2013/04/11

百傑戦ゲーム解説 Kojima - Shiomi


すごい今さら感のあるゲーム解説ですが、チェス通信に記事を書く機会がなかったことと、たまに解説を書かないと腕が鈍るので、このタイミングで百傑から一試合、ゲームを紹介します。

Kojima,S (FM, 2395) - Shiomi, R (2209)
Hyakketsu 2013 (4)

1. Nf3 c5 2. c4 e6 3. d4 d5 4. cxd5 exd5 5. g3 Nc6 6. Bg2 Nf6 7. O-O Be7 8. Nc3 O-O 9. dxc5 Bxc5 10. a3!?



Queen's Gambit Tarrasch Variation はハンガリーでも数試合の経験がありますが、ここでは思い切って今までと違う変化を指してみることにしました。d5 をIQP にして、a3-b4 からBc1-Bb2 と組み、d4 のマスを抑えるのは非常にクラシカルなプランでしょう。しかし、最近はこれが流行の兆しを見せており、今年のTata Steel で一試合チェックしたことがきっかけで興味を持ちました。

10... a5!?


白にb2-b4 を突かせないようにするこのシンプルな手は、前日に見ていた試合の中には、全くなかったと記憶しています。塩見さんはロシアのチェス雑誌で見たことがあると、試合後に教えてくれました。これに対しては白は、予定通りにb2 にビショップを置けなくなったので、ここから違ったプランを考えます。ポイントはb5 にできたアウトポストです。

11. Bg5 d4 12. Nb5 h6 13. Bxf6 Qxf6 14. Rc1 Bb6 15. Nd2!



白は早々にダブルビショップを放棄しますが、ナイトをしっかりとマヌーバリングすることでそれを補います。d2 に退いたナイトは、c4 もe4 も次に跳ぶマスとして、好位置になっています。

15... Bg4 16. Nc4 Bc5 17. h3 Bh5 18. Nxa5 Rxa5?


白はポーンを取りにいきましたが、これを正直に取り返しているようでは、黒は面白くない展開を強いられてしまいます。私が試合中に考えていたのは、18... d3! 19.Qxd3 Rfd8 と指してオープンライン(a7-f2 のダイアゴナルと、dファイル)を作る変化です。こちらのほうが黒はアクティブな反撃を作りやすく、さらには白が正しいプランを見つけるのも難しいでしょう。

19. Rxc5 Bg6



これで白はピースを取り返したうえ、ルークの横利きでビショップをアタックすることで、1テンポを稼ぎました。以下に18. Nxa5 から白が優勢になったポイントを列挙しておきます。

① 白は1ポーンアップになった。
② 黒のダブルビショップを消すことに成功した。
③ 白は白マスビショップの力で、長期的にb7 のポーンにプレッシャーをかけることができる。
④ d4 の孤立ポーンは、将来的にターゲットになりうる。

これらを踏まえてきちんとポジションを見直せば、駒得以上に白が優勢であることが分かります。

20. b4 Raa8 21. Qb3 Rac8 22. Rfc1 Rfe8 23. Qf3



e2 への反撃は予想通りだったので、ここは冷静に対処します。クイーン交換によるエンドゲームへの突入は、白にとってありがたい展開でしょう。

23... Qe7 24. Qf4 Red8 25. h4!?


ここは何を指すか迷った末にこの手を選びました。試合後に塩見さんにも評価されたこの手は、h3 にマスを作ることでBg2-Bh3 を可能にしつつ、e2 取りを誘っています。

25... Qxe2?



これは白の思惑通り。黒はここで得たポーン以上のマテリアルを、すぐに返さなくてはならなくなります。

26. Bxc6! bxc6 27. Nxd4 Rxd4


苦渋の決断ですが、仕方がありません。もしクイーンを逃がすようであれば、Nxc6-Ne7+-Rxc8 とコンビネーションが決まり、結局は白がエクスチェンジアップとなります。

28. Qxd4 Re8 29. Rxc6 Be4 30. R6c3 Bb7 31. Qd3



ここではバックランクメイトが一発逆転のスレットになっているため、それを防ぎます。クイーンを交換するか、白マスの弱さをサポートできれば、白の勝ちは揺るぎありません。そのためにどうすれば良いか、最後の詰めを考えます。

31... Qg4 32. Rc7 Be4 33. Qd7!+-


これが私が目指していた形で、クイーン交換とルーク取りを同時に見せることで、勝ちを確実にします。

33... Qf3 34. Qxe8+ Kh7 35. Qxe4+!?



ここはマテリアルを返さず、35. Kf1 からメイトを避けても、もちろん白勝ちです。ツールーククイーンの駒割にする理由は特にありませんでしたが、黒のキングサイドのポーンが崩壊する以上、これでも良いかなと思いました。

35... Qxe4 36. Rxf7 Kg6 37. Rcc7 Kh5 38. Rf5+!?


ここは黒が仕掛けた最後のトラップです。もし間違ってg7 のポーンを取れば、38... Qg2+ 39. Kxg2 でステールメイトとなります!

38... Kg6 39. Rf4 Qe5 40. Rg4+ Kf6 41. Rgxg7 Qa1+ 42. Kg2 Qxa3 43. Rb7 1-0



ここまで来て、棋譜が不完全であることに気が付きました( ̄へ ̄|||) あとはb ポーンを進めていって、問題なく白勝ちです。前日の夜に、塩見さんに加担する先輩方に居酒屋-カラオケと連れ回されたにしては、良いゲームができたと思います(笑)




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