2023/08/25

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第22回予告

帰国して最初の更新は、YouTubeでの講座告知です。今月の講座は今週末の日曜日、8/27 20時からスタートです。

8月のYouTubeの講座テーマは『夏の遠征』です。チェスは1年中プレーできますが、それでも夏がメインシーズンであるように感じます。今年の夏は特にコロナの状況も見つつ、日本から海外大会に遠征に出たプレーヤーも多かったでしょう。私が7月から8月にかけて参加した神戸、チェコ、ハンガリーの大会を振り返りを中心に、面白かったゲームやエピソードをお届けできればと思います。

プロプレーヤー小島慎也のチェス講座 第22回『夏の遠征』

2023/08/16

First Saturday August 2023 GM R9

チェコから続くこの1か月の遠征も、最終戦を迎えました。今回の遠征最後の相手は、ハンガリーのIM Dudin Glebです。彼とは今大会で初めて会い、名前も初めて聞くプレーヤーでした。このレベルのハンガリーのプレーヤーを自分が知らないのは珍しいと思っていましたが、つい最近ロシアから移籍したようです。これまで参加してきたノームトーナメントの中でも、最高クラスの実力者でした。

Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)
First Saturday August 2023 GM (9)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 c5 4. Nf3 Nc6 5. dxc5 Bg4 6. c3 e6 7. Be3 Bxf3 8. Qxf3 Nge7 9. Bb5 a6 10. Ba4 Qa5 11. Bc2!?

11. Qd1 Nf5 12. b4 Nxe3 と進むのがメインラインですが、この手は調べておらず、どうしたら良いかここから考え始めます。e5のポーンは取り返すとして、その後にキングサイドにくるプレッシャーをどう受けるかが黒のセットアップのポイントとなります。

11... Nxe5 12. Qg3 N7c6 13. b4 Qd8 14. Nd2 g6 15. O-O Bg7 16. Bf4 O-O


初めて見るとこのポーンストラクチャーはセンターポーンを多く持つ黒が良さそうですが、うっかりすると白にクイーンサイドでパスポーンを作られる危険もあるため、白のダブルcポーンの存在は侮れません。なにより白にはダブルビショップがあるため、それが火を噴かないよう黒は注意が必要です。

17. Rad1 Nd7

ナイトは早めに退散しておき、Nd2-Ne4の狙いを防いでおきます。それと同時にNd7-Nf6の組み直しや、b7-b6からクイーンサイドでの反撃を狙います。しかし、もう1つナイトを退くことにはメリットがあることを見落としていました。

18. Nb3 Qc8 19. a4?!


ここは19. Bd6 Re8 20. Rfe1+/= とするのが自然な流れで、白はセンターを抑えて優位を保てます。

19... Re8?

Bf4-Bd6の潜り込みに対して早めに避けておきつつ、場合によってはe6-e5とポーンを伸ばすことも考えていました。試合後にここで黒にチャンスがあったとGlebには指摘されています。彼の指摘した手は考えていたものの、直後の手を見落とし上手く評価できていませんでした。19... a5! 20. b5 Nce5!
Analysis Diagram

e5からナイトを退いた直後にナイトを入れ替えるという発想が、私の頭にありませんでした。Nc6-Ne5-Nc4と跳びこめばd6のマスを抑えてBf4-Bd6に対抗でき、c5のポーンを上手く狙うことができます。21. h4 Nc4 22. Bc7= コンピュータは互角の評価を出しますが、Bf4-Bc7の跳びこみは指しづらく、白にとって理想的なピースの使い方ではないでしょう。c5のポーンはすぐに落ちないものの、白は気を配り続けなければいけないことは間違いありません。Nc6-Ne5のナイトの入れ替えを防ぐためにも、白は早めにe1にルークをまわすのが正解でした。

20. Rfe1! Ne7 21. a5!+/-

私としては、b7-b6のブレイクを見せることでこのポーン突きを誘い、白からのb4-b5ブレイクを止めてクイーンサイドのマジョリティを有効活用させない作戦でした。しかし、クイーンサイドで互いに手が作れなくなれば焦点になるのはキングサイドで、それは白に明らかなチャンスがあります。a4-a5を許すのは黒にとって得策ではなく、a6-a5を自分から仕掛けなくてはいけませんでした。

21... Nc6 22. h4? Nf6?


h2-h4-h5は自然なキングサイドのアタックですが、先にd6にビショップを跳びこんでおくべきです。22... e5! 23. Be3 Nf6! 24. Nc1 Ne4!? 25. Bxe4 dxe4 26. h5 Qf5= ならば黒はキングサイドのアタックを受け、十分な局面でした。

23. Bg5 Qb8 24. Qf3 Ne5 25. Qe2 Nc6 26. Qf3 Ne5 27. Qh3!

チェコでも1試合ありましたが、hファイルを食い破る攻撃は強力で、黒としてはディフェンスしきることは難しい状況です。かと言って別の場所で反撃があるわけでもなく、じりじりと押されていくことになります。

27... Nc4


c4のナイトは良く見えるが、実際には働きがないと試合後に指摘されました。確かにターゲットも無く、d5が落ちた際にも問題になる位置です。27... Nc6 28. Nd4 はまだありえたかもしれませんが、それでも苦しいでしょう。

28. Nd4 Qc8 29. Qf3! Nd7 30. h5 Nde5 31. Qh3 Nc6 32. Qh4!

この辺りの指し方は正確で感心しきりでした。h3-c8ダイアゴナルからクイーンを避けておくことでクイーン交換を避け、場合によってはRd1-Rd3-Rh3を見せます。

32... e5 33. hxg6 hxg6 34. Ne2 d4


34... e4 35. Rxd5 Re5 36. Rxe5 N4xe5 37. Qxe4+- このようにd,eポーン両方を取られても勝負になりません。

35. Bb3 Nb2 36. Rd2 dxc3 37. Nxc3 Nxb4 38. Qxb4 1-0

b4が守られていることは見えていませんでしたが、いずれにせよ駒は助からず、キングも危険な状況で黒の必敗ポジションです。

前回の遠征では、3敗6ドローで初の勝ち無しトーナメントがありましたが、今回は6敗3ドローとさらに厳しい結果でした。さらなる試合の見直しとともに、上手くこれを消化して次の大会への糧にしていきたいと思います。一か月の遠征、たくさんの人に見ていただき、ありがとうございました。

08/06 15:00 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2417) 0-1
08/07 15:00 R3 Munkhdalai, A (FM, MGL, 2437) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/08 15:00 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Aveskulov, V (GM, UKR, 2470) 0-1
08/09 15:00 R5 Arhan, C A (FM, IND, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/10 15:00 R1 Levine, J (FM, USA, 2371) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/11 15:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Setyaki, A (IM, INA, 2401) 0-1
08/12 15:00 R7 Neverov, V (GM, UKR, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/13 Rest Day
08/14 15:00 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov, I (IM, UKR, 2515) 1/2-1/2
08/15 15:00 R9 Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0

First Saturday August 2023 GM Standings

2023/08/15

First Saturday August 2023 GM R8

ここブダペストでは8/19から世界陸上が開催されるため、街中ではこのような告知を多く見かけます。私はちょうど帰国日なのでこの目で直接見ることは叶いませんが、日本でもテレビ中継があるかもしれませんね。この遠征中、福岡で開催された世界水泳では、ハンガリーで水球で金メダルを獲得したと耳にしています。

8Rの相手であるSamunenkovは、ウクライナの14歳で、現在のU14世界ランキング2位につけているプレーヤーです。かつてブダペストのノームトーナメントでは、ハンガリーのGledura Benjamin、ウズベキスタンのSindarov Javokhirら(現在はともに2600のGM) と試合をしましたが、レイティングは当時の彼らよりも上です。この大会ではGMノーム獲得のチャンスはすでにありませんが、近いうちにタイトルを取ることは間違いないプレーヤーだと思います。

Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov, I (IM, UKR, 2515)
First Saturday August 2023 GM (8)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 a6 5. cxd5!?

a6 QGDか、Semi-Slavを準備していたので、a6 Slavは意外なチョイスでした。他に用意していたものもありましたが、この日は手堅くExchange Slavにすることします。

5... cxd5 6. Bf4 Nc6 7. Rc1 Nh5 8. Bd2 Nf6 9. Bf4 e6!?


Bc8-Bf5とし、白と対称形にしたくなかったのでしょう。c8のビショップを閉じ込める一見損な手ですが、安易なピース交換を避けることは勝負するうえで有効な手段です。白側でもビショップのアクティビティをどう生かすかは、実際に指してみると難しいものです。

10. e3 Be7 11. h3 O-O 12. Bd3 b6 13. O-O Bb7

この形はa6 QGD から派生する形(1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 a6 5. c5 b6 6. cxb6 cxb6 7. Bf4 Bb7 8. e3 Nc6 9. h3 Be7 10. Bd3 O-O 11. O-O) に比べ、白が1手得をして手番を握っています。ここでは作戦の中心をキングサイドにするか、クイーンサイドにするかを少し悩みました。

14. Ne5 Rc8 15. Nxc6!


c6のナイトはNc6-Na5-Nc4など、クイーンサイドのアクションの中心になりうるピースなので、まずはこれを消しておきます。15. Qf3 b5 も考えましたが、さほどキングサイドのアタックチャンスが面白いとは思えませんでした。

15... Rxc6 16. Qb3 Qa8!? 17. Rc2 Rfc8 18. Rfc1 Nd7 19. Ne2?!

b6のポーンを1つのターゲットにするつもりでしたが、それならばここでナイトを退く単純なルーク交換ではなく、19. a4! としてb6を固定すべきでした。実はa8-h1ダイアゴナルを利用し、 19... Rc4 という手があるかと思ったのですが、これはエクスチェンジを取る誘惑をこらえ、20. Qa2! と一度かわせば良いだけの話でした。黒のルークはb4に到達しても、その先がありません。

19... b5! 20. a4 bxa4


私はa2-a4はb6の固定ではなく、伸びてきたbポーンを迎え撃つのに使いたかったのですが、あっさり交換に応じられてしまいました。これで黒はNd7-Nb6-Nc4のチャンスが生まれます。

21. Qxa4 Nb6 22. Qa2 Rxc2 23. Rxc2 Rxc2 24. Bxc2 a5 25. Nc3 Bb4 26. Na4 Nc4 27. Bd3 Ba6 28. Qb1

28. Nc5! Bb5 29. b3 Na3 30. Bxb5 Nxb5 31. Nd3= と組み替えても互角でしょう。私はクイーンをcファイルに戻すことを優先しました。

28... h6 29. Qc2 Qe8 30. Nc3 Qd7 31. Nd1 a4 32. Nc3 a3 33. bxa3


33. Na2 Qb7 34. Qa4 Bf8= これも互角で特に何か起こるわけではありません。

33... Nxa3 34. Qb3! Bxd3 35. Qxb4 Nc4 36. Na4 1/2-1/2

34. Qe2?! Bxd3 35. Qxd3 Nc4 もおそらくはドローになりますが、相手のビショップのみがこちらのポーンを狙うことができると、少し白は指すのに気を配らなくてはいけません。本譜は異色ビショップにし、ドローオファーをしてゲームを終わらせました。今回の遠征も残すところあと1試合です。

08/06 15:00 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2417) 0-1
08/07 15:00 R3 Munkhdalai, A (FM, MGL, 2437) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/08 15:00 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Aveskulov, V (GM, UKR, 2470) 0-1
08/09 15:00 R5 Arhan, C A (FM, IND, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/10 15:00 R1 Levine, J (FM, USA, 2371) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/11 15:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Setyaki, A (IM, INA, 2401) 0-1
08/12 15:00 R7 Neverov, V (GM, UKR, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/13 Rest Day
08/14 15:00 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov, I (IM, UKR, 2515) 1/2-1/2
08/15 15:00 R9 Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)

First Saturday August 2023 GM Standings
私にとって唯一の休憩日だった13日は、ブダペストの子供鉄道に乗ってきました。駅員や車掌を子供が務めるブダペストの名物列車で、10年以上ハンガリーに通いながら私は初乗車でした。爽やかな風を受けながら森林を抜けるトロッコ列車は素晴らしい体験で、また雪の季節にも乗ってみたいと感じました。
夜は聖イシュトヴァ―ン大聖堂へ。クリスマスマーケット以外の時期だと聖堂前はがらんとした大きな広場ですが、その分人が少なく、ゆっくりと過ごすことができます。

2023/08/13

First Saturday August 2023 GM R7

1か月近い今回の遠征もようやく終わりが見えてきました。First Saturday 7RはウクライナのGM Neverovです。50歳を超えてレイティングは落としていますが、20年近く前には2500後半の実力を持っていたプレーヤーで、現在もGMトーナメントでコンスタントな戦績を残しています。オープニングはd4系かと思いきや、今大会では1. b3も試しており、準備に苦労しながら試合に臨みました。

Neverov, V (GM, UKR, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)
First Saturday August 2023 GM (7)

1. c4 c6 2. Nf3 d5 3. e3 Nf6 4. Nc3 e6 5. b3 Bd6 6. Bb2 O-O 7. d4 Nbd7 8. Be2 b6 9. O-O Bb7

メインはClassical Slavを用意していましたが、このd2-d4を遅らせる手順からであれば、Semi-Slavにもなりうると思っていました。この変化は前回のハンガリー遠征でも、GM Nagyと指しています。

10. Rc1!? Rc8 11. Re1 Re8 12. Bf1 h6 13. g3 c5


白のルークの位置にあわせてルークの位置を決め、h7-h6のような得になるであろう手も入れておいてから、重要なセンターブレイクに踏み切ります。13... Bb4!? 14. a3 Bxc3 15. Bxc3 c5 も面白いアイディアで、黒マスビショップをを諦めてもc3のナイトを消し、d5へのプレッシャー、e4のコントロールを弱めてからセンターブレイクを仕掛けます。

14. cxd5 Nxd5 15. e4

ナイト交換からe3-e4だと思っていましたが、d5での交換の際にはポーンで取り返すのが正解です。15. Nxd5 exd5! (15... Bxd5? 16. e4 Bb7 17. dxc5 Bxc5 18. Bb5+-) 16. dxc5 bxc5 17. Bh3 Rc7!= h3のビショップは厄介ですが、ナイトを交換してNc3-Nb5のアイディアを消したことで、単純にルークを避けることができます。

15... Nxc3 16. Rxc3 Bf8 17. Rd3 Qc7 18. d5 exd5 19. exd5


この数手の進め方で黒が問題無いことを確認するのに数十分を要しました。前日のSetyaki戦と似ており、白がdファイルにパスポーン、黒がクイーンサイドにポーンマジョリティを持つ展開となります。

19... Rxe1 20. Nxe1 Ba6

私はビショップを交換しておいたほうが白キングがやや不安定で、Bf1-Bh3のような揺さぶりも無いので安心だと考えました。代わりに20... b5 と単にポーンを伸ばす手もありえ、どちらが良いかの比較は難しいと思います。この辺りでNeverovも長考に入り、おそらく自身が思っていてよりも白にアドバンテージが無いことに気づいたのだと察しました。

21. Rd2 Bxf1 22. Kxf1 b5 23. Ng2 c4 24. Ne3 Nb6


24... c3? 25. Bxc3 Qxc3 26. Rc2+- は上手くいかないため、c4-c3の押し込みはもう少しチャンスを待ちます。

25. bxc4 bxc4

私は単純なピース交換は互いにポーンブロックし合い、膠着状態になってつまらないと考えました。しかし、コンピュータの評価は黒からナイト交換を仕掛けることで、25... Nxc4! 26. Nxc4 Qxc4+ 27. Kg2 Bd6 でほんのわずかに黒にチャンスがあるとのことです。白はパスポーンが早くできていますが、ポーンがバラバラだということなのでしょう。

26. Bc3 Qd7 27. Kg2 Na4 28. Qc2 Bc5!?


勝負のために揺さぶりをかけますが、c4を取られた際にどうするのか、もう少し具体的に読んでから指すべきでした。28... Nxc3 29. Qxc3 g6 30. Nxc4 Qb5 31. Nd6 Qxd5+ 32. Rxd5 Rxc3 33. Ne4= は本譜と似ており、おそらくドローでしょう。

29. Nxc4! Bb6?

c4を取るのはc4,c3,c2に一直線にピースが並ぶ白が危ないと思っていたのですが、具体的に何を返すのがベストか、残り2分まで考えても分かりませんでした。b6にビショップを退いたのは、d4のマスを抑え続けることでRd2-Rd4を防ぐことですが、お互いに正しく評価できていない部分がありました。29... Bf8! 30. Ne5 Qe8 31. Nc6 (31. d6 Rxc3 32. Qf5 Nb6 33. d7 Nxd7 34. Rxd7 Rc5 35. Qxf7+ Qxf7 36. Nxf7 Rc2 37. Ne5 Bc5= これでf2に反撃して十分というのも、難しい変化です) 31... Nb6! このc6でブロックされた際、ナイトをb6に戻してd5を落とすアイディアは気づきませんでした。 32. Qd3 Nxd5 33. Qxd5 Qxc6= これは間違いなくドローです。

30. Qd3?


全く読んでいない手だったので非常に焦りましたが、ぎりぎりまで考えてポーンを取り返す方法を見つけました。検討でNeverovが指摘した手の中に、白勝ちになる手が隠れていました。30. Ne5! Qb5 (30... Qe8 31. Nc6! Rxc6 32. Qxa4!+- この手をNeverovは見落としたようで、ナイトの跳びこみを諦めたそうです) 31. Nxf7!!
Analysis Diagram

検討では十分黒が守り切れると思っていましたが、その先がありました。31... Rxc3 32. Qg6 Qd7 33. Nxh6+ Kf8 34. Qh7!+- このクイーンの潜り込みからg7まで落とせば、黒のキングは丸裸で白の勝勢でした。

30... Nxc3 31. Qxc3 Qb5!


d5に当て続けつつ、ナイトを攻撃するこの手でポーンを取り返せると確信し、一安心しました。

32. Nd6 Qxd5+ 33. Rxd5 Rxc3 34. Rd2 h5 1/2-1/2

続けても良い局面ですが、ここで私からドローオファーして試合を終わらせました。手数としては短めですが、精神的にはかなりタフなゲームでした。試合後に最終戦の相手であるDudin Glebから、休憩日の13日に試合をしないかと誘われましたが、13日連続で試合をしている私は休みが欲しく、これを丁重にお断りました。久々の試合のない日を満喫したら、最後の2500台との連戦も頑張ってきます。

08/06 15:00 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2417) 0-1
08/07 15:00 R3 Munkhdalai, A (FM, MGL, 2437) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/08 15:00 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Aveskulov, V (GM, UKR, 2470) 0-1
08/09 15:00 R5 Arhan, C A (FM, IND, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/10 15:00 R1 Levine, J (FM, USA, 2371) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/11 15:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Setyaki, A (IM, INA, 2401) 0-1
08/12 15:00 R7 Neverov, V (GM, UKR, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/13 Rest Day
08/14 15:00 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov (IM, UKR, 2515)
08/15 15:00 R9 Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)

First Saturday August 2023 GM Standings
10年以上前にはまったマグナムアイスは日本で見かけない高級ブランドです。これ1つで缶ビール3本分くらいの値段がします。

2023/08/12

First Saturday August 2023 GM R6

昨日はいつもトラムで通過するセナ広場の近くに、ミレナーリシュという大きな公園があることに気づきました。最近のブダペストは30度を下回る涼しい日もありますが、この日はかなりの陽気で、カフェのテラス席は冷たい飲み物を飲むお客さんでにぎわっていました。

First Saturday後半戦はインドネシアのIM Setyakiとの試合からです。インドネシアのプレーヤーは今大会、GM,IM,レイティング各クラスに団体で参加しており、10年前にこのブダペストでしのぎを削り合ったIM Seanとも再会しています。この日対戦するSetyakiはSeanらとともに、強豪ひしめくインドネシアの中でオリンピアード代表に入るレベルのプレーヤーです。

Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Setyaki, A (IM, INA, 2401)
First Saturday August 2023 GM (6)

1. Nf3 d5 2. d4 e6 3. c4 c5 4. cxd5 exd5 5. Bg5!?

チェコ同様Semi-Tarraschでも良かったのですが、新しい変化を試してみることにします。

5... Nf6 6. Nc3 Be6 7. e3


7. e4 Be7 が良い手だと覚えており、白がさほどアドバンテージを取れないので本譜のようにゆっくり組むことにします。Bc1-Bg5を避けるためにNb8-Nc6から指すのがTarraschで長く信じられてきたセオリーですが、近年の研究ではBc1-Bg5を受けても良いと分かってきており、オープニングセオリーの変化を感じます。

7... c4 8. Be2 Bb4 9. Nd2

黒がBf8-Bb4としたことで、QGD Ragozinのような形になりました。ひとまずここまでは満足で、ナイトをe4のマスの受けに使うか、Nf3-Ne5と使うかで悩み、前者を選択しました。

9... Nbd7 10. O-O Qa5 11. Qc2 O-O 12. Bf3 Rfe8 13. Bh4 Rac8 14. a3 Be7 15. Bg3 b5 16. e4


ここでd4を孤立ポーンにしても、アクティブに指すためにセンターから仕掛けます。

16... dxe4 17. Ndxe4 Qb6 18. Ng5 Nf8 19. d5!?

このゲームでは白が早くパスポーンを作りましたが、これが強いのか弱いのか、黒のクイーンサイドのマジョリティが生むパスポーンの早さはどれくらいか、全く分からずゲームを進めました。d5-d6と早めに押す判断もありそうですが、現状ではc6,e6の2マスを抑えていることに価値がありそうです。

19... Bd7 20. Rad1 Bd6 21. Nge4 Nxe4 22. Nxe4 Bxg3 23. Nxg3


最初はhポーンで取るつもりでしたが、Ng3-Nf5の含みを持たせるのが面白いアイディアではないかと考えを変えました。

23... a5 24. Rfe1?!

ここで一番働いていないピースを交換しましたが、少し違ったようです。24. Qd2 b4 25. axb4 axb4 26. Rc1!? は私に無かったアイディアで、cポーンを受けつつ、Rf1-Rd1とルークを入れ替えるのが安全策でした。

24... Rxe1+ 25. Rxe1 b4 26. axb4 axb4 27. Be4


将来的にc2のマスを受けられるようビショップのダイアゴナルを切り替えます。

27... g6 28. Nf1 Bb5 29. Ne3 Nd7 30. Rd1 Qd6?!

dポーンを一度止めておくのは自然に見えますが、ここは30... Nc5! 31. Bf3 c3! が厳しいアイディアで、ナイトのサポートによりBb5-Ba4が狙いになっています。

31. Qd2 f5 32. Bb1 Nf6 33. g3?!


次にf5-f4からナイトをどかされるとc2の受け、d5の守りのどちらも面倒になると思い、バックランクを守る狙いもかねてgポーンを突きましたが、これが不正確でした。読んだものの踏み込めなかったのはビショップを捨てる変化で、33. Bxf5!? gxf5 (33... c3 34. bxc3 bxc3 35. Qe1! gxf5 36. Nxf5 Qd7 37. Ne7+ Kg7 38. Nxc8 Qxc8 c4-c3にはクイーンを退く位置を工夫すれば、e7に利きができることを試合中見落としました) 34. Nxf5 Qf8 35. d6 この局面は2ポーンピースではありますが、黒も白のパスポーンと守りの薄い自分のキングを気にしなければならず、難しい形勢のようです。

33... f4! 34. gxf4 Qxf4

34... Nh5! 35. f5 c3 36. bxc3 bxc3 37. Qd4 Nf4!-/+ ナイトでゆっくり取り返す手も考えていましたが、c4-c3の際にe2に利きができるのを見落としていました。

35. Qd4!


最初はbポーンが落ちるのでf5-f4はやりすぎだと思いましたが、35. Qxb4?? Ng4!-+ がありました。白がキングを守るにはクイーンをぶつける1手です。

35... Qf3 36. Rd2


36. Bf5! Bd7 37. Ng4 Bxf5 38. Nxf6+ Kf8 39. Nxh7+ Kg8 40. Ng5= このビショップの踏み込みからナイトでのぎりぎりのディフェンスは難しいでしょう。

36... c3 37. bxc3 Rxc3 38. Bc2 Nh5 39. Qg4??

あと2手で時間が増える38手目で間違え、ゲームは終わりを迎えました。残り1秒まで考えましたが、Nh5-Nf4-Nh3#に対する正しい受けが分かりませんでした。39. Bd1! Rc1 40. Ra2!
Analysis Diagram

ビショップを退く手は当然考えたのですが、ルークに潜り込まれて危険が増すだけだと切り捨ててしまいました。自身のキングを守るのではなく、2段目を開き、aファイルから積極的に反撃するのが白のベストチャンスでした。

40... Nf4 41. Ra8+ Be8! (41... Kf7?? 42. Qa7+ Kf6 43. Rf8+ Kg5 44. Qe7+ Kh6 45. Qh4+ Kg7 46. Qf6+ Kh6 47. Nf5+ Kh5 48. Qh4# なんとキングが単に逃げる手にはぴったりメイトです) 42. Rxe8+ Kf7 43. Re7+! こうしてルークのただ捨ては、今年の全日本選手権の青嶋くんの試合で目にしました。 43... Kxe7 44. Qg7+ Ke8 45. Qg8+ Kd7 46. Qf7+ Kd6 47. Qf8+= 黒キングは逃げきれず、ドローになります。

39... Rxe3! 40. Qxf3 Re1+ 0-1


ピースが落ちたかと思いきや、ぴったりメイトでした。

08/06 15:00 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2417) 0-1
08/07 15:00 R3 Munkhdalai, A (FM, MGL, 2437) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/08 15:00 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Aveskulov, V (GM, UKR, 2470) 0-1
08/09 15:00 R5 Arhan, C A (FM, IND, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/10 15:00 R1 Levine, J (FM, USA, 2371) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/11 15:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Setyaki, A (IM, INA, 2401) 0-1
08/12 15:00 R7 Neverov, V (GM, UKR, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)
08/13 Rest Day
08/14 15:00 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov (IM, UKR, 2515)
08/15 15:00 R9 Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)

First Saturday August 2023 GM Standings
ミレナーリシュの入口では、落ちてくる水が絵や文字の形を描いていました。こちらはBEL-BUDAと書いてあるようです。国会議事堂の絵もありました。

2023/08/11

First Saturday August 2023 GM R1

先日、First Saturdayのメモリアルブックをいただきました。多くのノーム、タイトル獲得者を輩出してきたハンガリーのクローズドトーナメント、First Saturdayは1990年から開催されているそうです。上手く企画すればどこでもノームトーナメントは開催できますが、それを継続しているのがハンガリーの凄いところですね。こちらの本の中では、First Saturdayでノームを獲得したLeko、Caruana、Rapportら名だたるメンバーが紹介されています。

さて試合は延期されていた1Rです。アメリカのジュニアプレーヤー、LevineとはSixDaysでも対戦し、その際は白番で勝利を収めています。私としてはなんとか連敗を止めたい大事な一戦でした。

Levine, J (FM, USA, 2371) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)
First Saturday August 2023 GM (1)

1. e4 c6 2. Nf3 d5 3. d3 g6!?

SixDaysのPlat戦に続き、このラインです。黒のチョイスによっては早々にクイーン交換を受け入れるこの変化は、2019年以降Caro-Kann対策としてポピュラーになっています。

4. e5 Bg4 5. Nbd2 c5 6. c3 Nc6 7. h3 Bxf3 8. Nxf3 e6 9. d4 cxd4 10. cxd4 Qa5+ 11. Bd2 Bb4 12. a3 Bxd2+ 13. Qxd2 Qxd2+ 14. Kxd2


ここまでが準備していたアイディアです。黒は白マスビショップを手放しましたが、クイーン+2マイナーピースを交換し、白のスペースを使ったプレーのチャンスを制限しています。

14... Nge7 15. Bb5 a6 16. Ba4 Rc8 17. Kd3 b5!

c5のマスは弱くなりますが、代わりにc4を抑える力が強くなるうえ、白はビショップをどこに退くのかの判断が難しく、ここはbポーンの突き時だと感じました。ビショップを追い払った後、Nc6-Na5-Nc4が実現できれば黒は文句なしです。

18. Bd1 Na5 19. b3 Kd7 20. Kd2 Rc7


d1はビショップの退く位置としてありえますが、ルークが分断されるのが欠点です。上手くcファイルをコントロールできればと思いましたが、ここは20... h6!? 21. Rc1 Rxc1 22. Kxc1 b4! 23. a4 Rc8+ 24. Kb2 g5=/+ くらいでも良かったようです。

21. Rc1 Nac6 22. g4 h5 23. Be2 Na5 24. Rxc7+ Kxc7 25. Rc1+ Kd7 26. Rc3 hxg4 27. hxg4 Nec6 28. a4 bxa4

ここでb5を崩しにくるアクションにどう応じるかは悩みました。b5-b4と押し込むほうがb3の弱点を残せますが、代わりにb4にナイトが跳びこむチャンスは無くなります。28... b4 29. Re3 Nb8= と進んだ場合、おそらくお互いに局面を改善するチャンスがなくドローになるでしょう。

29. bxa4 Ra8?!


しかし、このポーンの守り方は不正確でした。29... Nb4! 30. Ng5 Rf8 31. Nh7 Rh8 32. Ng5 (32. Nf6+ Kd8!=/+ これをあまり真剣に考えず、ナイトの潜り込みは危険だと思っていました) 32... Rf8= これならばすぐにドローです。bポーンを捌くにせよ残すにせよ、形勢は互角でした。

30. Ke3 Ke7 31. Ng5 Ra7 32. f4

c5にルークが入られると2つのナイトが同時に攻撃され、位置を改善することができなくなるのではと心配しましたが、aポーンを見捨てて反撃するのが正解です。32. Rc5 Rb7 33. Bxa6 Rb3+ 34. Kf4 Rb4 35. Bb5 Nxd4 36. Kg3 Nxb5 37. axb5 Rc4=

32... Nb4 33. Rc8 Nac6 34. Bd1 Nd8?!


ルークの潜り込みにはナイトで8段目をブロックするのが、少し前から私の頭にあったアイディアでした。次にNb4-Nc6とすれば、潜り込んだ白ルークは行き場を失います。しかし、実際には本譜のアイディアがあるため、34... Rd7! 35. Bb3 a5 36. Rh8 Nd8= とするのが安全でした。

35. a5! Nbc6 36. Ba4 Nxa5

この辺りはお互いにほぼ時間がありませんでした。36... Kd7!? 37. Rxd8+ Kxd8 38. Bxc6 Rc7 39. Ba4 Rc3+ 40. Kd2 Ra3 41. Bc6 Ke7 と2ピースvs.ルークにする変化もあったようですが、これに跳びこむには勇気がいります。

37. f5?!


これは不必要なポーン捨てでした。シンプルにナイトを取り合った場合、白のほうが指しやすいでしょう。37. Nxf7! Kxf7 (37... Nxf7?? 38. Re8# この一発メイトがa4-a5の狙いです) 38. Rxd8 Nc4+ 39. Kf3 a5 40. f5 gxf5 41. gxf5 exf5 42. Kf4+/= まだ難しいですが、これを守り切らなければいけない黒は大変です。

37... gxf5 38. gxf5 exf5 39. Nxf7 Nc4+ 40. Kf3 Ne6 41. Nh6?!

お互いに時間が増え、私は自分にチャンスが来たとはっきり感じていました。しかし、実際には白は上手く守り切れるようです。本譜でもドローですが、より安全なのは41. Nh8! Nxd4+ 42. Kf4 Ke6 43. Re8+ Re7 44. Ra8 Ne2+ 45. Kg5!= と進める変化です。h8と妙なところに跳んだナイトがポイントで、g6でのフォークがあるために黒はキングでe5を取ることができません。

41... Nxd4+ 42. Kf4 Ke6 43. Bd1?


お互いに増えた時間を使って読んでいましたが、ルーク交換後のエンドゲームがドローだと気づいていませんでした。43. Re8+! Re7 44. Rxe7+ Kxe7 45. Nxf5+ Nxf5 46. Kxf5 a5 47. e6 Nb6 48. Bd1 (48. Bb3 a4 49. Ba2? Nc4-+ これを私は読んでおり、黒勝ちだと勘違いしていました。a2のマスを早く抑えることよりも、a4までポーンを進めあせないことが重要です) 48... a4 49. Ke5 a3 50. Bb3= d5のポーンを失わずにa2をナイトで抑えることができないので、黒は勝つことができません。

43... a5 44. Rg8 Nxe5?

私も時間を目いっぱい使いましたが、大事な局面で読み抜けがあって勝ちが分かりませんでした。44... Rh7! 45. Rg6+ (45. Re8+ Re7 46. Rxe7+ Kxe7 47. Nxf5+ Nxf5 48. Kxf5 Ne3+-+ 今度はd1に退いたビショップがナイトフォークで捕まるため、ルーク交換はできません) 45... Ke7 46. Ba4 Ne6+! 47. Kg3 (47. Kxf5 Ne3# このメイトが見えず、f5を失っては勝てないと勘違いました...) 47... f4+ 48. Kf2 Nc5 49. Nf5+ Kf8 50. Rf6+ Rf7-+ こうしてfポーンが生き延びるのであれば、黒が勝つのは難しくないでしょう。ナイト2つのメイトが見えなかったのは不覚でした。

45. Re8+ Kf6 46. Ng8+ Kf7 47. Rxe5 Kxg8 48. Rxd5


多かったポーンがパラパラと落ち、ドローが見えてきました。aポーンだけでは勝てません。

48... Ne6+ 49. Kxf5 Ng7+ 50. Kf6 Ra6+ 51. Ke7 a4 52. Bc2 Ra7+ 53. Rd7 Rxd7+ 54. Kxd7 a3 55. Bb3+ Kf8 56. Kc6 Nf5 57. Kb5 Nd4+ 58. Ka4 Nxb3 59. Kxa3 1/2-1/2

勝ちたいエンドゲームでしたが、見えなかったものは仕方ありません。連敗が止まったことでひとまず満足し、次につなげようと思います。

08/06 15:00 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2417) 0-1
08/07 15:00 R3 Munkhdalai, A (FM, MGL, 2437) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/08 15:00 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Aveskulov, V (GM, UKR, 2470) 0-1
08/09 15:00 R5 Arhan, C A (FM, IND, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/10 15:00 R1 Levine, J (FM, USA, 2371) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/11 15:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Setyaki, A (IM, INA, 2401)
08/12 15:00 R7 Neverov, V (GM, UKR, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)
08/13 Rest Day
08/14 15:00 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov (IM, UKR, 2515)
08/15 15:00 R9 Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)

First Saturday August 2023 GM Standings

2023/08/10

First Saturday August 2023 GM R5

セールカールマン広場の一歩手前、セナ広場前にあるショッピングモール、マムートはこれまでの遠征ではさほど足を運ぶことはありませんでした。ところが今回はちょっとした気まぐれで試合前に立ち寄り、意外と居心地が良いことが分かりました。昼食後、コーヒーをこちらでいただきながら試合準備をしています。マンモスがモチーフのショッピングモールですが、よく見ると入り口が牙のようになっています。

First Saturday5Rはインドの少年、Arhanとの対戦です。私同様、ハンガリーの前はチェコで試合をしており、そちらでも印象的な試合をいくつか指していました。この大会も唯一開幕2連勝で、トップに立っているプレーヤーです。

Arhan, C A (FM, IND, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)
First Saturday August 2023 GM (5)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Ne5 Nbd7 7. Nxc4 Qc7!?

試合後に検討でShanklandとの試合を見て、7... Nb6を用意してきたと教えてくれました。現在は、こちらの変化を指しています。

8. g3 e5 9. dxe5 Nxe5 10. Bf4 Nfd7 11. Bg2 g5 12. Ne3 gxf4 13. Nxf5 O-O-O 14. O-O fxg3 15. hxg3 Kb8 16. Qc2 h5 17. Rfc1 Nf6 18. a5!?


調べていない手でしたが、一番指されている手でした。黒からのa7-a5を止め、場合によってはRa1-Ra4とルークを使うアイディアです。

18... h4!?

a7-a6と一度止める手が安全ですが、積極的に仕掛けてみます。白にとってもhファイルを開かれるのが一番危険なアイディアです。

19. Qb3?


ここは怖くても一度ポーンを取るべきです。19. Nxh4! Neg4! (19... Rxh4? 典型的なエクスチェンジサクリファイスですが、タイミングが早いです。20. gxh4 Neg4 21. Rd1 Re8 22. Qf5 Qh2+ 23. Kf1 Bh6 24. Rd3+- ならば白は守り切れます) これで次にh4でのエクスチェンジサクリファイスを狙うのが面白いアイディアです。ナイトがf5からどいたことで、Bf8-Bh6も面白い狙いになっています。

19... hxg3 20. Nb5 gxf2+ 21. Kf1 Rd3?

ただでhファイルを開かせてもらい、一時的だとしても2ポーンアップになりました。ここで落ち着いてクイーンを避けてナイトに当てれば圧倒的に優勢だと最初は思っていましたが、なんとかQb3-Qe3がe5,a7の2つに同時に当たることに気づいて愕然としました。21... Qc8? 22. Qe3! Qxf5 23. Qxa7+ Kc8 24. Bxc6 Nxc6 25. Rxc6+ Kd7 26. Qxb7+ Ke8 27. Nc7+ Kd7 28. Nd5+ Ke8 29. Nxf6+ Qxf6 30. Rxf6+- では勝負になりません。30分考えて対抗策をひねり出そうとしましたが、ここで間違えてゲームはほとんど決まりました。この21手目の局面は黒が有利になる手がたった1つしかなく、他は全て白勝ちです。

21... Nc4!!
Analysis Diagram

クイーンが避ける手がだめであれば、クイーンに当て返す手はどうかという発想に思い至りました。本譜もそのアイディアなのですが、ルークではなくナイトで一時的にNc4-Nd2+のフォークの狙いを見せてピースを捨て、h2へクイーンの侵入を見せるのが唯一正解となるアイディアでした。22. Rxc4 Qh2! 23. Qg3+ Qxg3 24. Nxg3 cxb5 25. Rf4 Nd5 26. Bxd5 Rxd5 27. Kxf2 Bg7-+ g3でのチェックでクイーン強制交換になりますが、直後にb5でナイトを取り返し、黒は駒得を保つことができます。実はルークをd3に置いた直後にナイトの手もあったのではないかと思い、がっくりしました。

22. exd3 Qd7 23. Nbd4! Nfg4


23... c5 24. Qb5! ではピースが取れず、単純に駒を取り返す作戦は上手くいきません。f2ポーンを残し、白キングへのアタックチャンスに望みを託しますが、g2のビショップが攻守に働きすぎています。

24. a6! b6 25. Nxc6+! Nxc6 26. Rxc6

a5-a6,b7-b6を挟んでことで、c6のルークがb6切りからメイトスレットになっています。

26... Nh2+ 27. Ke2 Qe8+


27... f1=Q+ 28. Rxf1 Nxf1 29. Rxb6+ axb6 30. Qxb6+ Kc8 31. Bb7+ Kb8 32. a7# ぴったりメイトです。

28. Kxf2 Ng4+ 29. Kg1 1-0

21手目が全てでした。指した直後にもっと良い手があったことに気づくのは悔しいですね。

08/06 15:00 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2417) 0-1
08/07 15:00 R3 Munkhdalai, A (FM, MGL, 2437) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/08 15:00 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Aveskulov, V (GM, UKR, 2470) 0-1
08/09 15:00 R5 Arhan, C A (FM, IND, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/10 15:00 R1 Levine, J (FM, USA, 2371) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)
08/11 15:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Setyaki, A (IM, INA, 2401)
08/12 15:00 R7 Neverov, V (GM, UKR, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)
08/13 Rest Day
08/14 15:00 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov (IM, UKR, 2515)
08/15 15:00 R9 Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)

First Saturday August 2023 GM Standings

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.