2020/04/11

Basic and Advanced Strategies in QGD Vol.6


黒の主流変化の2つ目は、Tartakower Variation です。Vol.1,2 で紹介したゲームとどういった違いがあるのか、併せてチェックしてみてください。

Nikolic, P (GM, BIH, 2669) - Berkes, F (GM, HUN, 2645)
Bundesliga 2009 (15)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bg5 h6 6. Bh4 O-O 7. e3 b6



Lasker Variation と並んで人気、信用が高いのが早めのクイーンサイドフィアンケットを組む、Tartakower Variation です。日本ではこちらのラインのほうが人気があるように思えますね。これまで述べてきたとおり、h7-h6 を入れ、Nb8-Nd7 の前にクイーンサイドフィアンケットを準備するのがポイントです。

8. Rc1 Bb7 9. Bxf6!?


Tartakower Variation でチェックすべき戦略が、このビショップナイト交換です。f6 のビショップは堅いd4 に大したプレッシャーを持たないという白の判断で、このピース交換を入れてからセンターポーンを交換します。8. cxd5 Nxd5 9. Bxe7 Qxe7 10. Nxd5 exd5 11. Rc1 Be6! ならば、これまで見てきたようにb7 でビショップが働きに困ることはありません。ビショップナイト交換を挟まないポーン交換も、9. cxd5 Nxd5 10. Bxe7 Qxe7 11. Nxd5 Bxd5! と進み、黒は満足な2ピース交換からc7-c5 のブレイクでイコアライズに成功するでしょう。d7 にナイトを展開するのを遅らせたため、c7 のポーンが落ちないのがポイントです。

9... Bxf6 10. cxd5 exd5 11. b4!?



Nikolic は早い段階でクイーンサイドのアクションを起こしますが、これには本譜で見られる黒の反撃があります。11. Be2 とピース展開、キャスリングで様子を見て、その後にb2-b4 をするかどうか見極める変化も良いでしょう。

11... c6


b7 のビショップとc6 の組み合わせは変なように思えますが、白にb4-b5 を許すとその後でどうcポーンを突いても、ポーン交換からd5 が弱い孤立ポーンになってしまいます。そうなると、白はf6 のナイトを消したことも効果が出てくるでしょう。黒は一旦c6 でポーンを止めておき、白のb4-b5c6-c5 と突き直せるようにするのが本譜のアイディアです。代わりにいきなり12... c5!? とセンターポーンを捌き、c5 のポーンはゆっくりNb8-Nd7 から回収する変化もあります。黒はf6 のビショップをアクティブにして十分に戦えますが、d5 のポーンが孤立することや、bファイルが開くために多少無防備になるb7 のビショップに気をつけなければいけません。

12. Bd3 Be7!



早いc7-c5 を仕掛けないのであれば、黒マスビショップはf6 で大した仕事はありません。元のダイアゴナルに戻してクイーンサイドの反撃に使います。c5 のマスに利かせることで、c6-c5 のサポートの働きがあることも、このビショップ退きのポイントです。

13. Qb3 a5!


白がb2-b4 からc5 を抑え込むアイディアには、黒はa7-a5 からbポーンを崩して対応するのがオーソドックスなアイディアです。ここでbポーンをどう捌くかは白にとって迷うところです。

14. bxa5


14. b5 c5! ならば12... c5 とはまた違う状況でc5 にポーンが伸び、白のセンターに反撃ができます。これであれば黒はd5 が孤立になることもなく、またbファイルも開いていないために、b7 のビショップがアタックされることもありません。本譜のようなa,bファイルの交換は、互いにa,bポーンが弱点になりますが、黒がトータルで悪いということはないでしょう。

14... Rxa5 15. a4 Na6 16. O-O Nb4 17. Be2 Bd6 18. Rfd1 Qe7



展開を遅らせていたナイトは珍しいルートでb4 に入り、黒マスビショップもd6 のアクティブな位置に組み直せば、黒はほぼ全ての問題を解決するのにあと一歩です。扱いが難しいのはb7 のビショップで、b7 に置いたままでは働きが悪いですが、ダイアゴナルを切り替えるとc6 のポーンが弱くなってしまいます。そう考えると、b4 のナイトがc6, b6 の弱いポーンをサポートする大きな役割を担っていることが分かります。

19. Ne1 Rfa8 20. Bf3 Ba6 21. Qb2 Bc4 22. e4


黒がc7-c6, b7-b6 のポーンストラクチャーの際、白はこのセンターブレイクを利用します。ポーンを捌いた際はd4 が孤立ポーンになりますが、その代わりにd5 を消せればc6 が攻撃しやすくなるため、バランスはとれていると判断できます。

22... dxe4 23. Nxe4 Bd5 24. Nc3 Qf6 25. Bxd5 Nxd5 26. Nf3 Nxc3 27. Rxc3 c5



ピースが捌け、一つ前のゲームのような穏やかな収束が見えてきました。a-dファイルの互いのポーンは弱く、これらを全て取り合えばドローに落ち着くでしょう。

28. Rb3 Rxa4 29. Rxb6 Ra2 30. Qb5 c4 31. Rf1 c3 32. Rc6 c2 33. Qd5 R8a5 34. Qe4 Qg6 35. Qxg6 fxg6 36. Ne1 Rc5 37. Rxc5 Bxc5 38. Nxc2 Rxc2 39. dxc5 Rxc5 40. h4 1/2-1/2


黒から早い2マイナーピース交換を仕掛けるLasker Variation とは異なりますが、Tartakower Variation も黒が丁寧に問題解決に努める優れた変化であると言えます。覚えておいてほしいポイントは、Tartakower Variation では白からビショップナイト交換を仕掛けるアイディアがあり、評価の難しい局面になりやすいということです。指しこなせれば、黒からも勝ちが狙いやすいと思いますので、それらの点を踏まえ、Tartakower Variation にチャレンジするかどうかを考えてみてください。

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