2020/04/06

Basic and Advanced Strategies in QGD Vol.3


Vol.1、Vol.2 では、黒の不正確なタイミングでのb7-b6 について扱いました。クイーンサイドにフィアンケットを組むアイディアは、c8 のビショップを使えるようにする最もシンプルな手段ですが、少し間違えると白のビショップとの対比がはっきりし、白が簡単に優勢になってしまいます。そこでVol.3 ではもう1つのビショップの使い方をチェックしてみようと思います。

Cvitan, O (GM, CRO, 2503) - Frouth, N (CRO, 2174)
3rd Krunoslav Hulak Mem 2018 (2)

1. d4 Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 d5 4. Nc3 Be7 5. Bg5 Nbd7 6. e3 O-O 7. Rc1 c6



Nb8-Nd7 c7-c6 の組み合わせは、Orthodox Variation と呼ばれ、古くからある変化です。現在では人気が落ち、主流な変化ではありませんが、下手なタイミングでb7-b6 をやるくらいであれば、こちらのほうが手堅いと思います

8. Bd3 dxc4 9. Bxc4 Nd5 10. Bxe7 Qxe7 11. O-O


Orthodox Variation では、白がビショップをd3 に展開したのを見てポーン交換を仕掛け、空いたd5 のマスを利用してピース交換を仕掛けます。Vol.2 で述べた通り、h7-h6 をどこかで突いていると、h4 のビショップをg3 に逃げられてしまうため、黒は狙った通りのピース交換ができません。またビショップに続いてナイトを交換するのが黒の狙いですが、11. Ne4 とその狙いを避ける手も有名です。11. Ne4 N5f6 12. Ng3 e5 13. O-O exd4 14. Nf5 Qd8 15. N3xd4 Ne5 16. Bb3 Bxf5 17. Nxf5 Qb6 18. Qd6 Ned7 19. Rfd1 Rad8 20. Qg3 g6 21. Qg5 Kh8 22. Nd6 Kg7 23. e4 Ng8 24. Rd3 f6 25. Nf5+ Kh8 26. Qxg6 1-0 Alekhine, A - Lasker, E / Zuerich 1934 この変化も興味深いですが、今回は別のアイディアを紹介します。

11... Nxc3 12. Rxc3 e5



黒がクイーンサイドにフィアンケットを組まない場合、白マスビショップをアクティブに使う方法は基本的にe6-e5 のポーン突き直し以外ありません。このOrthodox Variation では、黒がイコアライズにはもう一歩足りないと個人的に考えていますが、他の変化でも使えるアイディアであるため、e6-e5 のブレイクは覚えておくべきです。

13. Bb3!?


以前、羽生さんとトレーニングをした際も似た局面でこのアイディアを使われました。白のアイディアはcファイルを開いておきつつ、黒にセンターの形を決めさせることです。昔、日本国内のゲームで13. dxe5 Nxe5 14. Nxe5 Qxe5 15. f4 Qf6 16. f5 というゲームを見ました。f4-f5 と押すことで、c8 のビショップの展開を妨害するアイディアは面白いですが、自分からポーンストラクチャーを崩してしまうことと3ピース目を捌かせてしまうのは少し気になります。

13... e4



黒にとってセンターを開くか閉じるかの選択は難しいものです。13... exd4 14. exd4 Nf6 はd4 にIQP を作り、d5 のアウトポストも抑えやすい形で黒は戦えそうですが、開いたeファイルとぴったりターゲットになるe7 のクイーン、3段目のルークの活用までを考えると、白には面白いアタックチャンスがあるでしょう。15. Ne5 Nd5 16. Rg3!+/=

14. Nd2 Nf6 15. Qb1! Re8


e5-e4 と押し込み、スペースを確保しながらナイトをd7 から動かせるようにする本譜のラインでも、黒には小さな問題が残ります。それではe4 のポーンが将来的にターゲットになること、そして単純なピースの展開の遅れです。c8 のビショップを使えるような状態にしたからこそ、シンプルな展開スピードの差は形勢の差に繋がりやすいと言えます。

16. Rc5 Qc7 17. Rfc1 Bd7 18. h3 Re7 19. a3!



Vol.1, Vol.2 のゲーム同様に、白は素早くルークを2つcファイルに重ね、その活用を図ります。c6 ポーンは一見堅く、白のcファイルからの侵入を止めているように思えますが、b2-b4-b5 によって破壊される危険を考慮しなければいけません。このMinority Attack と呼ばれる手の作り方については、後の記事で詳しく説明します。

19... Rae8 20. Ba2 Qc8 21. Nf1


h3 を切る手に対し、Nf1-Ng3 の準備やh2 の受けになるディフェンスの手です。

21... Qb8 22. b4! Be6 23. Bxe6 Rxe6 24. b5!



このポーンストラクチャーにおいては、b5 のポーンへの対処は黒に取って悩みの種です。c6 に孤立ポーンを残せば弱点になりますし、b5 を取れば白のdポーンがパスポーンになります。

24... Nd7 25. R5c3 cxb5 26. Qxb5 Nb6 27. Ng3 Rc8 28. Rc5!


白マスビショップはとうとう捌けたものの、b7 を守りつつcファイルからの侵入を警戒し、さらにはe4 の伸びすぎポーンまでもを守り切るのは難しいでしょう。

28... Rxc5 29. dxc5 a6 30. Qb1 Nd7 31. Nxe4+-



前の2つのゲームに続き、cファイルからのプレッシャーで揺さぶりをかけ、弱いポーンを作らせてそれを取るというのはQGD での白の教科書的なプレーです。3ゲームとも弱点になったポーンの場所が違うことも面白いですね。

31... Qc7 32. Nd6 b5 33. cxb6 Qxd6 34. Rc8+ Nf8 35. b7 1-0


白勝ちが3つ続きましたので、そろそろ黒の勝ったゲームも紹介したいと思います。次のゲームはQGD の歴史に残るゲームですので、何を指すかにかかわらず、あらゆるプレーヤーに見てもらいたいと思います。

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