2020/04/07

Basic and Advanced Strategies in QGD Vol.4


次のVol.5 から現在主流のQGD のラインを紹介しますが、その前に前回のOrthodox Variation からの分岐で、人気のあるサブラインをご紹介します。今夜扱うゲームは黒が勝っていますが、この変化は十分に白も有望ですので、もう少し日本国内で指される機会があっても良いと思います。

Gruenfeld, E - Alekhine, A
Karlsbad 1923(2)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. Bg5 Be7 5. Nf3 Nbd7 6. e3 O-O 7. Rc1 c6 8. Qc2!?



白マスビショップを展開を遅らせ、Qd1-Qc2 を指す変化をRubinstein Variation と呼びます。メインはRa1-Rc1 ではなく、Ra1-Rd1 で黒のc6-c5 ブレイクを牽制する手ですが、本譜のようにc1 もありえるでしょう。いずれにせよ、白のアイディアは黒がc4 を取ってきた際に、Bf1-Bxc4 とd3 で一度止まるテンポのロス無しにポーンを取りかえせるようにすることです。

8... a6!?


白がビショップ交換を遅らせるのであれば、黒はc4 ポーン取りを遅らせて対抗します。a7-a6 には将来的にb7-b5 からb7 にビショップを展開する狙いがあります。Semi-Slav を使うプレーヤーにとっては、Vol. 1,2 で紹介したb7-b6 以上に、b5 までポーンを伸ばす形のほうが馴染みがあるでしょう。

9. a3!



白のさらなる待ち手にはいくつか候補がありますが、端ポーンを突くのが有力なアイディアです。黒同様にbポーンを伸ばす準備にもなりえますが、より重要なアイディアはa2 にマスを作っておき、Bf1-Bc4-Ba2-Bb1 というマヌーバリングを可能にすることです。

9... h6 10. Bh4 Re8 11. Bd3


永久に白マスビショップを展開しないのもおかしいので、白はここで待ち手を諦めます。さらに待ちたければ、11. h3 が候補手だと思います。

11... dxc4 12. Bxc4 b5 13. Ba2 c5!



適切なタイミングでのcポーンブレイクは、QGD における重要な黒の反撃です。bポーンを伸ばした直後には、すぐビショップをフィアンケットに組んでしまいたくなりますが、13... Bb7?! 14. b4! だとc5 のマスを抑えられてしまい、b7 のビショップの活用が難しくなってしまいます。

14. Rd1 cxd4 15. Nxd4 Qb6!


センターへの反撃も行い、いよいよビショップ展開かと思われましたが、ここは先にクイーンが動く手が正解です。15... Bb7? 16. Nxe6! のタクティクスを食らっては、ここまでの丁寧なクイーンサイドのプレーが台無しになってしまいます。

16. Bb1 Bb7 17. O-O Rac8=



白が早めに伸ばしたc,dポーンに対し、黒もd7-d5, c7-c6-c5 を返し、これらのポーンを全て精算できました。最も問題になりがちなc8 の白マスビショップもb7 で強力に利かせ、ピースの展開の遅れもさほどなければ黒は満足な展開です。マイナーピースが全て残った状態で黒がイコアライズできているのは、少し珍しいケースに思えます。

18. Qd2 Ne5! 19. Bxf6? Bxf6 20. Qc2 g6 21. Qe2


黒がイコアライズ後、不必要なピース交換などで白は迷走し始め、流れは完全にAlekhine のものとなります。d4 のポーンを削ったことで取りかえしたe5, c5 のマスのコントロールを存分に使い、ナイトがゆっくりと白陣へ侵入していきます。

21... Nc4 22. Be4 Bg7!



Be7-Bf6-Bg7 と黒マスビショップを組みなおせるのであれば、黒はh7-h6, g7-g6 と2つのポーンを突いたことも大してダメージにならず、黒キングの守りは堅いままです。代わりに焦って23... Nxa3? 24. Qf3! だと白が浮いたf6 のビショップを狙い、駒得になります。

23. Bxb7 Qxb7 24. Rc1 e5 25. Nb3 e4


eポーンを押し進めてスペースとd3 のマスのコントロールを得ます。ここまでくるとg7 のビショップの強さは分かりやすく、19手目のビショップナイト交換が白にとって失敗であることは明らかです。

26. Nd4 Red8 27. Rfd1 Ne5 28. Na2 Nd3 29. Rxc8 Qxc8 30. f3?



e4 のポーンを崩し、d3 のナイトを不安定にしたい気持ちは理解できますが、a7-g1 のダイアゴナルを弱めてしまうほうが問題で、黒にコンビネーションのチャンスを与えてしまいます。ここでは黒は数種類のタクティクスを組み合わせ、一気に勝負を決めます。

30... Rxd4! 31. fxe4


31. exd4 Bxd4+ 32. Kf1 (32. Kh1 Nf2+-+) 32... Nf4! 33. Qxe4 Qc4+ 34. Ke1 Nxg2+ 35. Kd2 Be3+-+

31... Nf4!



d4 のルークを回収する前にe4 を取り、d3 のナイト取りをスレットにした白に対し、黒は自らナイトを自分にとって都合の良いマスで取らせるディスカバードアタックです。

32. exf4 Qc4!


白クイーンの守りをルークから離すディフレクションであると同時に、a2 のナイトも攻撃するダブルアタックになっています。

33. Qxc4 Rxd1+ 34. Qf1 Bd4+! 0-1



最後はバックランクのメイトを決めて終わりです。30手目以降のコンビネーションで有名なゲームですが、私は序盤から中盤にかけて、黒がQGD での黒の問題を解決していく流れが好きです。QGD は古典のゲームからも、面白いものがたくさん発掘できます。

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