今年もGWに開催されていたチェスの全日本選手権は、昨日無事に全日程を終了して閉会しました。優勝して新チャンピオンとなったのは、スタートから一度も落ちることなくトップを走り続けた青嶋くんです。最終戦績は驚きの9勝1ドローで、私とのドロー以外全て勝ちました。青嶋くん、初の日本チャンピオンタイトル獲得おめでとう!
1st Place Aoshima Mirai (FM, JPN, 2313) 9.5/10
2nd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2395) 8.5/10
3rd Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 7/10
4th Place Asaka Samuel (AUS, 2169) 6.5/10
Japan Chess Championship 2019 Final Standings
2nd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2395) 8.5/10
3rd Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 7/10
4th Place Asaka Samuel (AUS, 2169) 6.5/10
Japan Chess Championship 2019 Final Standings
私は4日目、5日目で1勝1ドローずつだったため、青嶋くんと1P離され、今年も2位に終わりました。7勝3ドローという戦績ははたから見れば上出来ですが、これで優勝できないのは厳しいですね。それでもレイティングは+5で、2400ジャストに再び戻ります。戻るたびにもう2400を割りたくないと思っていますが、こんどこそ叶うでしょうか(笑) また今年はFIDE戦が多くなりそうですので、引き続き頑張ります。
2014年の全日本で10勝1ドローという、今回の青嶋くんばりの戦績で優勝した南條くんは、今回の戦績にとても満足できないでしょうが、最終戦でテクニックを見せて東野さんを破り、3位に滑り込んだのは流石でした。オーストラリアから数年前に日本に来たサミュエルくんは、当時からさらに実力を伸ばし、今回初めて2200到達と全日本入賞を達成しました。入賞者の皆さん、おめでとうございます!
表彰後、優勝コメントをする青嶋くんです。全日本優勝はチェスを初めて4年半前から、FM獲得と並んで目標としてしたいたとのこと。過去3回の全日本では優勝できずに悔しい思いをしたが、4回目で達成できて嬉しいという内容でした。FMタイトルを昨年末の香港で、全日本選手権優勝をこのGWで達成した青嶋くんの、次なる目標はやはりIMタイトルでしょうか。先輩プレーヤーとしては、そんなに簡単じゃないぞと言いたい気持ちもありますが、その反面で素直に応援したいですね。
青嶋くんは昨年秋のクラブ選手権以降、香港の大会、東京チェス選手権、そして全日本選手権と3大会を負けなしで乗り切り、しかも全て優勝しています! 今回の全日本でのFIDE公式戦10試合では、レイティングを46伸ばし、6月の更新で2359になる予定です。これは日本のプレーヤーとしては歴代4位の数字で、この勢いであれば2400にいつ乗ってもおかしくないと感じてしまいます。今年後半のトーナメントでも、どんな活躍を見せてくれるか今から楽しみですね。
そろそろ私の試合解説に移ろうと思います。9Rで松尾さんとドローになり、優勝が相当厳しくなった状況で、最終戦の塩見さんとの試合に臨みます。トップと1P差で最終戦、しかも相手は塩見さんに黒というのは、Sam Collins が優勝した2009年と同じでした。その時も感じましたが、優勝云々とは関係なく、トーナメントは勝って締めくくりたいものです。
Shiomi, R (JPN, 2072) - Kojima, S (IM, JPN, 2395)
Japan Chess Championship 2019 (10)
1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. d4 exd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nxc6 bxc6 6. Bd3!?
Japan Chess Championship 2019 (10)
塩見さんとの試合は、Scotch Four Knights になると想定していましたが、このラインはほとんど知りませんでした。d7-d6 では弱気すぎるので、ここはポーンをぶつける1手です。
6... d5 7. e5 Nd7
試合後に塩見さんからは7... Ng4 8. O-O Bc5 とするのが多いと教えてもらいました。g4 にはナイトは跳びづらいかと思いましたが、Qd8-Qh4, h7-h5 も黒にはあるため、白は簡単にh2-h3 がしづらいでしょう。ただし本譜のナイトが退く変化も十分に指せる手です。
8. O-O Be7 9. Qg4?!
e5 にポーンを刺したのであれば、それを活かしてf6 のマスを抑え続けるような状況で戦うのが良いと感じました。本譜の手は典型的でアグレッシブに見えますが、ここではポーンを交換して黒は満足な流れです。9. Re1 や9. f4 で一度e5 を守っておくべきだと思います。
9... Nxe5! 10. Qxg7 Bf6 11. Qg3 Nxd3 12. Qxd3
12. cxd3!? としてキャスリングを妨害したまま、将来的に開いたcファイルからc6 を攻めるのもありえると思います。
12... O-O 13. Nc3 Rb8!
研究していたScotch Four Knights のラインで、似たポーンストラクチャーで開いたb,eファイルから、ルークをダイナミックに使うアイディアを勉強していました。このゲームでもその構想がばっちりはまりました。
14. Rb1 Bg7!? 15. Bf4 Rb4!
黒マスビショップは当然c7 を狙うように展開してくると思ったので、その浮いたピースをアタックしに先程のルークを使います。Rb8-Rb6 からcポーンを突き、6段目でキングサイドに振る構想も頭に少しありましたが、すでに開いている4段目でルークは十分使えました。
16. Qg3 Qf6!
この手は塩見さんにとって予想外だったと思います。私としてはc7 を守ってパッシブに指し続けるよりも、最後のマイナーピースである白マスビショップを展開できるようにし、c2 への反撃を早く作りたいと考えていました。黒マスビショップをg7 に退いたことも、gファイルを閉じてキングを守ることだけでなく、このクイーンの上がるスペースを作るアイディアとつながっています。
17. Bxc7 Rg4 18. Qd6??
この手ではもう試合が決まってしまいます。18. Qd3 Bf5! 19. Qd2 Qg6! 20. f3 Rd4 から黒はc2 を取りかえして優勢ですが、白はその展開を受け入れるしかありませんでした。
18... Qf3! 19. g3 Re4! 20. Nxe4 Bh3 0-1
白のブランダーと白マスの弱さをつき、勝負は早々に決しました。今大会は白番で3ドローと苦戦した代わりに、黒番で5戦5勝でした。Caro-Kann を封印し、新しい武器として研究に取り組んできた1...e5 で、こうして成果が出せたのは嬉しく思います。
全日本選手権と並行で開催されていたゴールデンウィークオープンでは、フランスから来た生徒の心くんが5/6 で優勝しました! 日本のチェスのオープントーナメントで、11歳が優勝したというのは過去最年少の記録ではないでしょうか。小学生選手権ではないですよ。
今年からゴールデンウィークオープン(旧ゴールデンオープン) もFIDE公式戦となり、入賞者のうち3人はFIDE籍が日本ではない、国際色豊かなトーナメントになりましたね。両大会の参加選手の中から、また新たなレイティング保持者も生まれますので、日本でももっとFIDE公式戦が気軽にできることを願っています。大会運営陣の皆さん、そして参加者の皆さん、6日間お疲れ様でした。また次のトーナメントでもよろしくお願い致します。
0 件のコメント:
コメントを投稿