2015/08/31

Nagoya Open 2015 Day2 Tournament Report


Photo by Otawa

1日更新が遅れましたが、名古屋オープン2日目のレポートです。初日で3連勝となった私は、2R で南條くん、3R で青嶋くんを破った三ツ矢さんとの全勝対決を迎えます。昨年、初のオリンピアードも経験し、次回のオリンピアード参加権利も獲得している三ツ矢さんは、この2年間で本当に強くなったと思います。


Kojima, S (IM, JPN, 2456) - Mitsuya, N (JPN, 2117)
Nagoya Open 2015(4)
Position After 36. Qxf7

私は相手キングの前を開き、確実にチャンスを作ったはずでした。しかし、決定的な決め手が分からず、ポジションを難しくしてしまいます。

36... Qf1+?


ところが、三ツ矢さんは時間切迫でドローのチャンスを逃します。私は試合後の検討で、36... d3! とシンプルにポーンを突く手を指摘しました。私は本譜のように、Rg8-Rg6 と指して、f6 のポーンを取ってチェックしつつ、クイーンを取るスレットを作りたかったのですが、それにはQf2-Qe1+ でチェックを外し、さらにdポーンを突き進めるプランで対抗することができます。(すぐにQf2-Qe1+ を入れないのは、f6 のポーンをすぐに取られないようにするためです。)こうなると黒のパスポーンは非常にプロモーションできそうなので、白はパペチュアルチェックでドローにするしかなかったでしょう。

37. Ka2 d3 38. Rg6!


今度はクイーンがfファイルにいたままなので、f6 取りがクイーン取りのスレットになってしまいます。こうして、ポーンが3段目にいる状態でf6 を回収し、ルークがディフェンスに回ることができれば、黒は駒得のリードを活かしたプレーができます。

39... Kc5 39. Rxf6 Qd1 40. Rf5+ Kb6 41. Rf1 Qe2 42. Qf2+!?


時間切迫により、クイーンを残して攻め切れるか読めなかったため、安全策でクイーン交換したエンドゲームを選択します。

42... Kb5 43. Qxe2 dxe2 44. Re1 Nd4 45. b3!+-



これでc4 のマスへの侵入を防げば、e2 のポーンは問題なく捌けるので、白の勝ちとなります。逆にこの手以外は、黒が大逆転で勝つでしょう。

45... Kc5 46. Kb2 Kd5 47. Kc3 Ke4 48. Kd2 Kf4 49. Kd3 Nxb3 50. Kxe2 Kg3 51. Kf1 Nd2+ 52. Kg1 Kf4 53. Re7 1-0


こうして単独4連勝を決め、優勝へと一歩近づきました。次は隣のボードで優位に試合を進めるSimon が上がってくるかと思いましたが、なんと大逆転で北神さんが勝利。私と3.5P の北神さんが、トッポボードで対戦となります。昨年の名古屋オープンでポイントを落とし、優勝を逃した悔しい一戦と同じペアリングです。


Kojima, S (IM, JPN, 2456) - Kitagami, S (USA, 2190)
Nagoya Open 2015(5)
Position After 20... Rb8

早い段階で2ポーンアップとなり、これは5連勝なるかと思っていたところ、自分の読み抜けに気づいて少し焦ります。b7 のナイトがc5 に逃げれば、Nb4-Nc2 で守りのクイーンを外されてしまいます。どうしたものかと頭をひねっていると、実にクリエイティブな手を思いつき、試してみることにしました。

21. Nxg6!?


私が指したい誘惑に逆らえなかったのはこの手です。初見では何事かと思うかもしれませんが、白はすでに2ポーンを得ているため、こうした大胆な作戦に出ることができます。代わりにコンピュータが示したのはシンプルな変化で、21. g4! Be6 22. Rd2! (これでNb4-Nc2 を防げば、次に白はナイトを逃がすことができます。) 22... Rxb7? 23. Bxb7 Qxb7 24. Rd8+ Bf8 25. Qh6+- 不思議なことに、クイーンがこのように跳びこむ手を見落としていました。上手く捌けば、Rxb7 はスレットになっていなかったんですね。

21... hxg6


これは素直すぎて、私であれば指すのを躊躇します。21... Rxb7 22. Nxe7+ (22. Nh4!? Bc8 23. Bxb7 Bxb7 24. Nf5!+- 私はこれで勝ちだと試合中に読んでいました。2ピースルークでも、白は3ポーンを得ていて、しかも黒キングの守りはガタガタです。) 22... Qxe7 23. Bxb7 Qxe3 24. fxe3+- これも白は最初の駒得のリードで、2ピースルークながら、4ポーンをゲットしています。後は丁寧に指せば勝てるでしょう。

22. Be5 Nfd5


黒はb8 のルークを取らせては、次のRd1-Rd8 でゲームオーバーなので、こう指すしかありません。しかしこれであれば、白はピースを取り返して、駒得の大きいエンドゲームに突入することができます。

23. Bxc7 Nxe3 24. fxe3 Rc8 25. Rd8+ Rxd8 26. Bxd8+-



これでピースを捌き、3ポーンアップのエンドゲームとなります。ここから白は多少マテリアルを返しても、cポーンをメインの武器に戦います。

26... Nxa2 27. Bxe7 Nc1 28. c5 Nxe2+ 29. Kf2 Nc3 30. Nd6 Be6 31. c6 Nb5 32. Nxb5 axb5 33. b4!?


ここはどちらか迷いましたが、今振り返れば、c7 までポーンを指しておくほうが簡単そうです。33. c7! Be5 34. Bd8 Bc8 35. Bc6 b4 36. e4+- 黒はどうすることもできません。

33... Be5 34. g4 f5 35. gxf5 Bxf5 36. Bf1 Kf7 37. Bc5 Ke6 38. Bxb5 Kd5 39. Bb6 Bxh3 40. c7 Bc8 41. Ba5 g5 42. Ba4 Bc3 43. Bc2 Kc4 44. Bg6!



最後は、どのようにc8 のブロッケードを外すかですが、bポーンを進めることと、f5 でビショップをぶつける2つのアイディアを思いついたので、それでゲームオーバーでしょう。

44... Bxb4 45. Bxb4 Kxb4 46. e4 Kc5 47. Bf5 Bb7 48. c8=Q+ Bxc8 49. Bxc8 Kd4 50. Bf5 Ke5 51. Kg3 1-0


これでジャパンリーグ同様、5連勝を達成して、ひとまず優勝を確実にしました。隣のボードのPhan - 南條戦は、序盤から黒がうまく指していましたが、Phan さんが中盤、ちょっとしたタクティクスで駒得し、そのまま黒キングを捕まえました。南條くんは今回、かなりやらかしています...

4勝1敗のPhan さんが1P 差で追ってくるため、最終戦で負ければ同率もありえる状況でした。最後はジャパンリーグと同じく、青嶋くんに黒を持ち、今度は長い長いファイティングゲームに。一つ勝つチャンスがありましたが、それを逃したためにドローに落ち着きました。こうして6試合を戦い、青嶋くんとのドロー以外は全て勝って、5.5P での優勝です。名古屋オープンは、2011年以来の優勝でした。


1st Place Kojima, S (IM, JPN, 2465) 5.5/6
2nd Place Kitagami, T (USA, 2190) 4.5/6
3rd Place Phan, N (VIE, 2220) 4.5/6


今回の名古屋オープンは、2人のIM とプロ棋士の青嶋くん、さらに2200台クラスの実力者も集まり、私が過去参加した名古屋オープンの中で、最もレベルが高かったと思います。(私が参加をパスした中では、GM Baburin とIM Collins が参加した2009年の名古屋オープンが、過去最高のレベルだったでしょう) そんな大会で優勝できたことは、素直に嬉しく思いますし、名古屋地域のプレーヤーとも交流できたので、今回の遠征も非常に充実したものとなりました。また10月には中部快速オープンが開催されるため、詳細を確認してから、参加を検討しようと思います。名古屋オープンの参加者と運営の堀江さん、皆さんお疲れ様でした!


名古屋最後の夕飯は、エスカの海老どて食堂へ。ここは店内に巨大なエビフライの模型があり、その写真を撮るためだけに店内に入ろうとする人もいます(笑) 日本で一番大きいという35cm のエビフライは注文しませんでしたが、23cm の通常のエビフライと、初めて見る開きのエビフライ、さらに刺身などがついたセットはボリューム満点でした! また次回の遠征でも、名古屋グルメを満喫したいと思います。(ちなみに今回も、栄地下街、緋毬のかき氷は逃しました...無念)

2015/08/29

Nagoya Open 2015 Day1 Tournament Report


「最近、グルメレポートが少ないんじゃないですか?」と何度も言われているので、今回は少し頑張ります。名古屋オープン初日、6時26分東京発の新幹線に乗り、9か月ぶりの名古屋を目指します。朝ご飯は東京駅で購入した、とろ~り煮あなごめし。朝6時にもかかわらず、東京駅の駅弁売り場は大変な混雑でした。8月最後の週末ですし、皆さん、夏休み最後の遠出をするのかもしれませんね。


名古屋に到着してからすぐ、昼ごはん用ゲットしたのは、去年出会ったコンパルのエビフライサンドです。あまりの美味しさに一瞬で虜になり、もはや名古屋遠征では欠かせません。個人的にはこれを食べると、名古屋に戻ってきたことを実感します。


9時30分ぎりぎりに会場に滑り込み、参加者とペアリングをチェックします。初戦の相手は元生徒で、同じく関東からの遠征組であるヒーバートケンジくん。Caro-Kann Classical で早目に満足なポジションにし、経験の差を発揮して無事に勝利を収めました。エビフライサンドの昼食後は、去年の名古屋オープンでも対戦した、権田さんとの対戦です。

Kojima, S (IM, JPN, 2465) - Gonda, G (JPN, 2127)
Nagoya Open 2015(2)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. d4 b6 4. g3 Bb7 5. Bg2 Be7 6. O-O O-O 7. d5 exd5 8. Nh4 c6 9. cxd5 Nxd5 10. Nf5 Nf6?!



1月にイングランドのIM Eggleston と指して以来の、Queen's Indian d5 Gambit です。数日前に、ナイトをこちらに退く変化を軽くチェックしましたが、メインラインの10... Nc7 に比べると、すぐにはBe7-Bf6 ができず、やや窮屈に感じます。

11. e4 d5 12. Nc3 dxe4 13. Nxe4 Nxe4 14. Bxe4


白はナイトを一組消されましたが、e4 のビショップがc6 とh7 力強くにらみ、1ポーンの代償は十分です。黒はc6 のポーンを落とすことなく、b8 のナイトを展開するのは難しいでしょう。

14... Bc8



このビショップを退くアイディアは、このラインでは時々見られるものです。f5 のナイトは確かに黒から見れば厄介ですが、ピースの展開のリードとダブルビショップがあれば、白はf5 のナイトを消しても優勢でしょう。本譜の代わりに、14... Bf6 15. Nd6 Ba6 16. Re1+/- このようにナイトがd6 に侵入するような形も、白が指しやすそうです。

15. Nxe7+ Qxe7 16. Re1!


シンプルな手ですが、このように相手クイーンをターゲットにし、ルークをゲームに参加させる手はいつでも有力です。

16... Be6 17. Bf4 Rd8 18. Qh5 h6? 19. Bxh6!



黒は18... g6 しかありませんが、それはそれで黒マスが弱く、長期的な弱点を抱えます。本譜では白はビショップをサクリファイスし、黒キングの前を開いて勝負ありとなります。

19... gxh6 20. Qxh6 f6 21. Bf5 Rd6 22. Re4 1-0




2R 終了後、会場の隣になる矢場公園では、子供たちの踊りが行われていました。このイベントは昨日からの3日間、名古屋市内で開催されている『第17回 にっぽんど真ん中まつり2015』というものだそうです。名古屋市内の各地で、子供から大人まで様々な団体が踊りを披露しています。最終日の明日も、なんとか天気がもつと良いですね。


こちらは踊りを見た後に食べた、鬼怒川温泉土産のとち餅です。きなこのかかったお餅に、黒蜜をかけていただきます。いまさらですが、昨日の夕方までは栃木県の日光市にいたことを考えれば、すごい移動距離ですね(笑)

さて、おやつ後の3R は、昨年の名古屋オープン優勝者、ベトナムのWCM Phan さんに黒です。昨年はPhan さんに白を持って負けてしまいましたが、今年は小さなチャンスを掴み、50手以上かけて勝ちを手繰り寄せました! これで初日は3連勝となり、南條くん、青嶋くんを破って、同じく3連勝の三ツ矢さんとの対戦を迎えます。


帰り道、矢場町駅の地下街で見つけた壁画ですが、どう見てもポーンです(笑)


初日のラスト、夕飯は名古屋駅近くの地下街、エスカで探すことにしました。本当はうなぎを... と考えていましたが、勧められた備長という有名店は並びすぎていて断念。味噌カツや手羽先など名古屋名物が揃うお店へと足を運ぶことにしました。私は味噌カツならぬ、どてカツ丼(カツにどて煮をかけたもの)と、名古屋コーチンの親子丼セットにしました。明日はしっかり試合に勝って、うなぎを食べたいと思います!

2015/08/28

ACC Summer Training 2015 Day1


事前にお伝えしていた通り、今日から私は1泊2日のスケジュールで、麻布学園チェス部の合宿に同行しています。今回の合宿地である鬼怒川温泉へは、浅草から東武線に乗って向かいます。私は10年ぶりの合宿が楽しみすぎて、集合時間の10時間前には集合場所の浅草に到着していました。(前泊とも呼びます)朝は7時に起き、浅草の街をぶらり。やはり浅草と言われて真っ先にイメージするのは、こちらの雷門でしょう。


隅田川の対岸に見えるのは、3年前に誕生した東京の新名所、スカイツリーです。隅田川沿いの隅田公園からは、目立った障害物なく、隅田川の水面とスカイツリーが拝めます。


8時半に集合し、16名の部員と2名の顧問の先生と共に、一路、鬼怒川温泉を目指します。浅草から鬼怒川温泉までは、特急料金のかからない急行列車で2時間20分ほどです。私が鬼怒川に来るのは、小学生の頃以来、15年ぶりでしょうか。


チェックインや昼食で、多少のもたつきがありながらも、14時過ぎに合宿の初戦が開始です。麻布チェス部の合宿のシステムを知らないであろう大多数の方に説明しておきますと、麻布の合宿は一般的な部活の強化練習とは少し趣が異なり、全体で一つのトーナメントになっています。参加者全員で通常は9試合、今回は私のレクチャーを入れるため、試合数を減らして7試合が行われます。麻布の合宿で優勝するということは、その時、部員で一番強いという証明になるわけです。(OBが優勝することもありますが...)


初戦のゲームを見ていて面白かったのは、上のポジションです。初参加の中学1年生が黒を持ち、高校1年生を相手に奮闘しました。

1... Re8!


ポーンエンディングがドローになることを読み切ったわけではなく、直感的な判断だったとしても、少ない経験の中で正解を引き当てるのは大したものです。

2. Rxe8+ Kxe8 3. Kxf6 Kf8!


当然ですが、Kf6-Kg7 を許してしまっては、白にクイーンができてしまうので、黒は負けです。

4. Ke6 a5!


黒はこの後で、b7-b5, a5-a4 でクイーンサイドのポーンを捌いてしまえば、ドローです。私たちにとっては難しくないポーンエンディングですが、驚くべきことはこれが合宿初参加の中学1年生によって指されたということです! 私の12歳の頃のゲームと言えば... 考えないようにします(笑)


試合の後は2時間弱、私のレクチャーが行われました。初日は徹底的にエンドゲームをテーマにし、子供たちには色々とアイディアを伝えることができたと思います。明日はミドルゲームを扱う予定ですので、今日の話と併せて、皆のチェスの幅が広がるようにできればと思います。

2015/08/26

Weekly Chess Puzzle Vol.12


Kojima, S (JPN, 1979) - Nanjo, R (JPN, 2152)
Christmas Open 2004(3)
White to move and win


Billon, O (FRA, 2267) - Kojima, S (FM, JPN, 2307)
Cappelle La Grande 2010(9) Analysis
Black to move and win

タクティクスは、10年以上前のゲームから持ってきました。高校1年生が10年以上前とは... 時の流れを感じます。エンドゲームは、FM になってから初めて参加した、フランスカペルのトーナメントから。最終戦で対戦したフランスのジュニアとのゲームは、異色ビショップではありながら、盤上に残したルークと良いポーンストラクチャーを利用し、上手く指せたと思っています。本譜では逃した、黒のベストムーブを探してみてください。

2015/08/25

The Summer Training Season 2015


8/27-28 麻布学園チェス部夏合宿 at 鬼怒川, Photo from Wikipedia

今週から私は関東外への遠征が続きます。一つ目は、鬼怒川で行われる麻布の夏合宿です。高校2年生でチェス部を引退してから、10年ぶりとなるチェス部の夏合宿は、プレーヤーとしてではなく、コーチとしての参加です。従来通り4泊5日で行われる合宿の、初日と2日目に顔を出してきます。私の参加により、スケジュールも大きく変更があるそうなので、しっかりと仕事をこなしつつ、懐かしの夏合宿を楽しんでこようと思います。現役の皆さん、よろしくお願い致します。


8/29-30 名古屋オープン at 名古屋

2つ目は去年から連続参加となる、名古屋オープンです。昨年はベトナムのPhan さんに敗れて優勝を逃しましたので、今年こそはという思いがあります。試合以外にも、味噌カツや、去年閉店時間にぎりぎり間に合わなかったかき氷屋さんなど、食事も楽しみにしています(笑)名古屋が地元のプレーヤーも、関東からの遠征組も、良い試合ができるように頑張りましょう。


9/02-03 暁星学園チェス部夏合宿 at 三つ峠 (写真は昨年の河口湖)

暁星の夏合宿にコーチとして同行するのは、もう何度目か忘れてしまいました。昨年訪れた河口湖から少し離れた、同じ山梨県内の三つ峠が、今回の合宿の舞台です。今年の合宿参加メンバーは、昨年の河口湖合宿とほとんど被っていますので、皆が一年でどれくらい成長しているか、チェックしてきたいですね。

昨年は愛知、山梨の連続遠征でしたが、今年はこれに栃木県が加わり、慌ただしい一週間となります。少し関東を離れますが、何かあればお気軽にご連絡下さい。これらの遠征が終わる頃には、この2日間のように、秋の訪れを感じられるぐらい暑さが和らぐと良いですね。

2015/08/23

国内レイティング S102


Japan League 2015, Photo by Hasegawa

今日、新しい国内レイティングを、松戸チェスサークルのHP 上で確認することができました。今回の更新では、サマーオープン、ジュニア選手権、小学生選手権、シニア選手権、女子選手権、ジャパンリーグと、多数の大会結果が反映されています。試合をしたプレーヤーの上位10名は、以下の通りです。

小島慎也 2465(+16)
南條遼介 2441(+1)
青嶋未来 2397(-10)
馬場雅裕 2297(-15)
桑田晋 2255(+19)
Bibby Simon 2244(-14)
山田弘平 2217(+17)
塩見亮 2215(-6)
唐堂 2195(+19)
北神匠 2190(+17)


私はジャパンリーグ優勝により、レイティング+16 でベストを更新しました。他にも、桑田くん、山田くん、唐堂くんたちは、ジャパンリーグで安定した戦績を残し、レイティングをFIDE、国内、ともに伸ばしています。前回の更新で2400 を一気に超え、注目を集めた青嶋くんは、サマーオープンの初戦負けが響いて10ダウンでした。

ちなみに私がチェックしたところ、一部で試合をしているはずなのに、レイティング変動の無いプレーヤーがいます。おそらくは報告漏れなどのミスであるため、これから修正が入るでしょう。各自、確認をよろしくお願い致します。ジャパンリーグの結果を受けたFIDE レイティングの増減も、すでにFIDE のHP 上で公開されていますが、そちらは9月に入り、正式にレイティングが更新されてから記事にすることにします。

2015/08/19

Weekly Chess Puzzle Vol.11


Kojima, S (FM, JPN, 2320) - Nakamura, R (JPN, 2212)
Japan Open 2009(5)
White to move and win


Kojima, S (FM, JPN, 2327) - Yeap Eng (MAS, 2121)
Malaysia Open 2010(7)
White to move and win

今週のチェスパズルです。上のポジションは、龍二さんとの思い出深いゲーム。教科書的なアタックですが、よく実戦で出てきたと思います。下のエンドゲームは、マレーシアのジュニアとの試合から。相手が時間切迫により、指す前に時計を押すというトラブルがありました...(笑) いつも通り、答えは自由にコメント欄にどうぞ。

2015/08/18

盤上のポラリス2巻発売


月刊少年マガジンで好評連載中のチェスコミック、盤上のポラリスの第2巻が、8/17 に発売となりました。盤上のポラリスは、7月に池袋でトークイベントを行ったり、作品内の棋譜を製作したりと、私にとっても非常に縁の深い作品となっています。2巻のメインとしては、主人公の一兵とライバルのレンが、全日本ジュニア選手権の大舞台で、初公式戦を行う様子が描かれています。蒲田での普段の公式戦を知っているチェスプレーヤーにとっては、にやりとしてしまうシーンもあると思いますので、是非、お手にとって中身をチェックしてみてください。2巻収録以降の話は、月刊少年マガジンの最新9月号に掲載されていますので、続きが気になる方はこちらも併せてどうぞ。

2015/08/17

Simultaneous Event at Google


Google の一室にて Photo by Mizutani

ジャパンリーグ明けの今日は、都内でのレッスンを一つこなした後で、六本木ヒルズにあるGoogle のオフィスへと向かいました。目的はGoogle でのチャリティーイベントとして、チェスの同時対局を行うことです。今年の春頃、Google に勤める、麻布チェス部の先輩である水谷さんから話を持ちかけられ、ようやく今日、実現となりました。

参加者は、Google の社員9人と聞いていましたが、当日の病欠やキャンセルがあり、5人との対局になりました。前日のNi Hua の同時対局に比べればずっと小規模だったものの、その分、2時間弱の枠内で、それぞれの人とゆっくり1局ずつを指し、終わった後は面白かったゲームのポジションをピックアップして、解説もできました。今回のイベントのためにルールを覚えられた人も、久々にチェスを指したという人も、皆さん楽しかったというメッセージをくれましたので、私としても大満足です。今年は福岡と松戸でそれぞれ一回ずつ、同時対局イベントを開催していますが、今回のイベントはまた趣が異なり、私自身もとても楽しかったです。普段、チェスにさほど馴染みがない人でも、こうして楽しんでいただけるようなイベントの企画、協力は、今後も行っていきたいですね。


イベント後は、水谷さんと2人でゆっくりと食事をしながら、日本のチェスの現状や、今後の展望について話をしてきました。10年前、すぐ近くの高校に通うチェス好きの高校生だった私たちが、道は違えど、こうして協力して一緒に何かができるというのは、不思議なことだと思います。今回の企画を担当してくださった水谷さん、そして今日の参加者の皆さん、ありがとうございました。また来年以降も機会があれば、よろしくお願い致します。

2015/08/16

Japan League 2015 Day4 Tournament Report


青嶋くんとの初公式戦, Photo by Hasegawa

とうとうジャパンリーグも最終日。単独優勝をかけた大事な最終戦は、今年から頭角を現してきたプロ棋士の青嶋くんとの対戦です。先月のIVL と同じ黒ですが、公式戦での対戦は今回が初めてです。

Aoshima, M (JPN, UR) - Kojima, S (IM, JPN, 2389)
Japan League 2015 (7)

1. d4 d5 2. Nf3 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. e4 b5 6. Be2!?



以前、オンラインで対戦した際もこの形だと記憶していますが、今回は色々と調べてきたようです。珍しいラインですが、進めてみると白はさほど悪くありません。

6... e6 7. O-O Be7 8. a4 b4 9. e5 bxc3 10. exf6 Bxf6 11. bxc3 Ba6


白の早い仕掛けを食らい、少し間違えたかなとも思いましたが、ここから黒の方針を丁寧に考えていきます。c4 のポーンはいずれ回収され、マテリアルはイコールになったとしても、遅れていたピースの展開を完了し、c6-c5 から弱点のcポーンを捌いてしまえば、黒は問題ないでしょう。

12. Nd2



この手はc4 を取りにいく手として、非常に素直です。しかし、私が試合後に青嶋くんに指摘したのは、12. Ne5!? と跳びこむ変化でした。12. Ne5!? Bxe5 13. dxe5 Qxd1 14. Rxd1 Nd7 15. f4 こうなれば、白はすぐにポーンを取り返せずとも、黒マスやdファイルのコントロールで代償を持ち、面白味のあるポジションで戦うことができるでしょう。黒がe5 のナイトを取らなければ、b8 のナイトを展開することができないため、本譜より明確に良いと言えます。

12... Nd7 13. Nxc4 O-O 14. Ba3 Be7 15. Bxe7 Qxe7 16. Ne5


白がピースを捌く単純化を嫌うのであれば、16. Na5!? と跳ぶ手も面白いでしょう。

16... Bxe2 17. Qxe2 c5!?



17... Nxe5 18. Qxe5 Rad8 でもOK ですが、私はあくまでc6-c5 のブレイクから、孤立ポーンを消すプランを選択しました。ここで一度目のドローオファーです。

18. Rab1


18. Nxd7 Qxd7 19. dxc5 Qc7 と進む変化は、黒がc5 のポーンを取り返した後、c3 にさらにプレッシャーをかけることができるため、黒としては満足です。

18... Nxe5 19. dxe5 Rab8 20. Rb5 Qc7 21. Rfb1 Rxb5 22. Rxb5 Rd8 1/2-1/2



狙い通り、c6-c5 から弱点を消し、ピースを捌いて完全にイコアライズに成功しています。この試合をドローで終え、6/7 という戦績でフィニッシュ。最終戦で勝ったZhao Xue と南條くんを半歩リードし、単独優勝を決めました。


今年のジャパンリーグ入賞者たち, Photo by Hasegawa

1st Place Kojima, S (IM, JPN, 2389)
2nd Place Zhao, X (GM, CHN, 2533)
3rd Place Nanjo, R (IM, JPN, 2330)


終わってみれば、リスト上位のタイトルホルダーが入賞を占めました。今回、こうしてZhao Xue のような強豪GM を相手に、大会で競り勝てたことは素直に嬉しく思います。全日本では思ったようなプレーができず、レイティングを落として少し落ち込みもしました。最近はチェスを教える仕事が増え、自分の研究時間があまり割けずに、実力が落ちたのではないかと考えることもありました。しかし今回の結果で、そうした不安を消すことができ、自分のやっていることが間違いではないと思えたことは、私にとって大きな収穫です。多くの人のチェスを見ることで、自分の得意なチェスのスタイルを見直せたことが、良い結果に繋がったと考えています。


大会後は予定通り、GM Ni Hua によるレクチャーと同時対局イベントが開催されました。同時対局には、世界に50人しかいない2700クラスのGM との対戦を求め、34名ものプレーヤーが参加。会場を確保している時間ぎりぎりまで、4時間半ゲームが続けられましたが、半数以上は終わりませんでした。そこで、Zhao Xue の形勢判断で結果を決め、見事に三阪さんと青嶋くんが勝利! どちらも、続けていれば間違いなく勝てるポジションだったでしょう。2人とも、おめでとうございます!


Ni Hua との同時対局には参加しなかった南條くんは、裏でこっそりとZhao Xue とブリッツをしていました。勝てた試合もあり、満足だった様子。ジャパンリーグのメインの試合では、運悪くZhao Xue と対戦できませんでしたからね。

最後になりましたが、今回の参加者と運営陣、そして中国からきてくれた2人のGM たち、皆さん4日間、本当にお疲れ様でした。また次のトーナメントで、お会いしましょう。私は今月末、名古屋に遠征して名古屋オープンに参加する予定です。東京からの遠征者は、そちらでもよろしくお願い致します。

2015/08/15

Japan League 2015 Day3 Tournament Report


中国女子代表GM Zhao Xue との対戦, Photo by Hasegawa

今日は時間がないので、2つのゲームをサクッとご紹介しておきます。まずは午前中の桑田くんとのゲームからです。


Kuwata, S (JPN, 2135) - Kojima, S (IM, JPN, 2389)
Japan League 2015(5)
Position After 21... Ra7

桑田くんとのゲームは、予想通りにCaro-Kann Advanced で、互いに逆サイドで手を作り合う展開に。2ピースを捌いている黒は、さほど白のキングサイドアタックは脅威にならないだろうと考えていました。ここで桑田くんは絶対に指してはいけない手をチョイスします。

22. f4? Nxc3!


桑田くんらしくないタクティクスの見落としてです。b4, d4 を支えるc3 のポーンは白のディフェンスの要であり、ここが崩れてしまっては勝負になりません。

23. Nd6 Kg8 24. Rf3 g6 25. Qh6 f6



こうしてe5 のポーンを崩しつつ、7段目に利きを開いてh7 さえ守ってしまえば、黒は全く問題なく勝ちです。

26. Bxf6 Bxf6


試合中、自信がなかったのは以下のような変化です。26... Rxf6 27. Rxc3 axb4 28. Rcc1 Bxd6 29. exf6 Qxf6-+ このように進めてみれば、黒はエクスチェンジを捨てても勝てることが分かりますが、本譜ではもう少し安全に指します。

27. Rxc3 axb4 28. Rh3 b3 29. Rd1 b2 30. Ne4 Qxd4+ 31. Rxd4 b1=Q+ 32. Kf2 Bxe5



こうしてe5 のポーンまで落ちてしまっては、白に抵抗する方法は残されていません。

33. Qxf8+ Kxf8 34. fxe5 Qb2+ 35. Rd2 Rf7+ 36. Ke3 Qxe5 37. Rh4 g5 38. Rg4 h5 0-1


ここをきっちり勝って、連勝を5まで伸ばしました。この時点で2位とは1P 差がつき、5R で青嶋くんとドローだった、Zhao Xue を迎え撃ちます。


Kojima, S (IM, JPN, 2389) - Zhao X (GM, CHN, 2533)
Japan League 2015(6)
Position After 38... Rc2

時間が増える寸前、私は確かにZhao Xue をロープ際まで追い詰めていました。残り時間もこちらが多く、これは6連勝になったとすら思っていました。

39. h4!


e2 のポーンを無視して、Kg2-Kh3 と上がるメイトスレットを作れば勝ちだろうと読みました。実際にこれで黒は困っています。

39... Bc5 40. Rc6?


しかし時間が増える40手目で、私は決め手を逃しました。このピンにする手でNf5-Ne3 の狙いも作り、白の勝ちだと思いましたが、実際には別の手でメイト受けなしです。40. Rf6! (狙いは、Nf5-Ng7+ の後の、Rf6-Rf4#) 40... Kg4 41. Nh6+ Kh5 42. Kh3! Rc3 43. Nf5+-


Analysis Diagram

これでメイトです。 ルークをfファイルに切り替えるアイディアは、時間の無くなるぎりぎりまで考えて見つけるべきでした。

40... Rc1


こうした当たり前の手で黒はメイトを防ぎ、まだまだ粘ります。

41. Nd4 a5 42. Rc7 Kg6 43. g4 Kf6 44. g5+ Kg6 45. e3 Rc3 46. Nb5



40... Rc1 に対して、増えた30分をほとんど使ってしまった私は、時間切迫で勝ちのアイディアを見つけることができませんでした。46. Rc6+ Kf7 (46... Kh5 47. Kg3! Rxe3+ 48. Kf4+- こうしてキングが上がるアイディアが分からず、チェックをためらってしまいました。) 47. Nf5 Bb4 48. Rxc3 Bxc3 49. Nd6++- これでe4 のポーンを取れば、もちろん白の勝ちです。

46... Rc1 47. Nd4 Rc3 48. Nb5 Rc1 1/2-1/2


こうして日本でのGM との初公式戦は、ドローに終わりました。勝ちを拾えなかったことは残念ですが、この時点で5.5/6 で2位に1P 差をつけ、最低でも同時優勝を確定させました。また、最終戦はFIDE レイティングの無い青嶋くんとの対戦ですので、FIDE 公式戦は6試合で終了し、レイティングは+11 となります。これで次回の更新で2400ジャストに戻り、3か月ぶりに羽生さんを抜いて日本ランキング一位に返り咲きます。それだけで満足することなく、ここまできたからには最終戦もきっちりとポイントを取って、単独優勝を決めたいですね。皆さん、明日の最終日もよろしくお願い致します。

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