とうとうジャパンリーグも最終日。単独優勝をかけた大事な最終戦は、今年から頭角を現してきたプロ棋士の青嶋くんとの対戦です。先月のIVL と同じ黒ですが、公式戦での対戦は今回が初めてです。
Aoshima, M (JPN, UR) - Kojima, S (IM, JPN, 2389)
Japan League 2015 (7)
1. d4 d5 2. Nf3 Nf6 3. c4 c6 4. Nc3 dxc4 5. e4 b5 6. Be2!?
Japan League 2015 (7)
以前、オンラインで対戦した際もこの形だと記憶していますが、今回は色々と調べてきたようです。珍しいラインですが、進めてみると白はさほど悪くありません。
6... e6 7. O-O Be7 8. a4 b4 9. e5 bxc3 10. exf6 Bxf6 11. bxc3 Ba6
白の早い仕掛けを食らい、少し間違えたかなとも思いましたが、ここから黒の方針を丁寧に考えていきます。c4 のポーンはいずれ回収され、マテリアルはイコールになったとしても、遅れていたピースの展開を完了し、c6-c5 から弱点のcポーンを捌いてしまえば、黒は問題ないでしょう。
12. Nd2
この手はc4 を取りにいく手として、非常に素直です。しかし、私が試合後に青嶋くんに指摘したのは、12. Ne5!? と跳びこむ変化でした。12. Ne5!? Bxe5 13. dxe5 Qxd1 14. Rxd1 Nd7 15. f4 こうなれば、白はすぐにポーンを取り返せずとも、黒マスやdファイルのコントロールで代償を持ち、面白味のあるポジションで戦うことができるでしょう。黒がe5 のナイトを取らなければ、b8 のナイトを展開することができないため、本譜より明確に良いと言えます。
12... Nd7 13. Nxc4 O-O 14. Ba3 Be7 15. Bxe7 Qxe7 16. Ne5
白がピースを捌く単純化を嫌うのであれば、16. Na5!? と跳ぶ手も面白いでしょう。
16... Bxe2 17. Qxe2 c5!?
17... Nxe5 18. Qxe5 Rad8 でもOK ですが、私はあくまでc6-c5 のブレイクから、孤立ポーンを消すプランを選択しました。ここで一度目のドローオファーです。
18. Rab1
18. Nxd7 Qxd7 19. dxc5 Qc7 と進む変化は、黒がc5 のポーンを取り返した後、c3 にさらにプレッシャーをかけることができるため、黒としては満足です。
18... Nxe5 19. dxe5 Rab8 20. Rb5 Qc7 21. Rfb1 Rxb5 22. Rxb5 Rd8 1/2-1/2
狙い通り、c6-c5 から弱点を消し、ピースを捌いて完全にイコアライズに成功しています。この試合をドローで終え、6/7 という戦績でフィニッシュ。最終戦で勝ったZhao Xue と南條くんを半歩リードし、単独優勝を決めました。
1st Place Kojima, S (IM, JPN, 2389)
2nd Place Zhao, X (GM, CHN, 2533)
3rd Place Nanjo, R (IM, JPN, 2330)
2nd Place Zhao, X (GM, CHN, 2533)
3rd Place Nanjo, R (IM, JPN, 2330)
終わってみれば、リスト上位のタイトルホルダーが入賞を占めました。今回、こうしてZhao Xue のような強豪GM を相手に、大会で競り勝てたことは素直に嬉しく思います。全日本では思ったようなプレーができず、レイティングを落として少し落ち込みもしました。最近はチェスを教える仕事が増え、自分の研究時間があまり割けずに、実力が落ちたのではないかと考えることもありました。しかし今回の結果で、そうした不安を消すことができ、自分のやっていることが間違いではないと思えたことは、私にとって大きな収穫です。多くの人のチェスを見ることで、自分の得意なチェスのスタイルを見直せたことが、良い結果に繋がったと考えています。
大会後は予定通り、GM Ni Hua によるレクチャーと同時対局イベントが開催されました。同時対局には、世界に50人しかいない2700クラスのGM との対戦を求め、34名ものプレーヤーが参加。会場を確保している時間ぎりぎりまで、4時間半ゲームが続けられましたが、半数以上は終わりませんでした。そこで、Zhao Xue の形勢判断で結果を決め、見事に三阪さんと青嶋くんが勝利! どちらも、続けていれば間違いなく勝てるポジションだったでしょう。2人とも、おめでとうございます!
Ni Hua との同時対局には参加しなかった南條くんは、裏でこっそりとZhao Xue とブリッツをしていました。勝てた試合もあり、満足だった様子。ジャパンリーグのメインの試合では、運悪くZhao Xue と対戦できませんでしたからね。
最後になりましたが、今回の参加者と運営陣、そして中国からきてくれた2人のGM たち、皆さん4日間、本当にお疲れ様でした。また次のトーナメントで、お会いしましょう。私は今月末、名古屋に遠征して名古屋オープンに参加する予定です。東京からの遠征者は、そちらでもよろしくお願い致します。
0 件のコメント:
コメントを投稿