海外のチェストーナメントに来ると、食事が美味しくない、食べられるものがないといった話も時々聞きますが、幸いなことに私は食事で困った経験はあまりなく、日本から携帯食を持ってくることもほぼありません。今大会は中華を中心に、ベジタリアンの選手も困らないように野菜のメニューや、ファーストフードなども揃えられています。
5R の相手は中国のIM Dai Changren です。名前に聞き覚えがあったのは、2年前のWorld Cup でKramnik と対戦していたからでした。2500弱のレイティングですが、中国のトップ選手はもちろんのこと、つい先日はGrischuk といった世界のトッププレーヤーとも対戦をしている経験豊富な相手です。
Kojima, S (IM, JPN, 2400) - Dai Changren (IM, CHN, 2480)
Asian Continental 2019 (5)
1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. g3 O-O 5. Bg2 d6 6. O-O Nc6 7. Nc3 Bd7!?
Asian Continental 2019 (5)
彼のメインレパートリーであるKing's Indian は予想していましたが、この変化は意外でした。7... e5 8. dxe5 dxe5 9. Bg5 Be6 10. Nd2 をメインで用意していたため、それに近くなるようにします。
8. b3!? e5 9. dxe5 dxe5 10. Bg5 Qc8 11. Nd5
b2-b3 を挟んだことで、a1-h8 のダイアゴナルが少し危なく、Qd1-Qa4 のような手も指せませんが、その代わりに黒も白マスビショップがd7 であるため、d5 のマスを受けられていません。本譜ではそれを利用し、すぐにナイトをd5 に飛び込んで勝負します。
11... Nxd5 12. cxd5 Nd8 13. Rc1 f5 14. Nd2 Nf7 15. Be3+/=
白はスペースとc7 へのプレッシャーで少し有利です。知らないオープニングでもひとまず成功を収め、ここからが本番です。
15... e4 16. f3 exf3 17. exf3!
どれで取り返すか少し悩みましたが、d5 を孤立ポーンにしても、e2 のポーンが弱点として残らないほうが良いと考え、ポーンで取り返す手を選びました。
17... Re8 18. Bf2?!
しかし、この付近からやや不正確な手が出始めます。Re8-Rxe3, Bg7-Bd4 のような筋を気にしてビショップを下げておきましたが、eファイルを先に取られるほうが厄介でした。ここは18. Re1 で白はまだ優位を保てています。
18... Bb5 19. Re1 Rxe1+ 20. Bxe1 Qd7 21. f4
e4 のマスを弱めてしまい、Nf7-Nd6-Ne4 を狙われそうですが、g2 のビショップを閉じたままで、d5 を狙われては仕方ないため、このポーンを伸ばすことにします。
21... Bb2 22. Rc2 Bd4+ 23. Kh1!
ここはルークを守るためにビショップを挟む一手に見えますが、f2 に上がったキングが危ないと感じ、少し時間を使って読んでこちらを選びました。
22... Re8
23... Bd3 24. Nc4! Bxc2 25. Qxd4 c5! 26. Qxc5 Be4 27. Bc3 Bxg2+ 28. Kxg2 このポジションは黒キング周りの黒マスが弱いため、エクスチェンジの代償は十分ありそうです。
23. Nc4?
しかし、ナイトのマスがここで違いました。24. Nf3! Bf6 (24... Bb6?! 25. a4 Ba6 26. a5 Be3 27. Bc3+/-) Bf2=
23... Qe7?!
黒が有利になるのは、この瞬間しか無かったでしょう。24... c5! 25. Bf3 Bxc4 26. bxc4 Nd6-/+ こうなると先述の通り、e4 のマスの弱さが気になります。
25. Ba5! Bc5 26. Bf3 Bxc4 27. bxc4!
ここはcファイルのオープンにこだわると失敗です。27. Rxc4? b6 28. Bd2 Nd6-/+
27... b6 28. Bc3 Qe3 29. Kg2 Kf8 30. Bf6 Qe1 31. Re2!
ルーク交換だけでも楽になりますが、ここではクイーンも交換できるため、eファイルを抑えられていたやや苦しい状況は、完全に脱することができます。
31... Qxd1 32. Rxe8+ Kxe8 33. Bxd1=
こうなれば白は問題ないはずと思いつつ、c4 のポーンを守りだけが少し気になりました。
33... Nd6 34. Be2 Ne4 35. Be5 Bd6 36. Bd4 Kd7 37. Bd3 Bc5 38. Be5 Nd6 39. h3 Nf7 1/2-1/2
最後はドローで合意して試合を終わらせました。1つの緩手でアドバンテージを逃してしまったのはもったいなかったですが、いろいろとミスもありながらも面白いゲームだったと思います。そしてこのラウンド、女子セクションでは妻のなつみがバングラデシュのマスター相手に、今大会初勝利を挙げました!
Hamid, R (WIM, BAN, 1929) - Kojima, N (WCM, JPN, 1711)
Asian Continental 2019 (5)
1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 d6 8. c3 O-O 9. h3 Nb8 10. d4 Nbd7 11. Nbd2 Bb7 12. Bc2 Re8 13. Nf1 Bf8 14. Ng3 g6 15. Nh2 c5 16. d5 c4 17. Be3 Nc5 18. Qd2 Qc7 19. Bg5 Be7 20. Nf3 Nfd7 21. Bxe7 Rxe7 22. Qg5 f6 23. Qg4 Rg7 24. Rad1 Bc8 25. Qh4 Rf7 26. Qh6 Nb6 27. Rd2 a5 28. Nh2 b4 29. Re3 b3!
Asian Continental 2019 (5)
30. axb3 cxb3 31. Bd3 Nxd3 32. Rexd3 a4 33. Rd1 Nc4 34. Qc1 a3 35. bxa3 Rxa3 36. Ngf1 Bd7 37. Ng4 b2 38. Qc2 Ba4 39. Qe2 Bxd1 40. Rxd1 Rf8 41.
Nd2 Nxd2 42. Qxd2 Qxc3 43. Qe2 Ra1 44. Ne3 Rxd1+ 45. Nxd1 b1=Q 0-1
キングサイドをきっちり守ったうえで、クイーンサイドからしっかり反撃を作れていると思います!
私は3人目の中国とのマスターとの試合で中国勢への連敗を止め、次のラウンドでは、インドのIM Vignesh との対戦します。またもや若く力のあるプレーヤーとの試合になりましたので、力負けしないように指してきたいと思います。
Asian Continental Chess Championships 2019 R6 Pairigs
レストランには検討用のボード3つと、中国らしく卓球台が置かれています。この1台の卓球台が中国勢だけでなく、インド勢にも大人気で、気づくと毎日誰かがプレーしています。GM Aryan が大真面目に検討する奥で、GM Vidit たちが卓球に興じるというのは、なかなか面白い構図ですね。
私もモンゴルの女子選手、Munkhzul と昨日卓球をしてきました。彼女は将棋も熱心で、先月は、リコー杯女流王座戦に参加するために来日しました。そこで青嶋くんと指している写真を見た人も多いかと思います。チェスだけでなく将棋もきっかけとなって、もっと海外選手との交流が進むと良いですね。
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