ジャパンリーグ2日目のレポートです。予想通り、前夜のペアリング発表に誤りがあり、私は桑田くんではなく、三ツ矢さんと対戦することに。オリンピアードのチームメイトでもある三ツ矢さんとは、この2年間、国内のFIDE 公式戦ではよく当たります。オープニングはSlav Exchange となり、丁寧に押していって勝ち。
このラウンド、トップボードの桑田-Zhao Xue はドローとなり、日本の公式戦で私が知る限り、初めてGM がポイントを落としました。桑田くんはこの調子を維持し、4R では、黒を持って馬場さんを下し、全日本選手権最終ラウンドの雪辱を晴らしました。一方で私は、トップボードに上がって、同じく3連勝の南條くんとの対戦です。
10. Re1 がAverukh の勧めで、私も何回か指したことがありましたが、たまたま先週、このc4-c5 Gambit を調べる機会があり、この大事な一戦で投入してみることにしました。
私が先日、黒を持って自身で指してみた感触では、クイーンを早めに退き、ナイトはg7 へ運ぶセットアップのほうがしっくりきました。17... Qc7 18. Ne4 b6 19. Ng5 Re7 20. Qc2 Ba6 21. Re1 Rd8 22. Be4 こうして黒のキングサイドにプレッシャーをかけるのが白のアイディアで、これは本譜でも出てきます。
通常であれば、このビショップはb7-b6, Bc8-Ba6 と使うものです。ポーンストラクチャーの内側に閉じこもっている状態では、やや働きに不満があるでしょう。19... a5 20. Ra3 Qc7 21. h4 b6 22. h5 といった展開を予想していました。
c1 のビショップが動きづらい以上、a1 のルークはこのように3段目からゲームに参加するものです。
ルークを3段目に展開してから、黒のキングサイドにアタックを仕掛ける準備をさらに整えますが、これに対して南條くんは、h7-h6 とナイトを追い払ってきました。白からのh4-h5 や、g5 に居座るナイトが厄介ですが、g6, h6 が将来的に弱くなる点が少し気になります。
コンピュータは、26. Nxd4 cxd4 27. Qxd4 とビショップを取って、ポーンも取り返してしまうべきだと主張しますが、私はd4 のビショップが働いているかどうかが疑問で、あえて早めにナイトとの交換を決めなくても良いのではないかと考えました。あくまでピースを残し、キングサイドでのアタックを画策します。
Nf3-Nh2-Ng4 はあまり効果的ではないと考えを改め、g,h ポーンを押し進める作戦に切り替えます。
この手は、e4 のマスを空けておくことで、Qe2-Qe4 のチャンスを作ることや、f4-f5 を仕掛けた際に、e4 のビショップがターゲットにならないようにすることを目的としています。
時間が増える40手間際、私から仕掛けます。この先はかなり難解ですが、最終的に間違えたのは南條くんでした。
私はRa3-Rf3 で白がはっきり良くなると読み、f5-f6 と押し込むのではなく、fファイルを開くことにしました。しかし、これには読み抜けがあり、先にビショップを取っておく手が正確でした。ただしその変化も複雑です。39. Nxd4! Nf4+ 40. Bxf4 Rxd4 41. Rgd3!!
この手以外は、白が良くならないというコンピュータの指摘ですが、見えません! 41... exf5 42. Rxd4 cxd4 43. gxf5 gxf4 44. f6 Qd5 45. Qxd5 cxd5 46. Bg6+- こうして2コネクテッドパスポーンができれば、クイーンを捌いてしまっても白勝ちでしょう。私はNd5-Nf4+ のアイディアを軽視していました。
時間の増える40手目、南條くんに致命的なミスが出ました。ここは先述のアイディアである、ナイトのチェックを入れておくべきです。40... Nf4+! 41. Kh2 Qxd4! こうしてクイーンで取る手が指せれば、黒キングへのプレッシャーはほとんどなくなり、黒は本譜に比べてぐっと楽になります。
これが39手目でfファイルを開いた狙いで、ルークをfファイルから突入するアイディアを使えば、h7 やh6 をを守っていけない黒にとって苦しい展開となります。
もちろん、ポーンを回収しておきます。Nd5-Nf4+ のディスカバードアタックに対しては、ルークで取る手があるので問題ありません。
ここは少し時間を使い、慎重に手を進めることにします。今度こそ、Nd5-Nf4+ を警戒しなければいけない白は、シンプルにキングをチェックにならない位置に逃がしておきます。
これは自信を持って指すことができました。fファイルにヘビーピースを重ねた白は、f8 とf7 両方にルークの侵入を見せ、勝負を決定づけます。
これが見えたうえでの、47. Qf1! です。それでも駒を置く瞬間まで、しっかりと読み抜けが無いことを確認しました。
52... Qxf5 53. Rxg8+ Kxg8 54. gxf5+- このポーンエンディングは問題なく白勝ちです。
最後も少し面白い形です。Qe7-Qh4 がチェックになってしまうと大逆転負けなので、キングを逃がすマスはf1 以外にありません。こうして互いにIM になってから初の公式戦は私に軍配が上がり、単独4連勝を決めたのでした。
明日は桑田くんとトップボードでの対戦になります。さらに2B では、プロ棋士の青嶋くんとGM Zhao Xue という好カードも組まれています。後半戦残り3試合も、皆さん悔いの無いようにしっかり指してきましょう!
このラウンド、トップボードの桑田-Zhao Xue はドローとなり、日本の公式戦で私が知る限り、初めてGM がポイントを落としました。桑田くんはこの調子を維持し、4R では、黒を持って馬場さんを下し、全日本選手権最終ラウンドの雪辱を晴らしました。一方で私は、トップボードに上がって、同じく3連勝の南條くんとの対戦です。
Kojima, S (IM, JPN, 2389) - Nanjo, R (IM, JPN, 2330)
Japan League 2015 (4)
1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nbd7 7. Nc3 e5 8. e4 c6 9. h3 Qb6 10. c5!?
Japan League 2015 (4)
10. Re1 がAverukh の勧めで、私も何回か指したことがありましたが、たまたま先週、このc4-c5 Gambit を調べる機会があり、この大事な一戦で投入してみることにしました。
10... dxc5 11. dxe5 Ne8 12. e6 fxe6 13. Ng5 Ne5 14. f4 Nf7 15. Nxf7 Bd4+ 16. Kh2 Rxf7 17. e5 Nc7
私が先日、黒を持って自身で指してみた感触では、クイーンを早めに退き、ナイトはg7 へ運ぶセットアップのほうがしっくりきました。17... Qc7 18. Ne4 b6 19. Ng5 Re7 20. Qc2 Ba6 21. Re1 Rd8 22. Be4 こうして黒のキングサイドにプレッシャーをかけるのが白のアイディアで、これは本譜でも出てきます。
18. Ne4 Nd5 19. a4 Bd7!?
通常であれば、このビショップはb7-b6, Bc8-Ba6 と使うものです。ポーンストラクチャーの内側に閉じこもっている状態では、やや働きに不満があるでしょう。19... a5 20. Ra3 Qc7 21. h4 b6 22. h5 といった展開を予想していました。
20. a5 Qc7 21. Ra3
c1 のビショップが動きづらい以上、a1 のルークはこのように3段目からゲームに参加するものです。
21... Raf8 22. h4 Kh8 23. Ng5 Rg7 24. Be4 h6
ルークを3段目に展開してから、黒のキングサイドにアタックを仕掛ける準備をさらに整えますが、これに対して南條くんは、h7-h6 とナイトを追い払ってきました。白からのh4-h5 や、g5 に居座るナイトが厄介ですが、g6, h6 が将来的に弱くなる点が少し気になります。
25. Nf3 Qd8 26. Kg2!?
コンピュータは、26. Nxd4 cxd4 27. Qxd4 とビショップを取って、ポーンも取り返してしまうべきだと主張しますが、私はd4 のビショップが働いているかどうかが疑問で、あえて早めにナイトとの交換を決めなくても良いのではないかと考えました。あくまでピースを残し、キングサイドでのアタックを画策します。
26... Be8 27. Nh2 Ne7 28. Nf3 Nf5 29. Rh1
Nf3-Nh2-Ng4 はあまり効果的ではないと考えを改め、g,h ポーンを押し進める作戦に切り替えます。
29... Rd7 30. Qe2 Kg7 31. Rh3 Bf7 32. g4 Ne7 33. Bb1!?
この手は、e4 のマスを空けておくことで、Qe2-Qe4 のチャンスを作ることや、f4-f5 を仕掛けた際に、e4 のビショップがターゲットにならないようにすることを目的としています。
33... Be8 34. Rg3 b5 35. axb6 axb6 36. h5 Nd5 37. f5!
時間が増える40手間際、私から仕掛けます。この先はかなり難解ですが、最終的に間違えたのは南條くんでした。
37... g5 38. Qe4 Kh8 39. fxe6?
私はRa3-Rf3 で白がはっきり良くなると読み、f5-f6 と押し込むのではなく、fファイルを開くことにしました。しかし、これには読み抜けがあり、先にビショップを取っておく手が正確でした。ただしその変化も複雑です。39. Nxd4! Nf4+ 40. Bxf4 Rxd4 41. Rgd3!!
この手以外は、白が良くならないというコンピュータの指摘ですが、見えません! 41... exf5 42. Rxd4 cxd4 43. gxf5 gxf4 44. f6 Qd5 45. Qxd5 cxd5 46. Bg6+- こうして2コネクテッドパスポーンができれば、クイーンを捌いてしまっても白勝ちでしょう。私はNd5-Nf4+ のアイディアを軽視していました。
39... Rg7 40. Nxd4 cxd4?
時間の増える40手目、南條くんに致命的なミスが出ました。ここは先述のアイディアである、ナイトのチェックを入れておくべきです。40... Nf4+! 41. Kh2 Qxd4! こうしてクイーンで取る手が指せれば、黒キングへのプレッシャーはほとんどなくなり、黒は本譜に比べてぐっと楽になります。
41. Raf3!+-
これが39手目でfファイルを開いた狙いで、ルークをfファイルから突入するアイディアを使えば、h7 やh6 をを守っていけない黒にとって苦しい展開となります。
41... Rxf3 42. Rxf3 Kg8 43. Qxd4
もちろん、ポーンを回収しておきます。Nd5-Nf4+ のディスカバードアタックに対しては、ルークで取る手があるので問題ありません。
43... c5 44. Qc4 Bc6 45. Be4 Qa8 46. Kg1
ここは少し時間を使い、慎重に手を進めることにします。今度こそ、Nd5-Nf4+ を警戒しなければいけない白は、シンプルにキングをチェックにならない位置に逃がしておきます。
46... Kh8 47. Qf1!
これは自信を持って指すことができました。fファイルにヘビーピースを重ねた白は、f8 とf7 両方にルークの侵入を見せ、勝負を決定づけます。
47... Nf4 48. Bxc6 Qxc6 49. Bxf4 gxf4 50. Rxf4 Qxe6 51. Rf8+ Rg8 52. Qf5!
これが見えたうえでの、47. Qf1! です。それでも駒を置く瞬間まで、しっかりと読み抜けが無いことを確認しました。
52... Qe7
52... Qxf5 53. Rxg8+ Kxg8 54. gxf5+- このポーンエンディングは問題なく白勝ちです。
53. Rf7 Rxg4+ 54. Kf1 1-0
最後も少し面白い形です。Qe7-Qh4 がチェックになってしまうと大逆転負けなので、キングを逃がすマスはf1 以外にありません。こうして互いにIM になってから初の公式戦は私に軍配が上がり、単独4連勝を決めたのでした。
明日は桑田くんとトップボードでの対戦になります。さらに2B では、プロ棋士の青嶋くんとGM Zhao Xue という好カードも組まれています。後半戦残り3試合も、皆さん悔いの無いようにしっかり指してきましょう!
2 件のコメント:
お疲れさまです▼o・~・o▼ 10手目の解説に出てきてるお名前はこちらの方で良いのでしょうか・・・?
https://en.wikipedia.org/wiki/Boris_Avrukh
そうです。イスラエルのGM ですね。
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