今夜は京都の池田くんから、京都大学でのイベントレポートが届きましたので、そちらを公開しようと思います。全日本直前の忙しい時期に、立派なレポートを書いてくれた池田くんには、心から感謝しています。
4月28日、日曜日の午後から、京都大学で2つのチェスイベントが開催されました。デンマークのGM Peter Heine Nielsen がレクチャーを、リトアニアのGM Viktorija Čmilytė が同時対局を行いました。参加者は25人ほど集まりました。Peterのレクチャーは2時間ほどの長さで、非常に面白かったです。講義は彼が子供の頃にチェスを習った時から、現在のプロ選手、そしてセコンドに至るまでのチェス人生についての話で始まり、その中では次の文(大まかな和訳)が印象的でした。
「チェスのプロには意識してなったというよりも、他の多くのプロも同じだと思うが、子供の時からチェスが大好きで、どんどん上手くなるにつれ、当たり前のようにチェスが生活の、そして意識や思考の一部となっていて、プロになったのは自然に起こった事なんだ」
Peter はFIDE 2700にも到達した事があり、2010年には世界トップ40にランクインしたほど強い選手ですが、広いチェス界の中でも彼が特別なのは、セコンドとしての役目を通してでしょう。2001年のチェス・ワールドカップで彼はAnand と対戦し、1.5-0.5で負けたものの、オープニングの鋭さやチェスのセンスにAnand が目を付け、一緒にトレーニングをしないかと聞かれたそうです。Vishy のセコンドとしての10年はそこで始まり、2007年でVishy が世界チャンピオンになった大会を始め、2008年、2010年、そして去年の2012年のタイトル防衛を、Peter がチームの一員としてサポートしていました。
そして、今年1月にチェスメディアを沸かせたニュースは、Peter がAnand のセコンドをやめ、世界ランキング1位のCarlsen のセコンドに就いたというものでした。今年11月の世界タイトル戦はまさにこの2人がぶつかるのですが、王者・挑戦者の両方をよく知っているPeter としては中立の立場を取り、どちらのサポートもしないと決めています。
レクチャーの締めくくりとしては、つい最近のドラマティックなCandidates 大会の中から、Peter がMagnus の一番良い試合だと思う、対Gelfand 戦(R10)を解説してくれました。Magnus のどの資質が他のトップ選手より結果を残せる事につながるのか、彼は実戦においてどういうところが特に秀でているのかなど、現在世界で一番強いプレーをする選手に近しいPeter から直に聴く事ができたのはとても貴重でした。
笑えるエピソードもありました。2005年のワールドカップにて、14歳のCarlsen はロシアのGM Malakhov とのマッチで、2引き分けのあとRapidplay の1試合目で負け、残るには勝つしかあとがなくなりました。さらに、このマッチを勝てばCandidates 大会への史上最年少出場者となるプレッシャーもありました。次の試合までの短い30分間の休憩で、セコンドを務めていたPeter はMagnus にどう接し、励ますべきか悩みましたが、友人の「とにかく笑わせろ!」という助言をもとに、選手とセコンドは・・「動物たちがなんかのスポーツをやる、変なコンピューターゲーム」を時間ぎりぎりまで楽しみ、Carlsen は次もその次の試合も難なく勝ち、前述の記録を塗り替えました。
レクチャーが終わり、Viktorija のSimul へと移りました。参加者は13人で、僕もせっかくの機会なので指しました。彼女が13の机、そして盤を一回りしている間、たっぷり考える時間があるにも関わらず、ミドルゲームでひどい手をいくつか指してしまい、代償もなしに2ポーンダウンとなってしまいました。しかしSimul をやる側としてはじっくり、細部まで全て考える余裕も猶予もないため、彼女は勝勢となった直後にバックランク関連のブランダーを犯してしまい、試合は27手で黒の勝ちで終わりました。
Peter は「日本のSimul に参加する選手のレベルは高い」と驚いていました(前日は東京で彼もViktorija もSimul を行いました)。今回は13試合の内、Viktorija は8勝をおさめることができましたが、3人は引き分けを成し遂げました(Viktorija がまだ頑張れた試合もありましたが、時間の都合で早めにドローとしたりもありつつ)。その内1人は小学6年生の大多和君で、彼の試合への集中力へは僕も感心しました。高校生の平尾君も引き分けました(3人目は分かりません)。そしてもう1人、Viktorijaを破った参加者がいましたが、名前はあいにく覚えていません。スイスで7年働いていた眼鏡をかけた社会人の方です。
Simul のあとは大学の近くのカフェで、Peter とViktorija 含め15人ほどでディナーを食べ、チェスや将棋を主に和やかな話が色々交わされました。京大の若島教授と、直接は会った事はありませんが、Peter とViktorija に連絡を取り、このイベントを企画してくださったジャック・ピノー氏、そしてイベントの準備・運営を手伝ったスタッフ・ボランティアの方々にはこの場を借りて感謝の言葉を贈りたいと思います。参加者は皆楽しめたと思います。
僕はこの4月から来年の2月まで、キャンベラのオーストラリア国立大学からの交換留学生として京都大学に来ているのですが、日本でもチェスをやり、チェスコミュニティーの人たちと知り合うのを楽しみにしています。京都大学ではチェスクラブが4月に設立され、これから京都、そして関西から、チェス選手や愛好家、チェスに興味のある初心者など、メンバーが増える事を期待しています。5月の日本選手権は2006年のジャパンオープン以来、日本での2大会目となるのでとても楽しみにしています。2月までの短い間ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
Written by FM Junta Ikeda
2013/04/30
2013/04/26
全日本選手権2013 - Tournament Information -
今年の全日本選手権まで、とうとう一週間を切りました。現在入っている情報では参加者は42名で、上位には私、南條くん、暁さん、惇多くんと、4人のFM が名前を連ねることになるでしょう。さらには、昨年の秋以降、国内大会を総ナメにしているAlex を加え、5人での優勝争いになると予測しています。私自身は、一昨年は絶不調で8位、昨年は最後の3R を抜けたために3位に終わり、全日本チャンピオンのタイトルからは少し遠ざかり気味。ハンガリーでの修行を終え、初めて迎える今年の全日本こそ、王座を奪還したいと思います!
そして地方予選の結果を見ると、今年初出場のプレーヤーも数人いるようです。ここ数年で全日本に突如出現したダークホースと言えば、4年前に入賞したポール飯沼さんを思い出しますが、今年もそういった隠れた強豪が出てくると楽しくなりそうですね。それでは皆さん、5日後に蒲田でお会いしましょう。参加者以外の方も、是非見学に遊びに来て下さい。
TOURNAMENT NAME 全日本チェス選手権全国大会2013
そして地方予選の結果を見ると、今年初出場のプレーヤーも数人いるようです。ここ数年で全日本に突如出現したダークホースと言えば、4年前に入賞したポール飯沼さんを思い出しますが、今年もそういった隠れた強豪が出てくると楽しくなりそうですね。それでは皆さん、5日後に蒲田でお会いしましょう。参加者以外の方も、是非見学に遊びに来て下さい。
TOURNAMENT NAME 全日本チェス選手権全国大会2013
VENUE 大田区産業プラザ
DATES 2013/05/01-06
FORMAT FIDE および JCA 公式戦11回戦、90分 + 1手につき30秒
2013/04/23
GM Nielsen's Events
この2日間は電王戦の記事を多くの方にご覧いただきましたが、そろそろ将棋からチェスに話題を戻そうと思います。すでにご存じの方も多いと思いますが、現在、デンマークのNo.1 GM Peter Heine Nielsen と、リトアニアの女子No.1 であるGM Victorija Cmilyte が来日しています。今日か、明日のどちらかで富士市で行われている名人戦を見学し、27日には上智大学でレクチャー+同時対局が行われます。詳細は以下のリンクでご確認ください。
上智大学イベント
そして昨日、この2人のGM が翌28日に京都大学を訪れ、講演会と指導対局のイベントを行うと情報が入りました。早速、京都大学に留学中の池田くんに連絡を取ったところ、イベント主催者で京都大学教授の若島さんから、すでに招待を受けているそうです。京都の話題は関東には全く届いていませんでしたが、昨年から関西でもGM のイベントを行うようになったことは、間違いなく良い傾向だと言えるでしょう。京都大学のイベントは、若島さんのHP に詳細が掲載されています。
京都大学イベント
京都大学のイベントは、池田くんにレポートを頼みましたので、私は関東でのんびり報告を待とうと思います(笑)池田くんは全日本前の腕試しとして、頑張ってきてください!
2013/04/21
第二回電王戦 第五局 - 将棋の未来はどうなるか -
第2回電王戦は、最終戦でA級棋士の三浦八段がGPS将棋に敗れ、コンピュータ側が3勝1敗1引き分けの圧勝という結果で幕を閉じました。現役のトップ棋士の一人である三浦八段がコンピュータプログラムに敗れたことは、3週間前に佐藤四段が敗れたこととは、また違った意味合いを持ちそうです。私はプログラミングに関してさほど詳しくないので、評価関数の話などよくわかっていない点も多いのですが、一人のチェスプレーヤーとして、今回の電王戦を通じて感じたことをまとめようと思います。
まず、今回のプロ棋士が大敗を喫するという結果は、将棋ファンにとってはショックが大きかったでしょう。佐藤四段のブログのコメント欄を読んでいて、「奨励会を抜けて、プロ棋士になった人たちは、アマチュアにとって神さまのような存在である」という文章は、とても印象的なフレーズでした。チェスではなにかしらの試験、基準をパスしてプロになるわけではないので(強いて言うならば、ノームを獲得してタイトルを獲得することか)、この感覚は少し分からないところもありますが、競技の世界で活躍するトップの選手にあこがれる気持ちには、もちろん共感できるところがあります。そのプロ棋士たちがコンピュータのプログラムに敗れるということは、自分の信じていたものが覆されるということでしょう。
私がチェスを始めた頃には、すでにKasparov がDeep Blue に敗れており、トップのチェスプレーヤーよりも、コンピュータプログラムのほうが強くなり始めていました。つまり自分は、人間のほうがコンピュータよりも強い時代を知らない世代と言えます。そのこともあり、私にとって今回の電王戦の結果は、ようやく将棋のコンピュータもこのレベルまで来たか、という印象が強いです。(将棋のコンピュータがプロ棋士を破るのに、チェスよりも時間がかかったのは、将棋がより複雑だからなのか、単純にプログラム開発が遅れていたからなのかは、私には分かりませんが)
現代に生きる私たちは、コンピュータの発達によって利益を得て、生活をしています。パソコンも携帯もない生活に突如戻れと言われても、それはなかなか難しいでしょう。そのような中で将棋だけは、人間がいつまでもコンピュータより強いだろうというのは、根拠のない空想です。かつて森内さんは2010年、羽生さんは2015年に、人間が(プロ棋士が?)コンピュータに敗れると予想したそうです。今年はちょうど、その中間でしたね。私から言いたいことはまず一つ、来るべき時が来た。それがたまたま、2013年だったということです。
そしてすでに書いたとおり、将棋ファンのショックは理解できます。ただし、将棋ファンにとって将棋プログラムの発達は、悲しむべきことではないと私は考えています。チェスの世界では、コンピュータを使わずに研究をするプロのプレーヤーは、すでにほとんどいないでしょう。棋譜の管理、定跡の研究、試合の解析、対戦相手の調査など、使用の用途は様々です。そしてKasparov を破ったDeep Blue よりも強いコンピュータプログラムが、現在では無料で公開されています。それほど、コンピュータプログラムの開発は日進月歩で、現代に生きるチェスプレーヤーは、それらとうまく付き合いながら、個人の、さらに言うならば人間のチェスを進歩させていると言えます。(もちろん、コンピュータの評価ばかりを当てにしているとダメなのですが。)
将棋の世界でも、すでにプロが研究にコンピュータを取り入れ始めていると聞きますし、今後はその傾向が強くなってくると予想します。チェスと同様、今回登場したプログラムはさらに改良され、さらに上回る性能を持つモンスターも誕生するでしょう。コンピュータは人間と対立するものではなく、生活を支えるために開発されているはずですので、将棋の世界でも棋士と将棋プログラムが、良い関係を築いていけることを願っています。
最後に付け加えるならば、コンピュータに敗れても、盤上で繰り広げられる熱い戦いの魅力は、今後も変わることはないと私は信じています。(トップ棋士が敗れて競技がつまらなくなったというのは、チェスの世界で時々耳にする意見ですが、私はそれがなぜなのか、全く理解できません。)私はまだ将棋は素人ですので、今日の記事は将棋を分かっていない人間の、生意気な意見だと受け取られるかもしれません。なので、純粋な将棋ファンや、違った世代のチェスファンからなど、多くの方から意見を集めて、また色々と考えてみたいところです。
2013/04/20
新勧期 2013
今週は首都圏の大学チェスサークルで相次いで新勧飲みがあり、火曜に慶應、金曜に上智の集まりに参加してきました。上の写真は上智の新勧飲みで、日本の大学チェスサークルでも随一の女子力を見せつけています。(写真の左側にも複数隠れています)なぜ上智大学チェスサークルにだけ女子部員が集まるのか、その謎を完全に解明し、他大でも真似ができれば、日本の大学チェス界は真の夜明けを迎えるでしょう。(慶應は新規女子部員は0です)
冗談はさておき、今年の上智のメンバーはとてもやる気があるようです。お好み焼屋での一次会を終え、カラオケの誘いからフェードアウトしようとした私に、1年生から積極的に声をかけてくれました。その流れで上智の1年生5人を連れて、カフェで1時間半のレクチャーです。上智の1年生たち+私だけというのは、なんとも不思議な集まりでしたが(笑)
馬屋原くん以降、大型新人の出ていない上智大学ですが、GM のイベントなども絡め、新入生の皆さんには成長していってほしいと思います。東京大学の新人については何も情報が入っていないので、どなたがご存じの方はご一報ください。
2013/04/17
1001 Deadly Checkmates
チェックメイトの問題集というのは、私ぐらいのレベルになれば、どうも読む必要がないような気がして、今まで敬遠してきました。将棋では、上達のために詰め将棋の問題をたくさん解くと思いますが、チェスではチェックメイト以外の勝ちのパターンが多いため(決定的な駒得をすれば勝ち、一手は約プロモーションすれば勝ち等)、詰めの問題を解くことに、そこまで比重を置かないでしょう。しかし、最近になって手元にあったメイトの問題集を見るようになりました。主な理由はレッスンで使うためですが、案外すぐに答えが分からない問題もあります。
このJohn Nunn の1001 Deadly Checkmates では、タイトルの通り1001問のチェックメイトの問題が、実戦のポジションから出題されています。そしてそれらは、Rook's File、Queen Sacrifices などといったテーマごとに分類されており、初心者がメイトの基本形や攻めパターンを覚えたり、キングを追い詰める際の読みを鍛えるのに、適した構成になっていると言えます。(それでも各章の最後には、難しい問題が混じっています)少し問題を紹介しておくので、是非読者の皆さんも考えてみてください。全てのポジションは受けなしで、必ずチェックメイトになります。
目標タイムは上から30秒、1分、1分30秒としましょうか。私は540問ほど解き終わったので、残るはあと半分ほどです。
最後にチェックメイトの問題は詰め将棋と違い、連続チェックでなくても構わないことを付け加えておきます。
2013/04/14
Saturday Lecture and Tournament on April 2013
昨日は告知通りに、チェスセンターでレクチャーを行ってきました。参加者は14名程でしたかね。朝から私のレクチャーにお越しいただき、ありがとうございます。日本では久々のレクチャーでしたが、感触はなかなか良かったように思います。新規の方もいらっしゃったので、来月以降もまた、楽しみにしています。
そして午後は、トーナメントのほうに2R から参戦してきました。最初は同級生の三村くんとの対戦、彼とは5年半近い付き合いですが、公式戦での対戦は初めてでした。
ここは8... Be7 が普通だろうなと思いつつ、こういった手を指してみることにしました。試合後に調べてみると、数は少ないですが、GM の指している試合もあります。
これはやや不自然なビショップナイトの交換です。特に白にメリットが見当たりません。11. Be3! b5!? 12. f4 Nxd4 13. fxe5 Nxe2 14. Qxe2 Qxe5 15. Qf2 ならば、白は1ポーンダウンですが、開いたポジションでのダブルビショップを持つので、面白い勝負ができそうです。
13... e5 14. f5 O-O= このようにダブルビショップを残す選択肢も考えましたが、白マスビショップをこの後どうアクティブして良いのかがわかりません。そこで、黒マスビショップを返してしまい、ポーンストラクチャーの良さで勝負することにします。
ここは3段目でクイーンを振るより、素早くdファイルにメジャーピースを重ねるほうが有効です。私が考えていたのは、15. Qd4! でした。 g7 をアタックしているので、黒はそれに対処しなければいけないのが、本譜との違いです。
この手はかなり迷いましたが、c4、e4 にポーンを固定することで、白のビショップの働きを抑え込もうと考えました。e5 の一時的に捨てたポーンさえ取り返せれば、黒の優勢は間違いありません。
このルークはgファイルにいってもやることがありません。21. Raf1! からf7 にプレッシャーをかけるのが正解で、そうすれば黒はe5 のポーンを取り返すのに、さらなる一工夫が必要となります。
白はポーンを返す決断をしましたが、それは黒が願った展開です。ポーンストラクチャーの良さで、間違いなくやや優勢の黒は、勝ちを手繰り寄せるプランを模索します。
ここから本譜で白が指すようなパッシヴなディフェンスは、ルークの使い方としてふさわしくありません。守るよりも攻めで使い、反撃の糸口を探るのがルークの正しい使い方です。29. a4 Ra2 30. Rd5!
時間があまりなかったので、とりあえずキングを進めておこうと思いましたが、指してすぐに30... a5! で即勝ちであることに気が付きました。
白のルークはポーン1つを守るために、あまりに消極的な位置にいってしまいました。黒はその間に、理想的な位置である7段目に2つ目のルークを潜り込ませ、勝負を決めます。
これで次にRb2-Rb3 からa3 のポーンが落ち、黒の勝ちとなります。
三村くんとしては不出来な内容だったかもしれませんが、勉強になるエンドゲームだと思ったのでこちらでご紹介させていただきました。
続く3R では、最近好調の三ツ矢さんに1.e4 で勝ち。この日はSicilian が続く一日となりました。これもThe Sicilian Labyrinth の影響ですかね。この日の2勝で、2週間半後の全日本には、 国内レイティングを2400台に戻しての出場となりそうです。
そして午後は、トーナメントのほうに2R から参戦してきました。最初は同級生の三村くんとの対戦、彼とは5年半近い付き合いですが、公式戦での対戦は初めてでした。
Mimura, K (1837) - Kojima, S (FM, 2395)
Saturday Tournament (2)
1. e4 c5 2. Nf3 e6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 a6 5. Nc3 Nc6 6. Be2 Qc7 7. O-O Nf6 8. Bg5 Bd6!?
Saturday Tournament (2)
ここは8... Be7 が普通だろうなと思いつつ、こういった手を指してみることにしました。試合後に調べてみると、数は少ないですが、GM の指している試合もあります。
9. h3 Bh2+ 10. Kh1 Be5 11. Bxf6?!
これはやや不自然なビショップナイトの交換です。特に白にメリットが見当たりません。11. Be3! b5!? 12. f4 Nxd4 13. fxe5 Nxe2 14. Qxe2 Qxe5 15. Qf2 ならば、白は1ポーンダウンですが、開いたポジションでのダブルビショップを持つので、面白い勝負ができそうです。
11... Bxf6 12. Nxc6 dxc6 13. f4 Bxc3!?
13... e5 14. f5 O-O= このようにダブルビショップを残す選択肢も考えましたが、白マスビショップをこの後どうアクティブして良いのかがわかりません。そこで、黒マスビショップを返してしまい、ポーンストラクチャーの良さで勝負することにします。
14. bxc3 Bd7 15. Qd3?!
ここは3段目でクイーンを振るより、素早くdファイルにメジャーピースを重ねるほうが有効です。私が考えていたのは、15. Qd4! でした。 g7 をアタックしているので、黒はそれに対処しなければいけないのが、本譜との違いです。
15... c5 16. Qg3 O-O 17. c4 Bc6 18. Bd3 e5!?
この手はかなり迷いましたが、c4、e4 にポーンを固定することで、白のビショップの働きを抑え込もうと考えました。e5 の一時的に捨てたポーンさえ取り返せれば、黒の優勢は間違いありません。
19. fxe5 Rae8 20. Rf5 g6 21. Rg5?
このルークはgファイルにいってもやることがありません。21. Raf1! からf7 にプレッシャーをかけるのが正解で、そうすれば黒はe5 のポーンを取り返すのに、さらなる一工夫が必要となります。
21... Re7 22. e6 Qxg3 23. exf7+ Rfxf7 24. Rxg3 Bxe4 25. Rg5 b6 26. Rb1 Rf6 27. Kg1
白はポーンを返す決断をしましたが、それは黒が願った展開です。ポーンストラクチャーの良さで、間違いなくやや優勢の黒は、勝ちを手繰り寄せるプランを模索します。
27... Bxd3!? 28. cxd3 Re2 29. a3
ここから本譜で白が指すようなパッシヴなディフェンスは、ルークの使い方としてふさわしくありません。守るよりも攻めで使い、反撃の糸口を探るのがルークの正しい使い方です。29. a4 Ra2 30. Rd5!
29... Ra2 30. Rb3 Kg7
時間があまりなかったので、とりあえずキングを進めておこうと思いましたが、指してすぐに30... a5! で即勝ちであることに気が付きました。
31. h4 a5! 32. Rd5 a4 33. Rc3
白のルークはポーン1つを守るために、あまりに消極的な位置にいってしまいました。黒はその間に、理想的な位置である7段目に2つ目のルークを潜り込ませ、勝負を決めます。
33... Rff2 34. Rg5 Rfb2!
これで次にRb2-Rb3 からa3 のポーンが落ち、黒の勝ちとなります。
35. d4 Rb3 36. Rgg3 Raxa3 37. Rxb3 axb3 38. dxc5 bxc5 39. Rd3 Ra1+ 40. Kh2 b2 41. Rd7+ Kf6 0-1
三村くんとしては不出来な内容だったかもしれませんが、勉強になるエンドゲームだと思ったのでこちらでご紹介させていただきました。
続く3R では、最近好調の三ツ矢さんに1.e4 で勝ち。この日はSicilian が続く一日となりました。これもThe Sicilian Labyrinth の影響ですかね。この日の2勝で、2週間半後の全日本には、 国内レイティングを2400台に戻しての出場となりそうです。
ラベル:
Saturday Lecture,
Sicilian
2013/04/11
百傑戦ゲーム解説 Kojima - Shiomi
すごい今さら感のあるゲーム解説ですが、チェス通信に記事を書く機会がなかったことと、たまに解説を書かないと腕が鈍るので、このタイミングで百傑から一試合、ゲームを紹介します。
Kojima,S (FM, 2395) - Shiomi, R (2209)
Hyakketsu 2013 (4)
1. Nf3 c5 2. c4 e6 3. d4 d5 4. cxd5 exd5 5. g3 Nc6 6. Bg2 Nf6 7. O-O Be7 8. Nc3 O-O 9. dxc5 Bxc5 10. a3!?
Hyakketsu 2013 (4)
Queen's Gambit Tarrasch Variation はハンガリーでも数試合の経験がありますが、ここでは思い切って今までと違う変化を指してみることにしました。d5 をIQP にして、a3-b4 からBc1-Bb2 と組み、d4 のマスを抑えるのは非常にクラシカルなプランでしょう。しかし、最近はこれが流行の兆しを見せており、今年のTata Steel で一試合チェックしたことがきっかけで興味を持ちました。
10... a5!?
白にb2-b4 を突かせないようにするこのシンプルな手は、前日に見ていた試合の中には、全くなかったと記憶しています。塩見さんはロシアのチェス雑誌で見たことがあると、試合後に教えてくれました。これに対しては白は、予定通りにb2 にビショップを置けなくなったので、ここから違ったプランを考えます。ポイントはb5 にできたアウトポストです。
11. Bg5 d4 12. Nb5 h6 13. Bxf6 Qxf6 14. Rc1 Bb6 15. Nd2!
白は早々にダブルビショップを放棄しますが、ナイトをしっかりとマヌーバリングすることでそれを補います。d2 に退いたナイトは、c4 もe4 も次に跳ぶマスとして、好位置になっています。
15... Bg4 16. Nc4 Bc5 17. h3 Bh5 18. Nxa5 Rxa5?
白はポーンを取りにいきましたが、これを正直に取り返しているようでは、黒は面白くない展開を強いられてしまいます。私が試合中に考えていたのは、18... d3! 19.Qxd3 Rfd8 と指してオープンライン(a7-f2 のダイアゴナルと、dファイル)を作る変化です。こちらのほうが黒はアクティブな反撃を作りやすく、さらには白が正しいプランを見つけるのも難しいでしょう。
19. Rxc5 Bg6
これで白はピースを取り返したうえ、ルークの横利きでビショップをアタックすることで、1テンポを稼ぎました。以下に18. Nxa5 から白が優勢になったポイントを列挙しておきます。
① 白は1ポーンアップになった。
② 黒のダブルビショップを消すことに成功した。
③ 白は白マスビショップの力で、長期的にb7 のポーンにプレッシャーをかけることができる。
④ d4 の孤立ポーンは、将来的にターゲットになりうる。
これらを踏まえてきちんとポジションを見直せば、駒得以上に白が優勢であることが分かります。
20. b4 Raa8 21. Qb3 Rac8 22. Rfc1 Rfe8 23. Qf3
e2 への反撃は予想通りだったので、ここは冷静に対処します。クイーン交換によるエンドゲームへの突入は、白にとってありがたい展開でしょう。
23... Qe7 24. Qf4 Red8 25. h4!?
ここは何を指すか迷った末にこの手を選びました。試合後に塩見さんにも評価されたこの手は、h3 にマスを作ることでBg2-Bh3 を可能にしつつ、e2 取りを誘っています。
25... Qxe2?
これは白の思惑通り。黒はここで得たポーン以上のマテリアルを、すぐに返さなくてはならなくなります。
26. Bxc6! bxc6 27. Nxd4 Rxd4
苦渋の決断ですが、仕方がありません。もしクイーンを逃がすようであれば、Nxc6-Ne7+-Rxc8 とコンビネーションが決まり、結局は白がエクスチェンジアップとなります。
28. Qxd4 Re8 29. Rxc6 Be4 30. R6c3 Bb7 31. Qd3
ここではバックランクメイトが一発逆転のスレットになっているため、それを防ぎます。クイーンを交換するか、白マスの弱さをサポートできれば、白の勝ちは揺るぎありません。そのためにどうすれば良いか、最後の詰めを考えます。
31... Qg4 32. Rc7 Be4 33. Qd7!+-
これが私が目指していた形で、クイーン交換とルーク取りを同時に見せることで、勝ちを確実にします。
33... Qf3 34. Qxe8+ Kh7 35. Qxe4+!?
ここはマテリアルを返さず、35. Kf1 からメイトを避けても、もちろん白勝ちです。ツールーククイーンの駒割にする理由は特にありませんでしたが、黒のキングサイドのポーンが崩壊する以上、これでも良いかなと思いました。
35... Qxe4 36. Rxf7 Kg6 37. Rcc7 Kh5 38. Rf5+!?
ここは黒が仕掛けた最後のトラップです。もし間違ってg7 のポーンを取れば、38... Qg2+ 39. Kxg2 でステールメイトとなります!
38... Kg6 39. Rf4 Qe5 40. Rg4+ Kf6 41. Rgxg7 Qa1+ 42. Kg2 Qxa3 43. Rb7 1-0
ここまで来て、棋譜が不完全であることに気が付きました( ̄へ ̄|||) あとはb ポーンを進めていって、問題なく白勝ちです。前日の夜に、塩見さんに加担する先輩方に居酒屋-カラオケと連れ回されたにしては、良いゲームができたと思います(笑)
2013/04/08
第二回電王戦 第三局 - from nicofarre and 将棋会館 -
昨日は横浜でフットサルの大会に参加したため、下半身が筋肉痛中です。普段からもう少し運動しないとダメだなと実感しました(笑)ちなみに、フットサルは人生初経験でした!
それはさておき、今夜は再び電王戦の話題です。一昨日、第2回電王戦第3局を見学するために、再び六本木のニコファーレと、そして千駄ヶ谷の将棋会館に足を運んできました。目的は前週同様、次回イベントのための視察と、ドワンゴスタッフとの相談のためです。
その第3局の結果は、ご存じの方も多いかと思いますが、大激戦の末にツツカナが勝利!コンピュータプログラム側の連勝となっています。これでトータルスコアは2-1となり、コンピュータ側がマッチの勝利に王手をかけました。(将棋だけに)今週、塚田九段が敗れれば、最終局を待たずしてコンピュータ側の勝利が確定します。
もし第4局、第5局でプロ棋士が勝利を収めて逆転したとしても、2人のプロ棋士がコンピュータプログラムに敗れたことで、将棋ファンは複雑な思いを抱えることになるでしょう。私もチェスプレーヤーとして色々と考えていることはありますが、それは来週以降、全5局が終了してからまとめようと思います。
それはさておき、今夜は再び電王戦の話題です。一昨日、第2回電王戦第3局を見学するために、再び六本木のニコファーレと、そして千駄ヶ谷の将棋会館に足を運んできました。目的は前週同様、次回イベントのための視察と、ドワンゴスタッフとの相談のためです。
その第3局の結果は、ご存じの方も多いかと思いますが、大激戦の末にツツカナが勝利!コンピュータプログラム側の連勝となっています。これでトータルスコアは2-1となり、コンピュータ側がマッチの勝利に王手をかけました。(将棋だけに)今週、塚田九段が敗れれば、最終局を待たずしてコンピュータ側の勝利が確定します。
もし第4局、第5局でプロ棋士が勝利を収めて逆転したとしても、2人のプロ棋士がコンピュータプログラムに敗れたことで、将棋ファンは複雑な思いを抱えることになるでしょう。私もチェスプレーヤーとして色々と考えていることはありますが、それは来週以降、全5局が終了してからまとめようと思います。
2013/04/05
What's the best partner for the Nimzo-Indian?
Nimzo-Indian というオープニングは、黒が勝ちにいける序盤として、昔から非常に人気があります。私もSlav Defence と併せて黒番で活用しており、勝率も感触も良い感じです。ハンガリーでも、大切な試合で助けてもらいました。
近年では、このNimzo-Indian を避けるために、3. Nc3 を指さずに3. Nf3 を好む1.d4 プレーヤーも多く見られるでしょう。それでは、世のNimzo-Indian プレーヤーは、これに対して何を用意しているでしょうか?彼らにとっては、このように外された際に指せる、もう一つのレパートリーが必要となるはずです。
私もこれには長く頭を悩ませてきました。高校生から大学生にかけては、Semi-SlavやQueen's Indian(Nimzo-Indian+このどちらかが、世界的には主流の組み合わせでしょうか)を試してきました。ただし、どちらも難解なオープニングで、しかも最新の研究を追わなければ、潰れてしまうラインのあるところが難点です。
ハンガリーでは、Queen's Gambit Ragozin Variation(1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Bb4) を試しており、これは一応の成功を収めたと言えます。しかし、もう少しプレーの幅を広げようと思い、いっそQueen's Gambit Declined にしても良かもしれないと思い始めました。つまり、1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7!?
こういうことです。ちなみにチェスを始めた一年目以降、黒番では一回も指したことがありません。幸い、家の本を漁ってたところ、John Cox のdeclining the queen's gambit が出てきたので、これでQGD の基本から勉強し直すのも悪くないかなと思っています。この本では、Tartakower Variation (1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bg5 h6 6. Bh4 O-O 7. e3 b6 )とLasker Variation(1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bg5 h6 6. Bh4 O-O 7. e3 Ne4 )が紹介されており、私は黒番で勝つチャンスを作るならば、前者かなと思っています。
いずれにせよ、昔はパッシヴなオープニングだと決めつけ、選択肢として全く頭になかったQGD ですが、最近はそうでもないことを理解できるようになってきたので、どこかで指してみたいと思います。全日本前に、どこかでチャンスがあれば良いんですけどね。気が向いたら、本の内容にも触れたいと思います。
近年では、このNimzo-Indian を避けるために、3. Nc3 を指さずに3. Nf3 を好む1.d4 プレーヤーも多く見られるでしょう。それでは、世のNimzo-Indian プレーヤーは、これに対して何を用意しているでしょうか?彼らにとっては、このように外された際に指せる、もう一つのレパートリーが必要となるはずです。
私もこれには長く頭を悩ませてきました。高校生から大学生にかけては、Semi-SlavやQueen's Indian(Nimzo-Indian+このどちらかが、世界的には主流の組み合わせでしょうか)を試してきました。ただし、どちらも難解なオープニングで、しかも最新の研究を追わなければ、潰れてしまうラインのあるところが難点です。
ハンガリーでは、Queen's Gambit Ragozin Variation(1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Bb4) を試しており、これは一応の成功を収めたと言えます。しかし、もう少しプレーの幅を広げようと思い、いっそQueen's Gambit Declined にしても良かもしれないと思い始めました。つまり、1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7!?
こういうことです。ちなみにチェスを始めた一年目以降、黒番では一回も指したことがありません。幸い、家の本を漁ってたところ、John Cox のdeclining the queen's gambit が出てきたので、これでQGD の基本から勉強し直すのも悪くないかなと思っています。この本では、Tartakower Variation (1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bg5 h6 6. Bh4 O-O 7. e3 b6 )とLasker Variation(1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bg5 h6 6. Bh4 O-O 7. e3 Ne4 )が紹介されており、私は黒番で勝つチャンスを作るならば、前者かなと思っています。
いずれにせよ、昔はパッシヴなオープニングだと決めつけ、選択肢として全く頭になかったQGD ですが、最近はそうでもないことを理解できるようになってきたので、どこかで指してみたいと思います。全日本前に、どこかでチャンスがあれば良いんですけどね。気が向いたら、本の内容にも触れたいと思います。
2013/04/03
Averbakh 's Endgame
チェスをやっていれば、どこかでYuri Averbakh の名前を聞くことがあるでしょう。私は最近、The Sicilian Labyrinth やTarrasch のゲーム集を手に入れたので、これを期に古典のゲームも勉強しようとデータベースの海を彷徨っていたところで、彼の名前を見つけました。Averbakh と言えば、エンドゲームの本を何冊か出版しており、エンドゲームの研究者としてのイメージがあります。しかし、実際に彼のゲームからエンドゲームの巧みさを見つけている人は、日本にどれほどいるでしょうか。
そこで、今日並べていたNimzo-Indian のゲームの中から、彼のちょっとしたエンドゲームのテクニックに舌を巻いた一試合をご紹介しようと思います。決して難しくはないのですが、勝てるチャンスを確実に勝ちに結びつけるところが、彼が強豪として名をはせた所以なのかもしれません。
Prokhorovich, T - Averbakh, Y
URS-ch sf 1957
1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. e3 O-O 5. Bd3 d5 6. Nf3 c5 7. O-O Nc6 8. a3 Bxc3 9. bxc3 Qc7 10. Qc2 Na5 11. Ne5 dxc4 12. Nxc4 Nxc4 13. Bxc4 Bd7 14. Bd3 cxd4 15. exd4 Rac8 16. c4 Bb5 17. c5 Bxd3 18. Qxd3 Rfd8 19. Rb1 Nd5 20. Bg5 Rd7 21. Rfe1 Qa5 22. Rec1 h6 23. Bh4 Nf4 24. Qe3 Nd5 25. Qd3 Qa4 26. Bg3 Ne7 27. Bd6 Qc6 28. Bxe7 Rxe7 29. Qb5 Rd7 30. h3 Rcd8 31. Qxc6 bxc6 32. Rc4 g5!
URS-ch sf 1957
黒は弱点になっているd4 を取る前に、キングサイドのポーンストラクチャーを改善します。もし白にg3-h4 の形を築かれてしまえば、センターとクイーンサイドを捌いて1ポーンアップしても、ドローのルークエンディングにしかならないでしょう。
33. Rbb4 a5 34. Rb6 Rxd4 35. Rxd4 Rxd4 36. Rxc6 Ra4 37. Ra6 Rxa3 38. c6 Kg7 39. c7 Rc3 40. Ra7 Kg6 41. Kf1 h5 42. g3 Rc2 43. Ke1 h4!
これがgポーンを早く伸ばしておいた効果です。このようにポーンをぶつけられては、白はh3 に弱点となるポーンを残すか、黒にセンターパスポーンを作らせるか(hxg3-fxg3)、どちらかを選ぶしかありません。
44. gxh4 gxh4 45. Kd1 Rc5 46. Kd2 f5 47. Kd3 Kf6 48. Kd4 Rc1 49. f4 a4 50. Ke3 a3 51. Kf3 a2 52. Rxa2 Rxc7 53. Rf2 Rg7!
黒はクイーンサイドのポーンを解消した後で、いよいよh3 の弱点を攻めて決定的なチャンスを作ります。これ以降はもう説明を省いても良いでしょう。
54. Rh2 Rg1 55. Ra2 Rg3+ 56. Kf2 Rxh3 57. Ra7 Rb3 58. Rh7 h3 59. Ra7 Rb2+ 60. Kg3 h2 61. Rh7 Ra2 62. Kf3 Ra1 0-1
棋譜をいくつも並べていれば流してしまいそうなゲームですが、今日見ていた中では最も印象的でした。全日本までは、古典も半分ほどの割合で研究に組み込もうと思います。
2013/04/02
New FIDE Rating 2013.04
2013年も、早くも1/4 が終わって4月を迎えました。それに伴い、カペル分の試合が計算された4月の新FIDE が発表されています。日本のプレーヤーで、この期間に試合をしたプレーヤーはわずか6名でしたが、カペル組はほぼレイティングがプラスになっているようでなによりです。(橋本さんはレイティング確定のためには、もう少し試合数が必要のようですね。)最新の日本のランキングは、こちらから確認できます。
私はカペルの9試合で、レイティングは2381から2384 に上がりました。ほんのわずかではありますが、レイティングの上昇は6カ月連続となり、順当にIM タイトル獲得に必要な2400 に近づいています。今年の秋には、ハンガリーに戻って最後のIM ノーム獲得を目指そうと思いますが、それまでにレイティングだけでも2400 に到達させたいですね。これから夏にかけての、FIDE 公式戦の予定は以下の通りです。
5月 全日本選手権全国大会(最大11試合)
6月 アジアインドア&マーシャルアーツゲームズ 男子個人戦(最大7試合)
8月 ジャパンリーグ(最大7試合)
他にも海外大会への遠征を入れるかもしれませんが、今のところは未定です。まずは開始まで一月を切った全日本で、レイティングを落とさないようにしつつ、王座奪還を狙おうと思います。全日本は各地の予選も全て終わったようで、参加者はほぼ確定しましたかね。初参加の方も、常連の方も、来月蒲田でお会いしましょう!
ラベル:
Cappelle la Grande 2013,
FIDE Rating,
雑記