チェスというのは不思議なもので、駒をなるべく取られないように取られないようにと考える一方で、チェックメイトにするためならば、どれだけ駒を捨てても構いません。しかし、有効ではないアタックに駒を投入しすぎたり、駒を捨てすぎたりすれば、ディフェンスされた際に大きな不利に陥ります。重要なのはアタックが有効であるか、相手のディフェンスの手段は十分にあるか、それを見極めることです。
ところが実戦でいざ攻め合いが始まると、その見極めを狂わす要素が出現します。それがディフェンス側の焦りです。特に自分のキングに魔の手が迫ると、落ち着いて考えれば簡単に見つけられるようなディフェンスを見落としてしまいがちです。今回は私の試合の中から、いくつかの"不正確な"ディフェンスの例をご紹介します。(※対戦相手が全て同じであることは偶然で、特に意図はありません。)
次にQxg7#がスレットになっているため、黒はそれを防がなければいけません。
しかし、黒が自分のキング周辺ばかりを見ていると、正しい手を指すことができません。
これは大失敗です。白にはアタックを続ける手段があるため、これではディフェンスになりません。
正しくは32...Rxb3! と指すべきで、これで攻守が逆転し黒のアタックが先に決まります。
33. Rxb3 (33. cxb3 Qc1+ 34. Ka2 Qxa1#) 33... Bxa1 -+
決定的なアタックがありながら、それを見落としてディフェンスに回ったしまったミスの例でした。それでは次へ。
黒は大きく駒得していますが、キング付近に迫っている2コネクテッドパスポーンが不気味です。
それでも正しくディフェンスできれば、問題なく勝てたはずでしたが・・・
A passive defence! このような消極的なディフェンスでは白にチャンスを与えてしまいます。
23... d4!
白マスビショップのダイアゴナルを開き、白キングに反撃するのが正しいディフェンスです。以下
24. fxe8=Q+ (24. g7 Qe2 -+) 24... Rxe8 25. Rf7+ Kc8 26. g7 Qe2 -+ ならば黒が勝てそうです。
攻撃は最大の防御、とも言うようにアクティブな反撃は一般的にとても有効です。この試合はチーム戦での一戦でもあり、絶対に勝たなくてはいけないことが焦りにつながったとも言えます。
黒はエクスチェンジを捨てているため、白キングへのダイレクトアタックに期待します。
King's Indian では典型的なアタックにどう対応するか難しいところですが、
29. Kg1 Nxf1 30. Bxf1 とエクスチェンジ返すのが正しく、これならば形成互角でした。
30 ...Nxb4!! 31. Qxa8+ (31. Qxb4 Bc8 32. Kg1 Bxh3 33. gxh3 Qxh3 34. Rf2 gxf2+ 35. Kxf2 g4 -+ 次のBh6 が決定的です。) 31... Bxa8 -/+
正しいディフェンスは32. f4! exf4! (32... Bxh3? 33. Qh5! +/-) 33. Qh5 Qxh5 34. Bxh5 Nxb4 35. Nb5 で、まだ勝負は分かりません。
このように自分のキングに危険が迫った際は、なかなか正確な判断ができないものです。これを鍛えるためには、正確な読みの力を伸ばすよりも、たくさんの種類のアタックとディフェンスのアイディアを覚えることが大切だと私は考えます。不正確なディフェンスにより試合を落としてしまったこと、皆さんも心当たりがあるでしょうか?
ところが実戦でいざ攻め合いが始まると、その見極めを狂わす要素が出現します。それがディフェンス側の焦りです。特に自分のキングに魔の手が迫ると、落ち着いて考えれば簡単に見つけられるようなディフェンスを見落としてしまいがちです。今回は私の試合の中から、いくつかの"不正確な"ディフェンスの例をご紹介します。(※対戦相手が全て同じであることは偶然で、特に意図はありません。)
Black to Move
Kojima, S - Tanaka, M
Master League Class B 2002
次にQxg7#がスレットになっているため、黒はそれを防がなければいけません。
しかし、黒が自分のキング周辺ばかりを見ていると、正しい手を指すことができません。
32... Qf8??
これは大失敗です。白にはアタックを続ける手段があるため、これではディフェンスになりません。
正しくは32...Rxb3! と指すべきで、これで攻守が逆転し黒のアタックが先に決まります。
Analysis Diagram
33. Rxb3 (33. cxb3 Qc1+ 34. Ka2 Qxa1#) 33... Bxa1 -+
33. Rhg1 f6 34. Rxg7+ Qxg7 35. Rxg7+ Kxg7 36. Qxa6 +-
決定的なアタックがありながら、それを見落としてディフェンスに回ったしまったミスの例でした。それでは次へ。
Black to Move
Tanaka, M (1737) - Kojima, S (1902)
Team Championship 2003
黒は大きく駒得していますが、キング付近に迫っている2コネクテッドパスポーンが不気味です。
それでも正しくディフェンスできれば、問題なく勝てたはずでしたが・・・
23... Qh8??
A passive defence! このような消極的なディフェンスでは白にチャンスを与えてしまいます。
23... d4!
白マスビショップのダイアゴナルを開き、白キングに反撃するのが正しいディフェンスです。以下
24. fxe8=Q+ (24. g7 Qe2 -+) 24... Rxe8 25. Rf7+ Kc8 26. g7 Qe2 -+ ならば黒が勝てそうです。
24. fxe8=Q+ Rxe8 25. Rf7+ Re7 26. Raf1 Bc6 27. Rxe7+ Kxe7 28. Rf7+ Kd6 29. Bf8+ 1-0
(29. Bf8+ Ke5 30. Bg7+ Qxg7 31. Rxg7 +-)攻撃は最大の防御、とも言うようにアクティブな反撃は一般的にとても有効です。この試合はチーム戦での一戦でもあり、絶対に勝たなくてはいけないことが焦りにつながったとも言えます。
Black to move
Tanaka, M - Kojima, S
ACC Rapid 2005 Spring
黒はエクスチェンジを捨てているため、白キングへのダイレクトアタックに期待します。
28... Ng3+ 29. Bxg3?
King's Indian では典型的なアタックにどう対応するか難しいところですが、
29. Kg1 Nxf1 30. Bxf1 とエクスチェンジ返すのが正しく、これならば形成互角でした。
29... fxg3 30. h3 Bc8?!
ここで黒は決定的なアタックを見落としています。30 ...Nxb4!! 31. Qxa8+ (31. Qxb4 Bc8 32. Kg1 Bxh3 33. gxh3 Qxh3 34. Rf2 gxf2+ 35. Kxf2 g4 -+ 次のBh6 が決定的です。) 31... Bxa8 -/+
31. Qe8+ Bf8 32. Qxc8?
次の32...Bxh3 を防ぐためのクイーンサクリファイスですが、この駒数ならば黒は順当に勝つことができます。正しいディフェンスは32. f4! exf4! (32... Bxh3? 33. Qh5! +/-) 33. Qh5 Qxh5 34. Bxh5 Nxb4 35. Nb5 で、まだ勝負は分かりません。
32... Rxc8 33. Bxa6 Ra8 34. Ra1 Be7 35. Nb5 Bd8 36. Bb7 Rxa1 37. Rxa1 g4 38. fxg4 Qd2 -+
このように自分のキングに危険が迫った際は、なかなか正確な判断ができないものです。これを鍛えるためには、正確な読みの力を伸ばすよりも、たくさんの種類のアタックとディフェンスのアイディアを覚えることが大切だと私は考えます。不正確なディフェンスにより試合を落としてしまったこと、皆さんも心当たりがあるでしょうか?