Photo by Yamada, A
1日更新が後れましたが、昨日の全日本4日目のレポートです。昨年から続く変則スケジュールで、今年は4日指して1日休み、そして明日の最終日で最後の2試合となります。最終順位も見えてくる4日目は、私が午前のゲームで東野さんとドロー。これは相手に上手いラインを準備され、1/2 落としたのも仕方ないと思える内容でした。対する青嶋くんは、Samuelを相手に1ポーンダウンの苦しいゲームを大逆転勝ちで星を伸ばし、6.5/7 でこの大会初めて単独トップに立ちます。これ以上離されるわけにはいかない私は、午後のラウンドこそ勝ちを目指して戦います。
Yamada, K (FM, JPN, 2148) - Kojima, S (IM, JPN, 2395)
Japan Chess Championship 2019 (8)
1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. d3
1. e4 e5 はTokyo Chess Championship に続き、この全日本選手権でも指すつもりで研究していました。面白いことに今大会では、私だけでなく山田くん、南條くんも黒番で
1. e4 e5 を指しています。このRuy Lopez の
5. d3 ラインには、キングサイドフィアンケットを用意しています。
5... d6 6. c3 g6 7. O-O Bg7 8. Nbd2 O-O 9. Re1 Re8 10. h3 b5!?
私の持っている本には、黒は
Nd2-Nf1 を見てからbポーンを突くべきだと書いてあります。それは黒が
Bc8-Bb7 を指した際に、
Nd2-Nb3-Na5 といったマヌーバリングで狙われないようにするためです。10. h3 に対しては、
10... h6!? のように1手待ち、白のナイトがd2 から離れてからbポーンを突くことも考えましたが、
Nd2-Nb3 にも本譜とは別のアイディアで戦えると考え、あえてbポーンを伸ばすことにしました。
11. Bc2 Bb7 12. Nf1 Nb8!
白はオーソドックスにナイトをf1 に退くことにしたので、黒としてはクイーンサイドでの早い危機は無くなりました。Breyer のセットアップでピースを組み直し、黒は満足な展開になるでしょう。
13. Ne3 Nbd7 14. Ng4!?
白は方針をかなり早い段階で決めてきました。開いたhファイルは将来的に攻撃チャンスを作りうるものですが、きちんと対応すればさほど危なくは無いと判断し、白の誘いに乗ることにします。
14... Nxg4 15. hxg4 d5 16. Bg5 Qc8!
16... Nf6 17. d4! は黒としては嫌な展開です。c8 はクイーンにとって少し不自然にも見える位置ですが、g4 を遠くから狙っていますし、ここからいくらでも組み直しが可能です。
17. Nd2 Nc5 18. Qf3 dxe4
18... Ne6 19. Bf6 Bxf6 20. Qxf6 Nf4 も黒マスビショップを交換して黒はOKですが、本譜もまた面白い流れです。
19. dxe4 Ne6 20. Be3 c5!=/+
これで黒は少し指しやすいと思いました。e6 のナイトは
b8-c6-b8-d7-c5-e6 と長い旅路の末、d4, f4, g5 のいずれにマスにも跳ぶチャンスがある、理想的な位置に落ち着いています。
21. Rac1 Qc7 22. Kh2 Rf8!?
後から考えれば余計だったかもしれませんが、一度
f7-f5 を見せておくことにします。
23. Qh3 Rad8 24. Qh4 Nf4 25. Nf3 h6 26. g5 h5 27. g4 hxg4 28. Qxg4 c4
c5 のポーンをビショップの当たりから外してクイーンをフリーにしつつ、d3 のコントロールを強めておきます。
Nf4-Nd3 と早めに入り、白マスビショップとナイトの交換を目指しても良いのですが、白にとって働きが良いのは黒マスビショップですので、f4 で取られるのを待つもの悪くないはずです。
29. Bxf4 exf4 30. Kg2 Rfe8 31. a3 a5 32. Re2 Re7 33. Qh4 Rde8 34. Rce1 Rd8 35. Rh1 Rde8 36. Rhe1 b4!
少し方針を迷いましたが、結局最も仕掛けやすいbファイルから局面を動かすことにします。
37. Nd4 bxc3 38. bxc3 Qc5?!
ここは時間切迫の中、a3 とf4 のポーンを交換してチャンスが生まれると思いましたが、ベストの手は違いました。
38... Qd6! 39. Nb5 Qc5 40. a4 Re5! ナイトがf3 に戻れななければ、g5 のポーンを狙うチャンスが生まれることはもう少し先で考えていましたが、ここで使えるとは思っていませんでした。
41. Qxf4 Rxg5+ 42. Kf1 Bc8-+ これで黒が勝勢であれば、
Nd4-Nb5 を恐れずにf4 を守り続けられるd6 のマスからa3 を狙うべきでした。
39. Qxf4 Qxa3 40. Re3 Qc5 41. Nf3?!
時間が増えた40手直後、山田くんが方針を間違えました。黒がhファイルからの攻撃に対応するためには、g7 の黒マスビショップを消すわけにはいきません。そのため、1ポーン取れるとしてもd4 でのビショップナイト交換は仕掛けないでしょう。ならば、白はd4 にナイトを残したままにしてc3 をカバーし、c6 のマスも守り続けたほうが良いでしょう。
41... Bc6! 42. Rh1 a4 43. Nh2? Qf5! 0-1
ナイトをf3 に退いた理由が、
Nf3-Nh2-Ng4-Nf6 だということは薄々気付いていました。しかし、これは本譜で指したような
Qc5-Qf5 がぴったりになってしまうため、遅すぎて効果的ではありません。ここで試合が終わるのは予想外でしたが、白はe4 が落ちることが確定し、aファイルのパスポーンにも対処が難しいため、このタイミングでのリザインもおかしくはないでしょう。
なんとかこの8Rを勝ちましたが、青嶋くんも南條くんを破ったため、差は1/2 のまま縮まりません。この大事な4日目でも連勝するとは、青嶋くんの勝負強さを感じるトーナメントです。そしていよいよ、休憩日を挟んで明日の2試合で最終順位が決まります。気になる明日のペアリングは以下のリンクから確認ができます。
Japan Chess Championship 2019 R9 Pairings
トップボードはAlex-青嶋、2B は小島-松尾となっています。例年と違って最終日でも1試合にはならないので、皆さん最後まで力を振り絞って頑張りましょう。最終日もよろしくお願い致します。