2015/11/05

18th IVL Tournament Report


Photo by Hasegawa

文化の日の11月3日、18回目を迎えるIV League が開催されました。参加者は8名で、いつも通りの5R スイス式です。ここ3回のIVL では、羽生さんが15試合で14.5P という驚異的な数字で3連覇を果たしています。最近は準優勝にすら手が届いていない私も、今回こそはと思い(毎回思っていますが...)大会に臨んできました。

私は佐野さん、桑田くん、汐口くんに3連勝と好スタートを切ることができました。対する羽生さんは、初戦で野口さんに痛い黒星。その野口さんも汐口くんに逆転負けを喫し、私に1P リードを許すこととなります。4R のペアリングは色の関係で、私と羽生さんが対戦することに。逃げ切りをかけた大事な一戦です。

Habu, Y (FM, JPN, 2408) - Kojima, S (IM, JPN, 2457)
18th IVL (4)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. Qc2 g6 5. Bf4 Bg7 6. e3 O-O 7. Nc3 c5 8. dxc5 Qa5 9. Rd1 dxc4 10. Bxc4 Qxc5 11. Be2!?



Slav 4. Qc2 にはこの数年、いくつかの変化を試しています。4... g6 から、早めのc6-c5 を仕掛けるのが最近のお気に入りで、黒はGrunfelld Bf4 Variation の一手損(c7-c5 ではなく、c7-c6-c5 であるため) になりますが、白のQd1-Qc2 もベストの位置であるか定かでないため、十分に指すことができるでしょう。このゲームで面白いのは終盤であるため、ここからだいぶ飛ばします。

11... Nc6 12. O-O Bf5 13. Qb3 Qb4 14. Qxb4 Nxb4 15. Nd4 Bd7 16. Bf3 Nc6 17. Nxc6 Bxc6 18. Bxc6 bxc6


ここはポーンストラクチャーを多少乱しますが、私はそれをさほど気にしませんでした。

19. Be5 Rfd8 20. f3 Nd5 21. Bxg7 Kxg7 22. Nxd5 cxd5 23. Rc1 Rdc8 24. Kf2 Rab8 25. b3 a5 26. Ke2 Kf6 27. Kd2 Ke5 28. Rxc8 Rxc8 29. Rc1 Rxc1



ここでルークを交換しても大丈夫なのかどうか、正確に判断するのは難しいでしょう。ポイントは、白が持つクイーンサイドのポーンマジョリティに対し、黒はセンターポーンで対抗できるかどうかです。ちなみにコンピューターの提案は、29... Rb8 30. Rc7 a4 31. Kc3 Kd6 32. Ra7 Rc8+ 33. Kd2 axb3 34. axb3 Rb8 35. Kc2 Rc8+ 36. Kb2 g5= と指してイコールです。

30. Kxc1 d4


黒は将来的に、e5-e4 のブレイクからeファイル、もしくはfファイルにパスポーンを作ることで、白のアウトサイドパスポーンに対抗します。そのため、ここで早めにポーンを仕掛けておくほうが、黒にとって分かりやすくなるでしょう。

31. Kd2 Kd5 32. Kd3 dxe3 33. Kxe3 e5 34. g4?!



検討では、この手がミスでドローになってしまったのではないかと結論が出ました。確かにこうしてgポーンを進めるのは、私も羽生さんも、白にとって自然な手だと最初は思っていました。しかし、実際に進めてみると、黒がe5-e4 とブレイクした際、fポーンを早くパスポーンにしてしまい、黒の反撃を分かりやすくしてしまっているという欠点があります。

代わりにgポーンは動かさず、シンプルにクイーンサイドでパスポーンを作るのはどうでしょうか。34. Kd3 f5 35. a3 Kc5 36. Kc3 Kb5 37. b4 axb4+ 38. axb4 g5!? これは将来的に、g2-g4 から崩されてしまうのでよくないと思っていましたが、その場合、黒はf3 のポーンを攻撃することで反撃を作ります。 39. Kb3 h6 40. g4 f4 41. Kc3 Kc6 42. Kc4 Kb6 43. Kd5 (43. b5 Kc7 44. Kd5 Kb6 45. Kxe5 Kxb5=) 43... Kb5 44. Kxe5 Kxb4 45. Kf5 Kc4 46. Kg6 Kd3 47. Kxh6 Ke2 48. Kxg5 Kxf3 49. Kh4 Kg2 50. g5 f3 51. g6 f2 52. g7 f1=Q 53. g8=Q+ Kxh2=


Analysis Diagram

こうしてf3 のポーンを取りにいくことで、黒はクイーンを作り合い、ドローに持ち込むことができます。

34... f5 35. g5 Kc5 36. a3 Kd5 37. Kd3 Kc5 38. h3 Kb5 39. Kc3 Kc5 40. Kd3


ここで羽生さんがキングを戻してくれたのは、正直に言えばラッキーでした。白が勝つためにはb3-b4 と仕掛けるしかありません。それでも最善をつくせばドローになりますが、私が時間切迫の中、間違えずに指せる自信はありません。

40. Kd3 (40. b4+ axb4+ 41. axb4+ Kb5! (41... Kd5? 42. Kd3 Kd6 43. Kc4 Kc6 44. h4!+-) 42. h4 (42. Kb3 e4!= こうしてeファイルにパスポーンを作れば、黒はアウトサイドパスポーンを取ってからキングサイドに向かっても、なんとか間に合っています。) 42... Kb6! 43. Kc4 Kc6 44. b5+ Kd6 45. Kb4 (45. b6 Kc6 46. b7 Kxb7 47. Kd5 e4 48. fxe4 f4=) 45... Kd5 46. b6 Kc6 47. Kc4 Kxb6 48. Kd5 e4! 49. fxe4 f4!=


Analysis Diagram

こうして、eファイルではなくfファイルにパスポーンを作ることで、黒はキングをキングサイドに戻すテンポを稼げばドローです。このアイディアまできちんと見えて、初めてこのポーンエンディングはドローになると言い切れるわけです。大変難しいですね!

40... Kb5 1/2-1/2



シンプルに見えましたが、私の経験したポーンエンディングでも、かなり難しい部類に入るものでした。この試合に続き、野口さんとの最終戦でも苦しいゲームをなんとかドローにし、羽生さん、野口さんの2人を振り切って、久々のIVL 優勝です!

1st Place Kojima, S (IM, JPN, 2457)
2nd Place Noguchi, K (JPN, FIDE 2115)
3rd Place Habu, Y (FM, 2408)



過去17回のIVL で、4回の優勝経験を持つ野口さんは、今回も優勝争いに絡みました。最終戦のドローで、逆転優勝こそなりませんでしたが、初戦だけでなく2位決定戦のタイブレークブリッツでも、2-0 のスコアで羽生さんを下しています。私とのゲームもかなり優勢でしたので、今回は野口さんの優勝でも全くおかしくはなかったと思います。それだけに、2R での逆転負けは勿体なかったですね。


羽生さんは4連覇のかかったIVL でしたが、私と野口さん相手に1.5P を落とし、今回は優勝を逃しました。しかし、初戦で黒星がついても、大きく崩れずに入賞に絡むプレーをするのはさすがです。今年も残り短いですが、私とのトレーニングとIVL 参加の機会はまだあるでしょう。近いうちに3つ目のIM ノームを獲得し、日本から3人目のIM となることも期待しています。

今回でIVL も18回目を迎え、20回目も近づいてきました。年始になる可能性が高いですが、節目の回数では何か企画をしたいですね。引き続き、IVL をよろしくお願い致します。

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