2023/08/16

First Saturday August 2023 GM R9

チェコから続くこの1か月の遠征も、最終戦を迎えました。今回の遠征最後の相手は、ハンガリーのIM Dudin Glebです。彼とは今大会で初めて会い、名前も初めて聞くプレーヤーでした。このレベルのハンガリーのプレーヤーを自分が知らないのは珍しいと思っていましたが、つい最近ロシアから移籍したようです。これまで参加してきたノームトーナメントの中でも、最高クラスの実力者でした。

Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308)
First Saturday August 2023 GM (9)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 c5 4. Nf3 Nc6 5. dxc5 Bg4 6. c3 e6 7. Be3 Bxf3 8. Qxf3 Nge7 9. Bb5 a6 10. Ba4 Qa5 11. Bc2!?

11. Qd1 Nf5 12. b4 Nxe3 と進むのがメインラインですが、この手は調べておらず、どうしたら良いかここから考え始めます。e5のポーンは取り返すとして、その後にキングサイドにくるプレッシャーをどう受けるかが黒のセットアップのポイントとなります。

11... Nxe5 12. Qg3 N7c6 13. b4 Qd8 14. Nd2 g6 15. O-O Bg7 16. Bf4 O-O


初めて見るとこのポーンストラクチャーはセンターポーンを多く持つ黒が良さそうですが、うっかりすると白にクイーンサイドでパスポーンを作られる危険もあるため、白のダブルcポーンの存在は侮れません。なにより白にはダブルビショップがあるため、それが火を噴かないよう黒は注意が必要です。

17. Rad1 Nd7

ナイトは早めに退散しておき、Nd2-Ne4の狙いを防いでおきます。それと同時にNd7-Nf6の組み直しや、b7-b6からクイーンサイドでの反撃を狙います。しかし、もう1つナイトを退くことにはメリットがあることを見落としていました。

18. Nb3 Qc8 19. a4?!


ここは19. Bd6 Re8 20. Rfe1+/= とするのが自然な流れで、白はセンターを抑えて優位を保てます。

19... Re8?

Bf4-Bd6の潜り込みに対して早めに避けておきつつ、場合によってはe6-e5とポーンを伸ばすことも考えていました。試合後にここで黒にチャンスがあったとGlebには指摘されています。彼の指摘した手は考えていたものの、直後の手を見落とし上手く評価できていませんでした。19... a5! 20. b5 Nce5!
Analysis Diagram

e5からナイトを退いた直後にナイトを入れ替えるという発想が、私の頭にありませんでした。Nc6-Ne5-Nc4と跳びこめばd6のマスを抑えてBf4-Bd6に対抗でき、c5のポーンを上手く狙うことができます。21. h4 Nc4 22. Bc7= コンピュータは互角の評価を出しますが、Bf4-Bc7の跳びこみは指しづらく、白にとって理想的なピースの使い方ではないでしょう。c5のポーンはすぐに落ちないものの、白は気を配り続けなければいけないことは間違いありません。Nc6-Ne5のナイトの入れ替えを防ぐためにも、白は早めにe1にルークをまわすのが正解でした。

20. Rfe1! Ne7 21. a5!+/-

私としては、b7-b6のブレイクを見せることでこのポーン突きを誘い、白からのb4-b5ブレイクを止めてクイーンサイドのマジョリティを有効活用させない作戦でした。しかし、クイーンサイドで互いに手が作れなくなれば焦点になるのはキングサイドで、それは白に明らかなチャンスがあります。a4-a5を許すのは黒にとって得策ではなく、a6-a5を自分から仕掛けなくてはいけませんでした。

21... Nc6 22. h4? Nf6?


h2-h4-h5は自然なキングサイドのアタックですが、先にd6にビショップを跳びこんでおくべきです。22... e5! 23. Be3 Nf6! 24. Nc1 Ne4!? 25. Bxe4 dxe4 26. h5 Qf5= ならば黒はキングサイドのアタックを受け、十分な局面でした。

23. Bg5 Qb8 24. Qf3 Ne5 25. Qe2 Nc6 26. Qf3 Ne5 27. Qh3!

チェコでも1試合ありましたが、hファイルを食い破る攻撃は強力で、黒としてはディフェンスしきることは難しい状況です。かと言って別の場所で反撃があるわけでもなく、じりじりと押されていくことになります。

27... Nc4


c4のナイトは良く見えるが、実際には働きがないと試合後に指摘されました。確かにターゲットも無く、d5が落ちた際にも問題になる位置です。27... Nc6 28. Nd4 はまだありえたかもしれませんが、それでも苦しいでしょう。

28. Nd4 Qc8 29. Qf3! Nd7 30. h5 Nde5 31. Qh3 Nc6 32. Qh4!

この辺りの指し方は正確で感心しきりでした。h3-c8ダイアゴナルからクイーンを避けておくことでクイーン交換を避け、場合によってはRd1-Rd3-Rh3を見せます。

32... e5 33. hxg6 hxg6 34. Ne2 d4


34... e4 35. Rxd5 Re5 36. Rxe5 N4xe5 37. Qxe4+- このようにd,eポーン両方を取られても勝負になりません。

35. Bb3 Nb2 36. Rd2 dxc3 37. Nxc3 Nxb4 38. Qxb4 1-0

b4が守られていることは見えていませんでしたが、いずれにせよ駒は助からず、キングも危険な状況で黒の必敗ポジションです。

前回の遠征では、3敗6ドローで初の勝ち無しトーナメントがありましたが、今回は6敗3ドローとさらに厳しい結果でした。さらなる試合の見直しとともに、上手くこれを消化して次の大会への糧にしていきたいと思います。一か月の遠征、たくさんの人に見ていただき、ありがとうございました。

08/06 15:00 R2 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Mirzoev, A (GM, AZE, 2417) 0-1
08/07 15:00 R3 Munkhdalai, A (FM, MGL, 2437) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/08 15:00 R4 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Aveskulov, V (GM, UKR, 2470) 0-1
08/09 15:00 R5 Arhan, C A (FM, IND, 2341) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0
08/10 15:00 R1 Levine, J (FM, USA, 2371) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/11 15:00 R6 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Setyaki, A (IM, INA, 2401) 0-1
08/12 15:00 R7 Neverov, V (GM, UKR, 2405) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1/2-1/2
08/13 Rest Day
08/14 15:00 R8 Kojima, S (IM, JPN, 2308) - Samunenkov, I (IM, UKR, 2515) 1/2-1/2
08/15 15:00 R9 Dudin, G (IM, HUN, 2537) - Kojima, S (IM, JPN, 2308) 1-0

First Saturday August 2023 GM Standings

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