2015/01/24

The Highest Level Training in Japan in January 2015


昨日は今年初めてとなる、羽生さんとのトレーニングでした。羽生さんとお会いするのは、11月のABLE 講演会以来です。互いにハンガリーとスウェーデンでの大会から帰国し、2か月ぶりに顔を合わせて、いつもと同じラピッド2試合を行います。

Habu, Y (FM, JPN, 2415) - Kojima, S (FM, JPN, 2397)
Training (1)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. e5 Bf5 4. Nf3 e6 5. Be2 Ne7 6. O-O c5 7. c4 Nbc6 8. dxc5 dxc4 9. Qa4 Nd5 10. Nd4 Bd3 11. Bxd3 cxd3 12. Nxc6 Qd7 13. Qb3 Qxc6 14. Qxd3 Nb4 15. Qb3 Bxc5 16. a3 Nd5 17. Qg3 O-O-O 18. Nd2 Kb8 19. Ne4 Bd4 20. Bg5 Rd7 21. Rac1 Qb6 22. b4 h6 23. Bd2 g5 24. Nc5 Bxc5 25. Rxc5 Rhd8 26. Qf3 Qa6 27. Rfc1 Ne7 28. Be3 Qxa3 29. h3 Nf5?



2局目が長いので、1局目は簡単に紹介しておきます。ここで黒は29... b6! と指しておけば、a7 を狙われることなく、駒得によるアドバンテージを維持できたでしょう。本譜のように進むことは私の希望通りではありませんでしたが、時間切迫により正確なディフェンスが思いつきませんでした。

30. Ra5! Qxc1+ 31. Bxc1 Rd1+ 32. Kh2 Rxc1 33. g4 Nd4 34. Qxf7 Rc2 35. Ra1 Ne2 36. Qe7 Rdc8 37. Qd6+ Ka8 38. b5 b6 39. Qxb6 R8c7 40. Qe3 Nf4 41. b6 R7c3 42. Qe4+ Kb8 43. Qxc2 1-0



お昼は恒例となっている、近くの焼肉屋さんへ。お互いに海外でのトーナメントから戻ってきたところですので、ご飯を食べながら色々と情報を交換しました。羽生さんはスウェーデンのRilton Cup 出場後、現在開催されている世界トップクラスのトーナメント、Tata Steel 見学のために、オランダまで足を運びました。私もTwitter でそのことを知り、こちらのインタビュー動画をチェックしていました。

羽生さんはオランダでは、世界トップレベルの試合を見学できただけでなく、Aronian、Giri、Ding Liren らと話をしてきたそうです。これだけでも、日本への帰国前にオランダに寄った甲斐はあると思いますし、なにより、そうした羽生さんの積極性は私も見習いたいところです。

Kojima, S (FM, JPN, 2397) - Habu, Y (FM, JPN, 2415)
Training (2)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. d4 d5 4. Bg5!?



午後の試合は私が白です。羽生さんとはSemi-Slav の試合をたくさん指していますが、たまにはこうして手を変えてみます。

4... h6 5. Bxf6 Qxf6 6. Nc3 c6 7. Qb3!?


これでSemi-Slav Moscow Variation の一変化となります。私もハンガリーでこれを黒で指す可能性があったため、少し調べていました。羽生さんがどういったラインをチョイスするかに興味があり、この日は試してみることにします。

7... dxc4 8. Qxc4 Nd7 9. Rd1 Qe7!? 10. e4 Qb4



黒のクイーンはf6 では特に働きがないため、クイーンサイドに位置を戻します。白はクイーンを交換を避け、センターポーンとスペースで勝負します。

11. Qe2 Be7 12. g3 O-O 13. Bg2 Rd8 14. a3 Qb6 15. O-O Nf6 16. Rfe1


白は仕掛けるタイミングを見計らい、準備を進めます。こうした将来的にプラスになる手を積み重ねてチャンスを作る指し方は、私の今のチェスのベースになっていると思います。

16... Bd7 17. Ne5 Be8 18. d5!?



18. Nc4 Qc7 19. e5 Nd5 20. Ne4+/= という指し方もあると思いますが、私はポジションを開くことを望みました。黒はe8 のビショップがパッシヴであり、ルークもまだ片方しかセンターに回っていません。ならば、ポジションを開いてチャンスを作りやすいのは、間違いなく白です。

18... Qc7! 19. Nc4 e5 20. dxc6?!


検討で話をしていて、これはミスなのではないかと2人で考えました。白は...cxd5 と取られるのは問題ないため、ここでのポーンのぶつかり合いは、しばらく残しておくべきです。あまり早めにポーンを取ってしまうと、d4 が分かりやすいアウトポストとなり、黒にはナイトをNf6-Nd7-Nf8-Ne6-Nd4 とまわすプランが生まれます。

20... bxc6 21. b4 Rxd1 22. Rxd1 Rd8 23. Rxd8 Qxd8 24. Qe3 Qd4 25. Bf1 Nd7 26. Qd3 Nb6 27. Ne3 g6 28. Nc2 Qxd3 29. Bxd3



お互いのルークとクイーンが消えますが、この試合はここからが本番です。ポーンストラクチャーの良い白と、ダブルビショップを持つ黒は、互いに長所を持ち合い、難しいエンドゲームでしょう。

29... c5 30. b5 c4 31. Be2 Bc5 32. a4 Bd4 33. a5 Nc8!


お互いにナイトを交換し、ポーンの位置がすべて同じファイルになるエンドゲームはドローだと思っていましたが、羽生さんはもう少し自身のチャンスを求めます。私はこれでポーンが落ちてまずいかと思いましたが、そのポーンはなんとか回収できそうです。

34. Nd5 Bxb5 35. Nc7


ここは35. Na3! のほうが簡単です。なぜこう指さなかったのか、今落ち着いて見返してみると不思議ですね...

35... Ba4 36. Nxd4 exd4



私も羽生さんも、ビショップを取られたのであれば取り返すのが当然だと思っていましたが、ここは36... c3! が成立します。37. Nc2 Bxc2 38. Nd5 Bxe4 39. Nxc3 と指すしかありませんが、本譜に比べて黒はe5 にポーンを残したままでポーンアップになっており、明らかに有利になっています。

37. Bxc4 Bc2


これでポーンが落ちて焦りますが、上記と違って黒のポーンはd4 にあるので、白はキングを寄せていけば問題ないでしょう。

38. Kf1 Bxe4 39. Nb5 Kf8 40. Nxd4 Nd6 41. Bb3?! Ke7?!



イコールになったことで気が抜けたか、2人揃ってミスが出ます。41... Nb7! と指していれば、白はaポーンを守ることができません。Be4-Bd3+ を見落としていました... 白はa5 を守るためには、41. Ba6! と指さなければいけませんでした。

42. Ke2 f5 43. Ke3 g5 44. f3 Bb7 45. f4


この辺りで私はおやっ?と思い始めます。互いに白マスビショップを持つ同色ビショップエンディングであるため、f5 に黒のポーンを固定してしまえば、わずかに白にチャンスが出てきます。

45... Kf6 46. Ne6 Ba6 47. Nc5 Bf1 48. Bd5 Bc4 49. Kd4+/=



白のキングは素早く4段目に到達し、はっきりチャンスがあることが分かってきました。黒はh2 のポーンやa5 のポーンを狙うのが難しく、ディフェンスに集中しなくてはいけません。

49... Bf1 50. Nd7+ Ke7 51. Ne5 gxf4 52. gxf4 Bb5 53. Kc5 Ba4 54. Ng6+ Kd7 55. Nf8+ Ke7 56. Ng6+ Kd7 57. Ne5+ Kc7 58. Be6 Bc2 59. Nf7 Nxf7 60. Bxf7


白はナイト交換を仕掛け、純粋な同色ビショップだけのエンドゲームに持ち込みます。f5 がターゲットになっている以上、白が良いのは間違いありませんが、a5 を取られた際にポーンを進める速度を計算しなければいけないため、時間切迫ではさほど簡単なポジションではありません。

60... Be4 61. Be6 h5?



この手は私も目を疑いました。f5 を取った際にターゲットなるポーンが近くなりますし、なによりビショップと同じ同色ですので、明らかなターゲットとなります。

62. h4 Kb7 63. Bd5+?!


ビショップを交換して勝ちのポーンエンディングに持ち込むのは、白の正しいアイディアです。しかし、タイミングが少し早く、不正確でした。63. Bc4! (a6 のマスを抑えてしまい、黒キングがa5 のポーンを取りに来るのを防ぎます。) 63... Bc2 (63... Bf3 64. Kd6+-, 63... Kc7 64. Bd5!+- これならば、本譜よりも黒はa5 を取りにいくが遅く、白の勝ちです。) 64. Be2!+- 恥ずかしながら、f7 以外でh5 のポーンを取りにいくルートが見えておらず、焦ってビショップの交換を仕掛けてしまいました。

63... Bxd5 64. Kxd5 Ka6 65. Ke5 Kxa5 66. Kxf5


こうなった以上、ポーンレースからの新たなクイーンエンディングがお互いを待っています。

66... Kb6 67. Kg6 a5 68. f5 a4 69. f6 a3 70. f7 a2 71. f8=Q a1=Q 72. Qf6+?



この試合の反省点は多々あれど、このクイーン交換からのポーンエンディングを勝てると勘違いしたことは、ひどいミスでした。白が勝ちを狙うためには、72. Qd8+ などでクイーンを残し、h5 を取ってパスポーンを進めるしかありません。端のポーンのクイーンエンディングはディフェンス側が正確に指せばおそらくドローですが、そのためのアイディアを考えることも、この試合では検討戦で時間を割いたポイントでした。

72... Qxf6+ 73. Kxf6 Kc6 74. Kg6 Kd6 75. Kxh5 Ke7 76. Kg6 Kf8!


端ポーンのエンドゲームで、ディフェンス側がドローに持ち込むアイディアは2つあり、1つは自分のキングをプロモーションのマスに運んでステールメイトにするか、もう1つは相手のキングをプロモーションのマスに閉じ込めて、ステールメイトにするかです!

77. Kh7 Kf7 78. h5 Kf8 79. h6 Kf7 80. Kh8 Kf8 81. h7 Kf7 1/2-1/2



こうして羽生さんとの過去最長ゲームは、ドローに終わりました。今年最初のトレーニングは1敗1ドローでしたが、いつも通りとても勉強になっています。また今年も羽生さんには、トレーニングやイベントでお世話になりそうです。帰国後、まだお会いしていない日本の皆さんとも、近いうちにお会いする機会を設けたいですね。


自由ヶ丘駅前はこの時期、バレンタイン仕様になっています。私は2/14、池上でレクチャーですが...(笑)

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