2015/11/27

Weekly Chess Puzzle Vol.16


Tran Thanh Tu - Kojima, S
Japan Open 2015(8)
White to move


Kojima, S - Misaka, S
Asaka 2013 (4)
Black to move

最新の試合から出題するのは初めてですね。ジャパンオープンでTuさんに敗れた試合、白は何を指したでしょうか。もう1つは三阪さんとのポーンエンディングです。黒はドローに持ち込むためには、ここでどう指すべきでしょうか。いつも通り、答えが分かった方はお気軽にコメント欄へどうぞ。

2015/11/24

Japan Open 2015 Day3 Tournament Report


今年のジャパンオープン入賞者たち, Photo by Hasegawa

今年も年内最後の大きな公式戦、ジャパンオープンが終了しました。優勝は最終日も連勝の南條くんで、2位に1P 差をつけ、7/8 というスコアでした。南條くんは最後で、今年の国内トーナメント初優勝を果たしました。南條くん、優勝おめでとう!

1st Place Nanjo Ryosuke (IM, JPN, 2427) 7/8
2nd Place Tran Thanh Tu (CM, VIE, 2495) 6/8
3rd Place Kojima Shinya (IM, JPN, 2457) 6/8
4th Place Yamada Kohei (CM, JPN, 2217) 6/8
5th Place Habu Yoshiharu (FM, JPN, 2415) 6/8


最終的には大きな波乱もなく、上位を占めたのはレイティングの高いタイトルホルダーでしたね。A,B クラスで入賞したみなさんも、おめでとうございます。私は7R でAlex 相手に難しいゲームを勝ち切ったものの、最終戦で東京オープン同様、Tuさんに黒を持って敗れ、3位に後退してしまいました。また次の対戦でこそ、リベンジを果たしたいと思います。


Kojima, S (IM, JPN, 2457) - Averbukh, A (FM, JPN, 2284)
Japan Open 2015 (7)

31. Bxc6!?


ここは残り12分ほどまで考え、勝負を仕掛けることにしました。本譜のルークエンディングになった場合、勝てるのかは定かではありませんでしたが、白が優勢なのは確実ですので、思い切って試してみることにします。31. Bf3 Kg8 32. Ra1+/= として、ゆっくり指すのもありだったでしょう。

31... Rxc6 32. Qh7 Ke8


ここはAlex の決断は早かったです。32... Bd8 33. Rxc6 Bxc6 34. d5 Rxd5 35. Bxg7+ Ke7! (35... Ke8? 36. Qg8+ Kd7 37. Qxf7+ Be7 38. Bf6 Qf8 39. Qxe7+ Qxe7 40. Bxe7+/-) 36. e4 Rd3 37. Bxh6 Qd7 38. Bg5+ Kd6 39. Bxd8 Qxd8 40. Qxf7= こうなった場合、形勢評価は非常に難しいでしょう。本譜はピースを返して1ポーンダウンになっても、キングは確実に生きる安全策です。

33. Qg8+ Bf8 34. Rxc6 Bxc6 35. d5 Rxd5 36. Bxg7 Ke7 37. Bxf8+ Qxf8 38. Qxf8+ Kxf8 39. Rxc6



こうしてピースを取り返した白ですが、クイーンサイドの2ポーンはお互いに取り合いになるため、キングサイドの4対3 のポーンで、勝てるかどうかがこのエンドゲームの焦点となります。

39... Rd3 40. Rc7 Rxb3 41. Rxa7 Ra3 42. g4 b3 43. Kg2 b2 44. Rb7 Rxa6 45. Rxb2 h5?!


このポーン突きは不用意だったのではないかと、検討で話をしています。黒は45... Ra5 ぐらいで5段目をカットオフし、白キングの動きを制限するほうがタフなディフェンスができたでしょう。

46. g5!?



ポーンを交換した場合、白に残るのはhファイルのパスポーンですので、これを武器に勝ち切るのは心もとないと考えました。そこで、gポーンは交換せずに盤上に残します。46. gxh5 Ra5 47. h6 Rg5+ (47... Rh5?! 48. Rb8+! Ke7 49. Rh8+/-) 48. Kh1 Kg8 49. f4 Rh5 これは黒は本譜よりディフェンスしやすいかもしれません。

46... Ra5 47. h4 Ra4 48. Kh3 Kg7 49. f3 Ra3 50. Re2 Kg6?!


キングを上げるのは自然な手にも見えますが、すぐにポーンを交換するほうが安全です。50... f6 51. gxf6+ (51. Kg3 fxg5 52. hxg5 Kg6 53. f4 e5! 54. Kh4 Ra4= これはどう考えてもドローです。) 51... Kxf6 52. Kg3 Ke5 これであれば、黒は本譜よりも1手得しています。

51. Kg3 f6 52. gxf6 Kxf6 53. e4



私はここまできて、ようやく具体的に勝てる形が見えてきたように感じました。白のf3、h4 はさほど負担にならず、逆に黒の2つの孤立ポーンを両方守るのは大変そうです。しかし、うまく指せばここからでも、まだ黒はタフなディフェンスを見せることができます。

53... Rb3 54. Ra2 Rb5 55. Ra8 Rc5 56. Kf4 e5+ 57. Kg3


一度キングの侵入を見せ、e6-e5 を指させておけば、f5 とg5 のマスにルークが侵入するチャンスができます。そうなれば、黒は5段目にある2つのポーンを守り切ることが難しくなると考えました。

57... Rb5?



これはうかつな一手でした。57... Kg7! が正しいディフェンスで、f8-h8 の3マスを抑えることで、白のルークにポーンを狙う隙を与えません。e5 だけであれば、ルークの横利きで守っておけばOKです。ここから局面は一気に動きます。

58. Rf8+ Kg6 59. Rf5 Ra5 60. Kf2


ルークをf5 に入れた後は、いよいよキングの出番です。白キングが上がってきてe5 をアタックすることは防げないため、黒はe5 とh4 を交換するしかありません。

60... Ra2+ 61. Ke3 Ra3+ 62. Ke2 Ra2+ 63. Kd3 Rh2 64. Rg5+ Kh6 65. Rxe5 Rxh4



これで狙い通りに2コネクテッドパスポーン vs ポーンのルークエンディングになりました。これは勝てるはずだと信じながらも、今年の全日本の塩見さんとの試合で意外なほどに苦戦したため、気を引き締めてゲームを続けます。

66. Re8 Rh1 67. Ke3


ここは見返してみれば、67. Rg8 とカットオフするほうが良いに決まっています。

67... Kg5 68. Rg8+ Kf6 69. Kf4 Rh4+ 70. Kg3 Rh1 71. Kf4 Rh4+ 72. Ke3 Rh2 73. Rg1 Ke5??



時間を増やしながら、ゆっくりとポジションを改善していこうと思っていた矢先、Alex にひどいミスが出ました。これは白がメイトスレットを作れるため、hポーンを取ることができます。

74. Rg6! Rh3


f3-f4 がメイトスレットになっているため、3段目でルークを使うしかありません。

75. Ra6! h4 76. Rh6!



これでツークツワンクとなり、黒はhポーンを見捨てなければいけません。ここまで来れば、後は時間の問題です。

76... Rg3 77. Rxh4 Rg1 78. Rh5+ Ke6 79. Kf4 Rg8 80. Rh6+ Ke7 81. Ke5 Rg5+ 82. Kd4 Ra5 83. e5 Rb5 84. Ke4 Rb3 85. f4 Rb4+ 86. Kf5 Kf7 87. Rh7+ Kg8 88. Ra7 Rb8 89. e6 Rf8+ 90. Ke5


90. Kg6 と指してf4 を捨てても、ルークを交換したポーンエンディングは白勝ちです。

90... Rb8 91. f5 Rb1 92. Ra8+ Kg7 93. f6+ Kg6 94. Rg8+ 1-0



この長いエンドゲームを勝ち切れただけに、最終戦の負けは悔しかったです。次の試合は12月最初のIVL になるので、そちらまた頑張ります。ジャパンオープン参加者の皆さん、お疲れ様でした!


2日目を休んだ羽生さんは、7R で小林くんとドロー、8R でSimutanyi さんに勝って、6P グループに入りました。次回のトーナメントはフルで出場し、上位勢との対戦を多くこなして欲しいですね。


2日目に0.5/3 と崩れた青嶋くんも、最終日は立て直して連勝し、5.5P でのフィニッシュです。来年の全日本選手権の出場権利も獲得しましたので、今後ますます頑張ってもらいたいですね。そろそろ南條くんとの対戦も見たいところです。

2015/11/22

Japan Open 2015 Day2 Tournament Report


6R の入江戦, Photo by Hasegawa

ジャパンオープン2日目の今日は、3試合とも見落としたが多く、内容はイマイチでした。それでも、青嶋くんと南條くんにドロー、入江さんに勝ちで、トップグループの5/6 につけています。5R の南條くんとの試合は、非常に複雑で見ごたえがあると思いますが、解説を書く時間がないので、6R の入江さんとの試合をご紹介します。

Irie, Y (JPN, 2156) - Kojima, S (IM, JPN, 2457)
Japan Open 2015 (6)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Nc5 e5 6. Nxb7 Qb6 7. Nc5 exd4 8. Nb3 Bb4+ 9. Bd2 Nf6 10. Qe2+!?



ハンガリーでGM との対戦経験もあるラインです。ここでチェックされたらどうしようかと考えていたところ、本当にしてきました。白マスビショップの利きをふさぐのは不自然ではありますが、黒もどちらかのビショップを退くしかありません。

10... Be7!?


10... Be6 11. Bxb4 Qxb4+ 12. Qd2 Qb6 13. Qxd4 Bxb3 14. Qxb6 axb6 15. cxb3 O-O このように進んでも、ピースの展開の早さで、黒は捨てた1ポーンの代償があるでしょう。

11. Nf3 c5 12. Ba5?!



直観的にこれはおかしいと切り捨てていたので、指されて驚きました。黒はc6 にナイトを出した際にビショップをアタックすることができ、テンポを稼ぐことができます。

12... Qd6 13. c3


入江さんは、d4 のポーンを弱くする作戦を選びましたが、ここまで展開が早ければ、ポーンを取る余裕はないと信じ、自然に駒を進めます。

13... Nc6 14. cxd4 cxd4 15. Qb5 Qe6+?



しかし、ここで間違えてしまいます。クイーンチェックは強力に見えますが、d4 の守りが減ってしまううえ、c6 のナイトのピンを外していません。代わりに、15... Bd7! 16. Bd3 Rb8 17. Qa6 Bc8! (この手は検討で見落としていました。クイーンをビショップの守りから遠ざけてしまえば、黒はピースを取ることができます。) 18. Qc4 Nxa5 19. Nxa5 Qb4+-+

16. Be2 Rb8 17. Qa4?


この手を見て、自分が危機を脱したこと、そして勝勢になったことを確信しました。17. Nfxd4! Rxb5 18. Nxe6 Rxb3 19. Nxg7+ (このナイトフォークでビショップを取れるのが、この長い駒の取り合いのミソです。) 19... Kf8 20. Nxf5 Rxb2 21. Bd2+- これで白はダブルビショップをキープしたうえ、ポーンアップで勝勢です。

17... Bb4+!+-



入江さんはこの手を見落としていたのでしょう。b5 ではなく、a4 でクイーンを取れれば、上記のラインと違って黒のルークはアタックされておらず、d4 取りは手遅れになってしまいます。

18. Bxb4 Rxb4 19. Nbxd4 Rxa4 20. Nxe6 Bxe6 21. Rc1


21. Bb5 Re4+ は、チェックでルークが逃げられるため、ピース取りになっていません。

21... Nd4 22. Nxd4 Rxd4 23. Rc7 O-O 24. Rxa7 Bd5 25. f3 Re8 0-1



ここを勝てたことで、1歩リードしていた南條くんとAlex に追いつき、5/6 が4人並んだ状態となっています。


来日以来、27連勝というとんでもない記録を作ってきたTuさんですが、今日は南條くんに負け、小林くんにドローで一歩後退となりました。それでも2番手グループですので、明日の結果次第では、十分に入賞はありえます。


オーストラリアのSimutanyiさんは、私に負けて以降、坂井さん、青嶋くんらに勝ちを含めて4連勝し、トップボードに戻ってきました。久々のチェスだそうですが、ようやく本領発揮と言ったところでしょうか。

明日は3bye の羽生さんも戻ってきて、いよいよ最後の2試合が行われます。ペアリングは、小島-Alex、南條-Simutanyi、羽生-小林、Tu-Andrew となっています。最後の白でしっかり勝ち、混戦のトップグループを抜けたいですね。


先週、27歳の誕生日を迎え、今日はゆみさんから、誕生日プレゼントを貰いました。ハート型のチョコレートです!

2015/11/21

Japan Open 2015 Day1 Tournament Report


オリンピアードの代表権をかけた今年のジャパンオープンは、参加者56名でスタートです。初日の今日は、私の前日の予想通り、上位勢がその力をいかんなく発揮しました。私は初戦で青木さんに勝ち。2R は、オーストラリアのプレーヤーとの初対戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2457) - Simutanyi, K (AUS, FIDE 2055)
Japan Open 2015 (2)

1. Nf3 f5 2. d3 d6 3. e4 e5 4. Nc3 Nf6 5. exf5 Bxf5 6. d4 e4 7. Nh4 Bg4 8. Be2 Bxe2 9. Qxe2 d5



オーストラリアからワーキングホリデーで来日中のSimutanyi さんは、今回が日本の初公式戦です。Anti-Dutch のこのラインは、黒として有力だと研究していましたが、なかなか実戦で指す機会には恵まれませんでした。

10. Qb5+ Nc6 11. Bg5 a6!?


これは予想外の手でしたが、先まで読んでみると成立していそうなことが分かります。私の研究では、11... Bb4 12. Qxb7 Nxd4 13. O-O-O Bxc3 14. bxc3 Rb8 15. Qxa7 で形勢は不明です。

12. Bxf6



ここはこのようにナイトを取るしかありません。12. Qxb7? Nb4! 13. O-O-O Rb8 14. Qa7 Qc8-+ こうなれば、白のクイーンはトラップされています。

12... Qxf6 13. Qxb7 Ra7?


この手にはかなり驚かされました。黒の反撃には気を付けなければいけないものの、白が優勢であることが明らかになります。私に読みでは、13... Rb8 14. Qxc7 Bb4 15. O-O で少し白が少し良いかと思っていましたが、15... Ba5 16. Qg3 Bxc3 17. Qxc3 O-O 18. Nf5 Qxf5 19. Qxc6 Rxb2= ならば、形勢互角です。

14. Qc8+ Nd8 15. Nf5 c6 16. O-O Rf7 17. Ng3 h5?!



これはかなり雑な手だったと思います。1ポーンを取られている黒は、丁寧にピースを展開し、黒キングへの反撃を作っていかなければいけないでしょう。
17... Bd6! 18. Rad1 O-O 19. Qxa6+/= これは白が優勢であるものの、キングサイドのへの反撃は気を付ける必要があります。

18. Ngxe4!


ピースの展開が早い白は、こうしたサクリファイスのアイディアを狙っていましたが、黒の17... h5?! を見て成立すると確信しました!

18... dxe4 19. Nxe4 Qf5??



これは白の期待通りです。19... Qh6 20. Qxa6 Be7 21. Rfe1 O-O 22. Rad1+/- こうして4ポーンvs. ピースのマテリアルにしても、白は大きく優勢でしょう。

20. Rfe1! 1-0


クイーンが当たっているのを無視し、ダブルチェックのチェックメイト狙いで、黒はもはやどうしようもありません。ビショップを挟めば、ナイトフォークでクイーンをゲット... ではなく、メイトですね。読み切れるでしょうか?

この2R はサクッと勝てたものの、3R ではジュニアチャンピオンのGary くんに大苦戦。途中でややリスクのあるプレーもしながら、なんとか勝利を収めました。リスト上位5名、Tu さん、私、南條くん、羽生さん、青嶋くんが、初日を無傷の3連勝で乗り切っています。


いまだ日本での公式戦連勝記録を伸ばし続けるTuさんは、今日も確かなテクニックで2000クラスを粉砕していきました。明日は東京オープンと同じ、南條くんに黒を持っての対戦となります。南條くんも、白で同じ相手に連敗は許されないでしょう。


私たちと同じく3連勝の羽生さんは、明日の3試合はbye を申請してのお休みで、3連続ドロー扱いとなります。ここで落とした1.5P が、3日目にどう響いてくるかは、明日の上位勢の結果次第でしょう。

明日のトップボードは、南條-Tu、小島-青嶋、Alex-Andrew となっています。青嶋くんとはここまで黒ばかりでしたので、初めての白でどのようなゲーム展開になるか、楽しみにしています。それでは皆さん、2日目もよろしくお願い致します。

2015/11/20

Japan Open 2015 Tournament Preview


昨年のジャパンオープン Photo by Uesugi

明日からの3連休は、蒲田で開催されるジャパンオープンに参加してきます。昨年は、ハンガリーに戻る直前の大切な調整として参加し、なんとか優勝できましたので、今年も連覇を狙って頑張ってきます。とは言え、今年のジャパンオープンは、来年のアゼルバイジャン、バク―でのオリンピアード代表選考も兼ねており、昨年よりもハイレベルな戦いが予想されます。今夜の記事は、これまで入ってきた情報で、注目の優勝候補をご紹介しておきたいと思います。

1. Tran Thanh Tu (CM, VIE, JCA 2495, FIDE 2292)


ベトナムのTu さんは、東京オープンの全勝優勝後、国内レイティング2495 というとてつもない数字がつきました。ジャパンオープンでは、リスト1 でプレーすることは間違いがなく、優勝候補の筆頭です。私や南條くんを含めた、国内上位クラスのメンバーをほぼ全員、1度は破っているため、2度目の対戦となる今大会、彼がどのようなプレーをするかが、優勝の行方をうらなうカギになるでしょう。

2. 小島慎也 (IM, JPN, JCA 2457, FIDE 2400)


私は昨年に引き続き、優勝を目指します。5月の全日本選手権では今年も優勝を逃したものの、ジャパンリーグや名古屋オープン、IVL での3回優勝など、IM 獲得以降の国内戦績は決して悪くありません。今年の集大成として、このジャパンオープンで良い結果を残せればと思います。

3. 南條遼介 (IM, JPN, JCA 2427, FIDE 2330)


社会人1年目の南條くんは、今年は大会の優勝になかなか恵まれず、苦難の年となっています。かつて、8戦全勝での優勝も果たしたことのあるこのジャパンオープンで、復活を狙いたいのではないでしょうか。戦力的にも、オリンピアードの日本代表に再び入ってもらいたいプレーヤーです。

4. 羽生善治 (FM, JPN, JCA 2415, FIDE 2398)


羽生さんも、昨年の東京オープン以来、1年ぶりの国内公式戦に参戦です。公式戦に限らなければ、チェスの試合やトレーニング自体は途切れることなく続けており、今年は好調を維持しています。2日目は参加することができず、3試合はbye になってしまいますが、それでも最注目のプレーヤーの1人です。私を含めたIVL メンバー以外と、どのような試合をするのか、楽しみに見せてもらうつもりです。

5. 青嶋未来 (JPN, JCA 2378, FIDE 2167)


今年、最もブレイクした日本人プレーヤーである青嶋くんは、ジャパンオープンにフルで参加します。6月の快速選手権以降、大会での優勝は逃していますが、それでもコンスタントに好成績を残しているのは、さすがだと言えるでしょう。来年は海外大会参加にも意欲を見せているので、今年最後のビッグトーナメントでも、活躍を期待したいと思います。

6. Andrew Lewis (FM, ENG, JCA 2166, FIDE 2275)


昨年の全日本選手権で3位を獲得した、イングランドのFM Andrew が日本に戻ってきているようです。全日本では、南條くんと私のデッドヒートに隠れてはいましたが、非常にテクニックのあるベテランプレーヤーです。2つのbye があるため、優勝は少し難しいかもしれませんが、また日本のプレーヤーを脅かすプレーを見せてもらいたいですね。

トーナメントは、ふたを開けてみなければ結果はどうなるか分からないもの。ここに挙げたプレーヤー以外が優勝を攫うような展開もありえますので、明日からのレポートもお楽しみに。それでは、ジャパンオープンに参加されるプレーヤーの皆さん、明日から3日間、よろしくお願い致します。

2015/11/18

The Highest Level Training in Japan on 16th November


チェスベースの不調でブログの更新が遅くなりました。2日前の16日、今月2回目となる羽生さんとのトレーニングを行ってきました。羽生さんは2回のトレーニングにiVL、そして今週末のジャパンオープンと、今月は非常にチェスに精力的です。午前中に指した、私が白番のゲームをご紹介します。

Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Habu, Y (FM, JPN, 2398)
Training (1)

1. Nf3 Nf6 2. c4 c5 3. Nc3 b6 4. g3 Bb7 5. Bg2 g6 6. O-O Bg7 7. d4 cxd4 8. Qxd4 d6 9. Rd1 Nbd7 10. Be3 Rc8 11. Rac1 a6 12. b3 O-O 13. Qh4 Rc7 14. Bh3 Qb8 15. Bh6 b5 16. Bxg7 Kxg7 17. Bxd7 Rxd7 18. cxb5 axb5 19. Qb4 Bxf3 20. exf3 Qb7!?



ここまでは2年前に、GM Gordon と指した変化と同じです。Gordon はここでb5 を守ってきましたが、羽生さんはf3 との取り合いを選びました。私は将来的に、白の2コネクテッドパスポーンは武器になると信じ、この誘いに応じて勝負です。

21. Nxb5 Qxf3 22. a4 Rb8 23. Qc3 Qh5 24. Nd4


b5 のナイトは白のパスポーンをブロックしてしまっているので、ベストの位置だと思われるc6 に切り替えに行きます。

24... e5 25. Nc6 Rc8 26. b4 Ng4 27. h4 g5 28. Kg2?!



これは予想していた手ではありましたが、将来的にf3 のマスにポーンを置くか、クイーンを置くかで迷い、どちらも選べるように進めました。実際にここでどちらかに絞っておけば、本譜のような流れにはならなかったでしょう。28. f3 Nf6 29. hxg5 Qxg5 30. Kf2+/= これは安全に、白が優勢でしょう。また、28. Qf3! gxh4 29. Rc4 Nf6 (29... f5 30. Nxe5! hxg3 31. Qxg3+/-) 30. Qxh5 Nxh5 31. gxh4+/- このようにクイーンを交換しておいても、白は⒉コネクテッドパスポーンを持つ有利なエンドゲームを迎えていたでしょう。

28... gxh4 29. Rh1 Qf5 30. f3?


私はクイーン交換をしたエンドゲームが勝ちになるか確信が持てず、こちらを選択してしまいました。30. Qf3! Qxf3+ 31. Kxf3 f5 32. b5 33. gxh4 d4 34. a5 d3 35. a6 e4+ 36. Kg2! (36. Kg3 d2 37. Rcd1 Kf6=/+) 36... d2 37. b6! dxc1=Q 38. Rxc1 Kf6 39. b7 Rg8 40. b8=Q Rxb8 41. Nxb8+/- このように先にプロモーションを許しても、白は必ずプロモーションを後でできるうえ、パスポーンも残すことができます。ここまで読み切るのは無理ですが、それでも2コネクテッドパスポーンの力を信じるべきでした。

30... Rxc6!!



これしかないと言われればないのですが、黒の反撃はすぐに途切れるものだと思っていました。これを過小評価していなければ、クイーン交換を実行していたでしょう。

31. Qxc6 Ne3+ 32. Kf2 Qd3 33. Qc3 hxg3+ 34. Kxg3 Qe2 35. Rhg1


これは自然な手にも見えましたが、検討では35. Rcg1!? Kf6 36. Rh6+ Ke7 37. Rxh7 Nf1+ 38. Rxf1 Qxf1 39. Qe3= このようにh7 のポーンを取るチャンスを残すアイディアも出ました。これならば、形勢は互角だったでしょう。それでも黒は悪くないということは、エクスチェンジサクリファイスは十分に成立していたということです!

35... Kf6 36. Rce1 Nf5+ 37. Kh3 Qf2 38. b5?



これは黒の次の手が見えておらず、ひどい手でした。fポーンを突く手は見えていながら、すぐに捨てるのを渋ってしまいました。38. f4 Qxf4 39. Rg4 Qf2 40. Ree4=

38... Rd8!-+ 39. f4 Qh4+ 40. Kg2 Rg8+ 41. Kf1 Qxf4+ 42. Ke2 Qh2+ 0-1


相変わらず羽生さんの、勝負所でのこれしかないという1手を選び取る勝負強さと、その後のプレーの正確さには驚かされます。ジャパンオープンでも力強いプレーを見せてもらいたいですね。久々に羽生さんと一緒に参加する国内公式戦、とても楽しみにしています。


昼ご飯は久々の焼肉でした。年末に公開される、チェスの映画に関する話題が多かったですかね。

2015/11/12

Weekly Chess Puzzle Vol.15


Kojima, S (FM, JPN, 2361) - Peng, X (CHN, 2194)
Bangkok Chess Club Open 2014 (2)
Black to move


Kojima, S (FM, JPN, 2361) - Peng, X (CHN, 2194)
Bangkok Chess Club Open 2014 (2)
White to move

昨年、タイで中国のジュニアと指したゲームから。最初の問題は、押し込まれた黒がどのようにその窮屈さを解消するかという、非常に実戦的な例です。ここでイコアライズされながらも、なんとか70手かけて、下の図の白勝ちエンドゲームまで持っていきました。答えが分かった方は、いつも通りコメント欄にどうぞ。

2015/11/09

頭脳スポーツ in 菰野 Event Report


イベント冒頭のトーク Photo by Oishi

昨日は予定通り、三重県菰野町での頭脳スポーツイベントに参加してきました。将棋、囲碁、チェスのプロ棋士がそれぞれ呼ばれ、子供たちと交流を行い、その楽しさを知ってもらうことを目的としたイベントです。将棋は豊川七段と室谷女流二段、囲碁は後藤九段と囲碁指導インストラクターの稲葉さん、チェスは私と元女流アマ名人の山口さんが担当しました。

菰野町までは名古屋から車で一時間と少しです。元NHKアナウンサー、中林さんの司会の下、13時からイベントがスタートしました。最初は招かれた6人がそれぞれ、自身の担当する頭脳スポーツで、どのような国際交流が行われているかというテーマでトークを行いました。こうした話題は、チェスプレーヤーがお手の物だと思っていましたが、さすがに皆さん、イベント慣れしている様子でしたね。子供の興味を引くような話をスラスラとしていました。子供たちからの質問にも応対していると、30分のトークはあっという間です。


トークが終わると、短い休憩の後、チェスのレッスンと同時対局が始まります。参加してくれた子供たちのうち(大人も一部いますが)、チェスのルールを知っているのは2名だけでしたので、駒の動かし方から説明を始めます。大人数の子供たちにチェスのルールを説明するのは久々で、使える時間も短く、大変ではありましたが、山口さんや名古屋チェスクラブメンバーのフォローのおかげで、なんとかこなすことができました。

同時対局は12面で、久留米、北千住を上回り、今年最多です。1時間という時間の中で、2ゲーム目に入る子もいれば、最後まで粘って好ゲームを指す子もいました。この日、初めてチェスを指す子がほとんどとは思えないほど、皆さん、きちんとプレーできていたと思います。これをきっかけに、チェスへの興味を今後も持ち続けてもらえれば嬉しいです。

正直な話、チェスを初めて取り入れた今回のイベントで、チェスを希望する子供たちがどれだけいるのか、心配でもありました。ところが蓋を開けてみれば、チェスも定員の希望者が集まり、多くの子供たちにチェスを楽しんでもらうことができました。イベント後に「将棋を選択したけど、チェスもやってみたかった」と参加者からメッセージをいただいたり、運営陣から「チェスはとても盛況でしたね」と声をかけていただきました。半年前にこのイベントへの誘いをいただき、不安がありながらも、思い切って参加を決めたこと、本当に良かったと思っています。ただし、予想以上にサインを求められたこと、将棋、囲碁棋士がとてもサインに慣れていることには驚きました。今後、このようなイベントで焦らないようにするため、もう少し綺麗にサインを書けるよう練習をしてきます(笑)


イベント後の懇親会は四日市市の日本料理屋にて。てんぷらや串揚げ、和牛の鉄板焼きなどをいただきました。店主に鼻笛という珍しい楽器を演奏していただいたり、将棋、囲碁の世界の話を聞かせていただいたり、楽しい時間を過ごさせていただきました。今回のイベントでは、三重で活動するイベント運営陣の皆さん、そして名古屋チェスクラブのメンバーに大変お世話になりました。この場をお借りして、お礼を申し上げます。今回お知り合いになることができた、将棋、囲碁棋士の皆さんとも、再会できる機会を楽しみにしています。

2015/11/05

18th IVL Tournament Report


Photo by Hasegawa

文化の日の11月3日、18回目を迎えるIV League が開催されました。参加者は8名で、いつも通りの5R スイス式です。ここ3回のIVL では、羽生さんが15試合で14.5P という驚異的な数字で3連覇を果たしています。最近は準優勝にすら手が届いていない私も、今回こそはと思い(毎回思っていますが...)大会に臨んできました。

私は佐野さん、桑田くん、汐口くんに3連勝と好スタートを切ることができました。対する羽生さんは、初戦で野口さんに痛い黒星。その野口さんも汐口くんに逆転負けを喫し、私に1P リードを許すこととなります。4R のペアリングは色の関係で、私と羽生さんが対戦することに。逃げ切りをかけた大事な一戦です。

Habu, Y (FM, JPN, 2408) - Kojima, S (IM, JPN, 2457)
18th IVL (4)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Qc2 g6 5. Bf4 Bg7 6. e3 O-O 7. Nc3 c5 8. dxc5 Qa5 9. Rd1 dxc4 10. Bxc4 Qxc5 11. Be2!?



Slav 4. Qc2 にはこの数年、いくつかの変化を試しています。4... g6 から、早めのc6-c5 を仕掛けるのが最近のお気に入りで、黒はGrunfelld Bf4 Variation の一手損(c7-c5 ではなく、c7-c6-c5 であるため) になりますが、白のQd1-Qc2 もベストの位置であるか定かでないため、十分に指すことができるでしょう。このゲームで面白いのは終盤であるため、ここからだいぶ飛ばします。

11... Nc6 12. O-O Bf5 13. Qb3 Qb4 14. Qxb4 Nxb4 15. Nd4 Bd7 16. Bf3 Nc6 17. Nxc6 Bxc6 18. Bxc6 bxc6


ここはポーンストラクチャーを多少乱しますが、私はそれをさほど気にしませんでした。

19. Be5 Rfd8 20. f3 Nd5 21. Bxg7 Kxg7 22. Nxd5 cxd5 23. Rc1 Rdc8 24. Kf2 Rab8 25. b3 a5 26. Ke2 Kf6 27. Kd2 Ke5 28. Rxc8 Rxc8 29. Rc1 Rxc1



ここでルークを交換しても大丈夫なのかどうか、正確に判断するのは難しいでしょう。ポイントは、白が持つクイーンサイドのポーンマジョリティに対し、黒はセンターポーンで対抗できるかどうかです。ちなみにコンピューターの提案は、29... Rb8 30. Rc7 a4 31. Kc3 Kd6 32. Ra7 Rc8+ 33. Kd2 axb3 34. axb3 Rb8 35. Kc2 Rc8+ 36. Kb2 g5= と指してイコールです。

30. Kxc1 d4


黒は将来的に、e5-e4 のブレイクからeファイル、もしくはfファイルにパスポーンを作ることで、白のアウトサイドパスポーンに対抗します。そのため、ここで早めにポーンを仕掛けておくほうが、黒にとって分かりやすくなるでしょう。

31. Kd2 Kd5 32. Kd3 dxe3 33. Kxe3 e5 34. g4?!



検討では、この手がミスでドローになってしまったのではないかと結論が出ました。確かにこうしてgポーンを進めるのは、私も羽生さんも、白にとって自然な手だと最初は思っていました。しかし、実際に進めてみると、黒がe5-e4 とブレイクした際、fポーンを早くパスポーンにしてしまい、黒の反撃を分かりやすくしてしまっているという欠点があります。

代わりにgポーンは動かさず、シンプルにクイーンサイドでパスポーンを作るのはどうでしょうか。34. Kd3 f5 35. a3 Kc5 36. Kc3 Kb5 37. b4 axb4+ 38. axb4 g5!? これは将来的に、g2-g4 から崩されてしまうのでよくないと思っていましたが、その場合、黒はf3 のポーンを攻撃することで反撃を作ります。 39. Kb3 h6 40. g4 f4 41. Kc3 Kc6 42. Kc4 Kb6 43. Kd5 (43. b5 Kc7 44. Kd5 Kb6 45. Kxe5 Kxb5=) 43... Kb5 44. Kxe5 Kxb4 45. Kf5 Kc4 46. Kg6 Kd3 47. Kxh6 Ke2 48. Kxg5 Kxf3 49. Kh4 Kg2 50. g5 f3 51. g6 f2 52. g7 f1=Q 53. g8=Q+ Kxh2=


Analysis Diagram

こうしてf3 のポーンを取りにいくことで、黒はクイーンを作り合い、ドローに持ち込むことができます。

34... f5 35. g5 Kc5 36. a3 Kd5 37. Kd3 Kc5 38. h3 Kb5 39. Kc3 Kc5 40. Kd3


ここで羽生さんがキングを戻してくれたのは、正直に言えばラッキーでした。白が勝つためにはb3-b4 と仕掛けるしかありません。それでも最善をつくせばドローになりますが、私が時間切迫の中、間違えずに指せる自信はありません。

40. Kd3 (40. b4+ axb4+ 41. axb4+ Kb5! (41... Kd5? 42. Kd3 Kd6 43. Kc4 Kc6 44. h4!+-) 42. h4 (42. Kb3 e4!= こうしてeファイルにパスポーンを作れば、黒はアウトサイドパスポーンを取ってからキングサイドに向かっても、なんとか間に合っています。) 42... Kb6! 43. Kc4 Kc6 44. b5+ Kd6 45. Kb4 (45. b6 Kc6 46. b7 Kxb7 47. Kd5 e4 48. fxe4 f4=) 45... Kd5 46. b6 Kc6 47. Kc4 Kxb6 48. Kd5 e4! 49. fxe4 f4!=


Analysis Diagram

こうして、eファイルではなくfファイルにパスポーンを作ることで、黒はキングをキングサイドに戻すテンポを稼げばドローです。このアイディアまできちんと見えて、初めてこのポーンエンディングはドローになると言い切れるわけです。大変難しいですね!

40... Kb5 1/2-1/2



シンプルに見えましたが、私の経験したポーンエンディングでも、かなり難しい部類に入るものでした。この試合に続き、野口さんとの最終戦でも苦しいゲームをなんとかドローにし、羽生さん、野口さんの2人を振り切って、久々のIVL 優勝です!

1st Place Kojima, S (IM, JPN, 2457)
2nd Place Noguchi, K (JPN, FIDE 2115)
3rd Place Habu, Y (FM, 2408)



過去17回のIVL で、4回の優勝経験を持つ野口さんは、今回も優勝争いに絡みました。最終戦のドローで、逆転優勝こそなりませんでしたが、初戦だけでなく2位決定戦のタイブレークブリッツでも、2-0 のスコアで羽生さんを下しています。私とのゲームもかなり優勢でしたので、今回は野口さんの優勝でも全くおかしくはなかったと思います。それだけに、2R での逆転負けは勿体なかったですね。


羽生さんは4連覇のかかったIVL でしたが、私と野口さん相手に1.5P を落とし、今回は優勝を逃しました。しかし、初戦で黒星がついても、大きく崩れずに入賞に絡むプレーをするのはさすがです。今年も残り短いですが、私とのトレーニングとIVL 参加の機会はまだあるでしょう。近いうちに3つ目のIM ノームを獲得し、日本から3人目のIM となることも期待しています。

今回でIVL も18回目を迎え、20回目も近づいてきました。年始になる可能性が高いですが、節目の回数では何か企画をしたいですね。引き続き、IVL をよろしくお願い致します。

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