2013/04/03

Averbakh 's Endgame


若き日のYuri Averbakh, Chessbase News より

チェスをやっていれば、どこかでYuri Averbakh の名前を聞くことがあるでしょう。私は最近、The Sicilian Labyrinth やTarrasch のゲーム集を手に入れたので、これを期に古典のゲームも勉強しようとデータベースの海を彷徨っていたところで、彼の名前を見つけました。Averbakh と言えば、エンドゲームの本を何冊か出版しており、エンドゲームの研究者としてのイメージがあります。しかし、実際に彼のゲームからエンドゲームの巧みさを見つけている人は、日本にどれほどいるでしょうか。

そこで、今日並べていたNimzo-Indian のゲームの中から、彼のちょっとしたエンドゲームのテクニックに舌を巻いた一試合をご紹介しようと思います。決して難しくはないのですが、勝てるチャンスを確実に勝ちに結びつけるところが、彼が強豪として名をはせた所以なのかもしれません。

Prokhorovich, T - Averbakh, Y
URS-ch sf 1957

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 4. e3 O-O 5. Bd3 d5 6. Nf3 c5 7. O-O Nc6 8. a3 Bxc3 9. bxc3 Qc7 10. Qc2 Na5 11. Ne5 dxc4 12. Nxc4 Nxc4 13. Bxc4 Bd7 14. Bd3 cxd4 15. exd4 Rac8 16. c4 Bb5 17. c5 Bxd3 18. Qxd3 Rfd8 19. Rb1 Nd5 20. Bg5 Rd7 21. Rfe1 Qa5 22. Rec1 h6 23. Bh4 Nf4 24. Qe3 Nd5 25. Qd3 Qa4 26. Bg3 Ne7 27. Bd6 Qc6 28. Bxe7 Rxe7 29. Qb5 Rd7 30. h3 Rcd8 31. Qxc6 bxc6 32. Rc4 g5!



黒は弱点になっているd4 を取る前に、キングサイドのポーンストラクチャーを改善します。もし白にg3-h4 の形を築かれてしまえば、センターとクイーンサイドを捌いて1ポーンアップしても、ドローのルークエンディングにしかならないでしょう。

33. Rbb4 a5 34. Rb6 Rxd4 35. Rxd4 Rxd4 36. Rxc6 Ra4 37. Ra6 Rxa3 38. c6 Kg7 39. c7 Rc3 40. Ra7 Kg6 41. Kf1 h5 42. g3 Rc2 43. Ke1 h4!



これがgポーンを早く伸ばしておいた効果です。このようにポーンをぶつけられては、白はh3 に弱点となるポーンを残すか、黒にセンターパスポーンを作らせるか(hxg3-fxg3)、どちらかを選ぶしかありません。

44. gxh4 gxh4 45. Kd1 Rc5 46. Kd2 f5 47. Kd3 Kf6 48. Kd4 Rc1 49. f4 a4 50. Ke3 a3 51. Kf3 a2 52. Rxa2 Rxc7 53. Rf2 Rg7!



黒はクイーンサイドのポーンを解消した後で、いよいよh3 の弱点を攻めて決定的なチャンスを作ります。これ以降はもう説明を省いても良いでしょう。

54. Rh2 Rg1 55. Ra2 Rg3+ 56. Kf2 Rxh3 57. Ra7 Rb3 58. Rh7 h3 59. Ra7 Rb2+ 60. Kg3 h2 61. Rh7 Ra2 62. Kf3 Ra1 0-1


棋譜をいくつも並べていれば流してしまいそうなゲームですが、今日見ていた中では最も印象的でした。全日本までは、古典も半分ほどの割合で研究に組み込もうと思います。

4 件のコメント:

bmasahiro さんのコメント...

Averbukhは"Oldest Grandmaster in the world" です。

昨年、Gligoricが他界し、Zurich1953の出場者のうち、現在まだ存命なのはAverbukhとTaimanovのみとなってしまいました。

Shinya_Kojima さんのコメント...

やはり偉大なチェスプレーヤーの一人ですね。公式戦でプレーするのは厳しいでしょうが、どこかのチェスイベントでお目にかかりたいものです。

misaka さんのコメント...

とりあえず Comprehesive chess endgames の rook endings は読み込んだが?

Shinya_Kojima さんのコメント...

Rook Endings のページで、参照にしている本ですね。私も多少はチェックしています。

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