2011/07/16

What's the Kasparian Position? (1)

アメリカから帰国後、Dvoretsky's Endgame Manual でルークエンディングの勉強をしています。昔は冒頭のポーンエンディングからちんぷんかんぷんで、読み進めるのが大変でしたが、最近は多少理解ができるようになってきました。アイディアが分かってるくると、エンドゲームの勉強は楽しいものだということを実感しています。

さて、昨夜のことですが、the Kasparian Position というものを勉強しました。これは今まで勉強したことがなく、全く知らなかった内容なので、今日はこれをご紹介しようと思います。以下のポジションで白番だとすると、白はどのように指せばよいでしょうか。
White to Move

Dvoretsky's Endgame Manual ではこれをソ連のマスターの名を取って、the Kasparian position と呼んでいます。(他の本では調べても出てこなかったため、あまり一般的な名称ではないのかもしれません。)白は2コネクテッドパスポーンがあるため、簡単に勝てそうに見えます。しかし、実際には黒にはタフなディフェンスがあり、白はポーンを進めることが容易ではありません。。例えばいきなりポーンを突こうとすると失敗します。

1.Kb2 Rh3 2.h6? Rg3! 3.Rg7+ Kh8
と進むと、黒は次にルークを捨てればステールメイトなので、ルークでチェックをかけ続ければドローです。4.Kc2 Rc3+!=

しかし、よく考えてみると黒も指せる手がかなり限られていることが分かります。白は5段目にルークを持ってくることができれば、キングをg,hファイルに寄せていって勝ちとなるため、
(黒番だとして)1...Kf8 2.Rf7+! Kg8 3.Rf5+-
(黒番だとして)1...Rd3? 2.Rc7 Rd5(3.Rb5を防ぐ)3.h6+-(次に4.Rc8#がスレット)で両方とも白勝ちです。 このことは黒がRg3-Rh3と指し続けるしかないことを意味します。

では、白はキングをg,hファイルに寄せていけば、黒はRg3-Rh3をキープし続けられないので、簡単に白勝ちになるんじゃないの?と思われるかもしれません。それがそう簡単ではないのです。

もし、黒のルークがh3にいるときに白がKg2と指すと、驚くべきことに黒はRa3!とルークをg,hファイルから外すことができます。これはRa5-Rg5+(!)がチェックとなるため、白がhポーンを進められないことを利用したアイディアです。つまり白は何も考えずキングを寄せていっても、Kf2 に対してRh3 と指されるとツークツワンクとなり、勝つ方法がないのです。
White is in zugzwang!

しかし、これを逆に考えれば、黒のルークがh3にいるときに白がKf2と指せば、黒がツークツワンクになるということです。つまり答えは...

1.Ka2!!
1テンポロスして寄れば良いのです。

1.Kb2? Rh3 2.Kc2 Rg3 3.Kd2 Rh3 4.Ke2 Rg3 5.Kf2 Rh3 6.Kg2 Ra3! 7.Rb7 Ra5 8.Rh7 (8.h6? Rg5+=) 8...Ra3 9.Kh2 Rb3 10.Ra7 Rb5=

1.Rb7? Rg5 2.Rh7 Rg2!=


ちなみに1段目を使って1テンポロスしようとしても、うまくいきません。

1.Kb1? Rb3+! 2.Kc1 Rc3+ 3.Kd2 Rh3! 4.Ke2 Rg3 5.Kf2 Rh3=

1...Rh3 2.Kb2 Rg3 3.Kc2 Rh3 4.Kd2 Rg3 5.Ke2 Rh3 6.Kf2+-
Black is in zugzwang!

これで黒は次にRg3を指すことができず、ツークツワンクです。2つ前の図とポジションと同じですが、こちらは黒番であることがポイントです!

6...Ra3 7.Rd7 Rh3 8.Rd5 Kg7 9.Kg2 Rh4 10.Kg3+-

あとはRd7+から黒のキングを後退させ、白のキングをh6に向かわせるか、h6にポーンを進めれば白勝ちです。一部解説を割愛しているところがあるので、Endgame Manual が手元にある方はご自身でも確認してみてください。次回は同じくEndgame Manual から、Kasparian Position の実戦例をご紹介します。

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