先週末は日本の女子チャンピオンを決める全日本女子選手権が開催されました。この夏のシーズン、第1週のサマーオープン、第2週のジュニア、小学生、シニア選手権に続き、3週連続での大会です。今年の女子選手権は、来年、アゼルバイジャンの首都、バクーで開催されるチェスオリンピアードの、女子代表選手選考会も兼ねている重要な試合となります。14名の女子選手が集まり、5つの代表枠を競い合いました。
初日は前年度女子チャンピオンの内田さんが、ブラジルの星野華怜に負ける波乱があり、3連勝の華怜を2.5P の石塚さんと橋本さんが追う展開となりました。5R 終了時点では、石塚さんと華怜が4P で並び、チャンピオンをかけた最終戦を迎えます。
QGD での典型的な、c5, d5 のHanging Pawns から、石塚さんはc5-c4 と仕掛けました。d4 をアウトポストにし、d5 のポーンを弱めるリスクのあるプレーではありますが、こうしてbファイルを突破し、b2 の白ポーンとd5 の黒ポーンを交換してしまえば、黒がcファイルにパスポーンを持つ有利なエンドゲームとなります。
33... Rxc2 34. Rxc2 Rd2
もちろん黒はルークを交換し、パスポーンをブロックする邪魔者を消しにいきます。クイーンの位置も最高で、パスポーンを守りながら、f2 をアタックしています。
35. Rxd2 cxd2 36. f3
36. Qd1 Qc3 37. Kf1 Qc4+! 38. Kg1 Qc1-+ こうした変化もチェックしておくべきでしょう。黒はクイーンをチェックを1回挟むことで、白キングがパスポーンに寄ることを許しません。
36... Qc3 0-1
これで白は、次のQc3-Qc1 からのプロモーションを防ぐことができません。石塚さんはこの貴重な白星により、最終戦でドローになった華怜を半歩リードして、単独優勝を決めました。この10年間、オリンピアードに2回、その他の海外大会も多数一緒に参加してきた石塚さんでしたが、女子選手権の優勝は今回が初めてです。石塚さん、おめでとうございます!
1st Place Ishizuka Mirai (JPN, 1674)
2nd Place Hoshino Karen (WCM, JPN, 1626)
3rd Place Uchida Narumi (WFM, JPN, 1970)
2nd Place Hoshino Karen (WCM, JPN, 1626)
3rd Place Uchida Narumi (WFM, JPN, 1970)
最終的に上位3名に入ったのは、オリンピアード代表経験のあるメンバーでした。ジュニア選手権に引き続いて奮闘した華怜は、優勝には一歩届かなかったものの、負けなしで終始安定したプレーを見せてくれました。また来年の夏、ジュニア選手権と併せ、タイトルを狙って来日してくれることを楽しみにしています。レイティングトップの内田さんは、今年こそ女王の座を逃してしまいましたが、並の男子プレーヤーでは歯が立たない実力者であることは間違いありません。今後も腕を磨き、日本の女子プレーヤーを牽引してもらいたいと思います。
また、入賞の3人を含め、4位と5位の福谷さん、橋本さんまでが、来年のオリンピアード代表権を獲得しています。5人とも、おめでとうございます! 最終的にオリンピアードに参加するかどうかの決定時期はまだ先なので、6位以下にも代表権が繰り下がる可能性があります。来年にかけて、男子、女子のどちらも代表メンバーが気になるところですね。ちなみに、今年の全日本選手権で2位になった私は、当然ながら参加を希望します。
それでは、今年の全日本女子選手権に参加されたプレーヤーの皆さん、運営と見学の皆さん、2日間お疲れ様でした。私はこの3週間、大会のレポーターと化していましたが、来週のジャパンリーグからは、プレーメインに戻ります。ジャパンリーグについての記事は、早ければ明後日にでも公開しようと思いますので、そちらもよろしくお願い致します。
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