2018/11/30

Kotor - A Cat's Fortress -


すでに2週間前の出来事ですが、コトル滞在について今夜は記事を書こうと思います。私がこの2か月、試合で訪れているモンテネグロは、アドリア海に面する小さな国で、日本人にはさほど馴染みが無いと思います。首都のポドゴリツァという地名も、聞いたことのない人が多いのではないでしょうか。そんなモンテネグロには小さいながらも、ポドゴリツァより人気があるといっても過言ではない観光地があります。それがモンテネグロの中央付近に位置するコトルです。


早朝、バスでウィーンへ

私がコトルを訪れた際は、ブダペストからバスでウィーン空港へ。ウィーンからポドゴリツァに飛び、そこからタクシーで市内のバス停へ向かい、さらにバスでコトルへというルートでした。観光客の多くはこのポドゴリツァ経由ではないく、クロアチアのドゥブロブニクからバスで訪れます。私はブダペストからの長距離バス停、ネプリゲットを初めて訪れました。


ポドゴリツァは一国の首都とも関わらず、とても小さな空港でした。空港からはバスが無く、7km 先のバス停までタクシーを使うしかありません。タクシー乗り場に表記がありましたが、料金は一律12ユーロ。10分しか乗らないのに高いです... この2時間乗るコトルへのバスは、この半額近い7ユーロでした。


コトルに到着したのは夜だったので、翌日から行動開始です。コトル観光のメインであり、一番の醍醐味と言えば、この山を登ることです。2つある入り口のどちらかで8ユーロを払うのでだと、宿泊したホステルで説明を受け、まずは旧市街に入ります。


ピレ門ほど立派ではなく、観光客が押し寄せているわけではないですが、こうして城壁で旧市街が囲まれている構造は、ドゥブロブニクとよく似ています。私は南側の入り口から中に入りました。


朝10時半のコトルは、教会前の広場でもまだ人はまばらです。山を登るのにふさわしく、快晴だったのもラッキーでした。


登り始めだと、この地域でよく見るオレンジ屋根もまだ近い位置にあります。段々と高度が上がるにつれ、この形式も変化していきます。


こうした石段を、ひたすら山頂に向けて登り続けます。見ての通り狭いので、降りてきた人と石段を譲りあわないといけない時もあります。石段以外の石の道を歩いても良いのですが、長く歩いていると足が痛くなります。


5分程上がると、オレンジ屋根の奥にコトル湾が見えるようになりました。これは良いペースで行けるかなとも思いましたが、朝ご飯抜きで装備は水だけ、しかも運動不足ということもあり、すぐにばてます。休憩を挟みながら、無理のないペースで進んでいきます。


20分程上がったところには、小さな教会があり、お土産や飲み物が売っていました。どこの山でもそうですが、こうした場所まで商品を運ぶのは大変そうですね。地図で確認する限り、頂上の砦はまだまだ先です。ここからも無心で登り続けます。


コトルは猫が有名で、町中だけでなく山の上にも猫がいます。人間と同じように、石段を上がってきたのでしょうか?


50分かけて頂上付近までくると、コトル湾の形もはっきりわかるようになります。この景色を見るために、コトルを訪れた観光客はひたすら石段を上るわけです。一緒にきたメンバーは言葉を交わさずとも、ともに同じ課題に挑んできた仲間意識のようなものが芽生えると思います。ちなみに私は途中で、ヨーロッパに留学中だという日本の男子大学生2人とたまたま出会い、ここまで上がってきました。


頂上にあるのは砦と言うよりも、崩れた砦跡と呼ぶほうが正確ですね。ここで少し休憩を取り、続きをどうするか考えます。1つは同じ道を辿って旧市街まで降りる。もう1つは途中で合流する別の道に出て、旧市街のはずれに降りる。最後は別の道に出て、さらに高い位置を目指すです。ひとまず別の道との合流地点を目指すことにします。


しかし、その合流地点がどこかよく分かりません。地図アプリで目星をつけた辺りを探しても見つからず、途方にくれていたところ、見つけたのがこれ。道の合流地点じゃなくて、ただ壁に空いた穴じゃん!


穴をくぐった先も石が転がる道なき道。ただしここで合ってますよといわんばかりに、赤い目印がついています。おっかなびっくりここを進むと、その先の広場でピクニックをしていたロシア人家族から、熱いお茶と今年のワールドカップの記念メダルを貰うことができました。彼らにも穴をくぐったのか聞いてみましたが、そうではなく、下から別ルートで上がってきたとのことです。普通くぐらないですよね...


さらに先の広場に動物らしき影が見える。でも全然動かないから、藪かなにかだろうなと思って近づくと、この通りロバでした。野生ということもないでしょうし、誰がどこから連れてきたのでしょうか。猫以上の謎です。


ロバ発見以降、進むか降りるか大学生たちと相談し、彼らの時間の都合で私も降りることにしました。ロシア人家族が上がってきたというこのくねくね道を、逆に降りてコトルの町を目指します。後でホステルの人の話を思い出したのですが、このくねくね道は石段ルートよりも時間かかる代わりに、通行料がかからずにタダで山頂を目指すことがです。


ロバの広場から40分ほどで麓までは降りることができ、大学生たちとは解散しました。この後は少しホステルでゆっくりし、昼食には前夜にも利用したグリルのお店へ。コトルは魚も出す店もあるようですが、10月からモンテネグロでは肉ばかり食べていました。


コトルのお土産屋にも、チェスセットコーナーがありました。モンテネグロでもチェスはポピュラーだよと、店員さんが教えてくれました。元はソ連と並ぶ世界最強クラスのチェス国家、ユーゴスラビアですものね。それも当然です。



猫の町、コトルでは猫関連のお土産もたくさん並んでいます。私も小さなものですが、1つお土産を購入しました。

そろそろこの記事も締めくくりにしようと思います。私としては、10月末に訪れたクロアチアのドゥブロブニクよりも、コトルのほうがお気に入りの町になりました。私が感じたコトルの良いところは、以下の通りです。

・物価がドゥブロブニクよりも、はるかに安い
・小さいので、1日もあれば十分に町を見て回れる
・基本的に山登りしかやることがないが、他の観光客と同じことをする一体感があり、それが楽しい

また年内にコトルは行く機会があると思いますので、その際は11月に逃がした山頂の眺めの良いカフェを訪れてみるつもりです。コトルへはドゥブロブニクからの日帰りツアーもあるので、こちらを訪れる人は2つの町を両方行って、どちらがお気に入りになるか比べててみても面白いと思いますよ。

2018/11/29

World Chess Championship Match 2018


色々と書きたい記事はあるのですが、今夜はこの話題以外ないでしょう。昨日、ロンドンで行われていたCarlsen - Caruana の世界チャンピオンマッチに決着がつきました。クラシカルで異例の12戦連続ドローとなり、1日休みをおいて行われた昨日のラピッドタイブレークで、現チャンピオンのCarlsen は3連勝とCaruana を圧倒し、世界チャンピオンのタイトル防衛に成功しました。ポイントとなった13R のゲームをご紹介します。

Calrsen, M (GM, NOR, 2880) - Caruana, F (GM, USA, 2789)
Carlsen - Caruana World Championship Match (13.1)

1. c4 e5 2. Nc3 Nf6 3. g3 Bb4 4. e4 O-O 5. Nge2 c6 6. Bg2 a6 7. O-O b5 8. d4 d6 9. a3 Bxc3 10. Nxc3 bxc4 11. dxe5 dxe5 12. Na4!



このマッチでCarlsen は1. e4 も使いましたが、Caruana のPetrov を崩すことはできず、この1. c4 をもう1つの武器としています。黒はこの局面で1ポーンアップですが、クイーンサイドのポーンはバラバラで、b6, c5 といった黒マスが弱くなっています。Carlsen はこれを利用することで、ポーンを取りかえすだけでなく、ゆっくりでアドバンテージを取ることを狙います。

12... Be6 13. Qxd8 Rxd8 14. Be3 Nbd7 15. f3


堅実ですね。これでNf6-Ng4 を防いでおき、g1-a7 のダイアゴナルのコントロール、および黒マスの利きを確保しておきます。

15... Rab8 16. Rac1 Rb3 17. Rfe1 Ne8 18. Bf1 Nd6 19. Rcd1 Nb5 20. Nc5!



Caruana としては、どこかでポーンを返しても(さらに取られても)、なんとか戦える形を模索したいところですが、ここでナイトに跳びこまれる手がきつく、一気に駒数でも白がリードを奪います。

20... Rxb2 21. Nxe6 fxe6 22. Bxc4


ここは1つ面白いトリックがあります。22. Bg5 Nd4! 23. Bxd8?? Nxf3+ 24. Kh1 Rxh2# ならば黒は大逆転です。

22... Nd4 23. Bxd4 exd4 24. Bxe6+



私は昨夜観戦していて、dファイルにルークを重ねるプランはどうかと考えていました。これには24. Rxd4 Kf7 25. Red1 Ne5! 26. Rxd8 Nxf3+ 27. Kf1 Nxh2+ 28. Ke1 Nf3+= この反撃がありました。上記と同じ、f3 をナイトで狙う反撃は、白が最も警戒すべきものです。

24... Kf8 25. Rxd4 Ke7 26. Rxd7+


ここも悩むところですが、ポーンアップになった白はピースを捌き、ルークのエンドゲームで戦います。

26... Rxd7 27. Bxd7 Kxd7 28. Rd1+ Ke6 29. f4 c5 30. Rd5 Rc2 31. h4 c4



さぁ問題はこのルークエンディングが勝てるかどうかです。キングサイドはポーンが4対2ですが、黒キングは白のポーンを止めやすい好位置におり、白キングは2段目でカットオフされています。

32. f5+ Kf6 33. Rc5 h5 34. Kf1 Rc3 35. Kg2 Rxa3 36. Rxc4 Ke5 37. Rc7 Kxe4?


この試合が前の12試合と同じでクラシカルであり、増加が30秒で残り時間にも余裕があれば、Caruana もここでベストの手を見つけられたかもしれません。37... Ra2+! 38. Kh3 Kxe4 39. Re7+ Kf3! 40. Rxg7 Ra1= であれば、白はパペチュアルチェックを防ぐことはできず、本譜のようにポーン交換が進むことはありませんでした。

38. Re7+ Kxf5 39. Rxg7 Kf6 40. Rg5 a5 41. Rxh5 a4 42. Ra5



10年ほど前、ルークエンディングでは2コネクテッドパスポーンがあり、相手の単独パスポーンをルークで後ろから止めていれば勝てると教わりました。もちろんいくつか例外はありますが、これはまさにそのお手本のような形になっています。縦と横、相手のパスポーンのアタックと、相手キングへの攻撃に広く利く白のルークと、段々行き場が狭まり、横にしか利かない黒のルークで、働きに差が出てきます。

42... Ra1 43. Kf3 a3 44. Ra6+ Kg7 45. Kg2!


私がこのルークエンディングで、最も大きなポイントだと感じたのがここです。一度f3 にキングを上げてから6段目でチェックし、黒キングを7段目に押し込みます。その後、キングをg2 に下げて黒キングの動きを封じます。45. Kg4? a2 46. h5 Kh7 47. Kg5 Rg1 48. Ra7+ Kg8 49. Rxa2 Rxg3+= 焦ってキングをg4 に上げてしまうと、どこかで白キングはg3 のポーンから離れなければならず、それを見て黒はルークでgポーンをアタックすれば、ポーンを交換してドローです。

45... Ra2+ 46. Kh3 Ra1 47. h5 Kh7 48. g4 Kg7



48... a2 49. Kg2!+- ならば黒はルークをa1 から抜きつつ、白のポーンに反撃ができません。白はキングの協力なしでも、2コネクテッドパスポーンとルークの横利きで勝つことができます。

49. Kh4 a2 50. Kg5 Kf7 51. h6 Rb1


51... Kf8 52. Ra8+ Kf7 53. h7 Rh1 54. Rxa2 Rxh7 55. Ra7+ Kg8 56. Rxh7 Kxh7 57. Kf6+- 本譜のようにaポーンを諦めるのは絶望的に思えますが、ただ待っているだけでも白勝ちのポーンエンディングにされるだけです。

52. Ra7+ Kg8 53. Rxa2 Rb5+ 54. Kg6 Rb6+ 55. Kh5 1-0



続けるとしても、55... Rb5+ 56. g5 Rb8 57. Ra5 Rc8 58. g6 Rb8 59. Kg5 Rc8 60. h7+ Kg7 61. Ra7+ Kh8 62. Kh6 Rb8 63. g7# くらいで白は勝ちです。クラシカル12戦では一切決着がつきませんでしたが、続く14,15R も勝って、Carlsen は防衛に成功しました。

Caruana ならばあるいはと思われた今回のマッチですが、結局Carlsen の牙城は崩せませんでした。次の挑戦者は誰になるのか、楽しみにしつつ、また自分のチェスも精進し続けられればと思います。

2018/11/28

Scholastic Chess Tournament

先週から各所で告知されているイベントについて、私のブログでも紹介させていただきます。私がお世話になっている立川チェスクラブで、12月に学生向け大会が開催されます。以下、大会の概要です。

期日 2018年12月9日(日曜日)
会場 立川女性総合センターアイム5F(立川駅北口徒歩5分)
対象者 大学院生以下
参加費 2300円
試合方式 スイス式6回戦(25分+1手10秒)

その他の詳細は以下のリンク先からご確認ください。

Scholastic Chess Tournament(JCA Official Rated)

今回のイベント告知で、初めて立川にチェスクラブがあることを知ったかたも多いと思いますので、私からも補足をしておきます。立川のチェスクラブは普段は小学生を中心として月に2回ほど集まっており、私とAlex が指導をしています。私が9月以降、海外遠征で顔を出せなくなってからは、妻のなつみや山田明弘さんに子供たちの面倒を見てもらっています。

今回が立川チェスクラブとしては初の対外イベントとなりますが、きちんとNA の資格を持つ人が運営をしますし、しっかりした大会になると思います。私も遠くハンガリーから、多くの参加者が楽しめることを願っています。まだお申し込みでない学生さんは、是非参加を検討してみてください。

2018/11/27

Third Saturday GM November 2018 R9


今月の最終戦、クロアチアのPlenkovic とのゲームです。なんでも指す経験豊富なプレーヤーですが、今大会は下位に沈んでおり、私としてはなんとかポイントを取って大会を締めくくりたいところでした。

Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
Third Saturday GM November 2018 (9)

1. e4 c6 2. Nc3 d5 3. Nf3 Bg4 4. h3 Bxf3 5. Qxf3 e6 6. d4 dxe4 7. Qxe4 Nf6 8. Qd3 Na6



この変化は調べていたものの、公式戦で指すのは今回が初めてです。a6 のナイトはクイーンに当てるテンポを見せ、a2-a3 を突かせることで1手稼ぐ狙いがあります。

9. a3 Qa5 10. Rb1 Nc7 11. b4 Qb6!?


Mamedjarov のゲームで、f5 でクイーンをぶつけてクイーンを交換し、d4 をゆっくり攻撃する流れがあることは覚えていました。しかし、11... Qf5 12. Qxf5 exf5 13. Bd3 g6 14. Bf4 Ne6 15. Be5 Bg7 16. d5 で白のほうが良いのではないかと思い、どうするか悩みましたが、e6 のナイトがg7 のビショップを守っていることを完全に失念していました...本譜もDreev のチョイスで、クイーンの残る難しい局面になります。

12. Na4 Qb5 13. Qb3!? Qd5 14. c4!?



13手目で実戦を外れ、白はd4 のポーン捨てを決断します。Caro-Kann では様々な局面でd4 を取らせる誘いがありますが、ここは乗って勝負にいきます。

14... Qxd4 15. Be3 Qe5 16. Be2 Be7 17. f4 Qf5 18. g4 Qg6


白は黒クイーンをアタックし、その行き場を狭めることでポーンの代償を図ります。

19. Nc5 b6?



この手はc6 も弱め、なんとなくおかしいことは分かっていました。ただ、白のヘビーピースがbファイルに並んだこの状況で、キャスリングは危ないと思ってしまいました。過去、こうした局面でディフェンスできるだろうと思い、失敗した例がいくつもあったため、自分のディフェンス力に自信がなかったというのが正直なところです。19... O-O-O 20. Bd3 Qh6 21. g5 Qh4+ 22. Bf2 Qxf4 23. gxf6 gxf6 の3ポーンピースならば、黒は十分勝負できます。

20. Nd3 Ne4?


ここはNe4-Ng3 を見せておくのが有効だと思いましたが、20... Nd7 とe5 のマスを受けてディフェンスしたほうが良かったです。この試合は反撃とディフェンスのバランスを上手く見極められませんでした。

21. h4! h5 22. Ne5 Qh7 23. g5!



ここまで進み、自分の作戦が完全に失敗したことが分かりました。e5 のナイトは強力で、Ne4-Ng3 の狙いも働きません。それでも、Be2-Bd3 からピンにされては終わりなので、この手を指すほかありません。

23... Ng3 24. Bd3 g6 25. Rh3 Nf5 26. Be4 O-O


なんとかc6 を返してキングを安全にしますが、クイーンサイドは完全に崩れ、h7 のクイーンも悲しい働きです。

27. Nxc6 Rae8 28. Bf2 Bd6 29. Rf3 Nd5?



ここは苦しいながらも、29... e5 と開きにいったほうが良かったです。時間がなかったとはいえ、本譜はひどい... b3 にクイーンが控えているため、このナイトタダ取りです。しかし、相手は気付かず...

30. Kf1 Nxf4 31. Rd1!


ビショップの逃げ場がなく、万事休すです。

31... Qg7 32. Bxf5 gxf5


32... exf5 33. Rxd6 Qa1+ 34. Rd1+- このルーク退きがあるため、クイーンの反撃もすぐ止められます。

33. Rxd6 e5 34. Rxf4 exf4 35. Bd4 f6 36. c5+ Kh7 37. Qd5 1-0



まだまだこうしたねじりあいの勝負は苦手だなと思いました。これで貯金を1つ減らし、今月のThird Saturday は1つ勝ち越しでのフィニッシュです。

11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485) 1-0
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429) 1-0
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1/2-1/2
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271) 1/2-1/2
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, CRO, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0

Third Saturday GM November 2018

+3 Pikula,
+2 Drasko, Nikcevic, Srinath
+1 Kojima, Akshat
-2 Plenkovic, Nikolic
-3 Audi
-4 Der Manuelian

最終戦の負けでレイティングも微減になってしまい、12月の更新で私のレイティングは前と同じくらいまで下がりそうです。それでも、このモンテネグロの大会では白が4勝1ドローと復活し、対GM戦も2勝1ドローと初めて負け無しで乗り切ることができました。悪かった点を振り返りつつ、良かったところをまた次の大会でも発揮できればと思います。

この試合の後、夕方にデノビッチを出て、22時間かけてブダペストへ戻ってきました。初めてタクシー、バス、バスと陸路で長距離を移動しましたが、体には思ったより負担はありませんでした。ノビサドでのバスの利用方法もわかったので、またこれを使うこともあると思います。

2018/11/26

Third Saturday GM November 2018 R8


8R はアメリカから武者修行に来ているDer Manuelian と先月に引き続きの対戦です。このトーナメントの前はアルメニアでプレーしていたそうで、精力的にあちこちを移動して試合を続けているようです。

Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271)
Third Saturday GM November 2018 (8)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 Be7 5. Bf4 O-O 6. e3 Nbd7 7. a3!?



6... Nbd7 に対して何を指すか、色々と試していますが、この日は手堅い7. a3 を選びました。クイーン交換も視野に入れ、わずかに良いエンドゲームを白は目指します。

7... c5 8. cxd5 Nxd5 9. Nxd5 exd5 10. dxc5 Nxc5 11. Be5 Bg4


この手は前夜に調べた中では見つけられず、この局面から考え始めます。11... Bf6 12. Bxf6 Qxf6 13. Qd4 Qxd4 14. Nxd4 Bg4!? に対して、15. f3 が用意でしたが、15. Be2 もオッケーとのコンピュータの判断だったため、これに手順前後させることにします。

12. Be2 Bf6 13. Bxf6 Qxf6 14. Qd4 Qxd4 15. Nxd4 Bxe2 16. Kxe2 Rfc8 17. Rhd1 Ne6 18. Rac1



ここはどのようにゲームが進むかの分かれ目です。18. Rd2 Nxd4+ 19. Rxd4 Rc2+ 20. Rd2 Rac8 21. Rad1 Kf8 22. Rxc2 Rxc2+ 23. Rd2 Rxd2+ 24. Kxd2 h5!= ならば、ポーンエンディングはドローになりそうです。そのため、d5 の孤立ポーンをアタックしづらくしても、ルークを残して戦うことにします。

18... Nxd4+ 19. exd4 b6


次にRc1-Rc5 と入る狙いを止めるのは当然です。これで将来的に弱まったc6 のマスを白が利用するチャンスがあるかどうかは、この先の大きなポイントです。

20. Kd3 f6 21. a4 Kf7 22. Re1 a5?



白のa4-a5 を警戒し、このポーンを進めてくれたのはラッキーでした。これでb6 のポーンが弱くなり、b6, c6 と弱点が並ぶことになります。代わりに22... g5! と指して本譜の流れを止めておけば、黒は満足に戦えたでしょう。

23. f4!


f4-f5 からe6 に拠点を作ると、いよいよ黒は6段目に並んだ弱点をカバーしきれなくなります。e5 のマスを弱めるf6-f5 は突けませんし、黒はいきなりトラブルを抱えることになります。

23... Rab8 24. f5 Rxc1 25. Rxc1 Rb7 26. Rc6 Ke7 27. b4!?



このクイーンサイドからのブレイクが勝つために必要だと決断しましたが、少し気が早かったかもしれません。黒は正確に指せばディフェンスできますが、実戦ではかなり悩むところだと思います。

27... axb4 28. Kc2 Kd7 29. Re6 b5?


このミスで白は強力なパスポーンを作り、しかも1手早めに進めることができました。29... Rc7+! 30. Kb3 Rc3+! 31. Kxb4 Rc4+ 32. Kb5 Rxd4 33. Rxb6 Rd2 34. Kc5! (34. Rb7+? Kd6 35. Rxg7 Rb2+ 36. Ka6 d4-/+ 急いでg7 を取ると、キングを端に追いやられ、反撃を食らいます。) 34... Kc7 35. Rb3 Rxg2 36. Rg3 Rc2+ 37. Kxd5 g6 38. Rh3 Kb6 39. Rxh7 Rc5+ 40. Ke6 Rxf5= これはドローです。キングが上がれればチャンスが作れると思いましたが、黒もg2 を狙いスピードが十分だとは読めませんでした。

30. a5 Rc7+ 31. Kb3 Rc4 32. Rb6



ここは、32. a6! Kc7 33. Re7+ Kb8 34. Rxg7 Rxd4 35. Rxh7 Rf4 36. h4+- で勝勢でした。本譜よりも黒キングを8段目に押し込み、黒のできるプレーを制限しています。

32... Kc7 33. Rxb5 Rxd4 34. a6 Rd1 35. Kxb4 d4 36. Rb7+ Kd6 37. Rxg7


こうして早めにg7 を取れたので、これは問題なく勝っただろうと思いました。しかし、ここから事件が起こります。

37... d3 38. Kc3 Ra1 39. Kxd3?



最終戦の相手のPlenkovic にも、aポーンを突けば勝ちだよね、と言われました。確かにaファイルのパスポーンは強力なのですが、後ろからルークで狙われて8段目到達は簡単ではありません。ならば、このパスポーンを消しても2ポーンアップになったほうが良いのではないか。これが私の試合中の考えでした。これが大きな間違いだったことは、この試合での一番の反省点です。39. a7! Ra3+ 40 Kd2 h5 (40... h6 41. g4 Ke5 42. Ke3! Kd6 43. Rf7 Ke5 44. Rd7+- これで黒は手が無くなり、ツークツワンクです。) 41. h4 Ke5 42. Ke3 Kxf5 43. g4+ hxg4 44. h5+- ポーンを取るのではなく、逆に取らせてしまえばhファイルに新しいパスポーンができ、これが勝利の決め手となります。黒のdポーンを残しておくと、白キングの動きが制限されることも、本譜のようにポーン交換した理由なのですが、e3 に上がれれば十分だというのは盲点でした。

39... Rxa6 40. Rxh7 Ke5 41. g4 Ra3+ 42. Kc2 Kf4 43. h3 Rg3


このようにh3-g4-f5 のポーンストラクチャーにするのは、ポーン交換前からの構想でした。問題は白がここから多い2ポーンを活かしたプレーがしづらいということです。

44. Rh6 Ke5 45. Kd2 Ra3 46. Ke2 Rg7



白がなにかするならば、hポーンを伸ばすか、ルークの位置を切り替えるしかありません。私は後者を試しましたが、前者でも黒はディフェンスできます。50. h4 Kf4 51. h5 Ra2+ 52. Kf1 Rh2 53. Rg7 Kf3 54. Ke1 Kf4 これで白は意外と局面の改善方法がありません。

50... Kf4 51. Rf7 Rg3+ 52. Kh2 Ra3 53. Re7 Ra2+ 54. Kh1 Kg3 55. Re3+ Kh4


h4 は黒キングにとって好位置で、h3 をアタックしながらg4-g5 も止めています。

56. Kg1 Rb2 57. Kf1 Ra2 58. Ke1 Rb2 59. Kd1 Ra2 60. Kc1 Rh2 61. Rd3 Rf2 62. Kd1 Ra2 63. Ke1 Rb2 64. Rf3 Ra2 65. Kf1 Rb 66. Kg1 Ra2 67. Rf2 Ra3



結局ルークの位置を切り替えても、その間に黒キングにポジションを改善され、h3 を落とされるだけでした。結論としては、パスポーンを取りあい、2ポーンアップにする判断が大きな間違いで、このルークエンディングは勝てません。

68. Kg2 Rg3+ 69. Kh1 Rxh3+ 70. Rh2 Kxg4 71. Rxh3 Kxh3 72. Kg1 Kg3 73. Kf1 Kf3 74. Kg1 Ke4 75. Kg2 Kxf5 76. Kf3 Kg5 77. Kg3 Kf5 78. Kf3 Ke5 79. Ke3 f5 80. Kf3 f4 81. Kf2 Kf6 82. Kf3 Kf5 83. Kf2 Kg4 84. Kg2 f3+ 85. Kf2 Kf4 86. Kf1 Ke5 87. Kf2 Ke4 88. Kf1 Ke3 89. Ke1 f2+ 90. Kf1 Kd4 91. Kxf2 1/2-1/2


40手目前とは言え、残り時間に十分余裕はあったので、2ポーンアップのエンドゲームが本当に勝てるのか、d3 を残すのは本当に厄介なのか、もう少し読むべきでした。エンドゲームは多少なり上手くなりましたが、肝心なところでこうして勝ちを逃すゲームはいくつかあるので、これは直さないといけませんね。

11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485) 1-0
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429) 1-0
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1/2-1/2
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271) 1/2-1/2
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)

Third Saturday GM November 2018

+3 Pikula, Srinath
+2 Drasko, Kojima, Nikcevic
+-0 Akshat
-1 Nikolic
-3 Plenkovic
-4 Audi, Der Manuelian

最終戦は先ほど終わりましたが、そちらの結果報告と棋譜解説は明日の記事に回そうと思います。これからブダペストに戻ります!

2018/11/24

Third Saturday GM November 2018 R7


ハンガリーよりモンテネグロのほうが調子が良い理由を色々考えてみましたが、遅く寝ても朝は8時台に起きて、朝食を欠かさずとっていることは挙げられるかもしれません。最近は生ハムが出るようになって嬉しいです。これにハム、チーズ入りのオムレツをいつも食べて試合の準備に臨んでいます。

ペアリングが決まった際、一番きついと思われていたGM 3連戦は、意外なことに初戦、2戦目を勝つことができました。この勢いで3試合目のDrasko戦も勝つことができれば、2敗した時点で風前の灯火だったノーム獲得のチャンスが復活します。色々と考え、新しいセットアップで勝負に挑みました。

Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
Third Saturday GM November 2018 (7)

1. Nf3 d5 2. g3 Nc6!?



King's Indian Attack の新しい対策として、この2... Nc6 を用意してきました。1. e4 e5 プレーヤーにとっては自然に受け入れられるc7 のポーンとc6 のナイトの組み合わせも、Caro-Kann, Slav を長く指し続けている私にとっては、違和感を強く感じます。しかし、白がd2-d4 と突かなければ、3... e5 からReversed Pirc に、突けば本譜のような流れになるのは分かりやすいと、ゲームを調べていて思いました。

3. d4 Bf5


3... Bg4 のラインも調べましたが、Drasko がドローにしかならないラインを白で指しており、今回のゲームでの投入は諦めました。別の機会では指すかもしれません。

4. Bg2 Nb4 5. Na3 c6 6. O-O Nf6



Nb4-Nc6 と戻るセットアップもありえますが、私はやはりc6 にポーンがあるほうが安心です。お互いに端に出たナイトをどう活用するかがゲームのポイントとなります。

7. c3 Na6 8. Nc2 h6 9. Nce1!?


私自身、黒でNa6-Nc7-Ne8-Nd6 のマヌーバリングをタイミングによっては考えていたので、白がこれを選んだことも理解できます。ただし手数をこのナイトにかけてくれるようであれば、黒としてはありがたいという面もあります。

9... e6 10. Qb3 Qb6 11. Bf4 Be7 12. Nd3 O-O 13. Nfe5 Rfd8 14. Rfe1 Rac8 15. Rac1 Ne8!



以前、Fianchetto Grunfeld を調べていた際に、a6 にナイトがある局面で、もう1つのナイトをe8 に退く組み合わせがあったことを思い出しました。アイディアはd6 への組み直しと、c7 のマスをカバーすることです。ここではさらに白のe2-e4 を誘っています。

16. e4?!


Drasko は私の狙いに見事に引っ掛かりました。このポーンブレイクは、黒がe4 のコントロールを減らしたので成立しますが、先まで読むと黒に分があることがわかります。さらにCaro-Kann プレーヤーの私としては、e4 とd5 のポーンを交換するCaro-Kann のポーンストラクチャーは願ったりかなったりです。

16... Qxb3! 17. axb3 Bxe4 18. Bxe4 dxe4 19. Rxe4 c5?!



白マスビショップが消えれば、h1-a8 のダイアゴナルの脅威が消え、このcポーンのブレイクが容易になるのは間違いありません。しかし、ここはもう1つの手を挟んでおくのが正確な手順でした。19... g5! 20. Bd2 (20. Be3?? Nf6!-+) 20... c5! 21. Nf3 Nd6! 22. Re2 cxd4 23. Nxd4 Bf6 24. Nc2 Nf5 25. Nce1 Nc5 26. Nxc5 Rxc5=/+ これで次にdファイルにルークを重ねれば、黒が指しやすいことは明らかでしょう。g7-g5 はもう少し掘り下げて効果を考えるべきでした。

20. Nf3?!


20. dxc5 Nxc5 21. Nxc5 Bxc5= 相手にダブルポーンがある分、黒はなんら不満のない局面ですが、アドバンテージがあるかと言われれば疑問です。

20... Nf6?!


ここが20... g5! と突く最後のチャンスでした。

21. Re2 cxd4 22. Nxd4 Nc5 23. Nxc5 Bxc5 24. Nf3 Nd5 25. Bd2 a6



黒はとても満足なポジションですが、これを勝ちにいくのは相当大変です。色々と試してみますが、Drasko はとても手堅く進めてきます。

26. Kg2 Be7 27. Rce1 Nb6 28. Be3 Nd5 29. Bd4 Kf8 30. Re4 Nf6 31. R4e2 Nd7 32. b4


Nd7-Nc5 を防ぐこのbポーン突きは、c4 のマスを空けるために弱みもあるかと思いましたが、黒にはそれをあまり利用する手段がありません。

32... Bf6 33. Bxf6 Nxf6 34. Nd2 Rd3 35. Nb3 Nd7



白のNb3-Nc5 の侵入を防ぎ、これでお互いにあまり手が無くなります。

36. Re4 Rc7 37. R1e2 Rd6 38. Nd4 Nf6 39. Re5 Nd7 40. R5e4 Nf6 41. Re5 Nd7 42. R5e4 Nf6 1/2-1/2


ノームチャンスのためにとことん戦うことも考えましたが、全く白を崩せるイメージが持てず、ここでドローにしました。5つ勝ち越しのノーム達成条件は今月もクリアできませんでしたが、GM トーナメントでGM に1敗もせず、2.5/3 で乗り切ったのは今回が初めてのことです。残り2戦の結果にかかわらず、これを今大会の1つの収穫にしたいと思います。

11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485) 1-0
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429) 1-0
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1/2-1/2
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271)
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)

Third Saturday GM November 2018

+3 Pikula, Srinath
+2 Drasko, Kojima, Nikcevic
-1 Akshat, Nikolic
-3 Plenkovic, Audi
-4 Der Manuelian

残りの2戦は下位に沈んでいるDer Manuelian とPlenkovic が相手です。ノームが消えても勝ちを目指して戦うことには変わりませんので、残り2試合、良いプレーで結果も出せるように頑張ります!

2018/11/23

Third Saturday GM November 2018 R6


デノビッチは3日ぶりに晴天となりました。一昨日の嵐の影響で、道路に流れてきた土砂を片付けたり、水没した船から水を出したりと、デノビッチの住人たちはまだ忙しなさそうですが、試合に訪れている私としては、こうして天気が回復して一安心です。一昨日は3階の部屋から2階の試合会場に降りるため、外の階段を1階分降りるだけでびしょ濡れになりました(笑)

6試合目の相手は、モンテネグロのGM Nikcevic です。先月は、最終戦で勝てば初のGM ノーム獲得という場面で彼と試合をし、本当に悔しい負けを喫したのでした。今回はまだまだノームに関係のないラウンドではありますが、連続白で負けるわけにはいきません。

Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429)
Third Saturday GM November 2018 (6)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. Qc2 c5



このAnti-Nimzo-Indian の4... c5 ラインは、何度か指してその都度復習しているのですが、いまだにしっかりと作戦を理解できていません。この試合も手探りで進めていくことにします。

5. a3 Ba5 6. g3 Nc6 7. Bg2 O-O 8. O-O d6 9. e3 e5


以前見たAtalik の試合で、白がd2-d4 と仕掛ける展開があったため、d2-d3 を遅らせてそれを狙います。しかし、Nikcevic の指した手順ではそれが成立しません。

10. b3 h6 11. Bb2 Re8 12. Ne1!?



ここは12. d3 Bf5 13. Nd2 と続けるのが普通だと理解していました。しかし、それにはQd8-Qd7, Bf5-Bh3 からの交換で白が少しつまらないのではないかとゲーム中に考えました。そこでdポーンをまだ突いていないことを利用し、f2-f4 と仕掛けにいくのはありえると考え、ナイトを退きます。

12... Bxc3 13. Qxc3


ここはa1-h8 のダイアゴナルにこだわってクイーンで取りかえしましたが、本譜のビショップの展開を防ぐために、13. Bxc3 と取り、クイーンをc2 にキープしておく選択肢もあったでしょう。

13... Bf5 14. d3 Qd7 15. b4 Bh3 16. b5 Ne7 17. e4



f2-f4 を完全に諦めたわけではないですが、少し作戦変更です。まずはe5 のポーンを固定して、黒からのe5-e4 押し込みのチャンスを消し、Ne1-Ng2 (or Nc2) - Ne3 からd5, f5 の2マスをナイトで睨むアイディアがメインです。その中でチャンスがあれば、fポーンも突こうと思っていました。

17... Ng6 18. Qd2 a6 19. a4 axb5 20. axb5 Rxa1 21. Bxa1 Ra8 22. Bc3 Bxg2 23. Nxg2 Nh7 24. h4


ここは悩む局面で、f2-f4 にこだわる考えもありそうですが、aファイルと取られたままであるのは間違いなくリスクがあるため、安全策でいくならば、Rf1-Ra1 からのルーク交換は必要になります。私は危険を冒さず、確実にg5 のマスを抑えてキング周りを守ります。

24... Qh3 25. Ra1 Rxa1+ 26. Bxa1 Nf6 27. Ne3 Ng4?!



この普通に見えるナイト跳び込み、そしてナイト交換の催促がイマイチでした。27... Nh5!? 28. Qe1 Nxh4 29. gxh4 Nf4 30. Qd1 Qxh4 は黒がピースを捨て、形勢不明です。

28. Nf1!


私もこの局面になる前までは、ずっとナイト交換しかありえないと思っていました。しかし、f1 にナイトを下げる手がぴったりとh2 の受けになっており、こうなるとh3 の身動きできないクイーンは、奇妙な位置です。

28... Nf8


本譜の展開を避けるためには、1手前が無駄だったことを認め、28... Nf6 と下がるべきでした。

29. Qa5!



しばらくキングの守りに手いっぱいで、反撃を作るには時間がかかると思っていましたが、f1 のナイトが全てキングの守りの役目を果たしてくれるため、予想よりずっと早くこの手が成立しました。b7, d6 のどちらを取れても、白には大きなチャンスが生まれます。

29... Nf6 30. Qa8?


しかし、残り時間の少ない中、クイーンの侵入するマスを間違えました。30. Qd8! Qd7 31. Qb8+/- この局面はイメージできていましたが、クイーンをぶつけられて避けるのに1手早めに使わないといけないことを、もったいないと思ってしまいました。実際にはd6 を狙うことで、確実に黒クイーンを退かせておくのが正解です。

30... Qd7?



ここはラッキーでした。全く試合中は気付いていませんでしたが、30... Qg4! 31. Qxb7? Qe2 と進んだ場合、次のNf6-Ng4 でf2 を狙われて困っています。b7 を捨てる選択肢はないと思い込んだのがミスでした。

31. Ne3!+/-


黒クイーンさえ退いてくれれば、白のナイトがプレーに戻る番です。d5, f5 への侵入を狙うナイトは強力です。

31... g6 32. Bc3!



私がこの試合、最も誇るべきポイントがこの場面での構想です。残り時間3分を切るまで考えて、満足のいく作戦をひねり出しました。

32... Kg7 33. Bd2! Ne6


33... N8h7 とする手であれば、本譜の手順は避けられますが、次に行き場のないh7 のマスにナイトを動かすのは躊躇われるでしょう。

34. Nd5! Nxd5?


ここも34... Ne8 が正解ですが、それであれば白は35. Be3 からd4 のマスを受け、じっくりと押していく展開に持っていくことができます。

35. Bxh6+!+-



g7-g6 を突いた瞬間から、この手をイメージしてきました。Qa8-Qh8 がぴったりメイトになるため、当然このビショップを取ることはできません。

35... Kh7 36. exd5


ここはf5 のマスを明け渡さないよう、36. cxd5 と指すのもありでしたが、b5 のポーンが浮くデメリットもあるため、どちらを選ぶか悩むところです。実際にはどちらも白勝勢なのですが、時間がない状況ではどちらかはダメなのではないかと、決断するのにかなり焦ります。

36... Nd4 37. Qf8! f6 38. Be3!



これでh6 のマスを空け、黒の反撃に備えれば、白はさらなる駒得のチャンスです。

38... Nf3+ 39. Kf1 Qh3+ 40. Ke2 Ng1+ 41. Kd2 Qg4


最も大切な40手目がオンリームーブで、安心して持ち時間を30分増やすことができました。黒のパペチュアルチェックを警戒しつつ、確実な勝ちを探します。

42. Qf7+ Kh8 43. Qxf6+



コンピュータの指摘にまさかと思いましたが、ここは黒にパペチュアルチェックがありません。43. Bh6! Qe2+ 44. Kc3 Qe1+ 45. Kc2! (45. Kb3? Qb4+ 46. Kc2 Qa4+=) 45... Qe2+ 46. Kb3 Qxd3+ 47. Ka4 Qxc4+ 48. Ka5+- d3 とc4 の2つのポーンを捨てても、キングの逃げ方さえ間違えなければパペチュアルチェックにはならず、黒キングはメイトになります。

43... Kh7 44. Qe7+ Kh8 45. Qd8+ Kh7 46. Qc7+ Kg8 47. Qb8+ Kf7 48. Qxb7+


少し手間はかかりますが、黒キングが7段目と8段目を往復するしかないことを利用し、b7 を取りにいきます。これで強力なパスポーンができた白は、クイーンをパペチュアルチェックのディフェンスに使えばゴールが見えてきます。

48... Ke8 49. Qc6+ Kf7 50. Qc7+ Kg8 51. Qb8+ Kf7 52. Qa7+ Ke8 53. Qa1



確実だと思ったのは、こうしてクイーンをaファイルに回してから1段目まで退く手です。黒は相性の良いナイトとクイーンでも、d4 をばっちり抑えられている以上、反撃は続きません。

53... Qe2+ 54. Kc3 Nf3 55. b6 Kd7 56. Qa4+!


56. b7 Kc7 57. b8=Q+ Kxb8 58. Qb2+ からクイーンを強制交換しようかとも思いましたが、シンプルな本譜が見つかって良かったです。

56... Ke7 57. b7 1-0



a4 のクイーンがディフェンスに下がれるため、パペチュアルチェックはありません。これで黒にはプロモーションを止めるすべもないため、ここでNikcevic はリザインしました。どうして先月の最終戦、このような勝ち試合にならなかったのかとも思いますが、前回の負けがあるからこそ、今回の勝ちがあるとも言えます。久々のGM戦連勝ですので、ここは素直に喜んで、また次の試合に繋げていこうと思います。

11/17 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Akshat, K (IM, IND, 2399) 1-0
11/18 14:30 Srinath, R (FM, IND, 2357) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/19 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Audi, A (FM, IND, 2347) 1-0
11/20 14:30 Nikolic, N (MNE, 2326) - Kojima, S (IM, JPN, 2432) 1-0
11/21 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Pikula, D (GM, SRB, 2485) 1-0
11/22 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Nikcevic, N (GM, MNE, 2429) 1-0
11/23 14:30 Drasko, M (GM, MNE, 2434) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)
11/24 14:30 Kojima, S (IM, JPN, 2432) - Der Manuelian, H (USA, 2271)
11/25 09:30 Plenkovic, Z (IM, SRB, 2398) - Kojima, S (IM, JPN, 2432)

Third Saturday GM November 2018

+3 Pikula, Srinath
+2 Drasko, Kojima, Nikcevic
-1 Akshat
-2 Plenkovic, Nikolic
-3 Der Manuelian
-4 Audi

前日に私に敗れたPikula と、ここまで負けなしのSrinath がともに勝って3つ勝ち越しに。Srinath はライブレイティング2400超えを決め、後はノームをそろえるだけでIM タイトルを獲得します。その実力はすでに十分備わっているでしょう。私は2人のGM とともに、彼らを追いかけます。今日はGM 3連戦の最後で、モンテネグロ代表のDrasko Milan との対戦です!


昨晩の夕飯はリゾットでした。先月は全くなかった海産物が、今月は解禁されています。

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