2013/02/28

Cappelle la Grande 2013 6th round - Unstable Play -


カペルでは、自分のネームプレートと国旗で、どこが自分のボードか分かるようになっています。

さて、昨日はカペル後半戦の初戦、6R でした。前日に勝ったのにも関わらず、対戦相手のレイティングは下がり、やる気が少し削がれますが、この大会の性質上仕方がありません。そしてこの日の対戦相手のフランスのおじさんは、前年に南條くんと対戦したプレーヤーのようですね。

Le Pape, V (FRA, 2004) - Kojima,S (FM, JPN, 2368)
Cappelle la Grande 2013 (6)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5!?



ハンガリーでは出番のなかったこちらを、久々に指してみることにします。もちろん白では何でも指しており、直前のラウンドもこれでしたね。

6. e3 e6 7. Bxc4 Bb4 8. O-O O-O 9. Qe2 Bg4!?


数年前にPlay The Slav の勧めとして発見、それ以降研究してきたラインです。FIDE 公式戦では、2011年のタイでのゲーム以来の登場となります。

10. h3 Bh5 11. Rd1 Nbd7 12. e4 Qe7 13. Na2!?



ノータイムで指す私に対し、相手はここまでかなりの時間を使ってきました。ここでナイトを退いてビショップを追い返すアイディアは、黒がh2-b8 のダイアゴナルを取れるため、満足な流れだと思います。13. e5 Nd5 14. Ne4 f6!? が私のメインの準備でした。

13... Ba5 14. b4 Bc7 15. Ba3 e5!


黒は完璧なタイミングで、e6-e5 のセンターブレイクを成功させ、すでにイコアライズに成功しています。ここまで私の消費時間は8分ほど、対する相手は1時間以上を使っていました。それによって無理をしなくても相手が自滅するだろうと考えたことが、この先のプレーを不正確にする要因だったと反省しています。

16. d5 cxd5!?



16... Nb6 17. dxc6 Bxf3! 18. gxf3 bxc6(この形でc6 が将来的な弱点になるかと思いましたが、白の開いたキング前のほうが明らか問題となっていることは一目瞭然でした。) 19. Bb3 Nh5! 20. Bc1 Rad8=/+ すぐに攻めきれずとも、ここからじっくりと白キングにプレッシャーをかけていけば、黒が優勢でしょう。

17. Bxd5 Nxd5 18. Rxd5 Nb6?!


ここで目先のマテリアルを重視したのは、この試合最初のミスでした。18... Nf6 19. Rd3 Rfd8 20. b5 Qe6=/+ 黒はダブルビショップを得たことで満足しておくべきです。

19. Rd3 Nxa4?! 20. b5 Nc5 21. Rd5 b6?!



21... Bd6 22. Rad1 Rfd8 23. Nc1 ならば白にポーンの代償がありますが、勝負の行方はまだまだ分からないでしょう。本譜の21... b6 は、c6、a6 のマスを弱めてしまい、白の反撃を許す形になってしまいます。

22. Nb4! Qf6?! 23. Na6!


なぜかc6 のマスしか見ておらず、このシンプルな手を見逃していました。白は落としたポーンを取り返し、イニシアチブを掴めそうです。そしてさらに、予想外の展開に動顛したか、ミスが続きます。

23... Ne6?



23... Bd6 24. g4 Bg6 25. Nxc5 Bxc5 26. Bxc5 bxc5 27. Rxc5+/= ポーンを取り返した白が明らかな優勢ですが、このように耐えるしかありません。

24. Nxc7?


これは相手の時間切迫によるミスで、再び黒が息を吹き返します。シンプルにエクスチェンジを取りに行けば、問題なく白の勝勢でした。24. Bxf8! Nf4 (24... Rxf8 25. Qe3!(なぜかこのクイーンが避ける手を考えておらず、黒にまだチャンスがあると勘違いしていました。)26... Bxf3 26. Qxf3 Qe7 27. Nxc7 Qxc7 28. Qf5+-) 25. Qd1 Qg6 26. g4 Nxh3+ 27. Kf1 Bxg4 28. Nxc7 Bxf3 29. Qxf3 Qg1+ 30. Ke2 Qxa1 31. Qxh3 Rxf8 32. Rd7+/- この3ポーンピースは白の駒の配置が良く、なかなかポイントを削るのは難しいでしょう。f8 を取られていれば、敗色濃厚でした。

24... Nxc7 25. Bxf8 Nxd5 26. exd5 e4!-/+



白が見落としていたのはこの一手です!黒はf3とa1 のダブルスレットによって、再び攻勢に戻ります。

27. Qe1 exf3 28. Be7 Qg6 29. g3 Qf5!


h3 とd5 をダブルアタックする、勝つための重要なアイディアです。これで駒数は2ポーンアップとなり、丁寧に指せばあとは勝てるはず...でしたが?

30. d6 Qxh3 31. Qf1 Qd7 32. Rc1 Rc8 33. Kh2 Bg4 34. Rc4 h6?



コンピュータで解析するまで、この手が悪手だとは全く考えませんでした。バックランクを守るのを遅らせ、34... Rxc4! 35. Qxc4 Qf5-+ ならば黒勝ちです。

35. Qc1??


黒は再び、相手のミスに助けられました。35. Rxg4! Qxg4 36. Qh3!(驚くべきアイディアで、白はd7 のマスを奪い、パスポーンを生かしてマテリアルを取り戻します。)36... Qc4 37. d7 Ra8 38. d8=Q+ Rxd8 39. Bxd8 Qxb5=/+

35... Rxc4 36. Qxc4 Qf5-+



これでようやく黒は一息つけます。白はg2 でのメイトを防ぐためにクイーンが自由に動けず、ジリ貧の展開となります。

37. Qf1 Qh5+ 38. Kg1 Bh3 39. Qd1 Bd7 40. Qa4?? Qh3 0-1


今大会の相手で一番レイティングの低い相手に、危うくポイントを落とすところでした。残り3戦、より気を引き締めて試合に臨まなければいけませんね。連勝でようやくボードが上がり、7RはロシアのGM Kiselev, V との対戦です。今大会は不調のようで、下にドローを続けているようですので、私のここに一枚噛んでポイントを削ってこようと思います!

この日は三村くんと石塚さんが2100台に挑みましたが、あえなく負け。小林くんは1600台とドローで意気消沈です。一方で橋本さんは相手のミスに助けられながらも、1600のFIDE を持つプレーヤーに勝ち!4人はそろって3P になりました。彼らもハーフ、そして勝ち越しを目指すのであれば、最後の3戦をより一層、しっかりと指さなければいけません。

Kojima, S (FM, 2368) 4/6 RP 2360
Kobayashi, A (1997) 3/6 Rp 2023
Ishizuka, M (1790) 3/6 Rp 1856
Mimura, K (1770) 3/6 RP 1926
Hashimoto, A (UR) 3/6 Rp 1664


あれ、私だけパフォーマンスがレイティングより下? でも、ここまではレイティングプラスです。大丈夫!

さて、今日の記事の最後は今大会の女子プレーヤー特集とします。今回のメインですね(笑)カペルには毎年、各国からとても多くの女子プレーヤーが参加しており、その数は他のオープン大会と比べ物にならないと思います。(全体数が多いので当然ですが)去年は半数近くのラウンドで、女子プレーヤーを引いた日本の若者もいましたね。


アルメニアのNo.1 女子、Danielian,E (GM, 2466) は、世界でも数少ないGM タイトルを持つ女子プレーヤーです。


石塚さんが前日に敗れた、Coimbra, M (WFM, 2113)はポルトガルからの参戦です。


三村くんお気に入りのフランス少女は、お髭が生えているようです。


イスラエルのShvayger, Y (WFM, 2232)は、まだ18歳のようです。若い女子も多いですね。


最後はポーランド女子を2人。Przezdziecka, E(WFM, 2149)は私と同い年。


私が去年対戦したIwanov, A (WIM, 2216) は、ロンドンでは気にしていませんでしたが、結構可愛らしいと思います。

2013/02/27

Cappelle la Grande 2013 5th round - Crossing Knight Fork -


試合前の日本人選手の様子

昨日までの記事でお気づきの方も多いと思いますが、今大会では私は帽子をかぶってプレーしています。私としては、チェス歴12年で初めての試みです。この帽子はブダペストを離れる1週間ほど前に友人から貰ったもので、とても気に入っているんです。帽子をプレゼントしてくれた竜也くん、見てるー?

かつて2009年に参加したカペルでは、キルギスタンのFM Tologon Tegin Semetei くんが、とても特徴的な帽子を被ってプレーしていたことが印象的でした。彼の真似をしているわけではないですが、会場で帽子をかぶっていれば目立つだろうと思い、今回試してみています。そして、帽子をかぶってプレーした試合は全て勝ち!(Jovanic 戦は帽子を脱いだ途端に悪手が(笑))昨日もこのジンクスに再びあやかろうと、帽子と共にポーランド少女との試合に臨みました。

Kojima,S (FM, JPN, 2368) - Leks, M (POL, 2083)
Cappelle la Grande 2013 (5)

1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. a4 Bf5 6. Ne5 Nfd7?!



2度目の6. Ne5 のゲームは、すぐに不思議な手でのカウンターパンチ!見たことのないこの手に対して、白がアドバンテージを取る方法を考えます。

7. e4!?


白は従来のアイディア通り、c4 をポーンで取っても優位に試合を勧められるでしょう。7. Nxc4 Nb6 8. Ne5 N8d7 9. e4! Nxe5 10. exf5 Ned7 11. a5+/-

7... Nxe5 8. exf5 Nd3+ 9. Bxd3 cxd3 10. Qxd3+/=



これが私のイメージしたポジションで、白には明らかな展開の優位があります。さらにはf5 のポーンの存在により、黒はe7-e6 が突けず、黒マスビショップの組み方が限定されることになります。

10... Na6 11. O-O Nb4 12. Qe4 Qd7 13. Bf4 g6


黒は遅かれ早かれ、この手を指すしかありません。13... 0-0-0?! 14. Nb5! は白の攻めが決まりそうです。

14. fxg6?!



ところが、ここがやや緩手でした。hファイルを開くことは、黒にルークでのカウンタープレーのチャンスを与えてしまいます。14. f6! e6 15. Be5 とダブルポーンを交換せず、f6 にポーンを残しておくほうが、黒の負担が大きいままでした。f6 まで進んだポーンが将来的なターゲットなることを気にしましたが、e5 にビショップを置けば確かに問題ありません。このような形は今月のCAISSA での、Zhou, G 戦で現れており、私の判断が苦手な分野だと言えそうです。

14... hxg6 15. Be5 Rh5 16. Rfe1 e6 17. Rac1 Bd6 18. Qf3!?


この手は時間をかけた末に、面白いアイディアだと思って試してみました。d3 でナイトフォークにも見えますが...?

18... Nd3 19. Ne4!



ここがクリティカルポジションです。実を言えば、私はNc3-Ne4 からf6 のカウンターナイトフォークを狙えば、白が優勢になると思いこんでいました。彼女にとっても、この手は予想外の一手だったのでしょう。しかし、冷静になれば黒はこのポジションを形勢互角で乗り切ることができます。

19... Bxe5?


ビショップを交換し、dファイルを開くことは、白の攻めを助ける結果になってしまいます。19... Nxe1! 20. Nf6+ Ke7 (20... Kd8!? 21. Rxe1 Rf5! 22. Qb3 Qc7 23. g4 Bxe5 24. dxe5 Rxf6 25. exf6 Qf4 26. Qa3 Qxg4+ 27. Kh1 Kc7 28. Qe7+ Kb6 29. Qxf7 Qf3+ 30. Kg1 Qg4+ この長い変化を読み切るのは難しいですが、黒が20... Ke7 とどちらを選ぶべきかは、簡単には言えません。) 21. Qb3! (21. Rxe1 Rf5! 22. Qxf5 exf5 23. Nxd7 Kxd7 24. Bxd6 Kxd6 25. g3=) 21... Qc7 22. Bxd6+ Qxd6 23. Nxh5 Nd3!


Analysis Diagram

シンプルですが、チェスの奥深さを垣間見る一手だと思います。黒はナイトをd3 で取らせることにより、白クイーンの利きをb7 から外します。 (23... Rb8? 24. Ng3!+-) 24. Qxd3 (24. Qxb7+ Qd7 25. Qxd7+ Kxd7 26. Nf6+ Kc7 27. Rc2 Rd8=) 24... gxh5= このように変化は多いですが、全て黒満足な形勢に落ち着きます。昨日のJovanic とのゲームもそうですが、チェスのタクティクスというのは複雑なものですね。

20. dxe5 Nxe1



20... Nxe5? Nf6+ Ke7 22. Rxe5!+- は黒が大きな駒損です。白は先に黒にナイトフォークを許し、ルークを取らせましたが、ここからカウンターナイトフォークを決め、逆に駒得での優位を得ます。

21. Nf6+ Kd8 22. Rxe1 Qe7 23. Rd1+ Kc7?


そして最後の決定的なミス。試合中、なぜc8 に避けないのか理解できませんでした。23... Kc8 24. Nxh5 (検討で教えてもらったところ、彼女は24. Rd7? Qb4 25. Qd1 からの攻めが決まると読んでいたそうです。しかし、黒キングはメイトになりません!)24... gxh5 25. Qxh5 Kc7 26. h4+/- 白は1ポーンアップで、あとは丁寧にhポーンを突いていけば勝てるでしょう。

24. Rd7+ Qxd7 25. Nxd7 Rf5 26. Qb3!



白はナイトが生還するため、クイーン+ナイト VS. 2ルークの駒割となり、勝負を決めるマテリアルアドバンテージを得ます。

26... b6 27. Qd3 1-0


ポーランドジュニアとの勝負には4連勝!途中怪しいポジションもありましたが、下相手でも何事もなく順当に勝つゲームはさほど多くないものです。今日は2000台前半の地元のプレーヤーが相手ですので、ここまさっくり勝っておきたいですね。

折り返しの5Rは、2300弱に挑んだ石塚さんと三村くんが負け。他の3人が下に勝ちでした。今大会、ここまでなかなか格上からのポイントは多くないですね。7R 以降、そろそろ私も仕事をしなければいけません。

Kojima, S (FM, 2368) 3/5
Ishizuka, M (1790) 3/5
Mimura, K (1770) 3/5
Kobayashi, A (1997) 2.5/5
Hashimoto, A (UR) 2/5




像のある中央広場付近から、カペル行きの市バスが出ています。


7年前に初めて来た時(もしかすると3年前かも)見つけたパン屋さん。サンドウィッチとケーキがメインで売っています。


好きなサンドウィッチとケーキ、飲み物のセットで5.95ユーロです。


パン屋の隣の本屋にいるオシャレワンちゃん(笑)

2013/02/26

Cappelle la Grande 2013 3rd and 4th rounds - Float And Sink -


Photo by Mimura

大会3日目は1日2試合のスケジュール、朝8時半に迎えのバスが来て、カペルへと向かいます。午前中、3R の私の相手は、ポーランドの12歳の少年でした。これまで試合をしたRadslaw やAnna 以外にも、ポーランドからは多くのジュニアプレーヤーが、このカペルに乗り込んできています。

Kojima,S (FM, JPN, 2368) - Winiarski, M (POL, 2097)
Cappelle la Grande 2013 (3)

1. Nf3 Nc6 2. d4 d5 3. Bf4 Nf6 4. c4 e6!?



Chigorin Defence のサイドライン。メインで研究していたのは4... Bg4 ですが、こういった手もありえるでしょう。この後、黒がビショップをe7 に出すようであれば、先月のMeszaros 戦のようになるかと思っていましたが...

5. e3 Bb4+ 6. Nbd2 Ne4 7. a3


ここはうっかり、7. Bd3? g5! 8. Bg3 g4!-/+ と指すところでした(汗)

7... Bd6 8. Bg3 O-O 9. Bd3 Nxd2 10. Qxd2 dxc4 11. Bxc4 b6 12. O-O-O!?



私の最近の白のレパートリーで、ロングキャスリングするオープニングはほぼ皆無です。前回、白でロングキャスリングをしたのがいつだったか思い出せません(笑)12. Qc2! Bb7 13. Bd3 h6 14. Bh7+ Kh8 15. Be4 Na5 16. Bxb7 Nxb7 17. O-O+/=

12... Bd7 13. Qc2! Na5 14. Bd3 h6 15. b4 Qe8?


相手はこの時点で相当時間切迫でしたが、ピースを捨てなければいけないという判断は間違いでしょう。15... Nb7 16. Bh7+ Kh8 17. Be4 Rb8= ぐらいで問題はなさそうです。

16. bxa5 Bxa3+ 17. Kd2 Bb4+ 18. Ke2+/-



白はキングをe2 の安全圏まで逃せば、何も不安はありません。2ピースルークの駒割でも、白には強力なキングサイドアタックのチャンスがあります。

18... Ba4 19. Qc4 Bxd1+ 20. Rxd1 Bxa5 21. Bb1!?


ここからの白のプランを決める重要な一手です。白マスビショップを失った黒は、当然白マスをサポートしづらく、白はそこをついてキングへのダイレクトアタックを狙います。

21... Rc8 22. Qd3 f5 23. Ba2!



e6 のポーンやg6 のマスを弱めた後は、ビショップのダイアゴナルを切り替えて、キングへのプレッシャーを保ちます。

23... c5 24. Bd6 Rf6 25. dxc5 bxc5 26. Ne5 Qh5+ 27. Nf3 Bb6 28. Be7!


ルークをアタックしつつ、クイーンの道を空けることで勝負を決めます。黒はe6 のポーンを守りきることができません。

28... Rg6 29. Qd7 Rb8 30. Bxe6+ Kh7 31. Bxf5 Kh8 32. g4 Qh3 33. Bxg6 Ba5 34. Bf6 1-0



直前に2300台からポイントを取っているということで、多少警戒してゲームに臨みましたが、終わってみれば問題のない相手でした。これで貯金生活に入り、午後のラウンドを迎えます。

この3R では、小林くん、三村くん、石塚さんが2300台との対戦となりましたが、全員揃って負け。小林くんは1ポーンアップで、順当に行けば勝てるであろうというゲームを逆転メイト負けだったので、相当悔しいでしょう。私もカペルでは2ポーンアップを負けたりと、悔しい思い出がいくつもあります。そういった苦い思いをするのも、全て勉強です。続いて午後のゲームへ。

Jovanic, O (GM, CRO, 2547) - Kojima,S (FM, JPN, 2368)
Cappelle la Grande 2013 (4)

1. d4 d5 2. Nf3 Nf6 3. c4 c6 4. e3 g6 5. Nc3 Bg7 6. Be2 O-O 7. O-O a6!?



これまでは7...Nbd7 ばかりを指してきましたが、Kamsky の得意とする最も人気のある手を、この強豪相手に初めて実戦投入します。

8. Bd2!? dxc4 9. Bxc4 Nbd7 10. b4!?


早めのBc1-Bd2 を生かすならば、こうなのかぁと思いつつ、黒で満足できる形を探します。個人的には、ここから15手目までは完全に予想通りの展開で、今まで研究してきたラインをうまく組み合わせて考えられたと思います。

10... Nb6 11. Bb3 Bg4 12. Rc1



自然に見える12. h3 Bxf3 13. Qxf3 e5! 14. dxe5 Qxd2 15. exf6 Qxc3 16. fxg7 Kxg7= は黒に全く問題ない展開でしょう。それを気にしての、12. Rc1 です。

12... e5!


このアイディアは少し違う形ですが、Giri, A - Almasi, Z のゲームから学びました。黒は一時的に1ポーンを捨てても、すぐにこれを取り返すことができます。

13. dxe5 Nfd7 14. h3


14. e6 fxe6 15. h3 Bxf3 16. Bxe6+ Kh8 17. gxf3 Ne5 18. f4 Qxd2!(私は試合中、18... Nd3 でもポーンの代償があると思っていましたが、こちらのほうがシンプルです。) 19. fxe5 Qxd1 20. Rfxd1 Rae8= こう進むようであれば、もちろん黒OK です!

14... Bxf3 15. Qxf3 Nxe5 16. Qe2 Qd3!?



このような形では、クイーンをぶつけて素早くルークを後ろに回すのが一般的ですが、ここでは16... Nd3 とナイトが飛び込む手も指せそうです。しかし、b4 のポーンを取らせてラインを開くのは、ダブルビショップを持つ白が多少の代償を持つと考えました。ならば堅くクイーン交換です。

17. Qxd3 Nxd3 18. Rb1 Rad8 19. Ne4 Rfe8 20. Ng5 Rd7


カペルでは20手未満のドローは禁止されており、ここまでの上位ボードのゲームをチェックすると、20手に到達した時点でドローにする組み合わせもちらほら見られます。私もこのポジションは黒が悪いはずはなく、よっぽどドローオファーしようかと思いました。しかし、悪くないならばもう少し白の指し方を見ようと思ってオファーを見送った途端、予想をはるかに超える手が相手から跳び出します。

21. e4!



いったいこの手が何なのか、試合中はほとんど分かりませんでした。c1-h6 のダイアゴナルを開いているので、白の最大の問題であったパッシヴな黒マスビショップの問題は解決できそうです。しかし、g5 のナイトを追い返せば、e4 のポーンはタダ落ちです。Jovanic はポーンを捨ててでもビショップを気にしているのかな?と思い、とりあえずナイトを追い返すことを決めました。それがこの試合最大の失敗であり、完全に相手の思うつぼでした。

21... h6?


21... Nb2! 22. Bc1 N2c4=/+ ならば、ダブルビショップを抑え込むナイトとセンターに早く回したルークの力により、黒がわずかに優勢だと判断できます。

22. Nxf7! Rxf7 23. Be3!+-



このポジションになって愕然としました。上記の変化ならば盤上を支配している2つのナイトが、今は不安定でガタガタです。黒はナイトをどこに逃がそうとも、2ピースルークより悪いマテリアルになります。

23... Nc8 24. Rfd1 Ne5 25. f4 Kh7 26. fxe5 Rfe7 27. e6


どこかで白が間違えないかと期待しましたが、白は間違えようがなく一直線です。完全に負けたことを悟りました。

27... Rxe6 28. Bxe6 Rxe6 29. Rd7 Rxe4 30. Bf2 b5 31. Re1 1-0



21手目の予想外な手に対し、冷静に考えればf7 切りは見えたはずです。3R は全く成立しなかった相手のサクリファイスでしたが、残った駒のアクティビティーによっては、2ピースルークの交換も十分であると認識し、もっと警戒しなければいけません。2試合目で疲れているのは相手も同じですので、言い訳のできない力負けでした。

4R、他の日本人は三村くんと石塚さんが下に勝ち。橋本さんは1700に再び負け。そして小林くんは私の友人、Gajek Radslaw と対戦して敗れました。小林くんはゲームの内容は良いものの、大切なポジションで自分に有利なように形勢判断をしてしまっている節があります。今日は残念な連敗でしたが、また気を取り直して星を積み重ねてほしいですね。

今日は再びポーランドのジュニア、しかも少女との対戦です。ポーランドジュニアは3連勝中の相性の良さを発揮し、ここまで勝って後半へと繋げていきたいところです。


会場には例年通り、チェスショップが出ています。


夕飯は三村くんと一足早くダンケルクに戻り、サブウェイへ。

2013/02/25

Cappelle la Grande 2013 2nd round - No Loser -


Photo by Ishizuka

カペル・ラ・グランド2日目は、日本人参加者5人が揃って負けなしの結果です!私と石塚さん、橋本さんが下に勝ち。三村くんは格上の2000台に白でさっくり勝ち!そして、一番の強敵である2200台のFM と対戦した小林くんは、ドローという結果でした。大会2日目にして全員が白星を挙げ、全体で5つ勝ち越しとは、上々の滑り出しと言えそうです。

Rubino, W (FRA, 2109) - Kojima,S (FM, JPN, 2368)
Cappelle la Grande 2013 (2)

1. e4 c6 2. c4 d5 3. exd5 Nf6 4. Nc3 cxd5 5. Qa4+ Nbd7 6. cxd5 g6 7. Nf3 Bg7 8. Qb3!? O-O 9. Bc4



早くも得意のCaro-Kan ながら、未経験のポジションに突入します。白ががっちり守ってきたd5 のポーンをどう取りにいくか、または取りに行けない場合、どのように対抗するかを考えます。

9... a6 10. a4 Qa5!?


b7-b5 を一度見せておき、ルークの位置をかえさせてからナイトを動かすことにします。

11. Ra2 Nc5 12. Qa3 Qc7 13. O-O Bf5!



黒はクイーンを2回動かしましたが、その間に白が指したRa1-Ra2 が有効な手かと聞かれると、少し疑問です。黒はここから、浮いたc4 のビショップを狙いつつ、早いピースの展開を利用して、白にじっくりとプレッシャーをかけていきます。

14. Re1 Rac8 15. d3 Bxd3!


相手が長考の末に進めてきたポーンを取ります!e7 のポーンは落ちますが、白には黒マスビショップの展開と、a2 の妙な位置のルークという問題が残されています。

16. Bxd3 Nxd3 17. Rxe7 Qc4 18. Bd2



白は黒マスビショップを、ナイトの魔の手から逃がさないといけませんが、問題はどのマスを選ぶかということです。18. Be3?(私はこの手が一番自然だと思っていましたが、ルークの帰る道をふさいでしまうため、うまくいきません。) 18... Nxd5 19. Nxd5 (19. Re4?! Nxe3!!(このクイーンサイクリファイスは試合中に見つけ、検討戦でも成立することを確認しています。) 20. Rxc4 Nxc4 21. Qe7 Ncxb2 22. Ne2 Rfe8 23. Qxb7 Nc5!-+ ) 19... Qxd5-+ 次にb2 取りや、Bg7-Bf6 というスレットがあり、黒勝勢です。

18... Nb4!


18... Nxd5 19. Nxd5 Qxd5-/+ でも黒の明確なポジショナルアドバンテージがありますが、ここはさらに分かりやすく、エクスチェンジをいただくことにします。

19. Ra1 Nc2 20. Qa2 Nxa1 21. Qxa1 Nxd5 22. Ne5 Qb4 23. Rd7 Nxc3 24. Bxc3 Qe4 0-1



白には何も反撃の要素がなく、ここでリザイン。ほぼ研究していないポジションの割にうまく指せたことは、自分の成長の証かもしれないと思う今日この頃です。

さて今日は、唯一1日2試合のハードスケジュールデイです。連勝の石塚さんと三村くん、小林くんの3人は2300台との対戦が決まり、さらに上へ行くために重要なラウンドを迎えます。三村くんの対戦相手のPeter Hopman は、私が5年前にタイで対戦したオランダのプレーヤーで、たまたま昨日、会場で話をしたところでした。2R こそクロアチアのGM に負けましたが、初戦は2500台のGM からドローを取っており、Corus Cグループにも複数回の参加経験を持つ実力者です。3人が2300台とどのような対戦をするか、注目させてもらおうと思います。


会場にはFS で対戦したプレーヤーがちらほら。こちらはポーランドのGajek Radslaw(左)


そしてフランスのMassoni Michael(左)


小林くんは難しいエンドゲームでしたが、よくドローをもぎ取りました!

2013/02/24

Cappelle la Grande 2013 Arrival and 1st round


フェリヘジのくまさんとたちとも、これでお別れです。

一昨日の夜はホテルに着いたのがあまりに遅かったため、更新できず仕舞いでした。そのため、今日は移動日の一昨日と大会初日の昨日のレポートをまとめて出そうと思います。


22日早朝、フランスのCappelle la Grande Open に参加するため、ブダペストから悪名高きRYANAIR でパリへと向かいます。ブダペストの最終日は弱い雪が降り続き、うっすらと積もるような天気でした。


カペルへと向かうバスはシャルルドゴール空港から出発しますが、格安のRYAN は僻地のボーヴェ空港へと降り立ちます。ブダペストからは2時間強、9時半頃にボーヴェに到着しました。そこからはバスでパリ市内へ。料金は16ユーロで、1時間15分かけて凱旋門近くのポルトマヨーに到着します。




ポルトマヨーで降りてからぶらぶら歩いていると、小さな市を発見。魚や肉や野菜、雑貨や料理など様々な物が売られていました。ここで薄いパン生地のサンドウィッチを購入してお昼ご飯に。さらに移動してとりあえずは凱旋門を目指します。


凱旋門は私の2年ぶりのパリ凱旋を、動くことなく待ってくれていたようです(笑)

凱旋門で日本の女子大生に声をかけて遊んだあとは、集合場所であるシャルルドゴール空港を目指します。適当にシャンゼリゼ大通りをぶらついた後、地下鉄と列車を乗り継いで空港へ。そこで他の参加者3人と合流します。空港では例のごとく、カペルに向かうバスがなかなか出ず、結局大会会場に着いたのは午後11時近くになってからでした。フラフラで夕食を済ませ、ホテルに着いたのは日付が変わった後でした。こうして長い移動日の22日は終わりです。


翌朝はイギリスから列車で到着する橋本さんを駅まで迎えに行き、ようやく日本選手5人が揃いました。(橋本さんに写真を撮ってもらったため、4人しか写っていませんが...)11時過ぎには、彼女の大会エントリーを済ませるため、ホテルに来る迎えのバスではなく、市バスを利用してカペル村へと向かいます。


エントリーが無事に済み、昼食を終えるといよいよペアリングです。私は驚くべきことに、ロシアのGM Danin Alexander(2578) との対戦と発表されました。2年ぶりに感じるカペル大会独特の雰囲気の中、私の遠征最後の大会がスタートします!

Kojima,S (FM, JPN, 2368) - Danin, A (GM, RUS, 2578)
Cappelle la Grande 2013 (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 c5 3. Nc3 d5 4. cxd5 Nxd5 5. e4 Nb4 6. Bc4 Nd3+ 7. Ke2 Nf4+ 8. Kf1 Ne6



このラインを指すのは初めてで、研究も十分とは言えませんでしたが、強豪GM 相手に自分がどこまで指せるか試してみたかったため、覚悟を決めて飛び込んでみました。

9. b4 g6 10. bxc5 Bg7 11. Bxe6 Bxe6 12. d4 Nc6 13. Be3 Qa5 14. Ne2!? O-O-O?


まさかの相手から早々のミス。14... Bc4! と指しておけば、黒はd4 にプレッシャーを掛け続けられるため、互角に指せるでしょう。

15. d5! Bxa1 16. Qxa1 Qa4



ここがクリティカルポジションだと分かっていながら、ベストの手を指すことができませんでした。

17. Ne1?


e4 のポーンを落としてしまっては、白の優位はほぼなくなってしまいます。17. Nc3! Qc4+ 18. Kg1 Nb4 19. c6! bxc6 20. Ne5 Qa6 21. dxe6+/- この変化をきちんと読み切れず、緩手を指してしまったのは完全に私の力不足でしょう。

17... Qxe4 18. dxe6 f6 19. Nf3 Qxe6 20. h3 Qc4!



マテリアルバランスは白がやや良いですが、黒はキャスリングしていない白キングを狙うことで、バランスを取りイニシアチブを握ろうとします。

21. Nd2 Qa6 22. f3


ゲーム中、これでなんとかキングの逃げるマスを作って白良しだと思いました。しかし、あまりに残り時間が少なすぎました。

22... Rd3 23. Kf2 Rhd8 24. Nb3 Nb4! 25. c6??



時間がないにしろ、ひどいミスでした。e3 のルーク切りはいつも考えていたはずでしたが、ここにきてNb4-Nc2 が先に来るとなぜか勘違いしてしまいます。25. Rc1? Rxe3 26. Kxe3 Qe6+ 27. Kf2 Nd3+ 28. Kg1 Qxe2-+, 25. Qb1 Qxa2 26. Qxa2 Nxa2=/+

25... Rxe3 26. cxb7+ Kb8 0-1


大きな優勢に立つワンチャンスを逃すと、あとは相手のピースに振り回される苦しい展開でした。また2日目のの今日から、上のボードに戻れるよう奮闘していこうと思います。

他の日本人参加者は、小林くん、三村くん、石塚さんが下相手に勝ち。橋本さんは上相手(私が7年の前のカペル出対戦したお爺ちゃんでした)に負けです。今日は小林くんと三村くんが上相手を引き、勝負のラウンドを迎えます。

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