私たちはエンドゲームに限らず、ミドルゲームでもパスポーンが大きな武器になることを知っています。実際にプロモーションできなくとも、プロモーションを防ぐためにパスポーンをブロックしなければならないこと、が相手にとっての負担になる可能性があるためです。
またルークはオープンファイルで働くことも、よく知られていることです。7段目や8段目はルークにとって絶好の位置で、相手のキングの安全を脅かしながら(もしくはキングの動きを制限しながら)、ポーンを狙うことができます。そして7段目、8段目には侵入するためには、オープンファイルを活用するのが有効な手段なのです。では、このパスポーンと、オープンファイルのルークが両方共働いた場合、どのような効果をもたらすでしょうか。
ジュニア選手権からの一戦です。駒数だけを見ると、2ポーンエクスチェンジなのでまだ怪しいですが、黒にはdファイルにパスポーンがあり、eファイルのコントロール、白のバックランクの弱さも合わせて黒が優勢だと判断できます。
1...d4!?
パスポーンを進めるのは間違っていないプランですが、慌てる必要はありません。
1... Re2 2. Qc1 (2. Qb4?! a5! 3. Qc3 d4! 4. Qc1 黒は白のバックランクの弱さを利用して、パスポーンを進めることができます。) 2... Qe5-/+ 黒は理想的な7段目にルークを侵入させ、b2,a2のポーンをじっくりと狙ったうえで、パスポーンを進めれば勝勢です。
2. h3 Re2?
直前の白の狙いを見落としたことによる悪手です。1...Re4 とパスポーンを守っておけば、まだ黒にチャンスがあります。
3. Qxd4! Re1+ 4. Kh2!
ルークを交換せずにキングを逃がせば黒のメイトはなくなり、逆にg7へのメイトスレットが残ります。
4...Re7 1/2-1/2
白は時間切迫によりドローオファーを受けましたが、実際に続けてみると 5.Re1! Qd7 6.Qxd7 Rxd7 7.Rg4! (狙いはルークをgファイルから入れ替えることと、キングをg3に逃がせるようにすること。) ぐらいで白に勝つチャンスがあるでしょう。
センターのパスポーンは相手のピースを縛る働きをすれば心強いですが、一歩間違えればそれ自身がターゲットとなってしまいます。パスポーンの働きを生かすには、他のピース(今回は特にルークに着目)の協力が必要です。
もう一つ、やはりジュニア選手権の三井君の試合から、面白かった局面をご紹介します。
黒は1ポーンアップで、ルークも理想的な位置にいます。
1... e4!
パスポーンを作ると同時にfファイルをオープンファイルにし、ルークを活用します。
2. fxe4 fxe4 3. Qc4 Bxa6
私が試合後に指摘したのは 3... Qg3! 4. Rg1 Bxa6 5. Qxa6 e3-+
とパスポーンを進めるプランです。白はfファイルからの侵入とパスポーンの前進に対して、成すすべがありません。もちろん、本譜のようにビショップを交換してからでもOKです。
4. Qxa6 g5?!
g4までポーンを進めてキングを脅かそうとい狙いですが、明らかに強引です。3R同様に、自分のパスポーンがターゲットになる可能性を忘れてしまっています。
5. Rae2 Re8?
5... Qe5! としてeポーンはあきらめてdポーンを取りに行けば、まだ黒にチャンスがあります。望みのないパスポーンに固執して全体を見失うことは、アドバンテージを放棄しチャンスを台無しにしてしまいます。
6. Qc4! g4 7. Rxe4 Rxe4 8. Rxe4 Qf1+ 9. Qxf1 Rxf1+ 10. Kh2 gxh3 11. Kxh3?!
中川君はしばらく考えてキングでポーンを取り返しましたが、h3のポーンは何の働きもしていません。ここは11.Re7! と7段目に入ることでcファイルに決定的なパスポーンを作れば、確実な勝利でした。
11... Rd1?
7段目にルークを侵入されること、そして進んだパスポーンができることの恐ろしさを軽視しています。ここは11... Kg7 から7段目を守る一手でした。
12. Re7 Rxd5 13. Rxc7 Rd3+ 14. g3 Rc3 15. b5+- 以下数手で白勝ち。
三井君にとっては二試合とも悔しいミスだったと思いますが、その分勉強になったでしょう。皆さんも自分の試合を振り返り、同じようなミスをしたことがないか、チェックしてみてください。
またルークはオープンファイルで働くことも、よく知られていることです。7段目や8段目はルークにとって絶好の位置で、相手のキングの安全を脅かしながら(もしくはキングの動きを制限しながら)、ポーンを狙うことができます。そして7段目、8段目には侵入するためには、オープンファイルを活用するのが有効な手段なのです。では、このパスポーンと、オープンファイルのルークが両方共働いた場合、どのような効果をもたらすでしょうか。
前田-三井
Junior Championship(3)
ジュニア選手権からの一戦です。駒数だけを見ると、2ポーンエクスチェンジなのでまだ怪しいですが、黒にはdファイルにパスポーンがあり、eファイルのコントロール、白のバックランクの弱さも合わせて黒が優勢だと判断できます。
1...d4!?
パスポーンを進めるのは間違っていないプランですが、慌てる必要はありません。
1... Re2 2. Qc1 (2. Qb4?! a5! 3. Qc3 d4! 4. Qc1 黒は白のバックランクの弱さを利用して、パスポーンを進めることができます。) 2... Qe5-/+ 黒は理想的な7段目にルークを侵入させ、b2,a2のポーンをじっくりと狙ったうえで、パスポーンを進めれば勝勢です。
2. h3 Re2?
直前の白の狙いを見落としたことによる悪手です。1...Re4 とパスポーンを守っておけば、まだ黒にチャンスがあります。
3. Qxd4! Re1+ 4. Kh2!
ルークを交換せずにキングを逃がせば黒のメイトはなくなり、逆にg7へのメイトスレットが残ります。
4...Re7 1/2-1/2
白は時間切迫によりドローオファーを受けましたが、実際に続けてみると 5.Re1! Qd7 6.Qxd7 Rxd7 7.Rg4! (狙いはルークをgファイルから入れ替えることと、キングをg3に逃がせるようにすること。) ぐらいで白に勝つチャンスがあるでしょう。
センターのパスポーンは相手のピースを縛る働きをすれば心強いですが、一歩間違えればそれ自身がターゲットとなってしまいます。パスポーンの働きを生かすには、他のピース(今回は特にルークに着目)の協力が必要です。
もう一つ、やはりジュニア選手権の三井君の試合から、面白かった局面をご紹介します。
中川-三井
Junior Championship(5)
黒は1ポーンアップで、ルークも理想的な位置にいます。
1... e4!
パスポーンを作ると同時にfファイルをオープンファイルにし、ルークを活用します。
2. fxe4 fxe4 3. Qc4 Bxa6
私が試合後に指摘したのは 3... Qg3! 4. Rg1 Bxa6 5. Qxa6 e3-+
とパスポーンを進めるプランです。白はfファイルからの侵入とパスポーンの前進に対して、成すすべがありません。もちろん、本譜のようにビショップを交換してからでもOKです。
4. Qxa6 g5?!
g4までポーンを進めてキングを脅かそうとい狙いですが、明らかに強引です。3R同様に、自分のパスポーンがターゲットになる可能性を忘れてしまっています。
5. Rae2 Re8?
5... Qe5! としてeポーンはあきらめてdポーンを取りに行けば、まだ黒にチャンスがあります。望みのないパスポーンに固執して全体を見失うことは、アドバンテージを放棄しチャンスを台無しにしてしまいます。
6. Qc4! g4 7. Rxe4 Rxe4 8. Rxe4 Qf1+ 9. Qxf1 Rxf1+ 10. Kh2 gxh3 11. Kxh3?!
中川君はしばらく考えてキングでポーンを取り返しましたが、h3のポーンは何の働きもしていません。ここは11.Re7! と7段目に入ることでcファイルに決定的なパスポーンを作れば、確実な勝利でした。
11... Rd1?
7段目にルークを侵入されること、そして進んだパスポーンができることの恐ろしさを軽視しています。ここは11... Kg7 から7段目を守る一手でした。
12. Re7 Rxd5 13. Rxc7 Rd3+ 14. g3 Rc3 15. b5+- 以下数手で白勝ち。
三井君にとっては二試合とも悔しいミスだったと思いますが、その分勉強になったでしょう。皆さんも自分の試合を振り返り、同じようなミスをしたことがないか、チェックしてみてください。
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