2015/01/19

Saturday Lecture in January Lecture Report


Photo by Kawanaka

先月はハンガリーにいたために、お休みさせていただいた池上でのレクチャーですが、今月から再開することができました。11月のKasparov と羽生さんのイベントを見たことをきっかけに、チェスを始めたとい初参加のかたもいらっしゃり、去年8月以来の大人数でしたね。参加してくださった皆さん、ありがとうございました。

土曜日は4ゲームをご紹介するつもりでしたが、時間の都合で3ゲームになってしまったので、飛ばした1ゲームの簡単な解説を出しておきます。2004年はKramnik とLeko が世界チャンピオンの座を争った、私にとっては思い出深い年です。このゲームはチャンピオンマッチからではないですが、Leko - Kramnik の中では、有名なものだと思います。

Leko, P (GM, HUN, 2722) - Kramnik, V (GM, RUS, 2777)
Linares 2004 (14)

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 6. Ndb5 d6 7. Bg5 a6 8. Na3 b5 9. Bxf6 gxf6 10. Nd5 f5 11. Bd3 Be6 12. O-O Bxd5 13. exd5 Ne7 14. Qh5 e4 15. Be2 Bg7 16. c3 Rc8!?



Kramnik は現在でこそ、Berlin やPetroff といった堅い1.e4 対策を好みますが、Classical とSveshnikov というSicilian 2本柱を武器に、黒番でも勝ちにいくスタイルをとっていたこともありました。Sveshnikov はセンターのアウトポストとバックワードポーンという、分かりやすい弱点を黒が抱えますが、その分、両サイドでのカウンタープレーに期待することができる面白いオープニングです。

17. Nc2 Rc5 18. Ne3 f4 19. Nf5 O-O


初めてこの手を見たときは、かなり驚きました。黒はg7 のビショップを取らせてしまっても、Ne7-Ng6 からキングをカバーし、満足に戦うことができるでしょう。

20. a4!+/=



LekoはSveshnikov でスタンダードな作戦通り、クイーンサイドを突破してルークをアクティブに使い、わずかなアドバンテージを得ます。

20... Nxf5 21. Qxf5 Qe7 22. axb5 axb5 23. Qxf4 Rxd5 24. Rfd1 Re5


マテリアルはイコールですが、d6 に弱点を抱えているため、白はわずかに指しやすいでしょう。黒は丁寧に耐える展開を選ぶことも考えられますが、この試合ではKramnik はポーンを捨て、キングサイドのアタックに期待します。

25. Qe3 f5 26. Qb6 f4 27. Qxd6 Qg5! 28. f3 e3



こういったパスポーンは、きっちりブロックしていれば大丈夫だと理解はできるものの、実際に相手に持たせるのは嫌なものです。ミスが出た際に、e3 のポーンはいきなり強力な武器になるためです。

29. Ra7 Kh8 30. Qd7?


ここは30. Rd7! と指し、オープンファイルのコントロールを強めておき、黒のカウンターに備えておくべきでした。

30... Rg8 31. Qh3? Qg6!



白はg2 を守りにいきますが、このようにクイーンをパッシヴなディフェンスに使ってしまえば、黒に大きなチャンスが出てきます。Kramnik はクイーンの利きを切り替え、Qg5-Qg6-Qc2 を狙い、引き続きg2、さらにはe2 のビショップを攻撃します。この時、e3 に刺さったポーンは、f2 のマスをコントロールする、黒の重要な武器となります。

32. Rad7 Rh5! 33. R7d6 Bf6! 34. Rxf6 Qc2!


黒は一時的にビショップとルークを捨てますが、g2 とd1 のルークを同時に狙うことで、決定的なアタックを作ります。

35. Qxh5 Qxe2 36. g4 Qf2+ 0-1



私がSveshnikov を指していた時期に研究した、思い入れのあるラインのゲームでもありました。オープンになったgファイルからのアタックは、Sveshnikov の魅力の1つではありますが、それに巧みなクイーンのマヌーバリングを組み合わせた名局でした。

2月のレクチャー予定日は14日の土曜日、テーマはAnand にしようと思っています。そろそろ世界チャンピオンシリーズも終わりですかね。皆さん、引き続き、よろしくお願い致します。

2 件のコメント:

ピカチュウ さんのコメント...

GMになるためには何が必要なのか Kramnikは教えてくれるのでしょうか・・・▼o・~・o▼ 謎

http://en.wikipedia.org/wiki/Chess_strategy#Quotes

Shinya_Kojima さんのコメント...

Kramnik はBovinnik のチェススクール出身ですからね。でも、最初にGM クラスのレイティングがついているので、IM からGM へのステップは、彼自身がよくわからないかもしれません。

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