2019/05/05

Japan Chess Championship 2019 Day 5 Tournament Report


Photo by Yamada, A

今年もGWに開催されていたチェスの全日本選手権は、昨日無事に全日程を終了して閉会しました。優勝して新チャンピオンとなったのは、スタートから一度も落ちることなくトップを走り続けた青嶋くんです。最終戦績は驚きの9勝1ドローで、私とのドロー以外全て勝ちました。青嶋くん、初の日本チャンピオンタイトル獲得おめでとう!

1st Place Aoshima Mirai (FM, JPN, 2313) 9.5/10
2nd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2395) 8.5/10
3rd Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2324) 7/10
4th Place Asaka Samuel (AUS, 2169) 6.5/10

Japan Chess Championship 2019 Final Standings


私は4日目、5日目で1勝1ドローずつだったため、青嶋くんと1P離され、今年も2位に終わりました。7勝3ドローという戦績ははたから見れば上出来ですが、これで優勝できないのは厳しいですね。それでもレイティングは+5で、2400ジャストに再び戻ります。戻るたびにもう2400を割りたくないと思っていますが、こんどこそ叶うでしょうか(笑) また今年はFIDE戦が多くなりそうですので、引き続き頑張ります。

2014年の全日本で10勝1ドローという、今回の青嶋くんばりの戦績で優勝した南條くんは、今回の戦績にとても満足できないでしょうが、最終戦でテクニックを見せて東野さんを破り、3位に滑り込んだのは流石でした。オーストラリアから数年前に日本に来たサミュエルくんは、当時からさらに実力を伸ばし、今回初めて2200到達と全日本入賞を達成しました。入賞者の皆さん、おめでとうございます!


表彰後、優勝コメントをする青嶋くんです。全日本優勝はチェスを初めて4年半前から、FM獲得と並んで目標としてしたいたとのこと。過去3回の全日本では優勝できずに悔しい思いをしたが、4回目で達成できて嬉しいという内容でした。FMタイトルを昨年末の香港で、全日本選手権優勝をこのGWで達成した青嶋くんの、次なる目標はやはりIMタイトルでしょうか。先輩プレーヤーとしては、そんなに簡単じゃないぞと言いたい気持ちもありますが、その反面で素直に応援したいですね。

青嶋くんは昨年秋のクラブ選手権以降、香港の大会、東京チェス選手権、そして全日本選手権と3大会を負けなしで乗り切り、しかも全て優勝しています! 今回の全日本でのFIDE公式戦10試合では、レイティングを46伸ばし、6月の更新で2359になる予定です。これは日本のプレーヤーとしては歴代4位の数字で、この勢いであれば2400にいつ乗ってもおかしくないと感じてしまいます。今年後半のトーナメントでも、どんな活躍を見せてくれるか今から楽しみですね。


そろそろ私の試合解説に移ろうと思います。9Rで松尾さんとドローになり、優勝が相当厳しくなった状況で、最終戦の塩見さんとの試合に臨みます。トップと1P差で最終戦、しかも相手は塩見さんに黒というのは、Sam Collins が優勝した2009年と同じでした。その時も感じましたが、優勝云々とは関係なく、トーナメントは勝って締めくくりたいものです。

Shiomi, R (JPN, 2072) - Kojima, S (IM, JPN, 2395)
Japan Chess Championship 2019 (10)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. d4 exd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nxc6 bxc6 6. Bd3!?



塩見さんとの試合は、Scotch Four Knights になると想定していましたが、このラインはほとんど知りませんでした。d7-d6 では弱気すぎるので、ここはポーンをぶつける1手です。

6... d5 7. e5 Nd7


試合後に塩見さんからは7... Ng4 8. O-O Bc5 とするのが多いと教えてもらいました。g4 にはナイトは跳びづらいかと思いましたが、Qd8-Qh4, h7-h5 も黒にはあるため、白は簡単にh2-h3 がしづらいでしょう。ただし本譜のナイトが退く変化も十分に指せる手です。

8. O-O Be7 9. Qg4?!



e5 にポーンを刺したのであれば、それを活かしてf6 のマスを抑え続けるような状況で戦うのが良いと感じました。本譜の手は典型的でアグレッシブに見えますが、ここではポーンを交換して黒は満足な流れです。9. Re19. f4 で一度e5 を守っておくべきだと思います。

9... Nxe5! 10. Qxg7 Bf6 11. Qg3 Nxd3 12. Qxd3


12. cxd3!? としてキャスリングを妨害したまま、将来的に開いたcファイルからc6 を攻めるのもありえると思います。

12... O-O 13. Nc3 Rb8!



研究していたScotch Four Knights のラインで、似たポーンストラクチャーで開いたb,eファイルから、ルークをダイナミックに使うアイディアを勉強していました。このゲームでもその構想がばっちりはまりました。

14. Rb1 Bg7!? 15. Bf4 Rb4!


黒マスビショップは当然c7 を狙うように展開してくると思ったので、その浮いたピースをアタックしに先程のルークを使います。Rb8-Rb6 からcポーンを突き、6段目でキングサイドに振る構想も頭に少しありましたが、すでに開いている4段目でルークは十分使えました。

16. Qg3 Qf6!



この手は塩見さんにとって予想外だったと思います。私としてはc7 を守ってパッシブに指し続けるよりも、最後のマイナーピースである白マスビショップを展開できるようにし、c2 への反撃を早く作りたいと考えていました。黒マスビショップをg7 に退いたことも、gファイルを閉じてキングを守ることだけでなく、このクイーンの上がるスペースを作るアイディアとつながっています。

17. Bxc7 Rg4 18. Qd6??


この手ではもう試合が決まってしまいます。18. Qd3 Bf5! 19. Qd2 Qg6! 20. f3 Rd4 から黒はc2 を取りかえして優勢ですが、白はその展開を受け入れるしかありませんでした。

18... Qf3! 19. g3 Re4! 20. Nxe4 Bh3 0-1



白のブランダーと白マスの弱さをつき、勝負は早々に決しました。今大会は白番で3ドローと苦戦した代わりに、黒番で5戦5勝でした。Caro-Kann を封印し、新しい武器として研究に取り組んできた1...e5 で、こうして成果が出せたのは嬉しく思います。


全日本選手権と並行で開催されていたゴールデンウィークオープンでは、フランスから来た生徒の心くんが5/6 で優勝しました! 日本のチェスのオープントーナメントで、11歳が優勝したというのは過去最年少の記録ではないでしょうか。小学生選手権ではないですよ。

今年からゴールデンウィークオープン(旧ゴールデンオープン) もFIDE公式戦となり、入賞者のうち3人はFIDE籍が日本ではない、国際色豊かなトーナメントになりましたね。両大会の参加選手の中から、また新たなレイティング保持者も生まれますので、日本でももっとFIDE公式戦が気軽にできることを願っています。大会運営陣の皆さん、そして参加者の皆さん、6日間お疲れ様でした。また次のトーナメントでもよろしくお願い致します。

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