2015/08/14

Japan League 2015 Day2 Tournament Report

ジャパンリーグ2日目のレポートです。予想通り、前夜のペアリング発表に誤りがあり、私は桑田くんではなく、三ツ矢さんと対戦することに。オリンピアードのチームメイトでもある三ツ矢さんとは、この2年間、国内のFIDE 公式戦ではよく当たります。オープニングはSlav Exchange となり、丁寧に押していって勝ち。

このラウンド、トップボードの桑田-Zhao Xue はドローとなり、日本の公式戦で私が知る限り、初めてGM がポイントを落としました。桑田くんはこの調子を維持し、4R では、黒を持って馬場さんを下し、全日本選手権最終ラウンドの雪辱を晴らしました。一方で私は、トップボードに上がって、同じく3連勝の南條くんとの対戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2389) - Nanjo, R (IM, JPN, 2330)
Japan League 2015 (4)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 c6 9. h3 Qb6 10. c5!?



10. Re1 がAverukh の勧めで、私も何回か指したことがありましたが、たまたま先週、このc4-c5 Gambit を調べる機会があり、この大事な一戦で投入してみることにしました。

10... dxc5 11. dxe5 Ne8 12. e6 fxe6 13. Ng5 Ne5 14. f4 Nf7 15. Nxf7 Bd4+ 16. Kh2 Rxf7 17. e5 Nc7


私が先日、黒を持って自身で指してみた感触では、クイーンを早めに退き、ナイトはg7 へ運ぶセットアップのほうがしっくりきました。17... Qc7 18. Ne4 b6 19. Ng5 Re7 20. Qc2 Ba6 21. Re1 Rd8 22. Be4 こうして黒のキングサイドにプレッシャーをかけるのが白のアイディアで、これは本譜でも出てきます。

18. Ne4 Nd5 19. a4 Bd7!?



通常であれば、このビショップはb7-b6, Bc8-Ba6 と使うものです。ポーンストラクチャーの内側に閉じこもっている状態では、やや働きに不満があるでしょう。19... a5 20. Ra3 Qc7 21. h4 b6 22. h5 といった展開を予想していました。

20. a5 Qc7 21. Ra3


c1 のビショップが動きづらい以上、a1 のルークはこのように3段目からゲームに参加するものです。

21... Raf8 22. h4 Kh8 23. Ng5 Rg7 24. Be4 h6



ルークを3段目に展開してから、黒のキングサイドにアタックを仕掛ける準備をさらに整えますが、これに対して南條くんは、h7-h6 とナイトを追い払ってきました。白からのh4-h5 や、g5 に居座るナイトが厄介ですが、g6, h6 が将来的に弱くなる点が少し気になります。

25. Nf3 Qd8 26. Kg2!?


コンピュータは、26. Nxd4 cxd4 27. Qxd4 とビショップを取って、ポーンも取り返してしまうべきだと主張しますが、私はd4 のビショップが働いているかどうかが疑問で、あえて早めにナイトとの交換を決めなくても良いのではないかと考えました。あくまでピースを残し、キングサイドでのアタックを画策します。

26... Be8 27. Nh2 Ne7 28. Nf3 Nf5 29. Rh1



Nf3-Nh2-Ng4 はあまり効果的ではないと考えを改め、g,h ポーンを押し進める作戦に切り替えます。

29... Rd7 30. Qe2 Kg7 31. Rh3 Bf7 32. g4 Ne7 33. Bb1!?


この手は、e4 のマスを空けておくことで、Qe2-Qe4 のチャンスを作ることや、f4-f5 を仕掛けた際に、e4 のビショップがターゲットにならないようにすることを目的としています。

33... Be8 34. Rg3 b5 35. axb6 axb6 36. h5 Nd5 37. f5!



時間が増える40手間際、私から仕掛けます。この先はかなり難解ですが、最終的に間違えたのは南條くんでした。

37... g5 38. Qe4 Kh8 39. fxe6?


私はRa3-Rf3 で白がはっきり良くなると読み、f5-f6 と押し込むのではなく、fファイルを開くことにしました。しかし、これには読み抜けがあり、先にビショップを取っておく手が正確でした。ただしその変化も複雑です。39. Nxd4! Nf4+ 40. Bxf4 Rxd4 41. Rgd3!!


この手以外は、白が良くならないというコンピュータの指摘ですが、見えません! 41... exf5 42. Rxd4 cxd4 43. gxf5 gxf4 44. f6 Qd5 45. Qxd5 cxd5 46. Bg6+- こうして2コネクテッドパスポーンができれば、クイーンを捌いてしまっても白勝ちでしょう。私はNd5-Nf4+ のアイディアを軽視していました。

39... Rg7 40. Nxd4 cxd4?


時間の増える40手目、南條くんに致命的なミスが出ました。ここは先述のアイディアである、ナイトのチェックを入れておくべきです。40... Nf4+! 41. Kh2 Qxd4! こうしてクイーンで取る手が指せれば、黒キングへのプレッシャーはほとんどなくなり、黒は本譜に比べてぐっと楽になります。

41. Raf3!+-



これが39手目でfファイルを開いた狙いで、ルークをfファイルから突入するアイディアを使えば、h7 やh6 をを守っていけない黒にとって苦しい展開となります。

41... Rxf3 42. Rxf3 Kg8 43. Qxd4


もちろん、ポーンを回収しておきます。Nd5-Nf4+ のディスカバードアタックに対しては、ルークで取る手があるので問題ありません。

43... c5 44. Qc4 Bc6 45. Be4 Qa8 46. Kg1



ここは少し時間を使い、慎重に手を進めることにします。今度こそ、Nd5-Nf4+ を警戒しなければいけない白は、シンプルにキングをチェックにならない位置に逃がしておきます。

46... Kh8 47. Qf1!


これは自信を持って指すことができました。fファイルにヘビーピースを重ねた白は、f8 とf7 両方にルークの侵入を見せ、勝負を決定づけます。

47... Nf4 48. Bxc6 Qxc6 49. Bxf4 gxf4 50. Rxf4 Qxe6 51. Rf8+ Rg8 52. Qf5!



これが見えたうえでの、47. Qf1! です。それでも駒を置く瞬間まで、しっかりと読み抜けが無いことを確認しました。

52... Qe7


52... Qxf5 53. Rxg8+ Kxg8 54. gxf5+- このポーンエンディングは問題なく白勝ちです。

53. Rf7 Rxg4+ 54. Kf1 1-0



最後も少し面白い形です。Qe7-Qh4 がチェックになってしまうと大逆転負けなので、キングを逃がすマスはf1 以外にありません。こうして互いにIM になってから初の公式戦は私に軍配が上がり、単独4連勝を決めたのでした。


試合後、南條くんからは「やるじゃん」という、彼なりの最高の賛辞をいただきました(笑)`Photo by Yumiko Hiebert

明日は桑田くんとトップボードでの対戦になります。さらに2B では、プロ棋士の青嶋くんとGM Zhao Xue という好カードも組まれています。後半戦残り3試合も、皆さん悔いの無いようにしっかり指してきましょう!

2015/08/13

Japan League 2015 Day1 Tournament Report


今日からいよいよ、今年のジャパンリーグが開幕です。今年は中国からGM のZhao Xue がトップシードで参加となり、彼女との対戦を求めて48名のプレーヤーが集まりました。Zhao Xue 以下は、プロ棋士の青嶋くん、私と南條くんのIM コンビ、日本チャンピオンの馬場さんと続きます。私は初日、後藤さんとGaryくんに勝ち。ジュニアチャンピオンになったばかりの、Gary くんとのゲームをご紹介します。

Kojima, S (IM, JPN, 2389) - Gary, L (JPN, 2005)
Japan League 2015 (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nc6 7. Nc3 a6 8. Bf4!?



ここ数日の研究で、かつてハンガリーで一度だけ指したこのラインを復活させることにしました。おそらく、全日本選手権で指した8. h3 はある程度調べてきているでしょう。

8... Nh5 9. Be3 e5?!


私はすでにこの何気ない手が、黒にとって大きなミスだと考えています。ポジションを開ければ、ピースの展開が早い白に分があります。

10. dxe5 dxe5 11. Qxd8 Rxd8 12. Nd5!



これですでに黒は困っています。私は8. Qd3!? e5 9. dxe5 dxe5 10. Qxd8 Rxd8 11. Bg5 のラインと比較して、このポジションを評価していましたが、早々にd5 にナイトを運ぶことができ、c7 をアタックしている白に大きなポジショナルアドバンテージがることは疑いようがありません。

12... Rd7 13. Rfd1 f5 14. Ng5!


Ng5-Ne6 を見せ、さらにc7 にプレッシャーをかけます。

14... e4 15. f3!?



ここは慎重に考えつつも、大胆にポーンを捨ててみることにしました。白はe4 のポーンを崩せば、再びh1-a8 のダイアゴナルを強力に抑え、黒陣にプレッシャーをかけ続けることができます。白マスビショップの復活は、b2 を捨てても行うべきだと考えました。

15... Bxb2?!


これはストレートすぎて、白は何事もなくマテリアルを取り返し、優勢が明らかになります。15... exf3 16. exf3 (16. Bxf3!? Bxb2 17. Rab1 Be5 18. Bxh5 gxh5 19. Nf3 Bg7 20. Bf4+/= こちらは検討でGary くんと考えた変化です。) 16... Bxb2 17. Rab1 Bg7 18. f4+/- こうなれば、白はポーンを捨てても全てのピースがアクティブで、c8 のビショップの展開に困っている黒は、苦しいポジションが続くでしょう。

16. Rab1 Bg7 17. fxe4


白はポーンを取り返したうえで、ビショップのダイアゴナルを開くことに成功しました。

17... Ne5 18. exf5 gxf5 19. Bc5! Nc6 20. Nxc7!



少し見えづらいタクティクスですが、バックランクメイトを絡めることで、捨てたピースを取り返すことができます。

20... Rxc7 21. Bxc6 Bf6


この手は実は見えておらず、黒が生き残るのは計算外でした。それでも1ポーンアップですし、b7 へのプレッシャーが続くので、白は慌てずにベストムーブを探します。

22. Bd5+ Kh8 23. Bb6 Re7 24. Nf7+ Kg7 25. Nd6



ここはかなり時間を使って、どう手を作っていくか考えました。2手かけてナイトがたどり着いたd6 は、b7 とf5 を狙える好位置です。

25... Be5 26. Bf3 Nf6 27. Bd8 Rd7 28. Nxf5+ Kf7 29. Ne3


この手が見えて間違いなく勝ちを確信しました。2ポーンアップの白は、ナイトをさらに安定した位置に戻し、フィニッシュの準備を進めます。

29... Bd4 30. Bb6 Bxb6 31. Rxb6 Re7 32. Rxf6+ Kxf6 33. Nd5+ Kf7 34. Bh5+ Kf8 35. Rf1+ 1-0



こうして完勝と言える内容でGary くんを下し、初日連勝を決めました。連勝は最初に書いた5人と、桑田くん、三ツ矢さん、唐堂くん、小林くんをあわせた9人ですが、次のペアリングには若干の疑問があるため、非公開にしておきます。2日目も頑張って、良い試合をしてきたいですね。Zhao Xue との対戦も、楽しみにしています。


試合後はGM Ni Hua のレクチャーも予定通りに開催されました。世界に50人程しかいない、2700台のGM です!

2015/08/07

Weekly Chess Puzzle Vol.10


Kojima, S (FM, JPN, 2329) - Takahashi, R (JPN, 2099)
Thailand Open Chess Championship 2011(2)
White to move and win


Kojima, S (JPN, 2277) - Nakamura, R (JPN, 2183)
Japan Chess Championship 2009(4)
White to move and win

最近更新をサボり気味で、全くWeekly ではなくなってしまいましたが、あまり気にしないことにしましょう。久々のパズル2問出題です。タイまで遠征に行って、なぜかルームメイトの礼二さんと当たったゲームから一つ、IM Sam Collins が優勝した、懐かしの全日本選手権のゲームから一つです。答えはコメント欄にご自由にどうぞ。

2015/08/06

Japan League 2015 Tournament Information


2013年のJapan League より

今年も夏のチェス界の祭典、Japan League の時期が近づいてきました。昨年はオリンピアードと被ったために不参加で、今年は2年ぶりの参加となります。2年前はどんな大会だったかと写真を振り返ると、惇多くんのいた年だったことを思い出しました。あの年、優勝を争った私、南條くん、惇多くんは全員IM になっており、2年という月日の流れを感じます。ちなみに盾の取り違え問題もありましたね(笑)

そして今年は2年ぶりの優勝を狙うと宣言したいところですが、海外から強力なゲストがやってくるため、そう簡単ではないでしょう。すでにJCA のHP で公開されていますが、その2人とは中国のGM Ni Hua とZao Xue です。Ni Hua はレイティング2700オーバーで、中国の現役代表メンバー、Zao Xue も女子で貴重なGM のタイトルを持つプレーヤーで、当然中国女子の代表です。


Chinese GM Ni Hua, chessdom より


Chinese GM Zhao Xue, chessbase news より

私は2007年のマカオでNi Hua を、2006年のトリノでZao Xue を知り、隣国のトッププレーヤーとして、その活躍を追ってきました。今回、そんな2人が来日することをとても嬉しく思います。ちなみにJapan League の試合に参加するのは、Zhao Xue のみ、Ni Hua は2日目以降のレッスンと同時対局を担当するそうです。(ここを紛らわしく書いてしまったこと、お詫び申し上げます。)2日目と3日目の夜にはNi Hua による無料のレクチャー、4日目の午後に有料のレクチャーと同時対局イベントがありますので、Japan League に参加しないプレーヤーも楽しめそうですね。しかも、4日目のレクチャー+同時対局の参加費は、どちらも参加して2000円という格安です。

GM が2人来日しての大会参加、およびイベントは私の知る限り、初めてのことです。皆さん、是非この機会に中国のトッププレーヤーたちとの交流を楽しんでください! 今年のJapan League は、8/13(木)-8/16(日) の4日間の日程での開催です。来週、蒲田で皆さんとお会いできることを楽しみにしています。

2015/08/05

My Memorable 2000 Games


16th IVL より Photo by Hasegawa

今週の月曜日、イングランドの元U14 チャンピオン、大山彰人くんと久々に会ってきました。2012年のロンドン遠征で会い、IVL にもゲストとして一度参加した彼も、もう高校生になるそうです。時の流れは早いですね。彼とはブリッツやポジション研究のほか、ラピッドを1試合指してきました。そのゲームを自分のChess Baseに入力したところ、それがちょうど2000試合目でした。2005、2006年頃の試合の棋譜を紛失しているので、実際にはもっと多いのですが、これを一つの節目として記事を書こうと思います。

私が自分のデータベースに入力しているゲームは、公式戦、非公式戦に関わらず、ラピッド以上の棋譜を取った試合が基本ですが、時には面白かったオンラインのゲームや、ブリッツもあります。公式戦を全くしない月もあれば、年末年始のハンガリーのように、マスタークラスと月に30試合をこなす月もあるので、頻度はまちまちですが、15年目で2000試合というのは、結構なハイペースかもしれません。15年の間にチェスから離れていた、いわゆるブランクの期間が全く無いのも、私のチェス歴の特徴でしょう。

2000試合の中には思い出深いゲームも多く、それらを見ると当時のことを懐かしく思い出します。初めての公式戦で勝ったゲーム、先輩に勝ったゲーム、クイーンを取って勝勢だったのに、大逆転で負けて悔しい思いをしたゲーム、全日本選手権での初優勝を決めたゲーム、初めてIM, GM に勝ったゲーム、IM ノームやIM タイトルを確定させたゲームなど、挙げていけばきりがありません。その1つ1つが重なって、2000という大台に到達したことを、とても嬉しく思います。これらのゲームは、私がどうやってこの15年を生きてきたかという軌跡だと思っています。

今月のジャパンリーグでは、2001試合目から2007試合目をすることになるでしょう。2000という数字はただの通過点で、今後も試合を1つ1つこなしていくことになります。最近はコーチ業が忙しいですが、プレーヤーとしてもまだまだこれからですので、あらためて皆さん、よろしくお願い致します。

2015/08/04

Saturday Lecture on August 22nd 2015


Sato, K - Kojima, S / Japan Junior Championship 2006(6)

【日時】 2015年8月22日(土) 13:00~15:00
【会場】 チェスセンター(最寄駅:池上駅)
【形式】 レクチャー+質疑応答
【テーマ】 Good and Bad Piece Exchange
【テーマ詳細】

一般的にナイトとビショップ、ルーク同士、クイーン同士など、同じ価値の駒を交換することに大きな損得はないはずです。しかし、交換して消えた駒がどのように働いていたかや、残った駒の働きによっては、白黒いずれかに有利な交換だと判断できるケースがあります。今回はそのような、良いピースの交換と悪いピースの交換について扱います。どちらかに有利なピース交換には、どのような例があり、どのように判断すべきかを一緒に考えていきましょう。

【参加費】 一律1200円
【参加資格】なし
【対象】 レイティング2000未満

予定していた人数制限は無しとなり、予約も不要となりましたので、お気軽にお越しください。今月もよろしくお願い致します。2015/08/11 追記

2015/08/03

Japan Women Chess Championship 2015 Tournament Report


最終戦の1B 橋本 - 石塚戦

先週末は日本の女子チャンピオンを決める全日本女子選手権が開催されました。この夏のシーズン、第1週のサマーオープン、第2週のジュニア、小学生、シニア選手権に続き、3週連続での大会です。今年の女子選手権は、来年、アゼルバイジャンの首都、バクーで開催されるチェスオリンピアードの、女子代表選手選考会も兼ねている重要な試合となります。14名の女子選手が集まり、5つの代表枠を競い合いました。

初日は前年度女子チャンピオンの内田さんが、ブラジルの星野華怜に負ける波乱があり、3連勝の華怜を2.5P の石塚さんと橋本さんが追う展開となりました。5R 終了時点では、石塚さんと華怜が4P で並び、チャンピオンをかけた最終戦を迎えます。


Hashimoto, A - Ishizuka, M
Japan Women Chess Championship 2015(6)

QGD での典型的な、c5, d5 のHanging Pawns から、石塚さんはc5-c4 と仕掛けました。d4 をアウトポストにし、d5 のポーンを弱めるリスクのあるプレーではありますが、こうしてbファイルを突破し、b2 の白ポーンとd5 の黒ポーンを交換してしまえば、黒がcファイルにパスポーンを持つ有利なエンドゲームとなります。

33... Rxc2 34. Rxc2 Rd2


もちろん黒はルークを交換し、パスポーンをブロックする邪魔者を消しにいきます。クイーンの位置も最高で、パスポーンを守りながら、f2 をアタックしています。

35. Rxd2 cxd2 36. f3


36. Qd1 Qc3 37. Kf1 Qc4+! 38. Kg1 Qc1-+ こうした変化もチェックしておくべきでしょう。黒はクイーンをチェックを1回挟むことで、白キングがパスポーンに寄ることを許しません。

36... Qc3 0-1



これで白は、次のQc3-Qc1 からのプロモーションを防ぐことができません。石塚さんはこの貴重な白星により、最終戦でドローになった華怜を半歩リードして、単独優勝を決めました。この10年間、オリンピアードに2回、その他の海外大会も多数一緒に参加してきた石塚さんでしたが、女子選手権の優勝は今回が初めてです。石塚さん、おめでとうございます!


1st Place Ishizuka Mirai (JPN, 1674)
2nd Place Hoshino Karen (WCM, JPN, 1626)
3rd Place Uchida Narumi (WFM, JPN, 1970)


最終的に上位3名に入ったのは、オリンピアード代表経験のあるメンバーでした。ジュニア選手権に引き続いて奮闘した華怜は、優勝には一歩届かなかったものの、負けなしで終始安定したプレーを見せてくれました。また来年の夏、ジュニア選手権と併せ、タイトルを狙って来日してくれることを楽しみにしています。レイティングトップの内田さんは、今年こそ女王の座を逃してしまいましたが、並の男子プレーヤーでは歯が立たない実力者であることは間違いありません。今後も腕を磨き、日本の女子プレーヤーを牽引してもらいたいと思います。

また、入賞の3人を含め、4位と5位の福谷さん、橋本さんまでが、来年のオリンピアード代表権を獲得しています。5人とも、おめでとうございます! 最終的にオリンピアードに参加するかどうかの決定時期はまだ先なので、6位以下にも代表権が繰り下がる可能性があります。来年にかけて、男子、女子のどちらも代表メンバーが気になるところですね。ちなみに、今年の全日本選手権で2位になった私は、当然ながら参加を希望します。

それでは、今年の全日本女子選手権に参加されたプレーヤーの皆さん、運営と見学の皆さん、2日間お疲れ様でした。私はこの3週間、大会のレポーターと化していましたが、来週のジャパンリーグからは、プレーメインに戻ります。ジャパンリーグについての記事は、早ければ明後日にでも公開しようと思いますので、そちらもよろしくお願い致します。

2015/07/27

Japan Junior Champions 2015


今年の小学生選手権は、Open とAクラスの合計が、50人を超えました!

一週間ぶりの更新です。前回の週末は、IVL とサマーオープンでしたが、この週末はジュニア選手権、小学生選手権、シニア選手権が開催され、私は金曜日から日曜日まで会場に足を運んできました。子供たちは今年も白熱した好ゲームを見せてくれました。一つ面白かったゲームをご紹介しましょう。


Otawa, Y - Kashihara, T
Japan Junior Championship 2015(5)

土曜日のジュニア選手権二日目、トップボードは4連勝の大多和くんと、3.5P の柏原くんの大阪対決となりました。柏原くんのうまい指しまわしで、白のアドバンテージはあまりない序盤だと思っていましたが、私がポジションを見に戻るとこうした中盤戦に。ここで優勝を決めたい大多和くんは、勝負を仕掛けます。

1. e6!?


私がこの局面で考えていたのは、1. f5! と突く手で、こちらのほうがh7 への攻撃が通りやすく、白の勝ちが明白です。1. f5! Qxe5 (1... gxf5 2. Bxf5 Qxe5 3. Bxh7++- こうなれば、fファイルに追い出された黒キングは、白のルークたちの餌食となり、ゲームオーバーです。 2. f6!+- こうしてg6 を取るのではなく、ポーンを突いて勝負ありです。次にBe4-Bxg6 で黒キングの守りは崩壊します。

1... Qxf4 2. Bxg6 Qc1+


私は恥ずかしながら、この当たり前の1手が見えておらず、1. e6 でも勝ちになるかと思っていました。黒陣に刺さったg5 のポーンを掠め取り、黒は抵抗を続けます。

3. Kg2 Qxg5+ 4. Rg3 Qxg3+ 5. Kxg3 Rxg6+



黒はクイーンを捨てましたが、ポーンとルークとビショップを取って、自らのキングを生かしました。ちなみに柏原くんが指したビショップを取る手が正解で、h2 のルークを取る手はだめです。5... Bd6+ 6. Kh3! 私はこの手が見えておらず、ルークを取りにいく手が良いと勘違いしていました。(6. Kf2? Bxh2 7. Bf7+ Kf8 8. Qf5=) 6... Rxg6 (6... Bxh2? 7. Bf7++-) 7. Rg2! こうしてすぐにルークが交換できる展開は、白にとってありがたいものです。

6. Kf2 Rf6+?


時間切迫で、柏原くんはミスを犯しました。難しいポジションですが、6... Bg7 と出しておけば、黒はキングの守りを厚くしながら、d4 のポーンを守れたため、白は本譜のように簡単に勝つことはできなかったでしょう。

7. Kg1 h6 8. Rg2+ Kh8 9. Qg3 1-0



先程とマテリアルは変わっていませんが、素早くgファイルにヘビーピースを重ねた白が、メイトスレットを作って勝利を収めました。このラウンド、Gary は長瀬くんとドローだったため、これで大多和くんは5R 終了時点で2位に1P 差をつけ、最低でも同時優勝を決めました。


ジュニア選手権の最終戦は、Gary が直接対決で大多和くんを破り、4P の小柴 - 星野(華)戦は逆転で小柴くんが勝利を収め、大多和くん、Gary、小柴くんの3名が、6R の全ラウンドを終えて5P で並びました。全日本でも活躍した大多和くんとGary にとっては順当な結果だとして、今年の頭から400近くレイティングを伸ばしてきた小柴くんは、完全にダークホースでしたね。タイブレークでトロフィーは、Gary、大多和くん、小柴くんの順に1位-3位と贈られていますが、3人ともジュニアチャンピオンと呼んで差支えないでしょう。3人とも、おめでとう!


小学生選手権の入賞者たち

日曜日に開催された小学生選手権は、昨年に引き続き、アメリカから来た泉くんが4戦全勝での優勝を決めました。2位、3位を分けたのは、同じくアメリカから来たGlshausser 翔くんと、逢阪くんの2人です。翔くんは、私が3月に対戦したアメリカのGM Gareev から、泉くんもソ連でコーチをしていたプレーヤーから指導を受けているそうで、アメリカのチェスのレベルの高さが伺えました。この3人のプレーの質や、試合に臨む姿勢は、とても小学生のものとは思えません。

小学3年生以下のAクラスでも、初めて会う子供たちと交流ができましたし、私の生徒たちも良い試合を見せてくれました。子供たちの大会はここ最近、非常に盛り上がりを見せていますので、彼らの中から将来、マスターになるプレーヤーが育ってくれればと期待しています。

最後に、今回引率として会場にいらっしゃった保護者やチェスクラブの皆さん、お疲れ様でした。子供たちには、こうしたジュニア、小学生だけの大会だけでなく、一般の大会にもチャレンジしてもらえたらと思います。また別の大会で、お会いできることを楽しみにしています!

2015/07/22

Talk Event and Summer Open Tournament Report


IVL のレポートで止まっていましたが、先週末の3連休は日曜、祝日も各所に顔を出してきました。日曜日は告知していた通り、池袋のコミュニティカレッジでのトークイベントです。月刊少年マガジンで連載中のチェスコミック、盤上のポラリスの世界を通し、チェスの魅力を紹介するという今回の企画は、6月に講談社へと持ち込まれたものでした。まさか、私がメインのスピーカーを引き受けることになるとは思っていませんでしたが、皆さんの前で1時間半、チェスについて語った時間は、私にとって非常に良い経験になったと思います。主催のコミュニティカレッジ担当者の新井さん、聞き役を務めてくださった小田さん、そして会場にお越しくださった皆さんに、あらためてお礼を申し上げます。


Levitsky - Marshall, Breslau 1912
Black to move

イベント内では、トークだけでは子供たちが退屈してしまうので、プロジェクターでこうした局面を見せ、手を考えてもらいました。子供たちは私の予想よりもずっと、積極的に手を挙げて答えてくれましたね。3年前にブダペストで参加した、Polgar Chess Festival で、Judit を相手に、子供たちが我先にと手を挙げていたことを思い出しました。


来場者には、こうしたオリジナルイラストが配布されました。原作と作画のお二人のサイン入りということで、ファンには嬉しいサービスですね。さらにサイン入りチェスセットや色紙は、これから抽選で当選者が決まる予定ですので、こちらも楽しみにお待ちいただければと思います。回収したアンケートも、次回のイベントをさらに魅力的にするために、活用させていただきます。


一夜明けた月曜日は、蒲田で開催されていたサマーオープンに顔を出しにいきました。4連勝の後でLin くんに敗れた弘平くんは、崩れずに最終戦をしっかり勝って、5勝1敗での優勝を決めました。IVL でのリベンジとなる、青嶋くんとの再戦がなかったのは少し寂しかったですが、何はともあれ弘平くん、久々の優勝おめでとう!


弘平くんと同様に、IVL に続いて試合に参加した青嶋くんは、初戦で逢阪くんに負けた後、3勝2ドローと星がそこまで伸びず、3位に終わっています。今年の全日本選手権で5位に入賞した、現在日本で最も強い(かもしれない)ジュニアプレーヤー、Lin くんとの最終戦は見ごたえがありました。こうした若いプレーヤーたちの台頭も、これから期待したいと思います。

私自身もサマーオープンに2bye で参加しようかとも考えていましたが、さすがにスケジュールがきつくて断念しました。試合をしなかった分、月曜日は皆さんのゲームにゆっくり目を通し、面白いポジションもいくつかチェックすることができましたし、生徒たちのプレーも見ることができました。今週金曜から開催される、全日本ジュニア選手権、シニア選手権、小学生選手権の3大会にも、私の生徒が参加しますので、3日間、私も蒲田の会場にいるつもりです。参加者と、会場に来る予定の皆さんは、今週もよろしくお願い致します。

2015/07/18

16th IVL Tournament Report


注目のプロ棋士対決、羽生さんと青嶋くんの試合は、羽生さんの勝ちでした。 Photo by Hasegawa

予告していた通り、16回目となるIVL を表参道で開催しました。前回に引き続きの参加となる羽生さん、さらにはプロ棋士の青嶋未来くん、スウェーデンのFM Anton Frisk さんたちが集まり、豪華なメンバーとなりました。10人での5R スイスの結果は以下の通りです。

1st Place Habu Yoshiharu (FM, JPN, 2415) 5/5
2nd-5th Place Yamada Kohei (CM, JPN, 2220) 3/5
Kockum Anton Frisk (FM, SWE, FIDE 2358) 3/5
Aoshima Mirai (JPN, 2407) 3/5
Kojima Shinya (IM, JPN, 2449) 3/5



驚くべきことに、前回に続いて羽生さんの全勝優勝です! 4人のマスターと、実力はマスタークラスの青嶋くんの5人全員を相手に、全て勝つというのは、並大抵ことではありません。もともと高い実力はありましたが、今の羽生さんにはそれ以上の勢いがあり、劣勢のポジションでもひっくり返して、逆転勝ちしてしまいます。3R での、私とのゲームを公開しておきます。

Kojima, S (IM, JPN, 2449) - Habu, Y (FM, JPN, 2415)
16th IVL (3)

1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nd2 Be7 4. c3 c5 5. dxc5 Bxc5 6. exd5 exd5



こうしたFrench Tarrasch のIQP ポジションを持つのは久しぶりです。白はd4 のアウトポストをしっかりと抑えたうえで、ゆっくりとd5 にプレッシャーをかけていけば、長期的なアドバンテージがあるはずです。

7. Ngf3 Nf6 8. Bb5+ Nc6 9. O-O O-O 10. Nb3 Bd6 11. Bg5 Bg4 12. Be2!


白は、ひとまずチェックでb5 に展開していたビショップを退き、ピンを外しておきます。IQP を持たせている白にとって、白マスビショップを始めとするピースの交換は望むところです。

12... Re8 13. Re1 Bc7 14. Nfd4



羽生さんにとって一つ予想外だったのは、この手が成立することでした。

14... Bxe2 15. Rxe2 Qd6


15... Bxh2+? 16. Kxh2 Ng4+ 17. Kg3 Qxg5 18. Rxe8+ Rxe8 19. Qxg4 は当然、黒ダメです。

16. g3 Ne4 17. Nb5 Qd7 18. Rxe4!



どうすれば白が良くなるか考えていた私は、面白いアイディアを思いつきました。こうして一時的にエクスチェンジを捨てることにより...

18... Rxe4 19. Nc5 Qc8


c7 のビショップが狙われている以上、クイーンが下がるのはこのマスしかありません。

20. Nxe4 dxe4 21. Qd5!+/-



ここで重要なことは、ビショップナイトを交換しておくことよりも、e4 の進みすぎたポーンをアタックし、1ポーンアップすることです。これにより駒得が確実となり、是非とも勝ちたいゲーム展開になってきました。

21... Bb6 22. Nd6!?


試合後の検討で、22. Re1! と指したらどうかと羽生さんに指摘されました。これならば、本譜のように黒がポーンを突き捨て、白キングを弱体化させるアイディアは使えません。確かに、ここは少し勇み足でした。

22... Qd7 23. Rd1 e3!?



実戦的には非常に良いアイディアです。黒はどうせ落ちてしまうポーンを自ら相手に差し出し、白のポーンをfファイルからeファイルにずらしておきます。シンプルなアイディアでありながら、試合中あまり警戒していませんでした。

24. Bxe3 Bxe3 25. fxe3 Rd8 26. e4 Qe7 27. Nf5


ここはピンにされたナイトをどう組みかえようかと、工夫を凝らします。

27... Qf6 28. Qb3 g6 29. Rxd8+ Qxd8 30. Ne3 Qd2 31. Ng4?



指した直後に、これはまずい手だと分かりましたが、羽生さんに指摘されるまではなにが正解なのか気づいていませんでした。白の正着は、31. Nf1! とナイトを下げる手で、攻めよりも守りを重視するべきでした。f1 のナイトはアタックされる心配がなく、e3 のマスも守り続けているために黒クイーンのチェックも防いでいます。そうして守りをきちんとした後で、b7 を取りにいくなり、クイーン交換を持ちかけるなり、仕掛け方を考えるべきでした。

31... Qe1+! 32. Kg2 Qxe4+


e4-e3 によって弱められたポーンを奪い返され、さらにキングが危ない状況へと追い込まれます。

33. Kh3 Kg7 34. Qxb7 h5 35. Nf2 Qf3 36. b4 g5 37. b5 Qxf2 38. Qxc6 Qf1+ 0-1



はっきりとした駒得から負けるというのは、やはり悔しいものです。この後のラウンドでも、羽生さんはAnton さんと馬場さんを破り、5連勝での優勝を決めたのでした。


前回は負け越しだった弘平くんも、羽生さんと青嶋くんに負けた以外、3試合を勝って2位グループに入っています。タイブレークのブリッツを制したのは良かったですが、3/4 でリードしながら迎えた最終戦、白で青嶋くんに負けてしまったのは勿体なかったですね。羽生さんに敗れた初戦も、内容は良かったと聞いています。


IVL 初参戦の青嶋くんも、見事に勝ち越しです。2R で早速注目の羽生さんとの試合があり、敗れはしたものの、かなり良い勝負だったと思います。明日以降、棋譜をチェックできることも楽しみにしています。チェス界注目のニューフェイスは、今後も活躍を続けることでしょう。


日本に来て3か月というAnton Frisk さんは、本来の実力を出し切ってはいないと思いますが、それでも地力があることが分かる結果と内容でした。今後、東京での公式戦にも是非参加してもらい、日本のプレーヤーとの交流を広げていってほしいと思います。


私も今回は、なんとか勝ち越しを果たしましたが、まだまだ満足のいく結果ではありません。来月のジャパンリーグに向け、もっと調子と実力を上げていこうと思います。

今回も急なスケジュールの中で、10名のプレーヤーに参加していただいたこと、運営責任者として深く感謝します。また次回のIVL 開催の際も、よろしくお願い致します。

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.