前回の記事を更新直後、GW の全日本選手権も延期が発表されました。秋の開催を目指すそうですが、GW ほどの連休は取れないため、どのような日程になるのか疑問ではあります。こちらはもう少し情報を待つことにしましょう。
試合もイベントも無く、あまりに記事のネタが無いので自分で作ることにしました。新シリーズはQueen's Gambit Declined におけるStrategy です。自分が勉強していて気になったもの、面白いなと思ったものをどんどん紹介していきたいと思います。QGD は1.d4 d5 の基本中の基本であり、誰もが一度は勉強しておくべきだと思います。
Queen's Gambit を本などで勉強していないと、こうしたムーブオーダーでも問題ないように思えてしまいます。しかし細かく考えるならば、これは不正確です。QGD の中でも人気があるTartakower Variation は、正確にはNb8-Nd7 の前にb7-b6 を入れます。それでは手堅く見える、Nb8-Nd7, b7-b6 の順だとどういった違いがあるでしょう。
ここで一度ポーン交換を挟むのがポイントです。通常のExchange Variation に比べ、黒がb7-b6 を突いてからポーン交換をしているため、c7 のポーンやc6 のマスが弱くなっています。9. Bd3 Bb7 10. 0-0 c5! 11. cxd5 Nxd5! 12. Bxe7 Qxe7 13. Nxd5 Bxd5 ここまで進むと黒は
① c8ビショップの活用
② 白のセンターを崩す
③ 2マイナーピースの交換
この3つのポイントをクリアできているため、十分にイコアライズできていると考えられます。この3つのポイントについては、Vol.2 以降の記事で詳しく述べようと思います。いずれにせよ、cポーン交換は早すぎず、遅すぎないタイミングで白は実行すべきです。
9... Nxd5? 10. Nxd5! exd5 11. Bxe7 Qxe7 12. Rxc7+- こうしてc7 のポーンが落ちるのも、白が早くc1 にルークを回し、cファイルを開いたメリットだと考えられます。d7 のナイトがクイーンの横利きを止め、c7 のディフェンスができないこともポイントです。
ここは10. Bd3 でも十分に白が指しやすいと思います。b1-h7 のダイアゴナルを抑える白の白マスビショップと、d5 のポーンに遮られてしまうb7 のビショップでは働きに明白な差があります。
上記の考え方だと、白の白マスビショップのほうが基本的に働きが良いため、白から白マスビショップ交換を持ちかけるのは不自然に思えます。しかし、ここに白の作戦のポイントが隠されています。
e5 に跳び込んだナイトが黒から取れないとなると、白はc6 のマスのコントロールを手に入れたことになります。cファイルにルークを回してcファイルを開き、白マスビショップを交換してc6 のマスを弱め、クイーンとナイトでこのマスを抑えてしまう。その結果として黒はc7 のポーンの身動きが取れなくなり、長期的なターゲットになってしまいます。
c6 のマスとc7 のポーンを抑え込んだ白の続く戦略はシンプルです。c7 を守るピースを捌き、cファイルにルークを重ねてc7 へのプレッシャーを増やしていきます。
これも多くのゲームで見られる覚えておくべき手です。f3 に進んだポーンはe4 のマスをカバーしながら、f2 のキングの上がるマスを作っています。すでに十分なピース交換を行っていることで、黒はe3 をアタックする手段に欠けます。
白のダブルポーンの先端は、f5 のマスに刺さったままでe6 を抑えても十分な働きですし、黒のgポーンと交換ができれば、それはそれでダブルポーンの解消と、g6 に新しい弱点を作れたことで白は満足です。
c7に続き、g6 が2つ目の弱点になったので、白はすかさずそこを攻め立てます。
c7 のポーンは消えたものの、新たに弱点となったb6 のポーンが狙われ、黒には守る方法がありません。白はこれを取って勝勢です。
白がcファイルをがっちり抑えてc7 へのプレッシャーを作り、黒に十分な反撃が無いと、白がとても指しやすいことがわかる良い例だと思います。Vol.2 ではまた違った戦略を取り扱おうと思います。
試合もイベントも無く、あまりに記事のネタが無いので自分で作ることにしました。新シリーズはQueen's Gambit Declined におけるStrategy です。自分が勉強していて気になったもの、面白いなと思ったものをどんどん紹介していきたいと思います。QGD は1.d4 d5 の基本中の基本であり、誰もが一度は勉強しておくべきだと思います。
Galkin, A (GM, TUS, 2615) - Savchenko, B (GM, RUS, 2602)
Russian Rapid Cup Final 2013 (1)
1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 Be7 5. Bg5 h6 6. Bh4 Nbd7 7. e3 O-O 8. Rc1 b6?!
Russian Rapid Cup Final 2013 (1)
Queen's Gambit を本などで勉強していないと、こうしたムーブオーダーでも問題ないように思えてしまいます。しかし細かく考えるならば、これは不正確です。QGD の中でも人気があるTartakower Variation は、正確にはNb8-Nd7 の前にb7-b6 を入れます。それでは手堅く見える、Nb8-Nd7, b7-b6 の順だとどういった違いがあるでしょう。
9. cxd5!
ここで一度ポーン交換を挟むのがポイントです。通常のExchange Variation に比べ、黒がb7-b6 を突いてからポーン交換をしているため、c7 のポーンやc6 のマスが弱くなっています。9. Bd3 Bb7 10. 0-0 c5! 11. cxd5 Nxd5! 12. Bxe7 Qxe7 13. Nxd5 Bxd5 ここまで進むと黒は
① c8ビショップの活用
② 白のセンターを崩す
③ 2マイナーピースの交換
この3つのポイントをクリアできているため、十分にイコアライズできていると考えられます。この3つのポイントについては、Vol.2 以降の記事で詳しく述べようと思います。いずれにせよ、cポーン交換は早すぎず、遅すぎないタイミングで白は実行すべきです。
9... exd5
9... Nxd5? 10. Nxd5! exd5 11. Bxe7 Qxe7 12. Rxc7+- こうしてc7 のポーンが落ちるのも、白が早くc1 にルークを回し、cファイルを開いたメリットだと考えられます。d7 のナイトがクイーンの横利きを止め、c7 のディフェンスができないこともポイントです。
10. Qa4!?
ここは10. Bd3 でも十分に白が指しやすいと思います。b1-h7 のダイアゴナルを抑える白の白マスビショップと、d5 のポーンに遮られてしまうb7 のビショップでは働きに明白な差があります。
10... Bb7 11. Ba6
上記の考え方だと、白の白マスビショップのほうが基本的に働きが良いため、白から白マスビショップ交換を持ちかけるのは不自然に思えます。しかし、ここに白の作戦のポイントが隠されています。
11... Qc8 12. Bxb7 Qxb7 13. Ne5! Rfe8 14. Qc6!
e5 に跳び込んだナイトが黒から取れないとなると、白はc6 のマスのコントロールを手に入れたことになります。cファイルにルークを回してcファイルを開き、白マスビショップを交換してc6 のマスを弱め、クイーンとナイトでこのマスを抑えてしまう。その結果として黒はc7 のポーンの身動きが取れなくなり、長期的なターゲットになってしまいます。
14... Qxc6 15. Nxc6 Bd6 16. Bg3 Bxg3 17. hxg3 Nf8 18. O-O a6 19. Rc2 Re6 20. Ne2 Rd6 21. Rfc1
c6 のマスとc7 のポーンを抑え込んだ白の続く戦略はシンプルです。c7 を守るピースを捌き、cファイルにルークを重ねてc7 へのプレッシャーを増やしていきます。
21... Ne6 22. Nf4 Nxf4 23. gxf4 Kf8 24. f3!
これも多くのゲームで見られる覚えておくべき手です。f3 に進んだポーンはe4 のマスをカバーしながら、f2 のキングの上がるマスを作っています。すでに十分なピース交換を行っていることで、黒はe3 をアタックする手段に欠けます。
24... h5 25. Kf2 a5 26. f5 g6 27. fxg6 fxg6
白のダブルポーンの先端は、f5 のマスに刺さったままでe6 を抑えても十分な働きですし、黒のgポーンと交換ができれば、それはそれでダブルポーンの解消と、g6 に新しい弱点を作れたことで白は満足です。
28. Ne5! Ne8 29. Rc6!
c7に続き、g6 が2つ目の弱点になったので、白はすかさずそこを攻め立てます。
29... Kg7 30. Rxd6 cxd6 31. Nd7+-
c7 のポーンは消えたものの、新たに弱点となったb6 のポーンが狙われ、黒には守る方法がありません。白はこれを取って勝勢です。
31... Kf7 32. Nxb6 Rb8 33. Rc6 Ke6 34. b3 g5 35. e4 dxe4 36. fxe4 h4 37. Kf3 Nf6 38. e5 g4+ 39. Ke2 Ne8 40. exd6 Nf6 41. d7+ Ke7 42. Rxf6 Rh8 43. Rf1 h3 44. gxh3 gxh3 45. Rh1 Rh6 46. Nc4 a4 47. Ne5 a3 48. d8=Q+ 1-0
白がcファイルをがっちり抑えてc7 へのプレッシャーを作り、黒に十分な反撃が無いと、白がとても指しやすいことがわかる良い例だと思います。Vol.2 ではまた違った戦略を取り扱おうと思います。
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