メインラインは前回まででひとまず終わりとし、今回からサブラインを扱います。一応今回のシリーズではサブ扱いですが、白黒、互いに勉強になるアイディアを引き続きご紹介していければと思います。
Erdos, V (GM, HUN, 2609) - Kaczur, F (IM, HUN, 2478)
68th ch-HUN 2019 (1)
1. Nf3 d5 2. d4 Nf6 3. c4 e6 4. Nc3 Be7 5. Bg5 h6 6. Bxf6!?
68th ch-HUN 2019 (1)
このビショップナイト交換はTartakower Variation で紹介したものと似ていますが、黒がまだb7-b6 を決めていないことが大きな違いです。Vol.7 で紹介した変化に確実に入りたければ、このピース交換を避けるために、Nb8-Nd7 を挟んでからh7-h6 を突くことが推奨されます。
6... Bxf6 7. e3 O-O 8. Rc1
8. Qd2!? や8. Qc2 からクイーンサイドキャスリングを狙うアグレッシブなセットアップもありますが、今回は基本的にRa1-Rc1 でなるべく統一します。白としては最も大人しい変化でしょう。
8... c6 9. Bd3 Nd7 10. O-O dxc4 11. Bxc4 e5
b7-b6 からのクイーンサイドフィアンケットは、Tartakower Variation で紹介したゲームと比べ、白がBg5-Bh4-Bxf6 のビショップ退きによるテンポロスをしていないため、白の得が明らかです。それであれば、Orthodox Variation で見たようなe6-e5 のセンターブレイクから白マスビショップ活用を狙うのが黒としては自然な作戦と言えるでしょう。
12. d5!?
かつて日本でMisha と試合をした際は、12. Ne4!? exd4 13. Nxf6+ Nxf6 14. Qxd4 Qxd4 15. Nxd4 と一気にピースが消えてエンドゲームに突入しました。白のナイトとビショップがともにe6 を抑えていれば、黒の白マスビショップは依然として展開するマスに困り、わずかに白がアドバンテージを保てるというアイディアです。他に全く違う特徴を持つ有名な変化としては、12. h3 exd4 13. exd4 Nb6 14. Bb3 Bf5 15. Re1 というKasparov-Karpov のマッチで登場したラインがあります。こちらは黒がダブルビショップでIQP にプレッシャーをかけて指しやすそうに見えますが、白もNf3-Ne5 からf7 へのアタックがあるため、バランスが取れていると言えそうです。
12... Nb6 13. b3!?
今回、私が注目したのはこの変化です。2011年にRadjabov が指したことで有名になった手で、白はd5 にポーン、ないしはピースを残すことにこだわって戦います。f6 のビショップの利きがイマイチですが、e5 のポーンを守るためにはすぐに切り替えができないことがポイントです。
13... e4
局面を単純化する手ですが、黒マスビショップを返してしまって白が指しやすい局面になると個人的には思うので、あまり好きではありません。13... cxd5 14. Bxd5 Qe7!? と指し、ポーンストラクチャーを対称にしてからじっくり白マスビショップの展開を狙うのは、黒が十分手堅く見えます。
14. Nxe4 cxd5 15. Nxf6+ Qxf6 16. Be2+/=
これは後に紹介する5. Bf4 Variation で登場しそうな形で、白は満足なポーンストラクチャーとピースが残り、d4 のアウトポスト活用で十分なアドバンテージを取れそうです。ポーンストラクチャーだけを見ればVol.7 で紹介したものと同じですが、黒のナイトがb6 であまり働いていないことが大きな違いとなっています。
16... Be6 17. Qd2 Rfc8 18. Nd4 Rxc1 19. Rxc1 Rc8 20. Rd1!?
オープンファイルを明け渡すアイディアにはリスクもありますが、c2, c4 などの重要なマスは抑えており、Nf6-Ne4-Nc3 などでc3 を使われる危険もありません。ここはルークを残し、d5 へのプレッシャーを保って白は勝負できます。
20... Nd7 21. Qa5! a6 22. Qb4 Nc5 23. Bf3 Qe7 24. Rc1 Qc7?
白のルークのライン上にくるのは見た目通り危険で、白は駒得が確定します。
25. Nxe6! fxe6 26. Qd4 a5 27. a3+-
単純にb3-b4 を受ける手が無く、勝負ありです。
27... Nxb3 28. Rxc7 Rxc7 29. Qg4 Rc1+ 30. Bd1 Nc5 31. g3 Kf7 32. e4 1-0
今回の変化はTartakower やLasker を指すプレーヤーにとっては避けることのできないものですので、黒としては対策が必要です。白がクイーンサイドへキャスリングするようなシャープな変化もチェックしておくと良いでしょう。
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