ハンガリーは知る人ぞ知る、ヨーロッパの温泉大国です。特に首都ブダペストには、整備された大小様々な温泉があり、観光客の多くはいくつもの温泉をはしごします。ところが、ハンガリーに来て1カ月もたつのに、1回も温泉にいかない日本人がいます。はい、それが私です。このままではダメだと思い立ち、昨日はセーチェニ温泉に行ってきました。
セーチェニ温泉へは、一昨年ハンガリーに来たときも行きましたが、今度は地下鉄ではなく、歩きで向かいます。アンダンテからすぐのイエロメトローの駅、オクトゴン。そこから地下を走る線路に沿って、地上の大通りを北上します。
15分ほど歩いて見えてくるのが、英雄広場です。中心に高い塔があり、ハンガリーの歴代国王等の像が14体並んでいます。
英雄広場の左右には、巨大な美術館がそびえます。こちらは東側の現代美術館です。
英雄広場を突きぬけると、緑豊かな大きな公園に出ます。この公園には、いくつかの博物館や動物園のほか、有名なセーチェニ温泉があります。公園内のテーブルでも、老人たちがチェスを楽しんでいました。
こちらはレンタル自転車屋ですが、この巨大な前輪の自転車は借りられるのでしょうか・・・
こちらはセーチェニ温泉の入り口です。2年前の記憶通り!
とりあえず、窓から1枚パシャリ。これがセーチェニ温泉のメインである、屋外温泉プールです。
こちらで入場チケットを購入します。ロッカーのレンタル料は3400フォリントでした。現在のレートは、1円で3フォリント程度のようです。説明は全てハンガリー語ですが、販売員は英語ができ、観光客を捌くのも慣れたものです。
入場したら水着に着替え、まずは屋内温泉を楽しみます。日本の温泉では考えにくいことですが、写真撮影もOKです。ただし、水着の姉ちゃんを撮りすぎると、彼氏に殴られるか、つまみだされるか、どちらかでしょう。
ハンガリーの温泉は日本の温泉に比べ、基本的に温度が低めですが、熱いものからぬるいものまで、いくつか種類があります。こちらは38度で、これでも高いほうです。センターのおじさん、のびのびしすぎ。
そしてついに屋外温泉に来ました。皆さん水着で、まるっきりプールに見えますが、一応温泉です。右奥に見えるのが、本物のプールです。
そしてセーチェニ温泉と言えばこれ!風呂チェスです。日本のガイドブックなどでも必ずと言って良いほど紹介され、この日は日本の旅番組の撮影クルーも来ていました。私はここで4局、地元の人と指してきました。最初の対戦相手には、日本のどこから来たのか?レイティングはいくつか?などと指している間に聞かれます。FIDE レイティングは2264 だと答えると、それじゃハンガリーのベスト100にも入れないな、と言われました。分かってるわ!
2人目のおじさんは英語ができず、となりのおばさんが通訳をしてくれました。おばさんには、明日も来る?じゃあ明後日は?と、しきりにまた来るよう催促されました。どうも今度は旦那を連れてくるので、彼と指してほしいという話のようです。1日1000フォリントも使わない生活なので、3400フォリントは高いですが、必ずまた行こうと思います。
サウナもありましたが、すぐに脱出しました。
こちらがロッカーです。入場チケット代わりのバンドが鍵になっており、好きなロッカーを選んで使います。そして驚くべきことに、セーチェニのロッカーは、男女区別されていません。着替えていると後ろを女性が突然通るので、すごくビビります。異性に着替えを見られるのが嫌な人のためには、ロッカーよりもレンタルが高いですが、着替え用の個室(キャビン)もあります。
ざっと昨日はこんな感じでした。ハンガリーに来て初めて(?)観光客っぽく振舞ったような気がします。結局、温泉でもチェスばかりでしたが・・・
そして、明日からはもう6月ですね。First Saturday は明後日、6月2日のスタートですので、温泉でリフレッシュした分、また良いスタートが切れればと思います。
2012/05/31
2012/05/30
Middlegame and Endgame Studies In The Practical Games
ハンガリーに来て1カ月近くたち、2つのIM トーナメントが終わりました。色々と勉強になることは多いですが、チェスは結局のところ、序盤の準備の問題ではなく、地力の強いほうが勝つ、という当たり前のことを、改めて認識しています。もちろん、対戦相手と色が事前にわかる総当たり形式でのトーナメントでは、普段のスイス式のトーナメントよりも、相手の研究はやりやすいと言えます。しかし、いくら優勢のポジションを築いても、中盤の構想力や、終盤の知識がなければポイントを失ってしまいます。そこで今日は、CAISSA のゲームの中から、興味深かった中盤、終盤をご紹介しようと思います。
黒はd4 のアウトポストを中心にうまく駒を組んでいるように見えますが、白もしっかりとd5 のアウトポストでナイトを安定させています。加えて、黒はd6,f5 に弱点となるポーンがあるのに対し、白には特に弱点はありません。ここからのGalyas の手の作り方には、是非注目していただきたいと思います。
キングを白マスに避けることで、次の手の準備となります。
ダブルビショップを消してしまいますが、その代わりにeファイルを活用できるようになります。
クイーンが入ってきた一瞬の隙を突いて、ナイトの位置を切り替えます。アウトポストはナイトにとってもちろん良い位置ですが、ずっとそこがベストとは限りません。
白はとうとう、eファイルから切り込むチャンスを得ました。f7 でのナイトフォークがあるので、黒はこのルークを取ることができません。
黒の細かいミスもありますが、それよりも白のダイナミックなピースプレーが印象的でした。誰も思いつかないような絶妙手を連発したわけではないですが、指すべき良い手をきちんと指し続けられることが、Galyas の強さなのではないかと思います。
次はこちら。黒は1ポーンアップしており、キングもカットオフしているので、うまく指せば勝てそうに見えますが・・・
試合後にMark はこのポジションを私に見せ、66... Re1-+ で簡単に黒勝ちだったと説明しました。本譜の手順でも勝てますが、確かに白ルークを1段目に下げさせないほうが、黒としては楽にパスポーンを進めることができます。
白は1段目でポーンをアタックし、黒がパスポーンを進めるのを妨害します。この形はどんなプレーヤーも勉強が必須なルークエンディングですが、皆さんは正解手順が分かりますか?私は高校生の頃、渡辺暁さんのHP で、これを勉強しました。
Mark 程のベテランFM が、このエンドゲームを知らないのは意外でした。試合後、私はMark に以下のラインを指摘しました。
72... Kg5! 73. Rg1+ Kh4 74. Rf1 Kg4 75. Rg1+ Kh3 76. Rf1 Rf8!
白キングが2ファイル離れているので、ルークをパスポーンの後ろに回す余裕があります! 77. Kd3 Kg2 78. Rf4 Kg3 -+
ルークを下げ、上記と同じアイディアでキングが上がれば、黒はまだ勝つことができます。
ルーク同士をぶつけ(当然ポーンエンディングドローだと判断したうえで)、キングでパスポーンを止めにいくのが、白としては正しいディフェンスです。
76... Rxe1 77. Kxe1 Ke5 78. Kf2 Ke4 79. Ke2= ならば、ドローのポーンエンディングです。
今回は幸いにも私にとって苦手の、エンドゲームでのヘマは出ませんでしたが、次のトーナメントでも大丈夫かは、もちろん分かりません。0.5ポイントが運命を分ける可能性のあるIM トーナメントでは、こういったゲームを勝ち切れるか、そしてドローに持ち込めるかが重要ですので、しっかり復習をしたうえで、また次のトーナメントに臨もうと思います。もちろん、Kantor 戦、Farkas 戦で現れた、中盤での構想力の弱さも、大きな課題として取り組むつもりです。
Galyas, M (IM, HUN, 2403) - Wang, D (CHN, 2130)
黒はd4 のアウトポストを中心にうまく駒を組んでいるように見えますが、白もしっかりとd5 のアウトポストでナイトを安定させています。加えて、黒はd6,f5 に弱点となるポーンがあるのに対し、白には特に弱点はありません。ここからのGalyas の手の作り方には、是非注目していただきたいと思います。
19. Kh1!?
キングを白マスに避けることで、次の手の準備となります。
19... a6 20. Bxd4!?
ダブルビショップを消してしまいますが、その代わりにeファイルを活用できるようになります。
20... Bxd4 21. Qf3 Qh4 22. Nc7!
クイーンが入ってきた一瞬の隙を突いて、ナイトの位置を切り替えます。アウトポストはナイトにとってもちろん良い位置ですが、ずっとそこがベストとは限りません。
22... Rac8 23. Ne6 Rf7 24. Ng5 Rf6 25. g3 Qh6 26. Re6!?
白はとうとう、eファイルから切り込むチャンスを得ました。f7 でのナイトフォークがあるので、黒はこのルークを取ることができません。
26... Qf8 27. Qh5 h6 28. Rde1 Rxe6 29. Rxe6 Bg7 30. Nf7+ Kg8 31. Nxh6+ Bxh6 32. Rxh6 1-0
黒の細かいミスもありますが、それよりも白のダイナミックなピースプレーが印象的でした。誰も思いつかないような絶妙手を連発したわけではないですが、指すべき良い手をきちんと指し続けられることが、Galyas の強さなのではないかと思います。
Vamos, V (HUN, 2232) - Lyell, M (FM, ENG, 2184)
次はこちら。黒は1ポーンアップしており、キングもカットオフしているので、うまく指せば勝てそうに見えますが・・・
66. Rb3 f4?!
試合後にMark はこのポジションを私に見せ、66... Re1-+ で簡単に黒勝ちだったと説明しました。本譜の手順でも勝てますが、確かに白ルークを1段目に下げさせないほうが、黒としては楽にパスポーンを進めることができます。
67. gxf4 Kxf4 68. Rb4+ Kg5 69. Rb1 f5 70. Rg1+ Kf6 71. Rf1
白は1段目でポーンをアタックし、黒がパスポーンを進めるのを妨害します。この形はどんなプレーヤーも勉強が必須なルークエンディングですが、皆さんは正解手順が分かりますか?私は高校生の頃、渡辺暁さんのHP で、これを勉強しました。
71... Rd8+! 72. Kc4 Rd2?!
Mark 程のベテランFM が、このエンドゲームを知らないのは意外でした。試合後、私はMark に以下のラインを指摘しました。
72... Kg5! 73. Rg1+ Kh4 74. Rf1 Kg4 75. Rg1+ Kh3 76. Rf1 Rf8!
白キングが2ファイル離れているので、ルークをパスポーンの後ろに回す余裕があります! 77. Kd3 Kg2 78. Rf4 Kg3 -+
73. Kc3 Re2?
ルークを下げ、上記と同じアイディアでキングが上がれば、黒はまだ勝つことができます。
74. Kd3 Re4 75. Kd2 f4 76. Re1!
ルーク同士をぶつけ(当然ポーンエンディングドローだと判断したうえで)、キングでパスポーンを止めにいくのが、白としては正しいディフェンスです。
76... Rd4+
76... Rxe1 77. Kxe1 Ke5 78. Kf2 Ke4 79. Ke2= ならば、ドローのポーンエンディングです。
77. Ke2 Kf5 78. Rb1 Kg4 79.Rg1+ Kf5 80. Rb1 Re4+ 81. Kf1 Re3 82. Kf2 Rh3 83. Rb8 Rh2+ 84. Kf3 1/2-1/2
今回は幸いにも私にとって苦手の、エンドゲームでのヘマは出ませんでしたが、次のトーナメントでも大丈夫かは、もちろん分かりません。0.5ポイントが運命を分ける可能性のあるIM トーナメントでは、こういったゲームを勝ち切れるか、そしてドローに持ち込めるかが重要ですので、しっかり復習をしたうえで、また次のトーナメントに臨もうと思います。もちろん、Kantor 戦、Farkas 戦で現れた、中盤での構想力の弱さも、大きな課題として取り組むつもりです。
ラベル:
CAISSA 2012 May,
Study
2012/05/29
CAISSA 2012 May - Final Results -
今月はあと2回、CAISSA 関連で記事を書くつもりですので、もうしばらくお付き合いください。まずはFS 同様に、5月のCAISSA をまとめた振り返りです。最終的な戦績や順位は、こちらで確認できます。
CAISSA の優勝もFirst Saturday と同じく、ハンガリーのIM Galyas,M でした。4勝5ドローと負けがなく、終始安定したプレーを見せていました。しかし、2100台のXu Huahua を含め、下に5ドローで、レイティングはマイナスになると考えられます。そのため、彼としては良い成績だったと素直に喜べないでしょう。それでも今後、彼がIM ノーム獲得への最大の壁であり続けることは間違いありません。来月こそ白を引けることを期待します。
私が2位であったことは、すでにお伝えした通りなので、次のKantor 少年にそのまま移りましょう。2009年終わりには1500台でありながら、今年の頭にFM を獲得した、恐るべき成長速度の坊やです。今年の夏でようやく13歳になります。彼はGalyas の教え子のようで、同じ部屋に滞在して指導を受けていました。
結果のほうは、負けなしの1勝8ドローでしたが、レイティングはいくつかマイナスになるでしょう。2300後半にいくためには、力強さやエンドゲームのテクニック、そしてなにより、集中力がまだ足りないと感じました(なんという上から目線w)。もちろん将来のIM, GM 候補として国内で期待もされているでしょうから、これからも要チェック人物です。
そして、4位に食い込んだのはこの人、中国のXu Huahua でした。レイティング通り、彼女が中国女子の中では一番強かったですね。私との試合では怪しげな指し回しでしたが、8R ではIM Hajnal に勝つ大金星を挙げ、最終的には3勝2敗4ドローで、WIM ノームを獲得しました。私がハンガリーに来て、彼女が初のノーム獲得者です。これには素直に称賛の言葉を贈りたいと思います。2200までは順調にいくと思うので、ハンガリーで今後、どこまで活躍できるかが見ものです。
Final Standings
CAISSA は毎月後半、ハンガリーの地方都市、ケチケメート(Kecskemet)での開催です。私は6月、7月とも参加を決めています。来月の参加者もすでに公開されていますが、IM ノームの最低平均レイティング、2230 に届いていないので、多少メンバーの修正が入るでしょう。来月も、好成績を収められるよう頑張ります。
そしてもう一つ、ニュースがあります。すでにTwitter では報告していましたが、私のコーチであるセルビアのGM Mihajlo Stojanovic 氏が7月頭、ブダペストに来る予定になりました。これまでメールのやり取りをしつつ、アドバイスを貰っていましたが、実際に会うのは2年前のオリンピアード以来となります。7月前半はプライベートレッスンを受けつつ、私はFirst Saturday のIM セクション、彼はGM セクションに参加することになりそうです。こちらはまだ正式決定ではありませんが、もし実現できれば、アツいチェス漬けの夏になりそうです。
CAISSA の優勝もFirst Saturday と同じく、ハンガリーのIM Galyas,M でした。4勝5ドローと負けがなく、終始安定したプレーを見せていました。しかし、2100台のXu Huahua を含め、下に5ドローで、レイティングはマイナスになると考えられます。そのため、彼としては良い成績だったと素直に喜べないでしょう。それでも今後、彼がIM ノーム獲得への最大の壁であり続けることは間違いありません。来月こそ白を引けることを期待します。
私が2位であったことは、すでにお伝えした通りなので、次のKantor 少年にそのまま移りましょう。2009年終わりには1500台でありながら、今年の頭にFM を獲得した、恐るべき成長速度の坊やです。今年の夏でようやく13歳になります。彼はGalyas の教え子のようで、同じ部屋に滞在して指導を受けていました。
結果のほうは、負けなしの1勝8ドローでしたが、レイティングはいくつかマイナスになるでしょう。2300後半にいくためには、力強さやエンドゲームのテクニック、そしてなにより、集中力がまだ足りないと感じました(なんという上から目線w)。もちろん将来のIM, GM 候補として国内で期待もされているでしょうから、これからも要チェック人物です。
そして、4位に食い込んだのはこの人、中国のXu Huahua でした。レイティング通り、彼女が中国女子の中では一番強かったですね。私との試合では怪しげな指し回しでしたが、8R ではIM Hajnal に勝つ大金星を挙げ、最終的には3勝2敗4ドローで、WIM ノームを獲得しました。私がハンガリーに来て、彼女が初のノーム獲得者です。これには素直に称賛の言葉を贈りたいと思います。2200までは順調にいくと思うので、ハンガリーで今後、どこまで活躍できるかが見ものです。
Final Standings
1st IM Galyas,M (HUN, 2403) 6.5P
2nd FM Kojima,S (JPN, 2264) 6P
3rd FM Kantor,G (HUN, 2339) 5P
4th Xu Huahua (CHN, 2168) 5P
CAISSA は毎月後半、ハンガリーの地方都市、ケチケメート(Kecskemet)での開催です。私は6月、7月とも参加を決めています。来月の参加者もすでに公開されていますが、IM ノームの最低平均レイティング、2230 に届いていないので、多少メンバーの修正が入るでしょう。来月も、好成績を収められるよう頑張ります。
そしてもう一つ、ニュースがあります。すでにTwitter では報告していましたが、私のコーチであるセルビアのGM Mihajlo Stojanovic 氏が7月頭、ブダペストに来る予定になりました。これまでメールのやり取りをしつつ、アドバイスを貰っていましたが、実際に会うのは2年前のオリンピアード以来となります。7月前半はプライベートレッスンを受けつつ、私はFirst Saturday のIM セクション、彼はGM セクションに参加することになりそうです。こちらはまだ正式決定ではありませんが、もし実現できれば、アツいチェス漬けの夏になりそうです。
GM Mihajlo Stojanovic
ラベル:
CAISSA 2012 May,
海外大会
2012/05/28
CAISSA 2012 May 9th round - Backrank Trap -
一番下が私の戦績です。
ケチケメートのIM トーナメント、CAISSA は昨日、最終戦を迎えました。私は一昨年敗れたイングランドのFM にきっちり勝って、4勝1敗4ドローの6ポイントいう戦績で、トーナメントを終えることができました。振り返ってみれば、FS もCAISSA も連勝で始まり、連勝で終わったんですね。IM ノームこそ逃しましたが、3つ勝ち越しの、10人総当たりのトーナメントで2位という結果は、決して悪いものではないと思います。
Lyell, M (FM, ENG, 2184) - Kojima, S (FM, JPN 2264)
CAISSA 2012 May IM (9)
1. e4 c6!?
Lyell はAnti-Sicilian の知識と経験が豊富にあり、前回はそれに敗れています。そこで今回は定跡の知識よりも、自力の差が出やすい局面に持っていくことを気にした、オープニングチョイスにしました。
2. d4 d5 3. e5 c5 4. dxc5 Nc6 5. Nf3 Bg4 6. c3!?
6.Bb5 のメイン(私の実戦例はこちらから。)に比べればマイナーですが、b2-b4 とポーンを守るアイディアは、黒からすれば意外と厄介です。黒は1ポーンを捨てる代わりに、バッドピースがなく、展開が早いことを利用して勝負します。
6... e6 7. b4 Nge7 8. Bg5!?N
指された直後は、e5 を守る手のほうが自然だけど、こういう手もあるのかなぐらいに思いました。g6-Bg7 ができないので、黒は他の手を考えます。
8... Qc7 9. Bxe7?
こちらは完全におかしいと感じた一手です。おそらくNe7-Ng6-Nxe5 を嫌ったのだと思いますが、黒マスビショップを消してまで(さらには黒の黒マスビショップの展開を助けてまで)、このナイトを取らなければいけない理由はないはずです。ここからは自然な流れで、黒は優勢の局面に持っていくことができます。
9.... Bxe7 10. Nbd2 O-O
こういったポーンストラクチャーでは、a8 のルークをアクティブにするため、どこかでa7-a5 を突くアイディアもあると思います。しかし、私は別の構想が頭にあり、それを保留しました。
11. Be2 Nxe5 12. O-O Nxf3+ 13. Bxf3 Bxf3 14. Nxf3
ここがポイントとなる局面です。黒はポーンを取り返したうえ、白よりも良いポーンストラクチャーとビショップを持っています。さらには次の一手で、黒はマテリアルのリードを得ることができます。
14... b6!
相手のダブルポーン解消を手伝う手は少し指しづらいですが、a,c ファイルがオープンになり、c3 の弱点がはっきり攻めやすくなることを考えれば、黒としてはやっておくべき手です。そして10手目辺りからこの手をイメージし、...a5 を保留していたというのも、忘れてはならないポイントだと思います。
15. cxb6 axb6 16. Qb3 Rfc8 17. Rfc1 Bf6
黒は自然にc3 を脅かし、ポーンをかすめ取るチャンスを伺います。ちなみにこのポーンストラクチャーは奇しくも、一つ前の8R と同じですね。
18. a4
Lyell はc3 を取られた際にビショップがピンになるので、Ra1-a3 で逃げられず、c3 は(ひとまず)落ちないと読んだのでしょう。しかし、それにはシンプルな落とし穴があります。
18... Bxc3!
ところが、黒はこれを取ることができます。19.Ra3 Qf4! 20.Rxc3?? Qc1+! とバックランクメイトがあり、cファイルのピンは全く生きません。
19. Ra2 Qc4 20. Qb1 Qxb4-+
さらに2ポーン目も落ちて勝負は決まったはずでしたが、ベストのフィニッシュを逃したせいで、ここから必要以上にゲームは長くかかってしまいます。
21. Qc2 Rc4 22. Rb1 Qc5 23. Rb5 Qc7 24. g3 Bf6 25. Qe2 Raxa4?!
相手のバックランクの弱さを突いてポーンを取ったのに、自分のバックランクに弱さに目がいかないとは迂闊でした。25...h6 ぐらいでバックランクメイトを外しておけば、決定的な3ポーン目が落ち、相手のリザインもすぐだったでしょう。
26. Rxa4 Rxa4 27. Rxd5!
完全に見落としていました。黒は全く焦る必要はないですが、仕留めそこなかったのは事実です。
27... Ra1+ 28. Kg2 g6 29. Rb5 Qc6 30. Rb3 Kg7 31. h4 h5 32. Qe3 b5 33. Rb4 Rc1 34. Rf4
34. Rxb5?? Rc3! 35. Rb6 Qc7-+ ならば、白のルークは死んでしまいます。
34... Rc3 35. Qe2 Qc5 36. Nd2 Rc2 37. Qd3
これでクイーン交換が確定したので、ゆっくりとbポーンでプレッシャーをかける楽なエンドゲームになります。
37... Qc3 38. Qxc3 Bxc3 39. Ne4 e5 40. Rf3 b4 41. Rd3 Bd4 42. Kf1 f5 43. Nd2 Kf7 44. f3 Ke6 45. Nb3 Kd5 46. Rd2 Rc3 47. Nxd4 exd4 0-1
そして試合後、夕方の列車でブダペストに戻ってきました。今日から5日間は休みを取り、また6月2日から始まるFirst Saturday に参加します。おそらく、来月もIM ノームの基準は5つ勝ち越しだと思いますので、それを目指して、また勝ち星を積み重ねていきたいと思います。引き続き、応援していただければ幸いです。
アンダンテへのお土産は、写真下にあるラベンダーの石鹸にしました。
ラベル:
CAISSA 2012 May,
Caro-Kann,
海外大会
2012/05/27
CAISSA 2012 May 8th round - Tremendous Accelerated Dragon -
Photo by Mr. Seres
CAISSA もいよいよ大詰め、8R です。私の試合は、対戦相手が午前中も試合をしていたことにより、一時間遅れでの開始となりました。一昨日の晩はこの8R のために、何を指すべきかあれこれ悩みましたが、そんな必要もないほどあっさり勝ちました。
Kojima, S (FM, JPN, 2264) - Vamos, V (HUN, 2232)
CAISSA 2012 May IM (8)
1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. g3!?
相手が最初の2手をやけに自信ありげに指してきたため、Nimzo-Inadian を指してくることは明らかでした。私も、3.Nc3 Bb4 4.d4 Nc6!? (アイディアは後に...d6,...e5)という彼の得意ラインを調べてきましたが、相手が嫌がると思い、あえてそれを外しました。
3... Nc6?!
この手はスペースを確保しないので、...Bb4 から黒マスビショップとc3 のナイトを消す構想との組み合わせで、力を発揮するはずです。そのため、白がd4 もNc3 も遅らせている以上、うまい手だとは思えません。
4. Bg2 e5?!
Just a tempo loss! 1.c4 e5 2.g3 Nf6 3.Bg2 Nc6 4.Nf3 と比べて、黒はe6-e5 とポーンを突き直しており、単純に一手損をしています。それはないだろうと思いつつも、1.c4 e5 の形はあまり白での実戦経験がないので、油断はできません。ところが・・・
4... d5 5. O-O dxc4 6. Qa4+/=
5. O-O d5?!
驚くべきことに黒は、Reversed Dragon のセットアップを取ってきました。ただでさえシャープなDragon で、2手損は致命的な遅れとなります。
6. cxd5 Nxd5 7. Nc3 Be6 8. d4!+/-
8.d3 でゆっくり行くか、少しだけ悩みましたが、展開で勝る白がセンターを開いて悪いはずがありません!黒はここから、2手損の重みを噛みしめることになります。
8... Nxc3 9. bxc3 exd4 10. Nxd4!
ここはナイト交換を挟み、白マスビショップのダイアゴナルを開いておくのが正解です。
10... Nxd4 11. cxd4 c6
白は開いたラインを最大限に利用して黒のポーンを攻めることができます。
12. Rb1 Qd7 13. Qa4 b5
14.Rxb7! の狙いを防ぎますが、代わりにc6 が弱くなります。
14. Qa6 Bd5 15. Bxd5 Qxd5 16. Be3
白は焦る必要が全くありません。d4 をシンプルに守りつつ、c ファイルにルークを回せば、黒はポーンを守りきれません。
16... Be7 17. Qb7 Rd8 18. Rfc1 Rd6 19. Qxa7
白はここでポーンをもらっておきます。19. Qb8+ Rd8 20. Qxa7 と一度チェックを入れておけば、なお良しでした。
19... Re6 20. Qa8+ Bd8 21. Qa3 Be7 22. Qb3!
ポーンアップしていることもあり、私はクイーンを交換しても勝てると判断しました。おそらくここはクイーンを交換するのがベストチャンスですが、実戦的には不利と分かっているエンドゲーム飛び込むのは、苦しい決断です。実際に彼は一発逆転のチャンスを求めて、クイーンを交換を避けました。
22... Qh5
22... Qxb3 23. Rxb3 Kd7 24. d5 cxd5 25. Rxb5 Ra6 26. Rxd5+ Ke6 27. Rd2 Rha8 28. Rb1+-
23. d5 Re5!?
この手を指されて何事かと思いましたが、すぐにQh5-Qh3, Re5-Rh5 が狙いであることに気が付きました。そこですぐにc6 を取るのではなく、ルークをアタックしておくことで白のQh5-Qh3 を防ぎます。優勢の局面では一手でも早く勝とうとするよりも、相手にカウンタープレーを許さないことが肝心です。
24. Qc3 O-O 25. dxc6 b4 26. Qd4 Bf6 27. c7 Rc8 28. Qd7 Ree8
もう一つの選択肢も、すぐに白勝ちになります。28... Qf5 29. Qxf5 Rxf5 30. Rxb4 Re5 31. Rb8 Ree8 32. Rxc8 Rxc8 33. Rb1 Be5 34. Bf4+-
29. Qxe8+ Rxe8 30. c8=Q Rxc8 31. Rxc8+ 1-0
連続ドローと悔しい負けの直後には、こうした思いがけないスカッとした勝利が巡ってくるものでしょうか。なにはともあれ、2つ勝ち越し状態で最終戦を迎えることとなりました。
最後の対戦相手は、あの Mark Lyell です。皆さんにとっては、どのMark? だと思いますが、私にとっては忘れられない相手です。初めてハンガリーに来た2年前、まだFS のシステムもよく呑み込めていない初戦で、私に痛い負けをくれた人です。色もその時と同じ黒なので、しっかり、その時のお返しをしようと思います。
夕食を求めて広場へ。昼にはなかった店を発見です。
奥にある豚肉とじゃがいも、たまねぎの炒めものをいただきました。
あまりに違和感がないので、スルーしていました(笑)まるで最初からHIVO というキャラクターがいるかのようです。
ラベル:
CAISSA 2012 May,
English Opening,
海外大会
2012/05/26
CAISSA 2012 May 7th round - Fatal Positional Error -
わくわくどうぶつランド
今日は週末ということで、再び中央広場の出店に足を運んでみました。毎週大体同じラインナップなのかと思いきや、店の種類も位置も全く違います!週ごとに色々と楽しめるよう、工夫されてるんですね。
色とりどりのお菓子が並びます。中にはアメリカにありそうな、すごい色のお菓子も。
こちらは棒に生地を巻きつけて炭火で焼いていました。パリパリのお菓子になるようです。
こちらはカラフルなチョコレート。10個500フォリントです。
広場の入り口には、巨大な砂場が!奥では子供たちがはしゃいでいます。。
さて、昨日の試合はと言えば、12試合ぶりに敗れてしまいました。完敗です。これでIM ノームと、密かに狙っていた海外トーナメント無敗&初優勝は露と消えました。得意のSveshnikov で負けたのもショックです。
Farkas, T (IM, SRB, 2249) - Kojima, S (FM, JPN, 2264)
初めて見てアイディアを理解するのはなかなか難しいであろう、トリッキーな変化です。実戦で見るのは、2007年、シンガポールのワールドユースで、上杉君が使って以来です。
私が知っていたのは、12. Bd2 O-O 13. Bb4 Qd7! とd6 を守る変化です。(14.Nxd6? a5!, 14.Bxd6? axb5)ビショップをe3 に退くと、白のクイーンの位置がやや奇妙ながら、通常の7.Nd5 の形に近くなります。
私はあまり白マスビショップをフィアンケットに組みませんが、ここではc5 を抑えつつ、ナイトを追い返すために実行します。
白は...Nc5 に対してb2-b4、黒はb2-b4 に対してa6-a5 としたいので、ここは様子見です。
少し奇妙な形になりました。黒はややクイーンサイドにピースを固め過ぎにも見えます。
コンピュータの指摘は21. Nc3 とナイトをセンターに戻す手ですが、黒がクイーンサイドにピースを集めたのを見て、キングサイドから仕掛けるのは自然な流れだと思います。
eファイルを開くことは、黒に取って自殺行為でした!...exf4 とポーンを交換して。e5 のマスを使うアイディアはこのラインではよく見かけますが、ここではナイトはb6 とc5 を抑える必要があり、ビショップもd8 に退いているため、e5 で使うピースがありません。加えて、...Rfc8 とルークが回っているため、f5 のポーンが弱いことからも、ラインを開くべきではなかったと言えます。
正解は21... e4 と閉じる手です。一見するとプロテクテッドパスポーンができるので黒が良さそうに見えますが、白はKg1-Kh1, Rf1-Rg1等と準備をしてから、g2-g4 とgファイルを開けば、チャンスがあるように思えます。それでも、このアタックには手数がかかるため、本譜に比べ圧倒的に黒が手を作りやすいことは明らかです。
22. Rxf4 Bg5 23. Rxf5 Bxe3+ 24. Qxe3 b5 25. Nc3 bxc4 26. Rf7+/- でも白がかなり良さそうです。
この手はあまり良くないを分かりつつ、どうしてもすぐにポーンを捨てる決断ができませんでした。22... Bf6 23. Be3 g6 24. Nxb6 Nxb6 25. Bxb6 Qg7 26. Bf2+/=
f5 のポーンとh7 をダイレクトに狙います。私がメインで考えていたのは、もう一つの弱点であるd6 を狙う変化です。24. Qg3 Be7 25. Rce1 Rf8 26. Bd3 と進めても、白が良さそうです。
私はこの手を見て、多少楽になったのではないかと思いました。それは弱点であるf5 が消え、Bb7-Bc8 がテンポになって、戦場に白マスビショップを戻せると考えたためです。しかし、それはかなり甘い考えで、h7 へのアタックの厳しさが次第にあらわになります。
26...Rf8 と指した後で、もしかすると失敗だったかもしれないと思いましたが、実際黒にはあまり良い手がありません。
26... Bd4+ 27. Kh1 Re8 28. Bd3 g6 29. Qh3 Kg8 30. Qg3 Rad8 31. h4 +/-
26... g6 27. Qh3 Bd4+ 28. Kh1 Re8 29. Bxd6 Qxd6 30. Rxb7+/-
試合中、まだ自分の評価は甘いものでした。28...Bc8 29.Qg3 が黒にとって良くないのは明らかですが、本譜ならば守りきることは可能で、恥ずかしながら、もしかすると白はドローラインを選ぶかもしれないとすら思っていました。
本譜も十分に強いですが、30. Bg5! Rde8 31. Qh5+- ならば、h7 へのクイーンの侵入を防ぐ手段がなく、即白の勝ちです。ちなみに上記のドローラインとは、30.Bxh6 からのパペチュアルチェックのことです。
28...Rad8 の時点は、この手が見えていませんでした。黒はバックランクの弱さと、b7 のビショップがターゲットになっていることから、要であるこのポーンを失います。
正確に嫌な手を指してきます。1ポーンダウンならばまだ望みがあったかもしれませんが、この手により、黒はさらにターゲットなるポーンを増やさざるをえません。
致命的な2ポーン目が落ちて、勝負は決まりました。ここで投げるべきだったと思います。
IM ノームのチャンスは消えてしまいましたが、レイティング+ を目指して、残り2戦も精一杯戦います。明日の最終戦が終わった後、夜の電車でブダペストに戻る予定です。
Farkas, T (IM, SRB, 2249) - Kojima, S (FM, JPN, 2264)
CAISSA 2012 May IM (7)
1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. Nd5 Nxd5 8. exd5 Nb8 9. Qf3!?
初めて見てアイディアを理解するのはなかなか難しいであろう、トリッキーな変化です。実戦で見るのは、2007年、シンガポールのワールドユースで、上杉君が使って以来です。
9... a6 10. Qa3 Be7 11. Bg5 f6 12. Be3!?
私が知っていたのは、12. Bd2 O-O 13. Bb4 Qd7! とd6 を守る変化です。(14.Nxd6? a5!, 14.Bxd6? axb5)ビショップをe3 に退くと、白のクイーンの位置がやや奇妙ながら、通常の7.Nd5 の形に近くなります。
12... O-O 13. Be2 b6
私はあまり白マスビショップをフィアンケットに組みませんが、ここではc5 を抑えつつ、ナイトを追い返すために実行します。
14. c4 Bb7 15. Nc3 Nd7 16. O-O f5 17. f3 Qc7 18. Rac1 Kh8
白は...Nc5 に対してb2-b4、黒はb2-b4 に対してa6-a5 としたいので、ここは様子見です。
19. Na4 Rfc8 20. Qb3 Bd8
少し奇妙な形になりました。黒はややクイーンサイドにピースを固め過ぎにも見えます。
21. f4!?
コンピュータの指摘は21. Nc3 とナイトをセンターに戻す手ですが、黒がクイーンサイドにピースを集めたのを見て、キングサイドから仕掛けるのは自然な流れだと思います。
21... exf4?
eファイルを開くことは、黒に取って自殺行為でした!...exf4 とポーンを交換して。e5 のマスを使うアイディアはこのラインではよく見かけますが、ここではナイトはb6 とc5 を抑える必要があり、ビショップもd8 に退いているため、e5 で使うピースがありません。加えて、...Rfc8 とルークが回っているため、f5 のポーンが弱いことからも、ラインを開くべきではなかったと言えます。
正解は21... e4 と閉じる手です。一見するとプロテクテッドパスポーンができるので黒が良さそうに見えますが、白はKg1-Kh1, Rf1-Rg1等と準備をしてから、g2-g4 とgファイルを開けば、チャンスがあるように思えます。それでも、このアタックには手数がかかるため、本譜に比べ圧倒的に黒が手を作りやすいことは明らかです。
22. Bxf4
22. Rxf4 Bg5 23. Rxf5 Bxe3+ 24. Qxe3 b5 25. Nc3 bxc4 26. Rf7+/- でも白がかなり良さそうです。
22... Nc5?
この手はあまり良くないを分かりつつ、どうしてもすぐにポーンを捨てる決断ができませんでした。22... Bf6 23. Be3 g6 24. Nxb6 Nxb6 25. Bxb6 Qg7 26. Bf2+/=
23. Nxc5 bxc5 24. Qh3!?
f5 のポーンとh7 をダイレクトに狙います。私がメインで考えていたのは、もう一つの弱点であるd6 を狙う変化です。24. Qg3 Be7 25. Rce1 Rf8 26. Bd3 と進めても、白が良さそうです。
24... Bf6 25. Qxf5
私はこの手を見て、多少楽になったのではないかと思いました。それは弱点であるf5 が消え、Bb7-Bc8 がテンポになって、戦場に白マスビショップを戻せると考えたためです。しかし、それはかなり甘い考えで、h7 へのアタックの厳しさが次第にあらわになります。
25... Bxb2 26. Rb1 Rf8
26...Rf8 と指した後で、もしかすると失敗だったかもしれないと思いましたが、実際黒にはあまり良い手がありません。
26... Bd4+ 27. Kh1 Re8 28. Bd3 g6 29. Qh3 Kg8 30. Qg3 Rad8 31. h4 +/-
26... g6 27. Qh3 Bd4+ 28. Kh1 Re8 29. Bxd6 Qxd6 30. Rxb7+/-
27. Qh3 Bd4+ 28. Kh1 Rad8
試合中、まだ自分の評価は甘いものでした。28...Bc8 29.Qg3 が黒にとって良くないのは明らかですが、本譜ならば守りきることは可能で、恥ずかしながら、もしかすると白はドローラインを選ぶかもしれないとすら思っていました。
29. Bd3 h6 30. Qe6
本譜も十分に強いですが、30. Bg5! Rde8 31. Qh5+- ならば、h7 へのクイーンの侵入を防ぐ手段がなく、即白の勝ちです。ちなみに上記のドローラインとは、30.Bxh6 からのパペチュアルチェックのことです。
30... Rf6 31. Bxd6!
28...Rad8 の時点は、この手が見えていませんでした。黒はバックランクの弱さと、b7 のビショップがターゲットになっていることから、要であるこのポーンを失います。
31... Qxd6 32. Rxf6 Bxf6 33. Qe4!
正確に嫌な手を指してきます。1ポーンダウンならばまだ望みがあったかもしれませんが、この手により、黒はさらにターゲットなるポーンを増やさざるをえません。
33... g6 34. Rxb7 Rg8 35. g3 Bd4 36. Qe7 Qxe7 37. Rxe7 Rf8 38. d6 Bf6 39. Bxg6+-
致命的な2ポーン目が落ちて、勝負は決まりました。ここで投げるべきだったと思います。
39... Rd8 40. Re6 Kg7 41. Be8 Rb8 42. d7 a5 43. a4 Rb1+ 44. Kg2 Rd1 45. Rc6 Be7 46. Rg6+ Kf8 47. Rxh6 Ra1 48. Rh8+ Kg7 49. Rh5 Rxa4 50. Rd5 Bd8 51. Rxc5 Kf6 52. h4 Ra2+ 53. Kh3 a4 54. Rc8 Ke7 55. Ra8 Bc7 56. Rxa4 1-0
IM ノームのチャンスは消えてしまいましたが、レイティング+ を目指して、残り2戦も精一杯戦います。明日の最終戦が終わった後、夜の電車でブダペストに戻る予定です。