2018/09/30

Batumi Olympiad Rest Day


オリンピアードの5R翌日は、試合のない休憩日でした。オリンピアードの休憩日の過ごし方は色々で、過去には観光で遠出する人もいれば、ホテルに残って研究する人もいました。私は今回、午前中から妻と海辺へ。前回の開催地、バクーにあるカスピ海は湖ですが、バツミの黒海は海なんですね。不思議です。


黒海沿いはこのような石の浜辺になっていました。日本の海水浴場の砂浜とは全く趣が違いますが、気にせずシートを敷いて海水浴を楽しむ人の姿も見られました。


海辺散策のつもりが、レンタルサイクルを見つけ、突如サイクリングに。自転車に乗るのが久しぶりすぎて、乗れるかわからないと言っていた妻ですが、全く問題無いようです。


過去にブダペストに滞在していた時も思いましたが、こちらでは自転車専用道の整備が日本より圧倒的に進んでいます。気温も少しずつ上がってきて、南国のような気分で中心地近くまで足を延ばしました。


私たちが泊っているEuphoria Hotel も5つ星の豪華なホテルですが、道中にはまるでお城のようなホテルも(笑)


松尾さんが赤血球のようだとコメントした、バツミのシンボル的なビルです。いつもはこの手前を右折して会場へと向かいます。


オリンピアード開催期間中は町中のいたるところで告知が見られます。バクーではMamedjarov の顔を大きく出してる広告もありましたね。


自転車のレンタルは1時間のみにしたため、午前中は適当な散策で終了。午後になってから、再び妻と二人で海沿いの道を中心街へと向かいます。この日もホテルでの食事はできましたが、たまには外でも食事をしたく、地元の人にお勧めのレストランを聞いてやってきました。


まずはレモネードを2つと頼んだんですが、届いたのがこれです(笑) 確認しましたが、どちらもレモネードとのこと。2つ頼めば2種類で、1つだけだとどちらかがランダムで出てくるのでしょう。ジョージアではレモネードというのは、炭酸飲料をひっくるめて呼ぶのでしょうかね。ちなみに赤いほうが美味しかったです。


そしてこの日のランチのメインはこちら! ジョージア料理に詳しい人ならピンとくる、ハチャプリです。パンにチーズをたっぷり入れて焼き、卵とバターを落とすのがオーソドックスなスタイルだそう。パン屋でもありますが、このハチャプリの専門店もあるほど、ジョージアではメジャーな食事のようです。そして噂通り大きい...


食事の後にやってきたのは、ドルフィンアクアリウムです。こちらではイルカのショーを見ることができ、松尾さんが16時からだと教えてくれたので、その時間に合わせて到着しました。別行動だった他の日本のメンバーも、このイルカのショー目当てにプランを立てていたようで、このアクアリウムで再会します。


10頭近いイルカと、4人のトレーナーによるショーが始まりました。席は前から三列目だったため、油断していると濡れてしまいそうです。


トレーナーを鼻先で運び、水上に押し上げるパフォーマンスは日本でもおなじみですね。


イルカのジャンプはいつ見てもダイナミック! 完全に宙を飛んでるといっても過言ではありません。

写真は撮りこそねてしまいましたが、他にも輪を水上に投げてそれを鼻先で回しながら戻ってくるパフォーマンスや、バレーボールを口にくわえたり、観客先に打ち込むパフォーマンスなど、道具も使いバラエティに富んだ40分のショーでした。イルカショーの後、もう少しアクアリウムを見ても、中心街に向かっても良かったですが、午前中のサイクリングからずっと動きっぱなしであったため、この日は無理をせずにホテルに戻って休むことにしました。一夜明けた今日から、また後半戦のスタートです。

今日はオープンがスリナム、女子がトリニダード・トバゴとの対戦です。男子は特に勝たなければいけない相手でしょう。6Rが終わったあたりから、レイティングやGMノームの話もお届けできると思います。それでは6Rも頑張ってきます!

Open R6 Japan - Surinam

Women R6 Trinidad & Tobago - Japan

2018/09/29

Batumi Olympiad R5 Japan - Luxembourg


オリンピアードの折り返し、休憩日前のラウンドはルクセンブルクとの対戦です。ここまでの5試合、オープンの相手は全てここ数回のオリンピアードで対戦経験があり、ルクセンブルクには毎回負けています。私もこれまで1敗1ドローのIM Wiedenkeller と、3回目の対戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Wiedenkeller, M (IM, LUX, 2464)
Batumi Olympiad (5)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 Bb4 5. Bg5 h6 6. Bxf6 Qxf6 7. e3 O-O 8. Rc1 dxc4 9. Bxc4 c5 10. O-O cxd4 11. Ne4 Qe7 12. a3 Ba5 13. Qxd4 Nc6!?



ここでカペルの最終戦の変化から外れました。13... Rd8 14. Qe5 Nc6 15. Qh5 Bd7 16. g4! は白が面白い展開だと思います。本譜はすぐにクイーン交換になりますが、白はピースの展開の早さとb7 へのプレッシャーでチャンスを作ろうとします。

14. Qc5 Bd8 15. Rfd1 Qxc5 16. Nxc5 Bf6 17. Rc2 Ne5 18. Be2 Nxf3+ 19. Bxf3 Rb8


この時点ですでに黒は十分にイコアライズできており、大きな問題はありません。異色ビショップにもなることは承知で、白はわずかなチャンスがどこでかつかめないか模索します。

20. b4 b6 21. Nd7 Bxd7 22. Rxd7 Rfc8 23. Rcc7 Rxc7 24. Rxc7 a5 25. g3 Bb2 26. bxa5 bxa5 27. a4 Ba3



異色ビショップでポーンのファイルも同じですが、7段目にすでにルークが侵入していることと、ここから始めるキングサイドのアクションで実戦的には白がわずかに有利です。

28. h4! g6 29. h5! g5


私はこのようにポーンを突き越してくるものだと思いましたが、Misha はポーンをなるべく交換するほうが黒にとっては良いので、29... Kg7 とするべきだと指摘されました。いずれにせよ黒のキングサイドのポーンストラクチャーを多少崩して勝負です。

30. Bb7 Kg7 31. Kg2 Rd8 32. Bc6 g4!?



このポーンは伸びすぎかと思いましたが、白のh5も同様です。f2のポーンや白キングを動けなくすることが、黒がポーンを押し込んだ狙いとなります。

33. Bb5 Rd5 34. Be2 Rg5


ここはポーンを守ることに固執せず、素直に取り合ってもドローだと思います。相手のhポーンが孤立することで少し良くなるかと思いましたが、勝ちに結び付けられるほどではありません。

35. Rc4 f5 36. Rc6 e5 37. Rc7+ Kh8 38. Rb7 Bb4 39. Rb5 Kg7?



私もこのポーン捨ては何事かと思いました。39... e4! 40. Bd3 Kg7 41. Bxf5 Kf6 ならば、黒はポーンを捨ててもルークを交換し、異色ビショップでドローに持ち込めます。こうしたエンドゲームでは、いかにポーンを落とさないかではなく、いかにポーンを落としてもドローのエンドゲームに持ち込めるかを考えるほうが大切です。

40. Rxe5 Kf6 41. Rb5 Bc3


Wiedenkeller はもしかすると、41... Rxh5 42. Bxg4! を見落としていたのでしょうか。白はe5 を安全に取り、ルークを残したまま1ポーンアップのエンドゲームになりました。ここから黒に待たれた場合、どのように局面を改善するかがここからの課題です。

42. Bd3 Bb4 43. Bc2 Bc3 44. Kf1 Rxh5!?



黒はここで動いてきました。黒が待ち続けた場合でも、44... Bb4 45. Ke2 Bc3 46. Rb6+ Kg7 47. e4! fxe4 48. Bxe4+/- として白は進めることが可能です。

45. e4 Bd4!?


このアイディアも何事かと思いました。少し考えて、ビショップを交換してルークエンディングに持ち込むつもりなのだと気付きましたが、それが黒にとってよりドローチャンスのある変化なのかは分かりません。ある程度読んで、aポーンの後ろにルークを回すアイディアが見えたところで、相手の誘いに乗ることにします。

46. Rxa5 Bxf2 47. Kxf2 Rh2+ 48. Ke3 Rxc2 49. Rxf5+ Kg6 50. Rd5!



黒のアイディアはg3を攻撃し、2コネクテッドパスポーンを作ることです。白はそれを防ぎつつ、ルークを自分のポーンの後ろに回せるように位置を変えます。

50... h5 51. Rd2 Rc4 52. Ra2 Rc3+ 53. Kf2 Rf3+ 54. Kg2 Re3?


この手が決定的なミスであると、相手のキャプテンとMisha は瞬時に見抜いたそうです。こうしたエンドゲームでは、駒を取りかえすよりもaポーンをなるべく早い段階でブロックすることが大切です。54... Rf6! 55. a5 Ra6 56. Kf2 Kg5! と進んだ場合、黒は次にh5-h4 からのブレイクの準備ができます。これを防ぎつつ白が局面を改善できるか、昨夜の検討では答えを見つけることができませんでした。

55. a5 Rxe4 56. a6 Re8 57. a7 Ra8 58. Ra5!



後ろからルークに支えられたパスポーンがここまで進めば、決着まであと一歩です。ここはキングを上げても良いですが、わかりやすくするために先に5段目を抑えておきます。

58... Kh6 59. Kf2 Kg6 60. Ke3 Kh6


この手は分かりやすく白が勝ちになるのでありがたかったです。代わりに黒がキングをg6 にキープしたまま、正面からのチェックをしてきたらどうなるか、ゲーム中は考えていました。60... Re8+ 61. Kd3 Rd8+ 62. Ke4 Ra8 63. Kd4 Kh6 64. Ra6+! Kg5 65. Ke4 Re8+ 66. Kd5 Ra8 67. Ra5 Kg6 68. Kc6+- こちらの変化でも、黒のh5-h4 を十分に注意しつつ、キングを上げていければ黒勝ちです。

61. Kf4 Rf8+ 62. Rf5 Rg8 63. Rf6+ Kh7 64. Ra6 1-0



最後はhポーンを取りに行って白の勝ちです。こうして、ついにWiedenkeller から初白星を挙げることができました! 前日の悔しい負けを払しょくする勝利で、前半戦を3勝1敗1ドローの2つ勝ち越しで終えています。

Open R5 Japan - Luxembourg 1-3

Kojima Shinya (IM, JPN, 2408) - Wiedenkeller, Michael (IM, LUX, 2464) 1-0
Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) - Berend, Fred (IM, LUX, 2358) 0-1
Yamada, Kohei (FM, JPN, 2128) - Linster, Philippe (LUX, 2273) 0-1
Otawa, Yuto (JPN, 2161) - Gengler, Pierre (LUX, 2205) 0-1

Women R5 Cameroon - Japan 0-4

Magne, Kouokam Sylviane (WCM, CMR, 1308) - Hoshino, Karen (WFM, JPN, 1945) 0-1
Tchouateu, Tankeu Stephanie (CMR, UR) - Sakai Azumi (JPN, 1713) 0-1
Danwe Mais, Siri Carole (CMR, UR) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) 0-1
Youwou Pedhom, Grace Christie (CMR, UR) - Hoshino, Meilin (JPN, 1533) 0-1


しかし、チーム自体は私以外の3人が負けてしまい、またしてもルクセンブルクには敗北です。また次回のオリンピアードで、リベンジできると良いですね。一方で女子はカメルーンを全く寄せ付けず、4-0のストレート勝利でした。マッチ自体はこれで、オープン女子ともに2勝3敗で前半戦を終えています。

続く後半戦のスタート、6Rはオープンがスリナム、女子がトリニダード・トバゴとの対戦です。どちらも勝って気持ちよく後半戦のスタートを切りたいですね。ちなみに今日は休憩日で試合はありません。日本チームはホテルに残って運動やチェスをするメンバー、外に観光に行ったメンバーなど様々です。私がどのように休憩日を過ごしたかは、また翌日の記事でお知らせしようともいます。オリンピアード後半戦も、日本チームの応援よろしくお願い致します。

2018/09/28

Batumi Olympiad R4 Austria - Japan


4Rはヨーロッパでも指折りの強豪、GM Ragger 擁するオーストリアとの対戦です。4年前は暁さんが3BでIMに勝っていますが、今回は4人全員がGMということで、相手のレベルも上がっており、厳しい戦いが予想されました。

Ragger, M (GM, AUT, 2686) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Batumi Olympiad (4)

1. e4 c6 2. Nc3 d5 3. Nf3 Bg4 4. h3 Bxf3 5. Qxf3 e6 6. Be2



Caro-Kann Two Knights の変化の中でも、この手だけは準備が不十分で自信がありませんでした。白はシンプルにキングサイドにキャスリングをして、ダブルビショップのアドバンテージで戦っても良いですし、本譜のようにキングサイドから攻めても良いでしょう。

6... g6 7. d4 Bg7 8. Be3 Nf6 9. e5 Nfd7 10. h4 h5


このポーンストラクチャーにした以上、どこかでc6-c5 と仕掛けたいものですが、このタイミングは早いと思いました。10... c5 11. Nb5 O-O 12. c3 a6 13. Nd6 cxd4 14. cxd4 Bxe5!? (実際にはこの手を見落としていました。これで局面は難しくなります) 15. Nxb7 Qb6 16. dxe5 Qxb7 17. h5 これで白は駒損ながら、キングサイドでのアタックチャンスを持ちます。こうした相手に駒を捨てさせ、イニシアチヴのある局面を持てせても良いかは悩むところでしょう。

11. g4 hxg4 12. Qxg4 c5!



ここはc6-c5 を仕掛けるチャンスだと感じました。白クイーンがf7を離れたことで、Nc3-Nb5-Nd6+ がメイトスレットではなくなります。

13. f4 cxd4 14. Bxd4 Nc6 15. Bf2 Qa5!?


私としては互いにクイーンサイドにキャスリングし合ってじっくり勝負だと思いました。このような流れは、今年の中部快速オープンでScottさんと指しています。しかし、コンピュータの提案は15... d4 16. Ne4 Qa5+ 17. c3 dxc3 18. bxc3 Bf8 とするものでした。クイーンサイドキャスリングを遅らせても、相手にキャスリングさせないほうが重要だという判断でしょう。

16. O-O-O O-O-O 17. Kb1 Bf8



このビショップはh4-h5 が来る前に退いて使い直す必要があります。d6 もカバーすることで、Nc3-Nb5-Nd6 の狙いも防いでおきます。

18. h5 gxh5 19. Rxh5 Bb4 20. Nb5 a6 21. Nd4 Nxd4 22. Bxd4 Bc5 23. c3 Bxd4 24. cxd4 Kb8


こうしてピースが捌けてくると、f7,e6 へのプレッシャーにはまだ対応しないといけないものの、黒がずいぶん盛り返してきたように感じます。d4へのプレッシャーを上手く利用し、反撃のチャンスを待ちます。

25. f5 Qb6 26. Qf4 Ka7 27. a3 Rc8 28. Qd2 Nb8



ナイトはb6に置くことも考えましたが、クイーンをぶつけられて交換するのは嫌だったため、Qb6-Qb3 をためらいました。そうするとb6のマスを空けることはできないため、ナイトを組み替えるのであればこちらからです。

29. Ka2 Nc6 30. f6 Rhg8!


残り時間3分まで考え、勝負を託したのはこの手です。f7を捨ててでも、ルークを7段目に侵入させることでチャンスが生まれると信じました。

31. Rh7 Rg2! 32. Rxf7 Na5! 33. Rg7?



Ragger も難しい局面で痛いミスをしました。私もここは何が白の正解なのか分かっていませんでしたが、33. Rb1! Qb3+ 34. Ka1 Qa4 35. Ka2 Qb3+= ならば、先にb2を守っているのでRc8-Rc2がメイトスレットにならず、ドローが精いっぱいです。

33... Qb3+ 34. Kb1?


ここも34. Ka1 Rxe2! (34... Rc2?! 35. Qb4! Qxb4 36. axb4 Rgxe2 37. bxa5 Rxb2=) 35. Qxe2 Rc2 36. Qxc2 Qxc2 37. Rgg1=/+ としてピースダウンながら、fファイルにパスポーンで粘るのがベストでした。c2 のマスをキングでも守っておく本譜の手は自然に見えますが、黒の攻撃が決まります。

34... Rxe2!



こうして白マスビショップを消してしまえば、安全にナイトがc4へと潜り込むことができます。

35. Qxe2 Nc4! 36. Ka1 Nxb2??


しかし最後の最後で決め手を間違えてしまいました。36... Nxa3 37. bxa3 Qxa3+ 38. Qa2 Rc1+ 39. Rxc1 Qxc1+ 40. Qb1 Qa3+ 41. Qa2 Qc1+= この変化はパペチュアルチェックになることは分かっていて、私はそれ以上を望み、何かないかを必死に探しました。本譜のb2 を取る手は決まっているように見えますが、たった一つ、しかし決定的な見落としがありました。冷静にこのポジションを見れば、36... Ne3! 37. Qxe3 Qxe3-+ と指して何事もなく黒勝勢であることに気付けるでしょう。私も自分の試合ではなく、この局面を問題として見せられたら、1分で正解を見つけられると思います。それだけ自分で試合をし、強豪相手に勝ち寸前であるという状況のプレッシャーは、生半可なものではないということでしょう。試合が終わった時、会場は空調が利いて寒すぎるくらいであるにも関わらず、私は汗だくでした。

37. Rxb7+!



相手が指す直前に、私もこの手に気付きました。なぜ決めにいく前に相手の反撃を十分に読まなかったのか、悔やまれるゲームです。

37... Qxb7 38. Qxb2 Qc6 39. Rb1 Qc7 40. Qb4 1-0


それでも初戦に続き、2700近いGMにもチャンスが十分作れると分かったことは大きな収穫でした。また次のゲームに繋げられればと思います。

Open R4 Austria - Japan 3.5-0.5

Ragger, Markus (GM, AUT, 2686) - Kojima Shinya (IM, JPN, 2408) 1-0
Dragnev, Valentin (GM, AUT, 2508) - Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 1/2-1/2
Diermair, Andreas (GM, AUT, 2501) - Matsuo, Tomohiko (CM, JPN, 2170) 1-0
Shengelia, David (GM, AUT, 2512) - Otawa, Yuto (JPN, 2161) 1-0

Women R4 Japan - Guatemala 1.5-2.5

Sakai Azumi (JPN, 1713) - Mencos Castillo, Maria (WIM, GUA, 1888) 1/2-1/2
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) - Cruz Lima, Kimberly Esmeralda (GUA, 1626) 1-0
Shibata Misaki (JPN, 1605) - Mencos, Claudia (WIM, GUA, 1996) 0-1
Hoshino, Meilin (JPN, 1533) - Mazariegos, Silvia Carolina (WIM, GUA, 1922) 1-0


男子は南條くんのみがドロー。女子は上2人でポイントを取ったものの、下2人が2000近くのプレーヤーに敗れて惜しくもマッチは負けです。次のラウンドこそ、揃って勝利が欲しいですね。

次はオープンがオリンピアードではお馴染みのルクセンブルク、女子がカメルーンとの対戦です。ルクセンブルクは私自身3回目の対戦で、毎回IM Wiedenkeller と当たっています。3度目の正直で白星が欲しいところですので、しっかりプレーしてこようと思います! 今日が終われば1日休みになりますので、良い気分で休憩日を迎えたいですね。

Open R5 Pairings

Japan - Luxembourg

Women R5 Pairings

Cameroon - Japan



この日は南條くんの誕生日でした。オリンピアードで南條くんの誕生日を祝うのは、2010年以来2回目で、私たちもついに30代に突入です。南條くん、おめでとう!

2018/09/27

Batumi Olympiad R3 Japan - IBCA


バツミオリンピアードの3日目は、オープンが視覚障害を持つプレーヤーのチーム、IBCA(International Braille Chess Association) と、女子がキルギスタンとの対戦になりました。IBCA メンバーの視覚障害のレベルは様々ですが、私が6年前に対戦したIM Meshkov(今回の南條くんの相手) は、少し視点が合っていないように思えましたが、普通に指すことができていました。しかし、今回は2Bに落ちたMeshkov を含め、全員がIBCA 特有の差し込み式ボードとピースを使い、棋譜は口頭で伝えるというスタンスでした。そんないつもと違うゲームは、意外な結末を迎えます。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Babarykin, S (FM, IBCA, 2396)
Batumi Olympiad (3)

1. Nf3 d5 2. d4 c6 3. c4 e6 4. Qc2 Nd7!? 5. Bf4!?



彼のもう1つのレパートリーがDutch であることを知っていたため、白の手によってStone Wall Dutch にする気なのだと予想しました。5. g3 f5 を受け入れても良いのですが、私のStone Wall 対策はクイーンをc2 に置かないため、Triangle からのトランスポーズの場合、少し困ります。そこでBc1-Bf4 を入れることでStone Wall をやりにくくし、得意のQGD Bf4 変化に手順前後させるアイディアを思いつきました。

5... Ngf6


5... f5?! 6. e3 Ngf6 7. Nc3 0-0 8. Bd3 Ne4 9. g4! は白が良い変化だとされています。このため、Bc1-Bf4 をすでに指していたり、Bc1-Bf4 を指せる状況では、Stone Wall にするのは黒にとって危ないとされています。

6. e3 Be7 7. h3 O-O 8. Nc3 a6 9. Rd1!



QGD Rubinstein Variation と同じアイディアで、白は手を待って黒からdxc4 としてくるのを待ち、白マスビショップでテンポロスなくポーンを取りかえそうとします。もちろんルークをセンターに回す手には、待つだけでなく黒からのc6-c5 を牽制するという意味もあります。

9... Qa5!?


ここも黒は悩むところですが、Babarykin は思い切ってクイーンを出してきました。これにはQGD Cambridge Springs Variation と同じで、ナイトを退いてe4 をサポートするアイディアが有効です。

10. Nd2 Re8 11. Be2 c5 12. O-O cxd4 13. exd4 Nb8!?



このナイトの組み換えのアイディアは他のラインで見たことがありましたが、ここでどう指すのがベストか分かりませんでした。13... dxc4 14. Nxc4 ならば、Cambridge Springs と違って黒マスビショップをキープしたまま、ナイトを理想的な位置へと運ぶことができます。

14. cxd5


後になって、14. c5! Nc6 15. Nf3! とするのが、c8 の白マスビショップを抑え込み続ける良い変化であることに気付きました。気にしていた15... b6?! 16. Bd2! は白大丈夫で、a5 に出したクイーンが危険です。代わりに選んだ本譜の手では、ピースの展開の早さを活かして局面を開き、d5 を狙おうと考えました。

14... exd5 15. Nb3 Qd8 16. Bf3 Nc6 17. a3 g6 18. g4!?



黒が白マスビショップをアクティブに使えるようにするには、f5 のマスを使うしかないでしょう。17... Be6 18. Rfe1 Rc8 19. Qd3 ならば、白は優位を保てるであろうというのが私の読みでした。黒のg7-g6 に対して、白でg2-g4 をやるべきなのか、やって大丈夫なのか確信はありませんでしたが、Bc8-Bf5, Qd8-Qb6 の組み合わせは嫌で、これを防ぐためにはgポーンを突くしかないと決断します。

18... h5! 19. g5 Bf5 20. Qc1!?


ここでクイーンがどちらに避けるか迷いましたが、Nb3-Nc5 をサポートするために、cファイルに利きを作っておこうと思いました。

20... Nh7 21. h4 Qb6



この手は予想通りでしたが、ここで事件が起きました。Babarykin は序盤から時間を使い、20手前には時間切迫になっていました。彼の視力がどれくらいかは分かりませんが、盤上の駒の位置はぼんやりとわかっても、その奥の時計が示す数字はかなり顔を近づけて確認しないと分からないようでした。(奥の4B では、時計とイヤホンをつなぎ、残り時間が音で分かる時計を使用していました。) 彼は残り5分ほどの時は持ち時間を確認していましたが、21... Qb6 の直後は時間を見ることなく、席を立ちました。この時、彼の残り時間は40秒です。私は少し悩みましたが、彼の手は予想していたもので、自分が指す手も決めており、なによりチームのためにここでポイントを落とすわけにはいきませんでした。私は彼が1分以内に戻ってくることは不可能だと承知で手を進めます。

22. Nc5 1-0


22... Nxd4 23. Rxd4 Bxc5? には、24. Na4!+- があります。これが20. Qc1 の狙いでした。しかし、上記の変化になることは無く、ここで黒の時間が落ちて、私はその旨をアービターに宣告をしました。相手のキャプテンは彼が席を立った際の残り時間を私に聞き、しばらくして席に戻ってきた彼に、どうして時間切迫であることを確認しなかったのか、ロシア語で聞いていました。彼の真意は分かりませんが、かなりショックだったようで、専用のチェスセットを片付ける手つきも心ここにあらずという感じでした。私はなかなか経験したことのない形の白星を手に、どこかすっきりしない気持ちで会場を後にしました。

ホテルに戻ってから最後のポジションをチェックし、まだ難しいながらも十分に白が優勢であることを確認して、少し気持ちを落ち着かせることができました。彼の時間が落ちたのは単にラッキーということではなく、途中で若干の判断ミスがあったものの、(cファイルを開くべきか、閉じるべきか) 私が序盤から相手に難しい局面を投げかけ続けてきたことが要因です。色々と思うところはあれど、勝ちは勝ちと割り切り、また次のラウンドへと進んでいこうと思います。

Open R3 Japan - IBCA 3-1

Kojima Shinya (IM, JPN, 2408) - Babarykin, Stanislav (FM, IBCA, 2396) 1-0
Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) - Meshkov, Yuri A. (IM, IBCA, 2313) 0-1
Yamada Kohei (FM, JPN, 2128) - Grigorchuk, Sergey (CM, IBCA, 2288) 1-0
Otawa, Yuto (JPN, 2161) - Dukaczewski, Piotr (IM, IBCA, 2259) 1-0

Women R3 Japan - Kyrgyzstan 0-4

Hoshino Karen (WFM, JPN, 1945) - Samaganova, Alexandra (KGZ, 2024) 0-1
Sakai Azumi (JPN, 1713) - Omurbekova, Diana (KGZ, 1877) 0-1
Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) - Zairbek kyzy, Begimay (KGZ, 1770) 0-1
Shibata Misaki (JPN, 1605) - Usupbekova, Zarina (KGZ, 1572) 0-1


オープンは山田くんと大多和くんが格上に勝ち、マッチも3-1で制しました。オリンピアードデビュー戦となった大多和くんは、いきなりで戸惑うIBCA戦だったと思いますが、落ち着いて自分のプレーができていたと思います。序盤から優位に試合を進められていました。一方で女子はキルギスタンに痛いストレート負けでした。チャンスのあるボードもあっただけに残念ですが、また気を取り直して今日のゲームを戦ってほしいと思います。

Open R4 Austria - Japan

Women R4 Japan - Guatemala


今日のラウンドはオープンがオーストリア、女子がグアテマラとの対戦です。オーストリアはGM4人を擁する強豪国で、このラウンドはその4人が出てくるようです。私はオーストリア不動のNo.1 Markus Ragger 相手にどんなゲームができるか、楽しみに会場に向かおうと思います。


ショップのスペースは、前回のバクーに比べれば小さめです。チェス用品を扱うショップの他に、VRの体験コーナー、2022年の開催地のアピールなどがありました。2022年の開催地候補はベラルーシのMinsk だそうです。

2018/09/26

Batumi Olympiad R2 Ghana - Japan


この日は午前中、ホテルの目の前に広がる公園に少しだけ足を運んでいました。前回オリンピアードのバクー同様、黒海沿いに大きな公園が広がっており、これが中心街まで広がっています。(バクーの場合はカスピ海沿い) 今日はあいにくの雨模様ですが、バツミ到着後は晴れの日が多くなっています。


バクーにもあったモニュメントですが、英語ではないので完全に読めません(笑) 公園の名前なんでしょうかね。どなたかわかる人は、なんと書いてあるのか教えてください。

さて、アルメニアに敗れた翌日、日本のオープンチームは下のボードが集まる会場に移り、ガーナとの対戦です。アフリカのガーナは平均1900台のチームで、アルメニア同様に4年前にも対戦していますが、その際は私が外れたのでした。1Bの相手は前回、南條くんが勝っています。

Hasford, J (FM, GHA, 2042) - Kojima, S (IM, JPN, 2408)
Batumi Olympiad (2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 a6 5. cxd5 cxd5 6. e3?!



a6 からSlav Exchange になるのはありえると思っていましたが、黒マスビショップを閉じ込める意図はよくわかりません。黒は非常に楽な展開となります。

6... Nc6 7. Bd3 Bg4 8. Be2 e6 9. h3 Bh5 10. O-O Bd6 11. a3 Rc8 12. Bd2 O-O 13. Ng5 Bg6!?


ここは少し悩みました。白マスビショップを交換を交換して白マスを弱めたうえで、Nc6-Na5-Nc4 を狙うアイディアもあったでしょう。

14. f4 Na5 15. b3 Qe7!



白はa,b両方のポーンを伸ばしたことで、どちらも弱点になってしまっています。ルークを連携させつつ、それを狙うのはこの手がベストでしょう。

16. b4 Nc4 17. Bxc4 Rxc4 18. Qa4 Rfc8 19. Rfc1 Nd7!?


このナイトはe4が絶好のマスに見えますが、負担になりそうなc3 のナイトと交換をするだけでは少しもったいないと感じました。そこでSlav Exchange のオーソックスなマヌーバリングを使い、再びc4 のマスを目指します。

20. Nf3 Nb6 21. Qd1 h6!?



h7 のマスを空けておくのが将来的に働く可能性があるのは明らかですが、それよりもNf3-Ne5 にどう対応するかが重要です。e5 のマスを抑え、ダブルビショップを残す21... f6 も考えましたが、ここでは異色ビショップを残しても、互いのビショップの働きの差が明らかであるため、Nf3-Ne5 を気にしないことにしました。

22. Ne5 Bxe5 23. fxe5 R4c7


ここで落ち着いてc4 のマスを空けて、再びナイトの侵入を狙います。次の手はやりたくなりますが、黒が勝ちまでほぼ一直線になるでしょう。

24. Na4? Nxa4! 25. Qxa4 Rc2!



白は当然、異色ビショップ以外のピースを捌いてなんとかドローを望むでしょうが、そうは問屋が卸しません。異色ビショップであっても、7段目に侵入したルークは強力で、白のビショップではどうしてもカバーできないg2 を、ビショップと協力してターゲットにします。

26. Rxc2 Rxc2 27. Rd1 Be4! 28. g3 Qg5! 29. g4 Rxd2


ここは29... Qh4 でも黒勝ちです。

30. Rxd2 Qxe3+ 31. Kf1 Qxd2 0-1



レイティングから考えれば勝たなければいけない相手でしたが、実際に最後まで指して胸をなでおろしました。2戦目にして、このオリンピアード初勝利です!

Open R2 Ghana - Japan 0-4

Hasford, J (FM, GHA, 2042) - Kojima Shinya (IM, JPN, 2408) 0-1
Anquandah, F (IM, GHA, 1992) - Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 0-1
Ajavon, A (GHA, 1902) - Yamada Kohei (FM, JPN, 2128) 0-1
Adu, J (CM, GHA, 1896) - Matsuo Tomohiko (CM, JPN, 2170) 0-1

Women R2 Netherlands Antilles - Japan 0.5-3.5

Mena, A (WFM, AHO, 1884) - Hoshino Karen (WFM, JPN, 1945) 1/2-1/2
Sanchez, M (AHO, 1505) - Sakai Azumi (JPN, 1713) 0-1
Marcos, T (AHO, 1583) - Kojima Natsumi (WCM, JPN, 1655) 0-1
Salim-Moussa, S (WCM, AHO, 1601) - Shibata Misaki (JPN, 1605) 0-1


オープンはこの日ストレート勝ち! 女子も1B こそドローでしたが、他は全て勝ってオランダ領アンティルに快勝です。これで次のラウンドはまた上にチャレンジすることになります。

Open R3 Japan - IBCA

Women R3 Japan - Kyrgyzstan

Batumi Olympiad R3 Pairings


今日はオープンが、視覚障害を持つプレーヤーのチームIBCA、女子がキルギスタンとの対戦です。IBCA と日本は、オリンピアードではそこそこ対戦しており、6年前は2-2 の引き分けでした。私が対戦するであろう1B のBabarykinは、94年生まれの若者で、ロシアの若手強豪として伸び盛りのプレーヤーです。オリンピアード序盤での大事なラウンドになりそうですので、気を引き締めて試合に臨んできます。

2018/09/25

Batumi Olympiad R1 Japan - Armenia


会場前の日本チーム

開会式翌日の24日から、オリンピアード初戦がスタートしました。すでにお伝えしていた通り、オープンがアルメニア、女子がイスラエルとの対戦です。思い返せば、私が初めて参加した2006年のトリノオリンピアードで、当時13R だったために全体で52試合し、たった1敗しかせずに優勝したのが、Aronian 率いるアルメニアでした。(1敗はAronian がKramnik に負け) 私がこの日対戦したSaegissian は、そんな超強豪国アルメニアでも代表に入り続けるGMで、アルメニアのトップGM Aronian の右腕とも呼べる存在です。
4年前は隣のボードで南條くんが敗れているのを見ていますので、今度は私がなんとかポイントを取る番だと信じてゲームに臨みました。

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sargissian, G (GM, ARM, 2691)
Batumi Olympiad (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 c5 3. Nc3 e6 4. g3 b6 5. Bg2 Bb7 6. O-O a6!?



この手から入る手順もあるとは知っていましたが、あまり大差はないだろうと考えていました。しかし、よくよく考えてメインの6... Be7 と比べると、私の得意としている変化に入れないことがわかります。6... Be7 7. d4 cxd4 8. Qxd4 d6 9. Bg5 a6 10. Bxf6 Bxf6 11. Qf4 という変化が私のお気に入りです。

7. d4 cxd4 8. Qxd4 d6 9. Bg5!?


まだ上記の変化に手順前後する可能性があるため、この手を選びました。最もよく指されるのは、9. Rd1 Be7 10. b3 という変化ですが、以前この組み方を試していて上手く指せなかったため、最近ではこのセットアップをあきらめていました。ただし、今調べ直してチャレンジしてみれば、全く問題なく指せるような気もします。

9... Nbd7



Sargissian は当然のごとくナイトから展開し、上記の変化を避けます。ナイトでf6 を早く守られてしまうようであれば、Bxf6 のアイディアは使えません。

10. Rfd1 Be7 11. Qd2 O-O 12. Bf4


しかし、こちらの変化も以前調べていて使ったことがあります。f6 を取らずとも、白はd6 へのプレッシャーでチャンスを作ることができます。

12... Ne8 13. Rac1 Rc8 14. b3 Nc5!



こうして先にナイトに跳ばれる変化は少し嫌でした。7年前にアメリカで指した試合では、14... Qc7 15. Qe3! Nef6 16. Nd5! exd5 17. Qxe7 Rfe8 18. Qxd6 Qxd6 19. Bxd6 Rxe2 20. Nd4! と進んで、カナダのFM に勝ちました。この変化を避けてナイトが跳ぶほうが、黒にとっては安全だと思います。

15. Ng5


少し考えてこの手を選びましたが、試合後に調べてメインの手であることを確認しました。白のアイディアは白マスビショップを交換したうえで、e4 にナイトを組み替えてd6 へのプレッシャーを増やすことです。

15... Bxg2 16. Kxg2 Rc6!?



なるほどと思いました。単純なようですが、こうして早めにb6、d6 を守ってしまえば、白にポーンを狙う隙を与えません。それでも白はf3 にナイトを退くのはつまらないため、予定通りe4 で勝負です。

17. Nge4 Nxe4 18. Nxe4 f5


このポーンを進めることも、私から見れば大きな決断です。黒はe4 のマスを奪い返す代わりに、e6 のポーンやa2-g8 のダイアゴナルを弱めます。しかし、弱点を抱えてもe8 に退いたパッシヴなナイトをプレーに戻さなければいけないという考えも理解できます。

19. Nc3 Nf6 20. Bg5



黒がf7-f5 を突いたことで、白はNc3-Nd5 と跳び込むチャンスが生まれました。c6 のルークが浮いているうちに、f6 のナイトを捌くことができればナイトの跳び込みが実現します。しかし、もちろん黒はそれを許しません。

20... Qe8 21. Qe3 Qf7 22. Qf3 Rfc8 23. a4


黒は理想的なcファイルのルーク並びを実現し、b7-b5d6-d5 のブレイクチャンスを作ります。ここでどう指すかはかなり迷いましたが、b5 のマスをひとまず抑えておくことにします。a2-a4 はb3 を弱めるために正直さほど好みの形ではないのですが、今はナイトがc5 まできてもさほど問題ではないですし、なにより白のもう1つの狙いが生まれるためにこの手を選びました。

23... h6 24. Bd2 Nd7 25. Na2!



お互いにナイトを組み替えて勝負です。私がa2-a4 と指したのは、a2 のマスを使えるようにするのが狙いでした。b4 までナイトが到達すれば、c6 のルークとa6 のポーンがダブルアタックとなり、白が駒得になります。

25...Ne5 26. Qe3 Ng4 27. Qf3 Ne5 28. Qe3 Ng4 29. Qf3 Ne5 1/2-1/2


ここは3回同一局面でドローを受け入れるほかないと思いました。白のクイーンは他に逃げ場もないですし、黒はNa2-Nb4 を上手く防ぐ方法がありません。黒がa6-a5 と突いてb4 を抑えるようであれば、当然Na2-Nc3-Nb5 とナイトを戻して、d6 のポーンを攻撃します。Sargissian はこのリスクを背負ってもゲームを続ける気は無いようで、自然な判断だと思いました。

こうして1Bはドローになりましたが、他の3つのボードは形勢が苦しく、そのまま負けてしまいました。2Bの南條くんは終盤までドローチャンスがあっただけにもったいなかったですね。

Open R1 Japan - Armenia 0.5-3.5

Kojima, S (IM, JPN, 2408) - Sargissian, G (GM, ARM, 2691) 1/2-1/2
Nanjo, R (IM, JPN, 2324) - Melkumyan, H (GM, ARM, 2660) 0-1
Yamada, K (FM, JPN, 2128) - Hovhannisyan, R (GM, ARM, 2621) 0-1
Matsuo, T (CM, JPN, 2170) - Martirosyan, H (GM, ARM, 2597) 0-1

Women R1 Japan - Israel 1-3

Hoshino, K (WFM, JPN, 1945) - Shvayger, Y (IM, ISR, 2375) 0-1
Sakai, A (JPN, 1713) - Efroimski, M (WGM, ISR, 2313) 0-1
Kojima, N (WCM, JPN, 1655) - Gutmakher, O (WIM, ISR, 2258) 0-1
Shibata, M (JPN, 1605) - Lahav, M (WFM, ISR, 2151) 1-0


女子は強豪イスラエルとの対戦で、4Bの柴田さんのみが白星を挙げました。イスラエルの1Bに座るYuliyaさんは、アゼルバイジャンのGM Naidischの奥さんで、2年前に来日してから交流があります。彼女もGMタイトルを狙って各地で試合をしていますが、2300台に落ちているところを見ると苦戦しているようですね。なにはともあれ、男女ともに格上相手にシャットアウト負けを防ぎ、初戦を乗り切っています。

続く2Rは、オープンがガーナ、女子がオランダ領アンティルとの対戦です。アフリカのGhana はともかく、Netherlands Antilles は聞き覚えの無い人も多いかと思います。ここはカリブ海に浮かぶオランダ領の諸島で、オリンピアードでは常連のチームです。どちらも日本よりもリストは下ですので、ここは勝って3Rにつなげたいですね。2日目も応援よろしくお願い致します!

Batumi Olympiad R2 Pairings

ちなみにゲーム観戦ですが、Chess24 はiPhone アプリでは相変わらずエラーが出て、ChessBobm は試合が見づらいとのことで、Follow Chess というアプリが良さそうです。小林くん、情報ありがとう。ジョージアでも、このアプリを使って観戦をしています。


アルメニアはAronian、Movsesian を抜いても全員GM の超強豪国です。

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