2011/07/30

名古屋オープン Day1

今日から夏の伝統賞金トーナメント、名古屋オープンです。初日は木下さんと野口さんに連勝と良いスタートを切ることができました。連勝は私のほかに、馬場さん、高田君の3名です。勝負は明日の3戦にゆだねられます。

Kinoshita,A (1759) - Kojima,S (2340)
Nagoya Open(1)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Qc2 dxc4 5. Qxc4 Bg4 6. Nc3 Nbd7 7. e4 Bxf3 8. gxf3 e5 9. dxe5 Nxe5 10. Qe2 Bc5 11. Be3 Qa5 12. Bxc5 Qxc5 13. O-O-O O-O 14. Bh3 Nh5 15. Qe3 Qe7 16. f4 Nc4 17. Qd4 b5 18. Rhg1 Rfd8 19. Nd5 cxd5 20. exd5 Qf6 0-1

Kojima,S (2340) - Noguchi,K (2155)
Nagoya Open(2)

1. Nf3 c5 2. c4 g6 3. g3 Bg7 4. Bg2 Nc6 5. O-O d6 6. Nc3 e5 7. a3 Nge7 8. b4 O-O 9. Rb1 Rb8 10. d3 h6 11. Nd2 e4 12. Nd5 exd3 13. exd3 Nxd5 14. cxd5 Ne7 15. Nc4 cxb4 16. Rxb4 b5 17. a4 Ba6 18. axb5 Bxb5 19. Qb3 a6 20. Bb2 Nf5 21. Bxg7 Kxg7 22. Be4 Nd4 23. Qb2 Qf6 24. Ne3 Bxd3 25. Bxd3 Nf3+ 26. Kg2 Qxb2 27. Rxb2 Rxb2 28. Kxf3 Ra8 29. Ra1 a5 30. Nc4 Rb3 31. Ke4 a4 32. Nxd6 a3 33. Nc4 a2 34. d6 Kf6 35. Kd4 Ke6 36. Be4 Ra4 37. Bd5+ Kf6 38. Be4 Rbb4 39. Bd3 Rb3 40. f4 Rbb4 41. g4 Ke6 42. h4 Kd7 43. Kc5 Rb8 44. Ne5+ Ke8 45. Bb5+ Rxb5+ 46. Kxb5 Rxf4 47. Rxa2 Kf8 48. Ra8+ 1-0


2011/07/29

Golden Generation - 1988 -

日本のチェス界ではレイティング2000を超えることが、強豪への仲間入りの証しだと私は考えています。アクティブなプレーヤーで2000を超えている人は意外と少なく、最新レイティングS77でのランキング(4月後半から6月後半に公式戦をこなしたJCA会員によるもの)では19人です。そして大学や高校の先輩後輩だったり、近い年代でなければ、プレーヤーの生まれ年というものはあまりチェックしないかもしれませんが、このうち4人は1988年生まれ、すなわち私と同じ代です。小島(2340)、南條(2331)、山田(2190)、桑田(2127)というメンバーを抱える1988年は、現在の日本チェス界では異質な年であると言えるかもしれません。

ところで、私がチェスを本格的に強くなろうと思ったきっかけには、様々なものがあります。麻布学園チェスクラブに入部した際に、ゴールデンルーキーとして注目されていた南條君が同期にいたこと、そしてチェスクラブ内では短い付き合いでしたが、入部当時の最高学年である4代上の先輩方が、部員10数名、2000台3人(馬場、中郡、内田)を抱える黄金世代であったことは、私たちに大きな影響を及ぼしたと言えます。南條君らと共にこの代を超えることは、早い段階で私のささやかな目標となったのです。

今では小島、南條、山田、桑田の88年ですが、麻布学園チェスクラブに在籍していた当時は、南條、小島、汐口、桑田という4名が実力を競う代でした。(山田君は北海道出身で、実力を伸ばしてきたのは大学進学のための上京後です。)私たち4名は中学3年生の頃にはレイティング1800を突破し、高校2年の引退時には2100台が2名、1900台が1名、1800台が1名という、4つ上に劣らない代に成長しました。部内のトップを決めるマスター戦では、南條君、私、汐口君による三つ巴が2年半続き、春夏の合宿でも激しい上位争いを繰り返しました。この頃の詳細や試合は、また別の機会に公開しようと思います。

突然このような記事を書いたのは、先日、汐口君と久々に会って話をした際に、彼が秋頃のチェス界復帰を仄めかしたためです。もちろんまだ確定ではないでしょうが、彼が本格的に復帰するとなれば、私としては嬉しい限りです。麻布学園チェスクラブ88年の四強が公式戦の場に顔を揃えたのは、2005年のチーム選手権が最後です。

そして最後に、ジュニア選手権を見ていても思いましたが、チェスは若いうちからライバルと切磋琢磨することが、実力を伸ばす効率的な方法であることは間違いありません。近年は大学のチェスサークルの活動も活発になっていますし、小学生にチェスを教える機会も少しずつですが増えてきました。これから私たちを脅かす若い世代のプレーヤーが揃って出てくることを期待しています。

2011/07/27

A passed pawn and a rook on an open file

私たちはエンドゲームに限らず、ミドルゲームでもパスポーンが大きな武器になることを知っています。実際にプロモーションできなくとも、プロモーションを防ぐためにパスポーンをブロックしなければならないこと、が相手にとっての負担になる可能性があるためです。

またルークはオープンファイルで働くことも、よく知られていることです。7段目や8段目はルークにとって絶好の位置で、相手のキングの安全を脅かしながら(もしくはキングの動きを制限しながら)、ポーンを狙うことができます。そして7段目、8段目には侵入するためには、オープンファイルを活用するのが有効な手段なのです。では、このパスポーンと、オープンファイルのルークが両方共働いた場合、どのような効果をもたらすでしょうか。

前田-三井
Junior Championship(3)

ジュニア選手権からの一戦です。駒数だけを見ると、2ポーンエクスチェンジなのでまだ怪しいですが、黒にはdファイルにパスポーンがあり、eファイルのコントロール、白のバックランクの弱さも合わせて黒が優勢だと判断できます。

1...d4!?

パスポーンを進めるのは間違っていないプランですが、慌てる必要はありません。
1... Re2 2. Qc1 (2. Qb4?! a5! 3. Qc3 d4! 4. Qc1 黒は白のバックランクの弱さを利用して、パスポーンを進めることができます。) 2... Qe5-/+ 黒は理想的な7段目にルークを侵入させ、b2,a2のポーンをじっくりと狙ったうえで、パスポーンを進めれば勝勢です。

2. h3 Re2?

直前の白の狙いを見落としたことによる悪手です。1...Re4 とパスポーンを守っておけば、まだ黒にチャンスがあります。

3. Qxd4! Re1+ 4. Kh2!

ルークを交換せずにキングを逃がせば黒のメイトはなくなり、逆にg7へのメイトスレットが残ります。

4...Re7 1/2-1/2

白は時間切迫によりドローオファーを受けましたが、実際に続けてみると 5.Re1! Qd7 6.Qxd7 Rxd7 7.Rg4! (狙いはルークをgファイルから入れ替えることと、キングをg3に逃がせるようにすること。) ぐらいで白に勝つチャンスがあるでしょう。

センターのパスポーンは相手のピースを縛る働きをすれば心強いですが、一歩間違えればそれ自身がターゲットとなってしまいます。パスポーンの働きを生かすには、他のピース(今回は特にルークに着目)の協力が必要です。

もう一つ、やはりジュニア選手権の三井君の試合から、面白かった局面をご紹介します。

中川-三井
Junior Championship(5)

黒は1ポーンアップで、ルークも理想的な位置にいます。

1... e4!

パスポーンを作ると同時にfファイルをオープンファイルにし、ルークを活用します。

2. fxe4 fxe4 3. Qc4 Bxa6

私が試合後に指摘したのは 3... Qg3! 4. Rg1 Bxa6 5. Qxa6 e3-+
とパスポーンを進めるプランです。白はfファイルからの侵入とパスポーンの前進に対して、成すすべがありません。もちろん、本譜のようにビショップを交換してからでもOKです。

4. Qxa6 g5?!

g4までポーンを進めてキングを脅かそうとい狙いですが、明らかに強引です。3R同様に、自分のパスポーンがターゲットになる可能性を忘れてしまっています。

5. Rae2 Re8?

5... Qe5! としてeポーンはあきらめてdポーンを取りに行けば、まだ黒にチャンスがあります。望みのないパスポーンに固執して全体を見失うことは、アドバンテージを放棄しチャンスを台無しにしてしまいます。

6. Qc4! g4 7. Rxe4 Rxe4 8. Rxe4 Qf1+ 9. Qxf1 Rxf1+ 10. Kh2 gxh3 11. Kxh3?!

中川君はしばらく考えてキングでポーンを取り返しましたが、h3のポーンは何の働きもしていません。ここは11.Re7! と7段目に入ることでcファイルに決定的なパスポーンを作れば、確実な勝利でした。

11... Rd1?
7段目にルークを侵入されること、そして進んだパスポーンができることの恐ろしさを軽視しています。ここは11... Kg7 から7段目を守る一手でした。

12. Re7 Rxd5 13. Rxc7 Rd3+ 14. g3 Rc3 15. b5+- 以下数手で白勝ち。

三井君にとっては二試合とも悔しいミスだったと思いますが、その分勉強になったでしょう。皆さんも自分の試合を振り返り、同じようなミスをしたことがないか、チェックしてみてください。

2011/07/26

Junior Championship report

私がジュニアだった時代は、日本のジュニア選手権の参加者は10人台で、しかも麻布生ばかりでした。私が参加した6回のジュニア選手権では、同時優勝も含め、高橋礼二、中郡慧樹、南條遼介、小島慎也、上杉晋作といった面子が並んでいます。

それが近年は、30人近くの参加者が関西や海外から集まり、ただ驚くばかりです。昔に比べ、優勝者のレーティングはやや下がっていますが、多くのジュニアが集まり切磋琢磨できる現在の環境のほうが、プレーヤーにとってベターであることは言うまでもないでしょう。

今年の優勝者、酒井、唐、建内というメンバーはリスト1~3で、順当と言えば順当な結果でした。昨年に比べれば、驚くようなアップセットは少なかったですが、それでも会場内を見て回っていると興味深いポジションに出くわすものです。
星野(華)-石川

この局面で黒の石川君はドローオファーをしていました。実際ゲームは以下のように続きます。

1.Kb5 Kh6 2.Kc4 Kg5 1/2-1/2(?)

星野さんはキングサイドにキングを寄せるのを危険だと判断し、ここで安全にドローにしました。しかし実際には白が勝つことができます。

1. Kd3 (1. Kd5 Kh6 2. Ke5?! b5 3. axb5 a4 4. b6 a3 5. b7 a2 6. b8=Q a1=Q+ このようにしてもおそらく白が勝つでしょうが、白は難しいクイーンエンディングにする理由がありません。) 1... Kh6 2. Ke3 Kg5 3. Ke4 Kh6 4. Kf4!
これで白はgポーンを進めることができます。

4...Kg7 (4... b5 5. axb5 a4 6. b6 a3 7. b7 a2 8. b8=Q a1=Q こちらのクイーンエンディングはチェックがかかっていないために、白は自由に指すことができ、上の変化に比べてずっと楽です。) 5. g5 Kh7 6. Kf5 Kg7 7. g6 Kg8 (7... Kh6 8. Kf6 c4 9. g7 c3 10. g8=Q c2 11. Qg6#) 8. Kf6!
白は先にプロモーションができるため、キングがスクウェアを外れても問題ありません。もちろん先に8.h6 でもOKです。

8...c4 9. h6 c3 10. h7+ Kh8 11. Kf7 c2 12. g7+ Kxh7 13. g8=Q+ Kh6 14. Qg6#

もう一つ、面白いポーンエンディングがありました。こちらは昨日、吉祥寺チェスクラブでも検討のネタになりました。
志茂-木下

1... e5!

白キングをクイーンサイドに寄せないようにする好手です。

2. f3 exf3??

私はこの手を見て、黒が勝ちのチャンスを逃し、白がドローに持ち込めると判断しました。しかし昨日、吉祥寺チェスクラブで、将棋の森内プロに白勝ちなのではないかと指摘され、事実その通りでした。(森内さん、ありがとうございます。そして暁星の皆、ごめん!)

2... b5! 3. fxe4 a4 4. Kf3 b4 5. Ke2 b3 6. axb3 a3-+

3. Kxf3 b5 4. Ke4 Ke6 5. h4 Kd6 6. g4 a4 7. h5! gxh5 8. gxh5 Ke6 9. Kf3??

これはひどいブランダーで、再び黒勝ちになってしまいます。正しい白勝ちの変化は、以下の通りです。

9. h6!
私はこの手を見落としていました。 9...Kf6 10. h7 Kg7 11. Kxe5 Kxh7 12. Kd5 Kg6 (12...b4 13. Kc4 b3 14. axb3 axb3 15. Kxb3 Kg6 16. Kc4 Kf5 17. Kd5+-)13. Kc5 Kf5 14. Kxb5 Ke4 15. Kxa4 Kxe3 16. Kb5+-

9. Kd3? 私がメインで考えていたのは、こちらの手です。これでは白は勝ち切れず、ドローになります。 9...Kf5 10. Kc3 Kg5 11. Kb4 Kxh5 12. Kxb5 Kg4 13. Kxa4 Kf3 14. Kb5 Kxe3 15. a4 Kf2 16. a5 e4 17. a6 e3 18. a7 e2 19. a8=Q e1=Q=

9... Kf5!?

9... b4! 10. Ke2 b3 11. axb3 a3-+ で黒はプロモーションできます。

10. e4+ Kg5 11. Ke3 Kxh5 12. Kd3 Kg4 13. Kc3 Kf4 14. Kb4 Kxe4 15. Kxb5 Kd4

15... Kd3 ならば、白はキングを寄せることができず、簡単に黒勝ちです。

16. Kxa4 e4 17. Kb3 e3?
黒は最後の17... Kd3! のチャンスを逃しました。

18. Kc2 Ke4 19. Kd1 1/2-1/2

エンドゲームは大変難しく、何度も間違って覚えていくものです。ジュニアの皆さんも頑張ってください。最後に私がジュニア選手権を二日間見ていて、協会に物申したいことをまとめておきます。もちろんこれらは、私たちプレーヤーも協力すべきことです。

・ジュニアプレーヤーに、競技のチェスについてもう少し教えること
ジュニアに多いことですが、大変早指しのプレーヤーが一部にいます。中には時間を増やして負けてしまうプレーヤーもおり、これは大変もったいないことです。チェスの指し方は指導者が教えるべきですが、日本の現状では指導者のいないジュニアが多いため、協会からもう少し指し方のアドバイスをしても良いでしょう。早指しで負けてしまうプレーヤーは、多くの試合で早く終わるため、参加者をきちんと見ていれば分かるはずです。

もう一つは検討戦についてです。ジュニアたちは試合が終わると検討をせずに休憩に入ることが多いようです。競技のチェスでは試合後に検討をすることがマナーなので、それを教えてあげる必要があります。今回は私が二日間会場にいたため、子供たちを集めて検討戦を行いましたが、当然私一人で全ての子供の面倒を見られるはずもないですし、プレーヤー同士で試合中にどんなことを考えていたか、話し合うことに意味があるので、私が全てを教えてしまってはあまり意味がありません。快速選手権の反省でも書きましたが、チェス協会の仕事は、会場を用意してプレーヤーを集めるだけで終わって良いはずありません。競技チェスのマナーに詳しくないジュニアプレーヤーには、試合中、試合後にどうしたら良いかというアドバイスを、協会のスタッフからしてもらいたいと思います。

・回収した棋譜を何かしらの形で有効活用すること
ジュニア選手権では、棋譜をプレーヤー両者に提出させることを義務付けています。これを何か活用するのか、スタッフに聞いたところ、「棋譜はJCAの財産だから回収しており、pgn化したりはしない」という謎の回答が返ってきました。公開する気がないならば棋譜を回収する意味はありませんし、子供たちの勉強にも繋がりません。今回、私がたまたま見かけた2つの局面をブログで扱いましたが、他にも面白い試合はたくさんあったはずです。それを協会の資料に埋もれさせてしまうのは、あまりに勿体ありません。協会にはどういった形でも良いので、回収した棋譜を有効活用してほしいと思います。

・ジュニアプレーヤーを他の大会へ参加するよう促す、もしくはジュニアプレーヤーが参加しやすいクラスを作ること
これは以前から言われていることですが、ジュニア選手権に参加した大勢のジュニアプレーヤーたちは、他の大会にほとんど参加していません。ジュニアのレベルアップ、そして日本のチェス活性化のためには、彼らが他の大会に参加してくることが必須だと私は考えます。ジュニアが他の大会に参加しにくい理由があるのであれば、協会はそれを探し、解決する必要があるはずです。最初に書いたとおり、ジュニアの参加者が増えていることは喜ばしいことですが、それで満足してしまってはいけません。

2011/07/23

New Junior Champions!

昨日、今日の二日間、東京の蒲田でジュニア選手権が開催されました。参加者は33名、最終結果は以下の通りです。

1st 酒井響 5/6 (1/2 阿部、唐堂)
2nd 唐堂 5/6 (1/2 角谷、酒井)
3rd 建内瑛貴 5/6 (0 角谷)

タイブレーク順に並べましたが、ジュニア選手権は同時優勝扱いです。酒井君、建内君コンビは昨年に続いての優勝、唐堂君は初の栄冠です。3人ともおめでとうございます!

今日は結果速報だけとし、明日以降、簡単なレポートを出そうと思います。

2011/07/21

Figjam Chess

世間(?)はBiel とWorld Team Championship の追っかけに忙しいと思いますが、今夜はそれらと全く関係ない話題です。フィラデルフィアで池田君から口頭で教えてもらっていたのですが、彼らのブログが今月からスタートしました。リンクは以下に貼っておきます。

Figjam Chess

このブログはオーストラリアのチェスプレーヤー数名が更新できるようで、投稿者には池田君、Moulthun君、Illingworth君らの名前が確認できます。是非彼らの活躍を逸早く伝えてもらいたいと思います。

そして最新記事をチェックすると、Dutch Open でMoulthun君がTimman,J とドロー(!)、池田君がVovk,A に勝った(!!)ようです。R3の2人のペアリングは次の通りです。

Georgiev,V (2559,*マケドニア代表) - Ikeda,J (2349)
Ly,M (2369) - Vovk,Y (2564,*2009 Cappelle la Grande 優勝者)

Dutch Open の詳細やライブは公式サイトからチェックできますので、こちらもお見逃しないように。

http://onk.schaakbond.nl/

2011/07/20

マレーシア最新情報

来月は13日~16日がJapan League、18日~25日がMalaysian Open という、半分がFIDE公式戦の忙しい月となります。さらには佐藤君、古谷君が参加するUniversiad も日程が被っており、結果を追う側も大変になりそうです。

先日、日本からマレーシアのトーナメントに参加するメンバーのエントリーを済ませたので、その5名をここで発表します。

小島慎也 2300 (FM,慶應チェスクラブOB)
中村尚広 2033 (慶應義塾大学4年、慶應チェスクラブ)
篠田太郎 1897 (早稲田大学2年、早稲田大学チェスクラブ)
Ravry Kazoune 1784 (立教大学2年、慶應チェスクラブ)
渡辺敬介 None (麻布学園高校2年、麻布学園チェスサークル)

初めて海外トーナメントに参加するのは、立教の針谷和音君と麻布の渡辺敬介君です。針谷君は、フランス籍ですでにFIDEのIDを持っていたため、フランス名でのエントリーとなりました。トーナメント開始後にペアリングを見て、混乱しないようお願いします。渡辺君は麻布学園チェスサークルの部長として、ここ1年で実力を伸ばしてきました。引退直前の海外初挑戦でどのような結果を残せるか、楽しみにしています。

また以前も掲載しましたが、トーナメントのスケジュールは以下の通りです。

8/17(水) Arrival
8/18(木) Registration 0730 - 0830 Round 1 & Round 2 0900 - 1500
8/19(金) Round 3 1500
8/20(土) Round 4 & Round 5 0900 - 1500
8/21(日) Free Day /2nd Swensen’s Age-Group Rapid
8/22(月) Round 6 1500
8/23(火) Round 7 & Round 8 0900 - 1500
8/24(水) Free Day / ASTRO Simul 1400
8/25(木) Round 9 & Open Blitz & Prize Giving 0900 & 1400 & 1800

マレーシアへの航空券確保とエントリーは、まだ間に合います。参加を迷っている方は、私までご連絡ください。

2011/07/19

What's the Kasparian Position(2)

前回の続きで、Kasparian Position の実戦例をご紹介します。

GM Glek,I (2566,GER)-Leitao,R(2545,BRA)
Wijk aan Zee(11)


after 64.Rb4

ブラジルの若きGMは、ここでベテラン相手に勝ちを逃してしまいます。

64...Rc1+?

64...h3! 65.Rg4+ Rg6 66. Rh4 (66. Ra4 g2-+) 66... h2+ 67. Kg2 Rh6 68. Rg4+ Kf6 69. Rf4+ (69. Kh1 Rg6-+) 69... Kg5 70. Rf1 Kg4
71. Ra1 h1=Q+ 72. Rxh1 Rxh1 73. Kxh1 Kf3-+ (I.Glek)

65. Kg2 Rc2+ 66. Kg1 Rh2 67. Rb6=
これで黒に勝ちのないKasparian Position になりました!あとは黒キングの位置を確認しながら、6段目でディフェンスします。

67...Kf7

67...Kh7 68.Ra6 Rb2 69.Ra4=

68. Rh6 Ke7 69. Rg6 Kf8 70. Rf6+! Ke8 71. Re6+! Kd7 72.Rh6! h3

73.Ke7 Rg6 74.Kf7 Rh6 75.Kg7 Ra6= ならば、前回やった通りのドローポジションです。

73. Rg6 1/2-1/2

今週末の24日(日)には、吉祥寺チェスクラブでエンドゲームをテーマとしたレクチャーを行います。Kasparian Position のような難しい内容ではなく、ちょっとしたアイディアをいくつかご紹介しようと思うので、是非、吉祥寺まで足をお運びください。

2011/07/16

What's the Kasparian Position? (1)

アメリカから帰国後、Dvoretsky's Endgame Manual でルークエンディングの勉強をしています。昔は冒頭のポーンエンディングからちんぷんかんぷんで、読み進めるのが大変でしたが、最近は多少理解ができるようになってきました。アイディアが分かってるくると、エンドゲームの勉強は楽しいものだということを実感しています。

さて、昨夜のことですが、the Kasparian Position というものを勉強しました。これは今まで勉強したことがなく、全く知らなかった内容なので、今日はこれをご紹介しようと思います。以下のポジションで白番だとすると、白はどのように指せばよいでしょうか。
White to Move

Dvoretsky's Endgame Manual ではこれをソ連のマスターの名を取って、the Kasparian position と呼んでいます。(他の本では調べても出てこなかったため、あまり一般的な名称ではないのかもしれません。)白は2コネクテッドパスポーンがあるため、簡単に勝てそうに見えます。しかし、実際には黒にはタフなディフェンスがあり、白はポーンを進めることが容易ではありません。。例えばいきなりポーンを突こうとすると失敗します。

1.Kb2 Rh3 2.h6? Rg3! 3.Rg7+ Kh8
と進むと、黒は次にルークを捨てればステールメイトなので、ルークでチェックをかけ続ければドローです。4.Kc2 Rc3+!=

しかし、よく考えてみると黒も指せる手がかなり限られていることが分かります。白は5段目にルークを持ってくることができれば、キングをg,hファイルに寄せていって勝ちとなるため、
(黒番だとして)1...Kf8 2.Rf7+! Kg8 3.Rf5+-
(黒番だとして)1...Rd3? 2.Rc7 Rd5(3.Rb5を防ぐ)3.h6+-(次に4.Rc8#がスレット)で両方とも白勝ちです。 このことは黒がRg3-Rh3と指し続けるしかないことを意味します。

では、白はキングをg,hファイルに寄せていけば、黒はRg3-Rh3をキープし続けられないので、簡単に白勝ちになるんじゃないの?と思われるかもしれません。それがそう簡単ではないのです。

もし、黒のルークがh3にいるときに白がKg2と指すと、驚くべきことに黒はRa3!とルークをg,hファイルから外すことができます。これはRa5-Rg5+(!)がチェックとなるため、白がhポーンを進められないことを利用したアイディアです。つまり白は何も考えずキングを寄せていっても、Kf2 に対してRh3 と指されるとツークツワンクとなり、勝つ方法がないのです。
White is in zugzwang!

しかし、これを逆に考えれば、黒のルークがh3にいるときに白がKf2と指せば、黒がツークツワンクになるということです。つまり答えは...

1.Ka2!!
1テンポロスして寄れば良いのです。

1.Kb2? Rh3 2.Kc2 Rg3 3.Kd2 Rh3 4.Ke2 Rg3 5.Kf2 Rh3 6.Kg2 Ra3! 7.Rb7 Ra5 8.Rh7 (8.h6? Rg5+=) 8...Ra3 9.Kh2 Rb3 10.Ra7 Rb5=

1.Rb7? Rg5 2.Rh7 Rg2!=


ちなみに1段目を使って1テンポロスしようとしても、うまくいきません。

1.Kb1? Rb3+! 2.Kc1 Rc3+ 3.Kd2 Rh3! 4.Ke2 Rg3 5.Kf2 Rh3=

1...Rh3 2.Kb2 Rg3 3.Kc2 Rh3 4.Kd2 Rg3 5.Ke2 Rh3 6.Kf2+-
Black is in zugzwang!

これで黒は次にRg3を指すことができず、ツークツワンクです。2つ前の図とポジションと同じですが、こちらは黒番であることがポイントです!

6...Ra3 7.Rd7 Rh3 8.Rd5 Kg7 9.Kg2 Rh4 10.Kg3+-

あとはRd7+から黒のキングを後退させ、白のキングをh6に向かわせるか、h6にポーンを進めれば白勝ちです。一部解説を割愛しているところがあるので、Endgame Manual が手元にある方はご自身でも確認してみてください。次回は同じくEndgame Manual から、Kasparian Position の実戦例をご紹介します。

2011/07/14

IM elect Ly Moulthun

1991年生まれのLy Moulthun君は、現在オーストラリアでトップクラスの実力を持つジュニアチェスプレーヤーの一人です。2007年にシンガポールで開催されたWorld Youth Olympiad では、オーストラリアチームⅠの1番ボードも務めています。

2005年に13歳でオーストラリアのジュニアチャンピオン、2006年には2つのIMノームを獲得した彼は、オーストラリア期待の星として順風満帆のチェス人生を歩んでいました。ところが3つ目のIMノームがほぼ確定という大会で、最後の試合を落としてしまい、そのショックでチェスから3年程離れてしまいます。当然のことですが、彼はこのことを「大きな間違いだった」と指摘しています。

2010年にチェス界に復帰したMoulthun君は、すぐに3つ目のIMノームを獲得し、あとは2400にレイティングを乗せればIMとなります。今年から来年にかけての目標は、IM獲得に加え、チェスオリンピアードのオーストラリア代表メンバーに入ることでしょう。オーストラリアには二人の現役GM(Zhao,Z,Smerdon,D)と、ベテランのIMが数人います。彼らを押しのけてオーストラリア代表に入るのは、並大抵のことではありません。来年5月に開催されるSydney International Open までの戦績で、オリンピアード代表選手が選考されると聞いているので、池田君とともにそれまで突っ走ってほしいと思います。

私は、つい先日終了したPhiladelphia Open とWorld Openで、Moulthun君の強さを間近で確認してきました。特に1,2Rをbyeで参加したPhiladelphia International の3,4Rでは、FM2人を相手に何もさせずに勝ちです。私は4Rの試合が衝撃的だったので、今回それを公開しようと思います。

FM Ardaman,Miles (2301,USA)-FM Ly,Moulthun (2375,AUS)
Philidephia International(4)

1. b3 e5 2. Bb2 d6 3. e3 g6 4. g3 Bg7 5. Bg2 f5 6. Ne2 Nf6 7. d3 O-O 8. a3 a5 9. Nd2 c6 10. c4 Be6 11. Qc2 Nbd7 12. h3 Bf7 13. O-O Qe7 14. e4 $6 fxe4 15. dxe4 b5 16. f4 Nc5 17. f5?!
[removing the tension doesn't seem to be the best option]
17...Bh6! 18. Rad1 a4 19. b4 Nb3
(19... Bxd2 20. Qxd2 Ncxe4 21. Qe3 d5 [with a not so clear position])

20. Nxb3 axb3 21. Qxb3 Bxc4 22. Qc2 Nh5
(22...Qa7+ 23. Kh2 Qe3 24. Rde1 [unfortunately i can't win the exchange as Bc1 is always coming] Qd2 25. Qc3)

23. Kh2 gxf5 24. exf5 d5 25. Rde1 Rae8 26. Bf3 Qf7 27. Bxh5 Qxh5 28. g4 Qh4 29. Bc1 d4 30. Ng3 Bxf1 31. Rxf1 Bf4 32. Bxf4 exf4 33. Ne4 Rxe4 34. Qxe4 Qg3+ 35. Kh1 Qxh3+ 36. Kg1 Qe3+ 0-1
最後はクイーンを交換し、確実に勝ちです。Moulthun君はこの試合を、特別なゲームではないと評価していますが、私はこのレベルの試合をそう言い切れるところが、彼の強さを表しているように感じました。

Moulthun君はこれから、池田君とともにオランダのDutch Open、そしてインドのWorld Juniorに参加予定です。是非、オーストラリアに帰る前に2400に乗せてください。

Good Luck Moulthun, see you again!

2011/07/12

猫を抱いて象と泳ぐ

先週末に文藝春秋から封筒が自宅に届きました。中身を確認してみると、小川洋子さんの『猫を抱いて象と泳ぐ』の文庫版でした。今月発売予定なので、今日はその宣伝です。
(画像クリックでAmazonにジャンプします。)

『猫を抱いて象と泳ぐ』は、架空のチェスプレーヤーの生涯を描いた長編小説です。2007年に、麻布学園チェスサークルに小川洋子さんが取材に訪れ、私も微力ながら協力させていただきました。2年前にはBehind the Scene に書評を書いていますので、そちらもご参考下さい。(古い文章なので少し恥ずかしいですが・・・)
http://chessplayer.jugem.jp/?eid=36

贔屓目なしの評価はもちろん難しいですが、私としては本屋大賞を受賞した『博士の愛した数式』よりもお勧めしたい一冊です。ハードカバー版出版から2年半、待ちに待った文庫版の登場なので、まだ読んだことのない方、手元にない方は是非この機会にご購入ください。

2011/07/11

自戦記レクチャー in July

毎月、吉祥寺チェスクラブで行っているレクチャーのご案内です。参加をご希望の方は、当日申し込みでも構いませんが、なるべく吉祥寺チェスクラブへ事前にご連絡ください。

会場: 吉祥寺チェスクラブ
スケジュール:2011/07/24(日) 13:00-15:00 
*今回初めて日曜日開催なので、ご注意ください。
参加費: 席料込   3000円/2000円(一般/大学生以下)
レクチャーのみ  2000円/1000円(一般/大学生以下)
対象: レイティング1200~1800
テーマ: Practical Endgames

レクチャー概要:
日本人はどんなことでも、頭からきっちり勉強しようという傾向が強いため、
チェスの勉強もまずはオープニングから入り、エンドゲームは後回しという人が多いと思います。
しかし実際には、エンドゲームの勉強は非常に重要で、
ちょっとしたアイディアを学んでいるかどうかで、結果が左右されることもあります。
私もエンドゲームに関してはまだまだ未熟な点が多いですが、
自身の試合を振り返り、面白かったエンドゲームの実戦例をいくつかご紹介しようと思います。

ゲーム:
小島-建内/ Japan League 2010/ 1-0
小島-塩見/ 快速選手権 2008/ 1-0
Szalanczy-小島/ First Saturday 2010/ 0-1
Billon-小島/ Cappelle la Grande 2010/ 0-1

2011/07/09

第7回国際親善チェス大会 in 新潟

2年ぶりに新潟のチェス大会に参加しました。A,B,Cの3クラスに分かれ、Aクラスは広い和室で試合を行いました。B,Cクラスの会場よりはマシでしたが、それでも空調が故障中とのことで大変暑かったです。
結果は四連勝で優勝です。地方の非公式戦とはいえ、全勝優勝は嬉しいものです。R3,R4の岩崎さん、小笠さんとの試合は、終始うまく指したように思えましたが、両方とも詰めが甘かったことを反省しなければいけません。相手の時間切迫に助けられたところがありました。今日は疲れたので解説は省いて、棋譜だけ公開します。

Kojima,S-Usuba,H
Niigata friendship (1)

1. Nf3 g6 2. e4 Bg7 3. d4 d6 4. Bc4 Nf6 5. Qe2 O-O 6. e5 dxe5 7. dxe5 Nd5 8. h3 c6 9. O-O b5 10. Bb3 a5 11. Rd1 e6 12. c4 bxc4 13. Bxc4 Nd7 14. Na3 Qc7 15. Re1 N7b6 16. Bg5 Nxc4 17. Nxc4 Ba6 18. Rac1 Rab8 19. Qd2 Qb7 20. Nxa5 Qxb2 21. Rc2 Qa3 22. Nxc6 Rbc8 23. Rec1 Bb7 24. Nfd4 Qa8 25. Rc5 Rfe8 26. h4 Bf8 27. Ra5 Ba6 28. Bh6 Qb7 29. Bxf8 Kxf8 30. h5 Nb4 31. Rac5 Nd3 32. Qh6+ Kg8 33. hxg6 hxg6 34. R5c3 Nxc1 35. Rh3 1-0

Shintani,S-Kojima,S
Niigata friendship(2)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 dxc4 5. e4 b5 6. e5 Nd5 7. Be2 Bf5 8. a3 e6 9. O-O Be7 10. Bd2 Nd7 11. h3 N7b6 12. Nh2 O-O 13. Bg4 Bg6 14. f4 c5 15. f5 exf5 16. Bxf5 cxd4 17. Ne4 Na4 18. Qg4 Nxb2 19. Nf3 Ne3 20. Bxe3 dxe3 21. Bxg6 fxg6 22. Nfg5 Qb6 23. Kh2 Nd3 24. Qd7 Bxg5 25. Nxg5 Qc5 26. Qe6+ Kh8 27. Rxf8+ Rxf8 28. Nf7+ Rxf7 29. Qxf7 Qxe5+ 30. g3 Qb2+ 0-1

Kojima,S-Iwasaki,Y

Niigata friendship(3)

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. d4 O-O 6. Be2 e5 7. O-O Nc6 8. d5 Ne7 9. b4 Nh5 10. Re1 a5 11. bxa5 Rxa5 12. Nd2 Nf4 13. Bf1 c5 14. a4 Nh5 15. Nb5 Ra6 16. Bb2 Bh6 17. Ra3 Bd7 18. g3 Qc8 19. Be2 Ng7 20. Bf1 Nh5 21. Bg2 Bg4 22. Qc2 Qd8 23. Nf1 f6 24. Ne3 Bc8 25. Qe2 Ng7 26. Ng4 Bxg4 27. Qxg4 Qc8 28. Qe2 Qd7 29. Bf3 Rfa8 30. Bg4 Qd8 31. Qc2 Nc8 32. Rea1 Nb6 33. a5 Nc8 34. Qb3 Bd2 35. Bc3 Bxc3 36. Nxc3 f5 37. exf5 gxf5 38. Bh3 b6 39. axb6 Rxa3 40. Rxa3 Rxa3 41. Qxa3 Nxb6 42. Qa6 Qb8 43. Kg2 Kf7 44. Qb5 Qa7 45. g4 Kf6 46. gxf5 Nc8 47. Ne4+ Kf7 48. Qc6 Nxf5 49. Bxf5 Ne7 50. Qxd6 1-0

Ogasa,S-Kojima,S

Niigata friendship(4)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nd2 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. Nf3 Nd7 7. h4 h6 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bd2 Ngf6 12. O-O-O Be7 13. Ne2 O-O 14. g4 Nxg4 15. Rdg1 f5 16. Rg2 Qb6 17. Nf4 c5 18. Re1 cxd4 19. Nxe6 Nc5 20. Qc4 Nxe6 21. Rxe6 Qc5 22. Qb3 Kh8 23. a3 a5 24. Nxd4 Bf6 25. f3 Qxd4 26. Bc3 a4 27. Qxb7 Bg5+ 28. Kb1 Qxc3 29. bxc3 Rab8 30. Rb6 Rxb7 31. Rxb7 Ne3 32. Re2 Nd5 33. Kb2 Bf6 34. Ra7 Nxc3 0-1

優勝賞品として新潟の地酒をいただきました。(一昨年、Samはマウンテンバイクだったような気が・・・)
大会終了後は懇親会で上智、東北大のメンバーとブリッツをしていました。4時に起きて新潟に向かったため、大変疲れましたが、充実した1日でした。明日は東北大のメンバーと夕方まで過ごす予定です。


2011/07/08

Philadelphiaを振り返って

アメリカから帰国して2日が経ちました。Philadelphia International、World Openの2大会を振り返り、思ったこと、感じたことをまとめてみます。良かった点は青、悪かった点は赤で示しています。ちょっと長くなりますが、お付き合いください。

<試合内容>
- 白番での戦績が良かった -
今回の遠征から、2年ぶりに初手を1.Nf3に戻しました。多少不安はありましたが、結果は5勝1敗2ドローと上々でした。2300台相手に2年ぶりの勝ちをもぎ取りましたし、1.Nf3はしばらく問題なく指し続けられそうです。

- 多くの試合で安易にドローにせず、勝負に行けた -
これは「本当に?」と疑う人もいると思いますが、本当です。今までは受けていたであろう局面でのドローオファーを蹴って、勝った試合が3つありました。今回は体力勝負でしたので短手数のドローもありだと思いますが、短期的なポイントを得るよりも、指し続けることを様々な局面を勉強することのほうが、長期的に見て自分のためになるとようやく気がつきました。もちろん勝負に行って負けた試合もありますが、それも勉強のうちです。

- 黒番での戦績が悪かった -
カペル、タイ、全日本と負けのなかった黒番でいくつかの負けを喫しました。そして勝ちが1試合もありませんでした。Slav,Caro-Kannともに、自信のあるラインがほとんどだっただけに少しショックです。

- いくつも逆転を許した -
World Openでの4敗の全ては、優勢からの負けでした。もちろんチェスは優勢からでも負けるゲームですが、「これはさすがに勝たないとまずいだろう」と思えるほど優勢の試合でも、負けることがありました。ドローにした試合もそうです。もう少しミドルゲーム、エンドゲームの勉強をし、相手にチャンスを与えずに、優勢を勝ちにつなげられるように意識したいと思います。

<大会運営>
- 選手のレベルが高かった -
今回のアメリカ遠征18試合で、GM4人、IM4人、FM4人と試合をしました。マスターとの連戦は、日本では間違いなくできない経験であり、とても勉強になりました。特にPhiladelphia International R7からは9戦連続マスターでした。これは人生初ですね。

- ペアリング発表が遅かった -
これは大変いただけません。午後7時からの試合で、午後6時半にペアリングが未発表である理由は理解できません。ペアリングはソフトで一瞬で組めるのですし、昼過ぎには公開すべきだと思います。

- 試合開始時間が曖昧 -
アメリカの大会は盤、駒、時計をプレーヤーで持ち寄ります。そのために会場内で様々なチェスセットで試合が行われるのを見かけたり、知り合ったプレーヤーとチェスセットを貸し借りしたりする様子は面白かったです。(私は思い切ってGM Lendermanに声をかけて、チェス盤を借りることもありました。)ただし盤、駒、時計が揃わなければ試合を始めることができないため、試合開始予定時刻を20分過ぎても、試合準備すらできていないボードもあれば、片方の時間が20分減っているボードもありました。またPhiladelphia Internationalでは試合開始が遅れた場合、アービターの判断で両者が持ち時間を減らして試合を始めることもありました。自分の時間を減らしたくなければ遅刻するな、道具を揃えろ、ということなのかもしれませんが、アジア、ヨーロッパのチェスに慣れていると少し変な気もします。

<ホテル>
- チップはおいたほうが無難か -
チップをどうするかは、初日に池田君とも話をしました。部屋のシーツ、タオル交換などの際には、特に部屋を汚していなければチップは不要と何かで読みました。しかし、実際にはチップを置かなかった日には、タオル交換がされていないことがあったため、毎日1$ずつベッドに置くようにしました。これはアメリカの文化ですので、特に悪いことだとは感じません。

- Sheraton は満足 -
会場となったSheraton City Center Hotel には計9泊しましたが、とても満足です。(上記のタオル無視はありましたが)空港からも電車で簡単に行けますし、また来年もここが会場であれば、参加を前向きに検討します。

- Crowne Plaza はダメ -
Sheraton の予約が取れなかったために7/1から移ったCrowne Plaza というホテルはイマイチでした。防音がいい加減で、隣の部屋の騒ぎ声がずっと聞こえ、眠りにくかったです。

<その他>
- 食事は人それぞれだが、自分は満足 -
アメリカの食事はどんなものかと思っていましたが、自分は特に困ることはありませんでした。ヨーロッパ同様、サンドウィッチが日本よりも遥かに美味しいので(全く別物です)、向こうでの主食にしていました。ホテルでは一回も食事を取りませんでしたが、周りにはサンドウィッチ、ホットドッグの屋台が多く出ていて気軽に食事ができました。また昼には行列ができる人気のカフェにも、池田君たちと足を運びました。
- チェスショップは最高 -
会場内に出ていたチェスショップは、私が今まで見てきた中で最高クラスのものでした。品揃えは、さすがにオリンピアードのチェスショップには劣りますが、値段が素晴らしく、新作の本が定価より安く売られていました。さらには10$均一コーナーが設置されており、多少古くても使える本がいくつも格安で売られていました。(もちろん新品です。)以下に私が買った商品のリストを出しておきます。左から書名、出版年、値段です。

Play the Catalan/ 2009/ 20$
Chess Lessons/ 2011/ 22$
Mastering Positional Chess/ 2010/ 19$
concise chess middlegames/ 2004/ 10$
consise chess endings/ 2004/ 10$
Winning Chess Explained/ 2006/ 10$(!)
DGT 960/ 35$
Reggio Emilia 2007/2008/ 2009/ 10$(!!)
The Chess Greats of the World Victor Korchnoi/ 2007/ 10$
携帯用チェスセット×4/ 5$×4

携帯用チェスセット1つと、下の2冊は篠田君へのお土産にします。次回、学生チェス連盟主催の大会の賞品にでもしてもらおうと思います。

- Saitek Clock 紛失 -
実に個人的なことです。誰かが持って行ったのであれば、大切に使ってほしいと思います。皆さんも忘れもの、私物の紛失には気をつけましょう。

今回は急な遠征で調整も難しかったですが、とても楽しむことができました。(最後は落ち込みましたが)やはり行くことを決めて良かったです。行動をともにしたオーストラリアの二人は、これらオランダ、インドと遠征を続け、池田君に至ってはその後、マレーシア、日本と続きます。彼らの活躍も今後、こちらで追いかけていこうと思っています。もちろん私も負けていられません。とりあえず、明日から二日間は新潟遠征です!

2011/07/05

World Open R8 & R9 - Nightmare -

フィラデルフィアでの最終日は、2100台に1敗1ドローというひどい結果に終わりました。両方の試合とも、勝勢からのミスです。今夜は反省の意味を込めて細かく試合を振り返ろうと思います。

FM Kojima,S (2328,JPN)-Krishnan,V (2110,USA)
World Open(8)

R8の相手は、国籍はアメリカになっていましたが、名前や顔つきからインド人だと分かりました。まだ12歳ほどです。

1. Nf3 d5 2. d4 e6 3. c4 c6 4. e3 Nf6 5. b3 Nbd7 6. Bb2 Bd6 7. Bd3 O-O 8. O-O
私の人生のベストゲームである、Li Hanbin戦(http://chessplayer.jugem.jp/?eid=98)と同じ形になりました。俄然やる気になります。

8...b6 9. Nbd2 Bb7 10. Ne5 Qe7 11. Qf3 c5 12. Qh3 cxd4?

指された瞬間、この手はブランダーで、もう白の勝ちになるのではないかと考えました。しかし対応を間違えてしまいます。

13. Nxd7! Qxd7 14. Bxd4?!

アイディアはあっていますが、14.cxd5がベストでした。ビショップとクイーンでh7を狙っているために、黒はナイトでもポーンでもd5を取り返すことができず、苦しい展開となります。

14...dxc4!

d3のビショップが浮いていることを利用したディフェンスです。14.cxd5を入れておけばこのアイディアはありませんでした。

15. Bb1!?

h7とf6への利きを残しておきます。これで1ポーンアップ確定なので白が良いと考えましたが、黒には強力なダブルビショップも残っています。

15...Rfd8?!

15...h6 16.Bxf6 gxf6 17.Qxh6 f5 18.Nxc4 Be7 19.a4!+/= のほうがベターでしょう。

16. Bxf6 gxf6 17. Qxh7+ Kf8 18. Nxc4 Bc7 19. Be4!

正しい方針です。相手の強力なダブルビショップは消すに限ります。

19...Bxh2+?

驚きの一手です。少し読めば駄目なことが分かるはずです。

20. Kxh2 Ke7 21. Bxb7 (21. Rfd1! Qc7+ 22. Kg1 Rh8 23. Bxb7 Rxh7 24. Bxa8+-) 21... Rh8 22. Bxa8 Rxh7+ 23. Kg1
2ピース+ルークvsクイーンなので、白の勝勢は明らかです。あとは丁寧に指すだけだったのですが・・・

23...b5 24. Nb2 Qc8 25. Bf3 Qc3 26. Rab1 Rh8 27. Rfc1 Qe5 28. Nd3 Qh2+ 29. Kf1 Rd8 30. Ke2 Qd6 31. Rd1 Qa6 32. Nb4 Rxd1 33. Rxd1 Qa3 34. Nc6+ Kf8 35. Rd2 a5 36. Nd4 Qb4 37. Rc2 a4 38. Rc7?!

これが少し焦りすぎでした。f7を狙うのはクイーンサイドを完全に捌いた後でも遅くありません。

38...Qa3 39. Bh5??

メイトになると勘違いしていました。時間はたくさん残っていただけに、惜しすぎるミスです。
(39. Rc8+ Kg7 40.Rc2+-)

39... Qxa2+ 40. Kf3 axb3

40.Kf3を指した後で自分の愚かさに気がつきました。41.Bxf7 b2 42.Nxe6# だと思っていたのです。実際には黒はクイーンでe6を守っているため、これは幻でした。慌てて何とかする方法を考えます。

41. Rxf7+ Kg8 42. Nxe6 b2 43. Rf8+ Kh7 44. Rf7+ Kg8 1/2-1/2
「勝勢と勝ちは異なり、最後まで油断してはいけない」ということは、私がレクチャーなどで口にしていることであり、自分でこのようなミスをしてしまうとは恥ずかしい限りです。しかし今日はこれで終わりません。

WGM Ni,V (2167,LAT)-FM Kojima,S (2328,JPN)
World Open(9)

またもや未成年が相手でした。私も参加したWMSG(ワールドマインドスポーツゲームズ)のラトビア代表だった少女です。

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 Bg4 5. Qb3 Qb6 6. Nc3 e6 7. Nh4 Bh5 8. h3 Be7 9. g4 Bg6 10. Nxg6 hxg6 11. Bg2 Na6

こちらはR1のMikhalevski戦と同じ流れになりました。よほどのミスが来ない限り、黒でアドバンテージを得るのは難しいだろうと思っていましたが、そのよほどのミスがいきなり飛んできます。

12. g5?! Nd7

もちろんd7を空けておくための11...Na6です。

13. e4?
さすがに驚きました。もう試合終了かとまで思いました。

13...Qxb3! 14. axb3 Nb4!

このナイトはd3とc2に潜り込むチャンスがあり、g5,d4,b2などがターゲットになります。白にはポーンを守る方法がありません。

15. Kd1 dxc4 16. bxc4 Nd3 17. Rf1 e5!

g5は逃げられないため、黒は慌ててポーンを取る必要がありません。先にc5にマスを作っておきます。

18. d5 N7c5 19. Ra2 Nxc1 20. Kxc1 Nd3+

コンピュータはここで20...Bxg5+ もありだと示しますが、私は別のポーンを狙いに行きます。

21. Kb1 Nf4 22. Bf3 Rxh3

ここから白勝ちになるとはアンビリーバブルです。

23. Bd1!
これは面白い試みです。狙いはもちろんc6へのカウンターアタックです。これを少し軽視していて白にチャンスを与えてしまいました。

23...Bc5?!

23... a5! ならルークの侵入がないため、c6の守りがさほど問題なくなります。

24. dxc6 bxc6 25. Ra6 Rb8 26. Rxc6 Bd4

26... Bxf2 でもOKですが、なぜか試合中全く思い浮かびませんでした。
26...Rxc3 27.Rxc5 Nd3 28.Ba4+ Kf8 29.Rb5 では黒は不十分です。

27. Nb5 Nd3 28. b3 Bb6!

これでa6からナイトを追い払ったり、あわよくばルークをトラップするなど、黒にチャンスがあると考えていました。

29. Rd6 Nc5?

指した時はb3とe4を狙う良いアイディアだと思いましたが、実際には白にチャンスを与えてしまう悪手でした。ここでは29... Nb4!と指す手がうまく、d5のマスを抑えたうえでa6-Bd4ができます。

30. Rd5 f6 31. f4!
全く考えていない手でした。f1のルークがアクティブになり、いきなり黒のキングが危険にさらされます。

31... Nxb3?

これで完全に逆転を許してしまいました。正しくは
31... exf4 32. gxf6 gxf6 33. Rxf4 a6 34. Nd4 と進めてほぼイコールでしょう。

32. gxf6 gxf6 33. fxe5 Bd8 34. Bxb3 Rxb3+ 35. Kc2 Re3 36. exf6 Kf8 37. e5 Ba5 38. Rh1 Kg8 39. Rd7 1-0

最後はひどい形でした。予想外の手で相手が盛り返した時、一気に悪くしてしまう癖を直さないといけないですね。とりあえず現地からの報告はこれぐらいにして、あとは帰国後にいくつか振り返って記事を書こうと思います。最後は恥ずかしい結果となってしまいましたが、応援して下さった皆さん、ありがとうございました。

2011/07/04

World Open R6 & R7

昨日は勝負の二連戦でしたが、あえなく連敗。ノームのチャンスはほぼ消えてしまいました。特にR6は時間の増える寸前でのブランダーでドローを逃し、悔しい限りです。

FM Kojima,S (2328,JPN)-GM Gelashvili,T (2616,GEO)
World Open(6)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. g3 a6 4. Bg2 b5 5. b3 c5 6. Nc3 Qb6 7. e4 d6 8. d4 Bb7 9. d5 e5 10. O-O g6 11. Qe2 Bg7 12. cxb5 O-O 13. Nd2 axb5 14. Qxb5 Qc7 15. Qd3 Ba6 16. Nc4 Nbd7 17. Nd1 Nb6 18. Nde3 Bh6 19. f4 Nfd7 20. Bb2 Bg7 21. Qc2 Rfb8 22. Rfd1 Nxc4 23. Nxc4 Bxc4 24. Qxc4 Rb4 25. Qe2 exf4 26. Bxg7 Kxg7 27. gxf4 Qd8 28. Rac1 Qf6 29. Rf1 Kg8 30. Kh1 Qg7 31. e5 dxe5 32. fxe5 Qxe5 33. Qxe5 Nxe5 34. Rxc5 Rxa2 35. d6 Rg4 36. Bh3 Rh4 37. Rc3??

37.Bg2 Rg4 38.Bh3= 指した直後に気がつきました。

37...Rd2 38. Re1 Ng4 39. Bxg4 Rhxh2+ 40. Kg1 Rhg2+ 0-1

Rosen,E (2216,USA)-FM Kojima,S (2328,JPN)

World Open(7)

1. c4 c6 2. Nf3 d5 3. e3 Nf6 4. d4 Bg4 5. h3 Bxf3 6. Qxf3 e6 7. Bd3 Nbd7 8. Nc3 Bb4 9. cxd5 exd5 10. Bd2 O-O 11. O-O Re8 12. Rfe1 Nf8 13. a3 Ba5 14. b4 Bc7 15. g3 Ne6 16. h4 Re7 17. Na4 b5 18. Nc3 Ne8 19. a4 a6 20. Ra2 Nd6 21. Rea1 Rb8 22. axb5 axb5 23. Ra6 Bb6 24. Kg2 g6 25. g4 Nc7 26. R6a2 f5 27. Qh3 Rg7 28. Ne2 Ne6 29. Kh1 fxg4 30. Qxg4 Qf6 31. Rc2 Nc4 32. f4 Kh8 33. Ng1 Re7 34. Nf3 Ng7 35. Ne5 Nf5 36. Bxf5 gxf5 37. Qg5 Qe6 38. Rg1 Rbe8 39. Bc1 Bc7 40. Rcg2 Bb8 41. Nxc6 h6 42. Qh5 Qxc6 43. Rg6 1-0

今日が最終日、ラスト2試合です。どんな相手でも全力でぶつかってきます。

2011/07/03

World Open R5

3日前と同じラインで優勢になりながら、弱虫オファーが出てしまいました。どうも黒だと弱気になって良くないですね。フィラデルフィアにきてから黒勝ちの試合が一つもないですよ!

IM Wang,P (2437,NZL)-FM Kojima,S (2328,JPN)
World Open(5)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 c5 4. dxc5 Nc6 5. Bb5 e6 6. Be3 Nge7 7. Nf3 Nf5 8. Bd4 Nfxd4 9. Qxd4 Qa5+ 10. Nc3 Qxb5 11. Nxb5 Nxd4 12. Nfxd4 Bxc5 13. Nb3 Bb6 14. Nd6+ Ke7 15. Kd2 Rb8 16. Nxc8+ Rbxc8 17. f3 Rc4 18. g3 h5 19. Kd3 h4 20. c3 Ra4 21. g4 Rf4 22. Rhf1 Rc8 23. Rae1 g5 24. h3 f6 25. exf6+ Kxf6 26. Nd2 e5 27. b3 Re8 28. Rd1 Rc8 1/2-1/2
(photo by kakutani)

池田君は2100相手に黒で楽勝。Moulthun君は白でGM De Firmianに負けです。ここまで私の対戦相手の平均は2408なので、これを保つことができれば、IM一人と当たりながら2/4でIMノーム達成です。2.5/4なら確実ですかね。頑張ります!

今日はこれだけだと寂しいので、会場を見て回ったいた際に目に付いたポジションを一つご紹介します。以下の局面で黒のGM Lenderman,A が指した手が分かりますか?
Black to Move

2011/07/02

World Open R4 - three victories

昨日は長い一日でした。朝起きたら早めにホテルを出て、池田君、Moulthun君とニューヨークに行く予定でした。しかし実際に行動に移したところ、あまりに移動に時間がかかりすぎて、ほとんど観光ができないことが分かったため、途中のMetropark という駅で引き返して、Philadelphia まで戻ることに決めました。(あとで酒井さん夫婦にもそりゃ無茶だと言われました。)電車代は少しもったいなかったですが、私は電車での旅が楽しかったですし、良い気分転換になりました。

Philadelphia に戻ってきた後は、私はホテルを移ります。会場となっているSheraton は6/22-6/30までの予約しか取れなかったため、バックアップ用のホテルであるCrowne Plaza の部屋を予約していたのです。Crowne Plaza はSheraton からは徒歩5分程と大変近く、中身もきちんとしたホテルだったので一安心です。ちなみにルームキーを入れないとエレベーターが動かないというシステムは初めて目にしました。
そして試合30分ほど前に会場に戻ってペアリングを確認すると、またもや予想を裏切り、カナダの若きFM Thavandiran君が私の相手でした。池田君がR2で勝っている相手なので、自分も勝たなくてはと大急ぎで準備を進めます。

FM Kojima,S (2328,JPN)-FM Thavandiran,S (2320,CAN)
World Open(4)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. g3 b6 4. Bg2 Bb7 5. O-O c5 6. Nc3 d6 7. d4 cxd4 8. Qxd4 a6 9. Bg5 Nbd7 10. Rfd1 Be7 11. Qd2 Rc8 12. b3 O-O 13. Bf4 Ne8 14. Rac1 Qc7 15. Qe3!
Philadelphia International のRasch戦の後で、Hedgehog Position を調べ直している際に見つけたアイディアです。次に16.Nd5と跳びこんだり、16.Bh3からe6を切りに行くなど、アイディアは豊富です。

15...Nef6 16. Nd5 exd5 17. Qxe7 Rfe8 18. Qxd6 Qxd6 19. Bxd6 Rxe2 20. Nd4!

クイーンを交換した直後のこの手を見つけて、白の優勢を確信しました。

20...Rxa2 21. Nf5! Re8 22. Ne7+ Kh8 23. cxd5+/-
これでルークを理想的なc,dファイルに残したまま、パスポーンを作ることができました。残りは丁寧に指すだけです。

23...a5 24. Rc7 Ba6 25. Bh3 Bb5 26. Nc6 Nxd5 27. Bxd7 Nxc7 28. Bxc7 Be2 29. Re1 Re4 30. Bxb6 Bf3 31. Be3 a4 32. Nd4 axb3 33. Nxf3 b2 34. Nd2 Ra1 35. Nb1 g6 36. Bb5 Kg8 37. Bd3 Re8 38. Kf1 Rd8 39. Ke2 Kg7 40. Bd2 f6 41. Bc3 Ra7 42. Kd2 Rad7 43. Re3 Rb8 44. Re6 Rf8 45. g4 h6 46. h4 g5 47. h5 Rff7 48. Bxb2 Rb7 49. Kc2 Rb4 50. f3 Rc7+ 51. Bc3 Rb8 52. Nd2 1-0

このラウンドは池田君、Moulthun君も揃って白で勝利し、初めて3人そろっての白星となりました。特に池田君はPhiladelphia International 3位のGM, Garcia 相手の金星です。二人の棋譜も公開しておきます。

FM Ikeda,J (2315,AUS)-GM Garcia (2367,COL)
World Open(4)

1. Nf3 c5 2. c4 Nc6 3. Nc3 Nf6 4. d4 cxd4 5. Nxd4 g6 6. e4 d6 7. Nc2 Bg7 8. Be2 Nd7 9. Be3 Nc5 10. f3 O-O 11. Qd2 f5 12. exf5 Bxf5 13. Nd4 Nxd4 14. Bxd4 Bxd4 15. Qxd4 e5 16. Qd2 Qh4+ 17. g3 Qf6 18. O-O Bh3 19. Rf2 Rad8 20. Bf1 Bxf1 21. Raxf1 Qf5 22. Nd5 Kg7 23. Qe3 b6 24. b4 Ne6 25. f4 Qg4 26. h3 Qxh3 27. fxe5 dxe5 28. Qxe5+ Kh6 29. Rxf8 Nxf8 30. Rf2 Rxd5 31. cxd5 Nd7 32. Qf4+ Kg7 33. Qf7+ Kh8 34. Qe8+ Kg7 35. Rf7+ Kh6 36. Qe3+ 1-0

FM Moulthun,L (2375,AUS)-Calugar,A (2210,CAN)
World Open(4)

1. e4 c5 2. Nf3 e6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nc6 5. Nc3 Qc7 6. Be3 a6 7. Bd3 Nf6 8. O-O Ne5 9. h3 b5 10. f4 Nc4 11. Bxc4 Qxc4 12. e5 Nd5 13. Nxd5 Qxd5 14. a4 Bb7 15. Qe2 Bc5 16. Rfd1 Qe4 17. Qf2 Rc8 18. axb5 axb5 19. Rd2 O-O 20. Nf5 Bxe3 21. Nxe3 Bc6 22. c3 f6 23. Rd4 Qg6 24. exf6 gxf6 25. f5 Qf7 26. fxe6 dxe6 27. Ng4 Bd5 28. Nh6+ 1-0

そして私の知る限り、もう2人のアメリカ在住日本人が、Under 2200 5days に参加しています。角谷君はR1でbyeを申請して、昨日の朝こちらに到着したようで、直後のR2では格上のプレーヤーに勝っています。R3は残念ながら負けてしまったようですね。

一方、全日本ジュニアチャンピオンの酒井君は、負け、ドロー、ドローとまだ勝ち星がありません。1日2試合の厳しいスケジュールがあと3日間続くので、2人にも粘り強く指してほしいと思います。そして今夜は、酒井さん一家と私、オーストラリアチームのメンバーで、一緒に食事をする予定になっています。

2011/07/01

World Open R3 - precious winning -

池田君、Moulthun君と私の3人で夕飯から帰ってくると、Kojima-Ikedaという驚きのペアリングが発表されていました。2日連続となる予想外&身内同士のペアリングです。そして試合はさらに予想外のオープニングで始まりました。

FM Kojima,S (2328,JPN)-FM Ikeda,J (2315,AUS)
World Open(3)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. g3 a6!? 4. Bg2 b5 5. b3 Bb7 6. O-O c5 7. Bb2 Be7 8. Na3!?
こちらも奇妙な手で応戦します。8.d3が自然であることは分かっていましたが、私はd4を突きたい派です。

8...Qb6 9. d4 d6 10. d5 Nbd7 11. e4 e5 12. Qd3 b4 13. Nc2 O-O-O?!

検討戦でMoulthun君から、13...0-0がベターとの指摘が入りました。私もNh4-f4があるため、0-0-0はありだと思っていましたが、実際にクイーンサイドにキングを逃がしてみると、有効な反撃が見つかりにくくなります。

14. Ne3 Nh5 15. Rfc1 g6 16. a3 a5 17. Bh3 Bf6 18. Ra2 Kc7 19. Rca1 Rhf8 20. Qd1 Ra8 21. Bg4
これ以上局面を改善する手が見つけられず、ここで仕掛けることを決めましたが、おそらくNe1-Nd3を入れておくのがベターでした。

21...Ng7 22. Bxd7 Kxd7 23. Ng4 Nh5 24. Nxf6+ Nxf6(=)

異色ビショップになったところでドローオファーが来ましたが、相手の不安定なキングを見て試合を続けることにします。

25. Qe2 Ke7 26. Ne1 h5?! 27. Qe3 h4?!

この2手で黒は相当悪くしてしまいました。26...Nd7,27...f6 とすればまだタフなディフェンスができます。

28. axb4! axb4 29. Rxa8 Rxa8 30. Rxa8 Bxa8 31. Qg5!
これで決まりです。黒はこのあとポロポロとポーンを失います。

31...Qd8 32. f4 Ke8 33. fxe5 Nxe4 34. Qe3 Ng5 35. exd6+ Kd7 36. gxh4 Nh7 37. Qxc5 Ke8 38. Nf3 f6 39. Qe3+ 1-0

池田君としては不本意な試合だと思いますが、私としてはただただ、6試合ぶりの勝ち星にホッとしています。これでフィラデルフィアに来てから白番は4勝1ドローです。黒番でも1試合勝ちが来れば、だいぶ気持ちも上向くと思います。

Moulthun君は残念ながらMikhalevskiに負け。さすがに強いですね。しかしMoulthun君も10試合目にて初の黒星です。(Philadelphia International のR1,R2はbye)これから試合を一つもらっているので、彼の特集記事は帰国後に書こうと思います。

そして今日から5日コースも開始され、会場はにわかに活気づいてきました。
試合会場が変わりました。(あまりきれいな写真でなくてすみません)

Open Section 5days の上位はKamsky,Adams,Van Wely という顔ぶれです。7日コースとの合併は3日後のR6からですかね。また、U2200には現日本ジュニアチャンピオンである酒井響君の姿もあります。明日からは彼の戦績についても触れたいと思います。

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