今回から3回に渡り、現在のQGD 主流のラインをご紹介する予定です。一つ目は私が最もお勧めする、Lasker Variation です。
Akobian, V (GM, USA, 2647) - Fridman, D (GM, GER, 2636)
St Louis Summer A 2018 (9)
1. d4 d5 2. c4 e6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 Be7 5. Bg5 h6 6. Bh4 O-O 7. e3 Ne4!
St Louis Summer A 2018 (9)
このタイミングでナイトがe4 に跳んで、2ピース交換を狙う変化こそ、私が最もQGD で最もソリッドだと考えるLasker Variation です。第2代世界チャンピオンの名を冠するほど古い時代から指されながら、現在もトップレベルで愛用されるほど人気の高い変化です。
8. Bxe7 Qxe7
d5 にナイトが跳ぶOrthodox Variation と違い、e4 にナイトが跳ぶLasker Variation では、h7-h6 を入れてビショップを退かせたことが、ピース強制交換のポイントとなります。
9. Rc1 c6 10. Bd3 Nxc3 11. Rxc3 dxc4 12. Bxc4 Nd7 13. O-O b6!
9. Qc2, 9. cxd5 などの変化もありますが、今回は最もポピュラーな9. Rc1 を扱います。13手目では13... e5 も可能ですが、Vol.3 で扱ったゲームと、h7-h6 が入っているだけで、ほぼ同じポジションになります。そこでVol.1,2 では失敗だった、b7-b6 からのクイーンサイドフィアンケットのアイディアを見てみることにしましょう。
14. Bd3 c5!
これもVol.4 で見たアイディアで、白にBd3-Be4 と組み直され、c6 のポーンが弱点やピンにされないうち早めにセンターブレイクを仕掛けておきます。
15. Qc2 Bb7 16. Bh7+ Kh8 17. Be4
h7 でのチェックを入れておくのは小さいですが有効なアイディアで、エンドゲームになった際に黒キングをセンターから遠ざけておきます。またこのh7 でのチェックの際にポーン取りのスレットになっていないことも、h7-h6 を入れた大きな意味になります。つまりOrthodox Variation でb7-b6 のアイディアを使おうとしても、h7 のポーンを受けるのに1手かけなければいけない分、このLasker Variation よりも損であることが、ここで確認することができます。
17... cxd4! 18. Nxd4 Bxe4 19. Qxe4 Nc5 20. Qc2 a5!
Lasker Variation では2ピース交換とc6-c5 のブレイクを入れてb7 からビショップを活用しても、まだ黒は油断はできません。cファイルをコントロールされ、c6 のマスにナイトを入れられて、黒が苦しい展開になることもあるからです。ここでは黒はb2-b4 を防いでナイトをc5 に残せるようにすることで、白にcファイルやc6 のマスを活用するチャンスを与えないようにします。
21. h3 Qb7 22. Rc1 Rfd8 23. Nb3 Na6 24. Nd4 Nc5 25. Nb3 Na6 26. a3 a4
アンパッサンを利用し、a4 まで進めたポーンで白のbポーンを抑え込めば、再びc5 でのブロックを続けることができます。
27. Nd4 Nc5 28. b4 axb3 29. Nxb3 Nxb3 30. Qxb3 Rdc8
a,bポーンと最後のマイナーピースを交換してしまえば、局面は完全にドロー模様です。
31. Rxc8+ Rxc8 32. Rxc8+ Qxc8 33. Qxb6 Qc1+ 34. Kh2 Qxa3 35. Qb8+ Kh7 36. Qf4 Kg8 37. Qb8+ Kh7 38. Qf4 Kg8 39. Qb8+ 1/2-1/2
Lasker Variation は7手目の時点でほぼ2ピース交換が確定し、その後、e6-e5 かc6-c5 のどちらかのブレイクを狙い、白マスビショップを活用します。黒が負けにくいソリッドな変化でありながら、決してドロー狙いの消極的な作戦というわけでもなく、エンドゲームのテクニック次第で黒から勝ちも十分に狙えるでしょう。日本でもっと指されてほしい変化の1つです。
0 件のコメント:
コメントを投稿