2019/06/17

Asian Continental Chess Championships 2019 R9


更新が後れましたが、9試合のAsian Continental を終え、昨晩中国から帰国しました。パソコンも無事に復活させましたので、これで思う存分、記事を書くことができます。ブリッツ大会や閉会式、大会の振り返りは次の記事にするとして、今晩は最終戦の試合をお届けしたいと思います。

最後は再びGM を引き、インドのVishnu との対戦になりました。2500を超える彼でも、1つ勝ち越し状態から大会終盤で3連敗し、2つ負け越しで私と対戦が組まれるというのも、この大会のレベルの高さを伺わせます。

Vishnu, P V (GM, IND, 2511) - Kojima, S (IM, JPN, 2400)
Asian Continental 2019 (9)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. d3 d6 6. c4 g6 7. Nc3 Bg7 8. Nd5!?



また5. d3 Ruy Lopez か! と試合開始直後は思いましたが、Vishnu がチョイスしたのはフィリピン勢とは違う6. c4 ラインです。8. Nd5 の早い跳び込みは全く知りませんでしたが、近年はこれが多くなっています。

8... h6 9. Nb4 Bd7 10. Nxc6 Bxc6 11. Bxc6+ bxc6


ビショップを交換せず、10... bxc6 とする試合が多いようですが、私は相手のバッドビショップを消しても、早めにd7 のマスをナイトのために空ける選択をしました。

12. h3 O-O 13. Be3 Nd7 14. g4 f5!?



このc2-c4 の変化では、別の流れの中で黒から積極的にfポーンを伸ばすラインがあります。それやKing's Indian にならい、黒から積極的に動いてみることにしました。

15. gxf5 gxf5 16. Rg1 Kh7 17. exf5 Rxf5 18. Nd2 d5 19. Qg4 Qf8!?


いかにもc6 が落ちるだけのダメな手に見えますが、19... Qf6 20. Nf1! もNf1-Ng3-Nh5 が嫌なマヌーバリングで、白が良くなります。

20. Qg6+ Kh8 21. Qxc6 d4 22. Bxd4 exd4 23. Qxd7 Re8+ 24. Ne4 Re7!?



ここからがこのゲームで難しく、そして面白いポジションです。私は2ポーンを捨て、その代償を白キングがe1 にまだ残っている点に求めました。アウトポストのナイトはいかにもしっかりとキングを守り、黒の代償を足りなくしていそうですが、黒にはさらにエクスチェンジを捨てるアイディアがあります。24... Rxe4+ 25. dxe4 Rf7 26. Qa4 Rxf2 27. O-O-O Qf4+ 28. Kb1 Qxe4+ 29. Ka1 d3 30. Qd7! (30. Rxg7 Qe2 31. Rb1 Kxg7= ならば黒は問題なさそうです。) 30... Qe5 31. Qc8+ Kh7 32. Qb7 Qd4 早いエクスチェンジ捨ては自信がなかったため、一度白クイーンを下げさせることにします。

25. Qc6 Rxe4+?


しかし、今度はエクスチェンジを捨てるタイミングを見誤りました。25... Rxf2! 26. O-O-O Rxe4! 27. Qxe4 Rxb2! (この手が見えていれば、間違いなく先にf2 を取っていたでしょう。) 28. Rg2! (28. Kxb2 Qb4+ 29. Ka1 Qc3+ 30. Kb1 Qb4+=) 28... Rb8!


これはいかにも実戦的なポジションで、キャスリングしてもb2 を失ってキングが危ないため、黒にはエクスチェンジの代償がありそうです。

26. dxe4 Qb4+?


上記の変化とはクイーンの位置がa4 とc6 で違うため、b4 のチェックが活きそうですが、これが完全な間違いでした。26... Rxf2 27. Qxc7 Rxb2 28. Qxg7+ Qxg7 29. Rxg7 Kxg7 30. O-O-O Rxa2 31. Rxd4 で1ポーンダウンのエンドゲームを粘るほかありません。

27. Kf1 Rxf2+



読み切れませんでしたが、ここでルークが単に退くようではとてもエクスチェンジの代償は無いため、パペチュアチェックを狙って2つ目のルークも捨てることにします。

28. Kxf2 Qd2+ 29. Kf3 Qe3+ 30. Kg2 Qe2+ 31. Kh1?!


この手でも白が勝つのですが、もっとシンプルなのは上に逃げていくことです。31. Kg3! Be5+ 32. Kh4 Qf2+ 33. Kh5 Qf3+ 34. Kg6+- と逃げてチェックは続きません。本譜の手はしっかり読み切れていたため、これはパペチュアルチェックになるか、ルークを返してもらって勝負できる駒割りになるか、どちらかだと私は思いこんでいました。

31... Qf3+ 32. Rg2 Qxh3+ 33. Kg1 Qe3+ 34. Rf2 Qg3+ 35. Kf1 Qh3+ 36. Kg1


36. Ke1 Qe3+ 37. Re2 Qg1+ 38. Kd2 Qxa1 こうして白がパペチュアルチェックを振り切ろうとするとa1 のルークが落ちたうえ、白キングは依然として危ない状況なのでチャンスはあるだろうと読んでいました。本譜ではキングが戻ったため、これは最終戦はドローで終わるかと思いました。

36... Qg3+ 37. Rg2 Qe3+ 38. Kh2!



正直に言ってショックでした。ビショップでチェックされる危険のあるマスに、わざわざキングを逃がすはずがないと、ルークを捨てた時点から思い込んでいました。しかし、少し考えてみれば、e5 にビショップを上げてチェックしても決定的な攻撃にはならず、むしろ後でビショップが白クイーンのターゲットになってしまうことに気付きます。そうなると、上記のようなルークを返すアイディアが、白にとっては痛手でもなんでもなくなり、黒の計画は完全に頓挫することとなります。もちろん、そうと分かっていても、ビショップでチェックする手以外はすぐにチェックが切れるため、考えられません。

38... Be5+ 39. Kh1 Qh3+ 40. Kg1 Qe3+ 41. Rf2 Qg3+ 42. Kf1 Qh3+ 43. Ke1 Qe3+ 44. Re2+-


白は今度こそ安心して、g1 でのチェックを受け入れます。

44... Qg3+


44... Qg1+ 45. Kd2 Qxa1 46. Qxh6+ Kg8 47. Qe6++- もちろんルークを取りかえしても、直後にビショップが落ちては勝負できません。

45. Kd1 d3 46. Qxh6+ Kg8 47. Re3 Qg4+ 48. Kd2 Bf4 49. Rg1 1-0



自分は細かな読みよりも感覚(大局観)を重要視するタイプのプレーヤーだとは思っていますが、きちんと読まずにこんな手はありえないだろうと決めつけてはいけないと、あらためて思い知りました。

Asian Continental Chess Championships 2019 Final Standings


続きはまた明日以降の記事で!

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