーンサイドにキャスリングし合ってじっくり勝負だと思いました。このような流れは、今年の中部快速オープンでScottさんと指しています。しかし、コンピュータの提案は
15... d4 16. Ne4 Qa5+ 17. c3 dxc3 18. bxc3 Bf8 とするものでした。クイーンサイドキャスリングを遅らせても、相手にキャスリングさせないほうが重要だという判断でしょう。
16. O-O-O O-O-O 17. Kb1 Bf8
このビショップは
h4-h5 が来る前に退いて使い直す必要があります。d6 もカバーすることで、
Nc3-Nb5-Nd6 の狙いも防いでおきます。
18. h5 gxh5 19. Rxh5 Bb4 20. Nb5 a6 21. Nd4 Nxd4 22. Bxd4 Bc5 23. c3 Bxd4 24. cxd4 Kb8
こうしてピースが捌けてくると、f7,e6 へのプレッシャーにはまだ対応しないといけないものの、黒がずいぶん盛り返してきたように感じます。d4へのプレッシャーを上手く利用し、反撃のチャンスを待ちます。
25. f5 Qb6 26. Qf4 Ka7 27. a3 Rc8 28. Qd2 Nb8
ナイトはb6に置くことも考えましたが、クイーンをぶつけられて交換するのは嫌だったため、
Qb6-Qb3 をためらいました。そうするとb6のマスを空けることはできないため、ナイトを組み替えるのであればこちらからです。
29. Ka2 Nc6 30. f6 Rhg8!
残り時間3分まで考え、勝負を託したのはこの手です。f7を捨ててでも、ルークを7段目に侵入させることでチャンスが生まれると信じました。
31. Rh7 Rg2! 32. Rxf7 Na5! 33. Rg7?
Ragger も難しい局面で痛いミスをしました。私もここは何が白の正解なのか分かっていませんでしたが、
33. Rb1! Qb3+ 34. Ka1 Qa4 35. Ka2 Qb3+= ならば、先にb2を守っているのでRc8-Rc2がメイトスレットにならず、ドローが精いっぱいです。
33... Qb3+ 34. Kb1?
ここも
34. Ka1 Rxe2! (34... Rc2?! 35. Qb4! Qxb4 36. axb4 Rgxe2 37. bxa5 Rxb2=) 35. Qxe2 Rc2 36. Qxc2 Qxc2 37. Rgg1=/+ としてピースダウンながら、fファイルにパスポーンで粘るのがベストでした。c2 のマスをキングでも守っておく本譜の手は自然に見えますが、黒の攻撃が決まります。
34... Rxe2!
こうして白マスビショップを消してしまえば、安全にナイトがc4へと潜り込むことができます。
35. Qxe2 Nc4! 36. Ka1 Nxb2??
しかし最後の最後で決め手を間違えてしまいました。
36... Nxa3 37. bxa3 Qxa3+ 38. Qa2 Rc1+ 39. Rxc1 Qxc1+ 40. Qb1 Qa3+ 41. Qa2 Qc1+= この変化はパペチュアルチェックになることは分かっていて、私はそれ以上を望み、何かないかを必死に探しました。本譜のb2 を取る手は決まっているように見えますが、たった一つ、しかし決定的な見落としがありました。冷静にこのポジションを見れば、
36... Ne3! 37. Qxe3 Qxe3-+ と指して何事もなく黒勝勢であることに気付けるでしょう。私も自分の試合ではなく、この局面を問題として見せられたら、1分で正解を見つけられると思います。それだけ自分で試合をし、強豪相手に勝ち寸前であるという状況のプレッシャーは、生半可なものではないということでしょう。試合が終わった時、会場は空調が利いて寒すぎるくらいであるにも関わらず、私は汗だくでした。
37. Rxb7+!
相手が指す直前に、私もこの手に気付きました。なぜ決めにいく前に相手の反撃を十分に読まなかったのか、悔やまれるゲームです。
37... Qxb7 38. Qxb2 Qc6 39. Rb1 Qc7 40. Qb4 1-0
それでも初戦に続き、2700近いGMにもチャンスが十分作れると分かったことは大きな収穫でした。また次のゲームに繋げられればと思います。
Open R4 Austria - Japan 3.5-0.5
Ragger, Markus (GM, AUT, 2686) - Kojima Shinya (IM, JPN, 2408) 1-0
Dragnev, Valentin (GM, AUT, 2508) - Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 1/2-1/2
Diermair, Andreas (GM, AUT, 2501) - Matsuo, Tomohiko (CM, JPN, 2170) 1-0
Shengelia, David (GM, AUT, 2512) - Otawa, Yuto (JPN, 2161) 1-0
Women R4 Japan - Guatemala 1.5-2.5
Sakai Azumi (JPN, 1713) - Mencos Castillo, Maria (WIM, GUA, 1888) 1/2-1/2
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) - Cruz Lima, Kimberly Esmeralda (GUA, 1626) 1-0
Shibata Misaki (JPN, 1605) - Mencos, Claudia (WIM, GUA, 1996) 0-1
Hoshino, Meilin (JPN, 1533) - Mazariegos, Silvia Carolina (WIM, GUA, 1922) 1-0
男子は南條くんのみがドロー。女子は上2人でポイントを取ったものの、下2人が2000近くのプレーヤーに敗れて惜しくもマッチは負けです。次のラウンドこそ、揃って勝利が欲しいですね。
次はオープンがオリンピアードではお馴染みのルクセンブルク、女子がカメルーンとの対戦です。ルクセンブルクは私自身3回目の対戦で、毎回IM Wiedenkeller と当たっています。3度目の正直で白星が欲しいところですので、しっかりプレーしてこようと思います! 今日が終われば1日休みになりますので、良い気分で休憩日を迎えたいですね。
この日は南條くんの誕生日でした。オリンピアードで南條くんの誕生日を祝うのは、2010年以来2回目で、私たちもついに30代に突入です。南條くん、おめでとう!